「夢の開業」を“安心”に変える、歯科専門の税理士事務所の力。
歯科医院・矯正歯科クリニックのための消費税対応ガイド
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まずは、消費税の仕組みと歯科医院ならではの課税・非課税区分について理解しましょう。消費税のルールを正しく把握することで、ご自身のクリニックが納税義務を負うかどうか判断でき、適切な対応策を考える土台となります。
消費税は、日本国内で事業者が行う商品の販売やサービス提供に一律10%課される税金です(飲食料品等には軽減税率8%もありますが、歯科診療には関係しません)。消費者が負担し事業者が預かり、まとめて納税する間接税であり、最終的には最終消費者が税コストを負担する仕組みになっています。
しかし、すべての事業者が消費税を納める必要があるわけではありません。国は小規模事業者の事務負担軽減のために免税事業者制度を設けており、一定規模以下の事業者には消費税の納税義務が免除されます。具体的には、「基準期間」と呼ばれる2期前(個人事業主であれば前々年、法人であれば前々事業年度)の課税売上高が1,000万円超である場合にのみ、その事業者は課税期間(通常は今年度)において消費税の課税事業者となります。逆に言えば、2期前の課税売上高が1,000万円以下であれば当該期間は免税事業者として消費税を納める必要がないということです。
歯科医院の場合、開業して間もない頃や自由診療収入が少ない場合には、この基準により免税事業者となるケースが多く見られます。新規開業から2年間は前々年実績がないため、原則として消費税は免除されます(※拠出金1,000万円以上で法人設立した場合など一部例外あり)。ただし、3年目以降に課税売上高が基準を超えていた場合は課税事業者へ移行し、消費税申告と納税が必要になります。免税期間中であっても、将来課税事業者となる可能性がある場合は早めに準備を進めておくと安心です。
また、課税売上高が基準以下でも、自ら選択して課税事業者になる選択届出を提出することも可能です。例えば、大きな設備投資を行う年にあえて課税事業者となり仕入れに含まれる消費税(仕入税額)の還付を受けるといった戦略もありえます。このような消費税の届出や選択はタイミングによって有利不利が生じますので、専門家と相談しながら判断しましょう。
消費税法上、医療に関する一定のサービスは社会政策的な配慮から非課税扱いと定められています。歯科医療も例外ではなく、公的医療保険が適用される保険診療は「社会保険医療の給付等」に該当し、患者さんから受け取る治療費には消費税がかかりません(非課税売上)。例えば虫歯の治療や歯周病治療など健康保険証を使って受ける診療報酬は課税対象外です。
一方で、保険が効かない診療や商品販売には消費税が課されます。自由診療(自費診療)として患者さんが全額自己負担する診療やサービスは、その内容に関わらず課税対象です。例えば、インプラント治療、セラミックによる審美歯科治療、矯正治療、ホワイトニングなどは保険適用外のため治療費に10%の消費税が含まれます。また、院内で販売する歯ブラシ・デンタルフロス等のグッズ売上や、治療で出た金属スクラップの業者への売却収入などもすべて課税売上に該当します。さらに、歯科医師会等から委託される健診業務報酬や、自費の予防接種料金なども課税対象となり得ます。
このように、歯科医院の収入には非課税売上(保険診療)と課税売上(自由診療や物販等)が混在します。免税事業者である間は消費税の納税義務がありませんが、いざ課税事業者になると課税売上部分に対して消費税を納める必要が出てきます。ただし納税額は売上全体ではなく課税売上に対して計算され、さらに仕入や経費に含まれる消費税(仕入税額控除)分を差し引いて算出します。例えば課税診療収入が年間500万円(税抜)であれば本来50万円の消費税が発生しますが、その診療のための材料費や技工費等で30万円(税抜)支出し3万円の消費税を支払っていれば、差引きして47万円を納めるといったイメージです【計算例: 50万円−3万円=47万円】。実際には保険診療と共通の経費もあるため按分計算が必要ですが、ポイントは「課税部分にのみ税がかかる」ということです。
歯科医院では自由診療収入が増えて課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後から消費税負担が生じます。予期せず免税事業者の基準を超えてしまうケースもあるため、日頃から自由診療の売上額を把握し、近い将来課税事業者になる見込みがあるか注意しましょう。場合によっては、特定の年だけ自由診療が急増して3年目に突然多額の消費税納税が発生し、資金繰りに困るという事態も起こりえます。早めに税理士に相談し、必要に応じて価格設定や経費計上の計画を立てておくことをおすすめします。
