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法人化を検討するクリニック院長先生へ:医療法人化のメリットとタイミング

開業して間もないクリニックの院長先生や、長年個人事業としてクリニックを運営してこられた先生の中には、「法人化(医療法人化)」を検討している方もいらっしゃるでしょう。本記事では、クリニックにおける法人化の基本から、医療法人化のメリット法人化に適したタイミングについて、税理士の視点も交えながら分かりやすく解説します。医療法人化には節税や事業承継、社会保険の整備など多くの利点がありますが、同時にベストなタイミングの見極めや注意点も存在します。ぜひ最後までお読みいただき、先生のクリニック経営にとって法人化すべきか判断する際の参考にしてください。

税理士法人加美税理士事務所(当事務所)は、クリニック専門の税理士として開業支援から経営改善支援まで幅広くサポートしております。専門用語もできるだけかみ砕き、院長先生に寄り添ったご説明を心がけます。それではまず、クリニックにおける法人化の基本から見ていきましょう。

クリニックの法人化とは、院長先生個人の事業として運営しているクリニックを、法律上医療法人という別法人格に移行することを指します。個人で開設している場合、クリニックの経営主体は院長先生個人ですが、法人化後は「医療法人◯◯」といった法人が経営主体となり、院長先生はその法人の代表者(理事長)としてクリニックを運営する形になります。

日本では病院・診療所を開設する法人は通常「医療法人」として医療法に基づき設立する必要があり、株式会社など一般の会社形態でクリニックを運営することはできません。医療法人を設立するには各都道府県知事の認可が必要であり、定款(法人の基本約款)の作成や登記も行うため、個人で開業する場合とは準備や手続きが大きく異なります。

クリニックを法人化することで、いくつかの制度上の違いが生じます。例えば:

  • 開設の許可: 個人のクリニックは開業時に行政への届出のみで済みますが、医療法人を設立するには所轄庁の厳格な審査と認可が必要です。そのため、法人化には数か月に及ぶ準備期間を要します。
  • 運営施設の数: 個人の開業医は原則として1つの診療所しか開設できません。しかし医療法人になれば、必要な認可を得ることで分院の開設(複数クリニックの運営)が可能になります。将来的に事業拡大を検討する場合、法人化しておくことが前提となります。
  • 社会保険の適用: 個人事業のクリニックでは常勤スタッフが5名以下であれば厚生年金・健康保険(社会保険)への加入義務は生じません。しかし法人になると従業員数に関係なく社会保険加入が必須となります(詳細は後述の「社会保険料に関する留意点」で解説)。
  • 信用度・法的義務: 医療法人は毎年事業報告書を提出し行政からの指導・監査も受けるため、社会的信用度が高いとされます。一方で経理・運営に関する事務作業が増加し、行政対応や帳簿管理など遵守すべき義務も増えます(この点は法人化のデメリットともいえます)。

なお、個人事業としてクリニックを運営する場合、青色申告の適用を受けて各種の税務上の優遇を活用しているケースが一般的です。青色申告による経理・申告方法については、当事務所の別ページでも詳しく解説しています。

青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。

医療法人化を検討する際、やはり気になるのは「どんなメリットがあるのか」という点でしょう。クリニックを法人化することによって得られる主なメリットを、経営・税務の視点からまとめます。

  • 税負担の軽減(節税効果): 医療法人化の最大のメリットの一つが所得に対する税率を下げられる可能性があることです。個人開業医の場合、利益に応じて超過累進税率の所得税・住民税が課され、所得が増えるほど