次に、令和5年(2023年)10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)について、概要と歯科医院への影響、具体的な対応策を確認します。インボイス制度は消費税のルールに大きな変更をもたらす制度ですが、患者さん相手の歯科医院では対応方法が一般の事業者と少し異なります。ポイントを押さえてスムーズに適応しましょう。
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書発行事業者」が発行する正式な請求書(インボイス)が必要になる制度です。従来、課税事業者は経費の消費税を控除する際、請求書や領収書に簡易な記載事項があればよかったのですが、2023年10月以降は税務署に登録した事業者のみが発行できる所定の様式(適格請求書)でなければ、原則として仕入税額控除が受けられなくなりました。
この制度導入の背景には、消費税の公平性と透明性を高める狙いがあります。従来は免税事業者からの課税仕入れでも仕入税額控除が認められていたため、消費税分が事業者の手元に残ってしまう(いわゆる益税)ケースがありました。インボイス制度により、免税事業者との取引には消費税控除を認めない仕組みに改めることで、課税事業者間の競争を公平にし、税収の取りこぼしを防ぐ意図があります。また、日本の消費税制度を国際標準のインボイス方式に合わせる意味合いもあります。
適格請求書発行事業者になるには税務署への登録申請が必要で、登録されると「適格請求書発行事業者番号(インボイス登録番号)」が付与されます。この番号はインボイスに記載する必要があります。登録申請は2021年10月から受付が開始され、多くの事業者が制度開始までに手続きを行いました。なお、適格請求書発行事業者になれるのは原則として消費税の課税事業者に限られます(免税事業者は登録不可)。つまり、消費税を納めていない事業者はインボイスを発行できないということです。
それでは、歯科医院がインボイス制度にどう対応すべきかを考えましょう。ポイントは、自院が課税事業者か免税事業者かによって対応が異なることです。
免税事業者の場合(前々年課税売上高1,000万円以下の歯科医院)
現在消費税を納めていない免税事業者であれば、基本的にインボイス発行事業者の登録申請は必須ではありません。患者さんは消費税の最終消費者であり、個人診療分についてインボイス(適格請求書)の発行を求められることは通常ありません。仮に登録をしてインボイス発行事業者になると、たとえ売上が少額でも課税事業者として消費税の申告・納税義務が発生してしまいます。これはクリニックにとって大きな負担増となり得るため、特別な理由がない限り免税事業者のままで問題ないでしょう。
ただし例外的に、歯科医院でも取引先によってはインボイスが求められるケースがあります。例えば、法人や事業者を相手に歯科用品(歯ブラシ等)を卸したり、会社から委託を受けて従業員の歯科検診を行ったりする場合です。こうした課税事業者が相手の取引では、先方は仕入税額控除のためにインボイスを欲しがる可能性があります。そのような取引が現在ある、あるいは今後見込まれる場合には、免税事業者であってもインボイス発行事業者の登録を検討すべきでしょう。また、今は求められなくても将来的にインボイス制度が社会に浸透すれば、患者さんから「領収書にインボイス登録番号はありますか?」と問合せを受ける場面がゼロとは言い切れません。そうした時にもきちんと対応できるようにしておきたい、と考える先生は任意で登録する選択もあります。
課税事業者の場合(前々年課税売上高1,000万円超の歯科医院)
すでに消費税を納めている課税事業者である歯科医院は、インボイス発行事業者への登録を強くおすすめします。登録申請をしても消費税の納税額自体が増えるわけではなく、事務的な負担(領収書様式の変更等)が少し増えるだけです。それにも関わらず、登録しないままだと先述のように法人からの取引機会に支障が出たり、患者さんに余計な説明が必要になったりするリスクがあります。インボイス発行事業者として登録しておけば、自院の領収書類に登録番号を記載するだけで済み、対外的な信頼感も損ねません。
なお、課税事業者の歯科医院であっても、医療費は本来患者さん個人が負担するものなので、実際には「インボイス対応してください」と直接求めてくる患者さんはほぼいないでしょう。領収書の様式変更や院内システムへの登録番号入力など初期対応は必要ですが、一度対応すれば日常診療への影響は限定的です。多くの歯科医院様がインボイス登録手続きをしましたが、大半の先生は「登録しておいて特に困ることはないし安心」という感想をお持ちです。
インボイス制度開始にあたり、歯科医院では具体的にどのような対応が必要になるでしょうか。実務上のポイントを整理します。
まず、自院がインボイス発行事業者として登録した場合は、発行する領収書や請求書の形式を確認しましょう。2023年10月以降、領収書等に「適格請求書発行事業者の登録番号」「適用税率ごとの消費税額」など所定の項目を記載する必要があります。多くの歯科医院ではレセコン(レセプトコンピュータ)や会計ソフトで領収書を発行していると思いますが、インボイス制度対応のアップデートが提供されているか確認し、未対応であれば手書きで追記するかシステム導入を検討します。幸い、患者さん向けの領収書は基本的にインボイス提出を前提としないため、細かな明細の記載は求められませんが、事業者向けに発行する請求書がある場合はしっかり対応しておきましょう。
次に、仕入れ(経費)側の対応も重要です。課税事業者で原則課税(本則課税)方式を採用している歯科医院では、経費の仕入税額控除を受けるために取引先から受け取る請求書が適格請求書であることを確認する必要があります。歯科材料店や技工所など主要な取引先について、インボイス発行事業者登録の有無を把握しておきましょう。大手の歯科材料商社等はほぼ確実に登録済みですが、小規模な歯科技工所や個人業者の場合、売上規模によってはまだ免税事業者という可能性もあります。もし取引先がインボイス未登録の場合、その支払いに含まれる消費税分は原則として仕入税額控除できず、実質的にコスト増となってしまいます。
例えば、自院が技工所に技工料を支払う際、先方が免税事業者だと請求書に消費税額が記載されていません(総額表示のみ)。この場合、本来であれば含まれているはずの10%分の消費税について控除が受けられず、その分だけ納税額が増えることになります。こうした事態を避けるために、重要な取引先には可能であればインボイス発行事業者になってもらうよう働きかけることも検討しましょう。あるいは取引先を選ぶ際に、消費税対応の点も考慮することが今後は必要かもしれません。
一方、簡易課税制度を選択している課税事業者の歯科医院では、仕入税額控除は実額ではなくみなし仕入率(歯科の自由診療収入は業種上「第五種:サービス業等」で50%)で計算するため、取引先のインボイス有無によって控除額が直接変動することはありません。そのため、簡易課税方式を取っている間はインボイス制度の影響は限定的と言えます。ただし、一度簡易課税を選択すると2年間は継続適用が原則となる点に注意が必要です(基準期間売上が5,000万円以下の場合のみ選択可)。将来的に売上規模拡大で簡易課税が使えなくなる場合や、実際の経費率によっては原則課税にした方が有利になるケースもあります。その際には改めてインボイス対応の実務が重要になりますので、早めに帳簿管理体制を整えておくと安心です。
インボイス制度開始から数年間は経過措置も設けられています。2023年10月~2026年9月までの3年間は、インボイス未登録事業者からの仕入れについても本来控除できる消費税額の80%まで控除が認められます(次の3年は50%まで)。例えば、未登録の技工所に10万円支払ってその中に含まれる消費税相当額が9,091円の場合、当面はその80%である約7,273円まで控除可能です。ただし経過措置後は完全に控除不可となるため、遅かれ早かれ取引先のインボイス対応が必要になるでしょう。
最後に、医療法人の場合に特有の注意点を一つ挙げます。医療法人では、理事長個人が所有する建物をクリニックに賃貸して家賃を支払ったり、医療機器を個人から賃借してリース料を支払ったりするケースがあります。この際、家賃やリース料の支払先(理事長個人)がインボイス発行事業者でないと、その支払いに含まれる消費税について法人側で仕入税額控除が受けられなくなります。役員個人への賃貸料は免税事業者扱いとなりがちなので、法人経営の先生はこうした内部取引についてもインボイス制度の影響を確認しておきましょう。
ここからは、歯科医院の状況別に、消費税への具体的な対応戦略や注意点を解説します。開業前後の個人開業医、自由診療メインの矯正歯科クリニック、複数医院を展開する医療法人といったケースごとに、置かれた状況に応じたアドバイスを見ていきましょう。
これから歯科医院を開業しようという段階の先生にとって、消費税は開業準備の中でも見逃せないポイントです。開業当初は設備投資や準備費用で支出が多く、売上が立つまでは時間がかかるため、他のステージとは異なる戦略や心構えが必要になります。
まず、開業直後の消費税負担について知っておきましょう。前述のとおり、新規開業から最初の2年間は通常、消費税の免税事業者として扱われます。これは開業医にとって大きなメリットで、たとえ自由診療収入が発生しても、その期間は消費税を納めなくて済みます。ただし免税である一方、機材購入や内装工事などで支払った消費税の還付も受けられないという意味でもあります。開業時には高額な歯科ユニットやレントゲン機器などを購入し数百万円単位の消費税を支払うことも珍しくありません。この分を将来的に取り戻せるかどうかが、開業時の消費税戦略のポイントです。
もし開業初年度から自由診療の割合が高く、早期に売上規模が大きくなりそうな場合は、あえて課税事業者を選択することも検討に値します。課税事業者としてスタートすれば、開業時の多額の仕入れ・設備投資に含まれる消費税分の還付を受けられる可能性があるため、初年度の資金繰りが大きく改善するケースもあります。ただし注意点として、課税事業者を選択すると原則2年間は継続して課税事業者となる必要があり(途中で免税事業者に戻ることはできない)、また保険診療が中心の場合はそもそも課税売上が少ないため思ったほど還付を受けられない場合もあります。この判断には専門的な試算が欠かせませんので、税理士にシミュレーションを依頼して慎重に検討しましょう。
一方、開業からしばらくは売上規模も小さく免税事業者のまま推移する見込みであれば、無理に課税事業者にはならず消費税分が「益税」となるメリットを享受して構いません。その場合も、数年後に自由診療収入が増えて基準超えしそうかどうかは頭に入れておいてください。もし3年目以降に消費税の納税が発生するとなれば、価格設定や資金計画にも工夫が必要です。例えば、自由診療の治療費は開業当初から「税込価格」として設定しておき、免税期間中に得られた消費税相当分は設備投資の返済や繰り上げ投資に充てるなど計画的に活用すると良いでしょう。そして課税事業者に移行した後も患者さんへの請求額を据え置けるよう、早めに院内の収支バランスを整えておくことが大切です。免税期間中に税込価格で蓄えた利益が、後々の消費税納税の原資となって経営を支えてくれるでしょう。
また、税務の基礎として青色申告の届け出も忘れずに行いましょう。青色申告を選択すれば65万円の特別控除や欠損金の繰越控除など所得税面でのメリットが受けられるだけでなく、日々の帳簿付けが習慣化するため消費税の課税・非課税収入の区分管理もしやすくなります。開業時には税務署への各種届出が必要ですが、青色申告承認申請は特に重要です。私たち加美税理士事務所でも、開業支援サービスの一環で青色申告のサポートをしております。 税務手続きに不安がある方は専門家の力を借りて確実に進めましょう。
青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。
そして、開業準備中の先生には消費税以外にも考えるべきことが多々あります。資金調達、物件契約、人材採用、集患対策など、クリニック運営の土台作りは盛りだくさんです。税務に関しても、法人化の検討タイミングや経理体制の構築、各種控除の活用など戦略が必要ですので、早め早めの情報収集と専門家への相談が成功の鍵となります。当事務所では歯科医院の開業準備に関するトータルサポートも行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
詳しくは、下記の開業準備中の歯科医師向けのページをご覧ください。
都市部で矯正歯科やインプラント・審美治療専門のクリニックを経営されている先生の場合、患者さん負担の自由診療が売上の大半を占めるため、消費税との付き合い方も一般的な歯科医院とは異なります。自由診療中心クリニックでは、早期から課税事業者となるケースが多く、消費税は避けて通れない大きなコスト要因です。そのため、戦略的に取り組むことで経営へのインパクトを最小限に抑える努力が求められます。
まず、料金設定と消費税転嫁について考えます。自費治療の費用は高額になりがちですが、その中に含まれる消費税分もしっかり考慮した価格設定が必要です。消費税は税率改定などで将来変動する可能性もあるため、原則として患者さんには税込価格で提示し、院内では税抜売上と消費税を分けて管理すると良いでしょう。例えば矯正治療費を\1,100,000(税込)と設定すれば、そのうち\100,000が消費税相当額です。この\100,000は預り金として後に納税するものであり、実質的なクリニックの利益ではないことをスタッフ全員が認識しておく必要があります。毎月の売上から消費税相当額をプールし、納税資金を確保する仕組みを整えておけば、半年や1年ごとの納税時に「資金が足りない!」という事態を防げます。
次に、消費税の計算方法の選択も重要です。矯正・審美専門クリニックは、売上高に比して材料費や外注費(技工料など)の割合が低めで高収益なことが多いため、場合によっては簡易課税制度を選択した方が有利になることがあります。簡易課税なら業種別のみなし仕入率(サービス業等50%)で仕入控除額を計算できますが、実際の経費率がそれより低ければ納税額が圧縮できるからです。たとえば年間1億円の課税売上に対し、実際の課税仕入れが2,000万円(消費税200万円相当)だったケースを考えます。原則課税なら1億円の10%で1,000万円の税額から200万円を引いて800万円納税となりますが、簡易課税(みなし仕入率50%)なら1,000万円の50%=500万円を差し引き、500万円の納税で済みます。このように、経費率によっては簡易課税が大きな節税となり得ます。ただし簡易課税は前々期の課税売上5,000万円以下で事前に届出した場合にのみ適用できますので、成長途上のタイミングで活用できるチャンスがあるか検討しましょう。逆に、経費が多く利益率が低い場合は原則課税の方が有利です。当事務所では、こうした消費税計算方法の有利不利シミュレーションも行い、最適な方法選択による節税対策をサポートしています。
節税対策について詳しくは下記のページをご覧ください。
また、自由診療中心のクリニックは高収入ゆえに所得税・法人税面でも税負担が大きくなります。消費税だけでなく、利益に対する税金についても計画的な対策が必要です。経費計上のタイミングを工夫したり、法人化によって院長個人の所得分散を図ったりといった総合的な節税戦略を検討しましょう(法人化については次節で触れます)。特に、消費税は納税のタイミングが売上発生のだいぶ後になるため、納税資金を運転資金として一時的に活用できる反面、使い込んでしまうリスクもあります。高額自費治療が多いクリニックほど、納税資金管理はシビアに行うよう心がけてください。
最後に、矯正や審美に特化したクリニックほど経理税務のアウトソーシング利用率が高い傾向があります。院長先生ご自身が診療に専念できるよう、信頼できる歯科専門の税理士と顧問契約を結び、月次で試算表や納税見込みを共有してもらうことをおすすめします。専門家と二人三脚で経営数値を把握すれば、消費税の納税も怖くありませんし、必要に応じて節税策や資金繰り策のアドバイスも受けられます。
複数の歯科医院を経営する規模になると、多くの場合は医療法人(歯科医院の法人化)を設立して事業を行っていることでしょう。法人化によって組織的な経営が可能になる反面、会計や税務は一段と複雑になり、消費税対応についてもより高度な管理が求められます。ここでは、医療法人が消費税に取り組む上でのポイントを解説します。
まず、医療法人経営に移行する際に大きく変わるのは、消費税の免税メリットが得にくくなることです。個人開業であれば前述のとおり2年間は免税事業者になれますが、法人設立初年度でも資本金1,000万円以上であれば初年度から課税事業者となりますし、たとえ資本金が小さくても分院展開で売上が急拡大すれば早期に課税事業者となります。複数医院の運営ともなれば課税売上1,000万円を超えるのは時間の問題でしょうから、免税事業者で居続けることは現実的ではありません。医療法人を設立する時点で消費税支払いを織り込んだ収支計画を立てる必要があります。
次に、複数医院では保険診療と自由診療の割合が医院ごとに異なるケースが多く、それに応じた消費税の管理と策の使い分けがポイントとなります。例えば、都心の本院では自由診療が多く郊外の分院では一般歯科中心という場合、全体では相当額の消費税納税が発生しますが、一部の医院単体で見ると課税売上がごく少額ということもありえます。このような場合でも、法人全体では1つの納税義務者として一括計算せねばなりません。保険診療主体の分院で発生した経費(非課税売上対応部分)については仕入税額控除ができず課税売上対応部分のみ控除可能、といった按分計算も必要になります。医療法人では、院ごと・部門ごとに経費を区分する管理会計の導入が有効です。私たち税理士も、月次決算の段階で各医院の収支と消費税額を試算し、年度末に「こんなに納税が!」と驚くことのないようサポートします。当事務所では歯科医療法人の月次決算サポートにも力を入れており、複数医院の数字を一元管理する体制づくりをお手伝いしています。
また、医療法人ならではの消費税対策として、経費計上の最適化が挙げられます。大規模になれば、診療材料や技工物も一括大量発注で仕入れ値を抑えることが可能ですが、消費税の面でも適切に仕入先と交渉しインボイス対応を万全にすることが求められます。例えば先述の理事長への賃貸料など、グループ内の取引で控除漏れがないか、定期的に点検しましょう。また、分院展開をさらに進める際には、新規クリニックを別法人として設立するか既存法人で行うかによって消費税負担のタイミングが変わることも考慮します(別法人なら新たに2年間免税メリットを享受できる場合もありますが、医療法人の設立には要件や制限がありますので要検討)。
消費税を含む税務全般のガバナンスも大事です。規模が大きい法人ほど税務調査の対象となる可能性が高まります。万一、消費税の申告誤りやインボイスの保存漏れがあると追徴課税のリスクもあります。常日頃から税理士と連携して適切な納税と書類整備を行い、調査が来ても慌てないようにしておきましょう。もし税務調査になっても、私たち加美税理士事務所が全面的に立ち会い(オンライン立会を含む)対応いたしますので安心です。
税務調査への対応については、下記のページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
なお、個人医院からの法人化をご検討中の先生は、下記のページもぜひご参照ください。
法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。
最後に、私たち加美税理士事務所が提供する歯科医院向けサポート体制についてご紹介します。消費税対応をはじめ、歯科医院経営に関わる税務・会計を専門家に任せることで、先生方は本業の診療に集中できます。当事務所では「全国対応」「歯科特化」「柔軟かつ明確な料金」という3つの柱で、先生方を力強くサポートいたします。
加美税理士事務所は、所在地にかかわらず全国の歯科医院・クリニックをフルリモートでサポートしています。メール、電話、Zoom等のオンライン会議システムを駆使し、遠隔地のクライアント様とも円滑にコミュニケーションを取ります。領収書や請求書のやり取りもスキャンデータやクラウド会計ソフトを活用することで、物理的な距離を感じさせません。北海道から沖縄まで、実際に多数の歯科医院様をリモートでご支援可能なノウハウがあります。遠方だからとサポートを諦める必要は全くありません。むしろ移動時間がゼロで済む分、面談の日程調整も柔軟に対応でき、院長先生の貴重なお時間を無駄にしません。
また、オンラインであってもコミュニケーションの質を大切にしています。ただ数字を処理するだけでなく、対話を通じて先生のお悩みやご要望をきめ細かく把握し、それに応じた提案を差し上げます。「顔が見えないから不安」というご意見を払拭できるよう、初回のお打ち合わせから丁寧かつ親身に接することをお約束します。
当事務所は歯科医院専門の税務サポートに特化しており、歯科・医療業界の会計税務に精通した税理士・スタッフが揃っています。これまで多数の歯科医院や矯正歯科クリニックの顧問となるべく研鑽を重ねた結果として、歯科特有の収益構造や経費科目、消費税の課税・非課税区分について深い知識を有しています。一般的な税理士では理解に時間がかかる保険診療と自費診療の按分計算や、歯科技工所との取引に関する消費税対応についても、当事務所ならスムーズに対応可能です。
例えば、自由診療割合の高いクリニックでの消費税簡易課税選択の有利判定、医療法人の分院ごとの損益管理と適切な内部取引の設計、開業医の先生に対する融資交渉用の事業計画作成支援など、歯科業界に特化した税務サポートを幅広く提供しています。矯正歯科の先生からは「業界特有の話が通じるので相談しやすい」、一般歯科の先生からは「経営分析の視点でアドバイスがもらえて心強い」というお声をいただけることもあります。歯科医院専門の税理士として、専門性と親しみやすさのバランスを大切にし、先生方の良きパートナーとなれるよう努めています。
もちろん、消費税対策だけでなく決算対策や資金繰り、節税スキームの提案などトータルでサポートいたします。「こんなこと聞いてもいいのかな?」という些細な疑問でも遠慮なく投げかけてください。歯科医院経営に関することであれば、税務以外のことでも培ったネットワークを通じてベストな解決策をご提案します。
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まず対応面では、先生方のニーズに合わせてサービス内容をカスタマイズ可能です。毎月の記帳代行から四半期ごとのチェックだけを希望される場合、消費税申告のみスポットで依頼されたい場合など、一件一件の事情に応じて契約内容を調整いたします。急なご相談や税務調査への立ち会い依頼などにも迅速に対応し、「困ったときにすぐ頼れる」存在として機能します。私たちは常にクライアントファーストの姿勢で、歯科医院の経営に寄り添ってまいります。
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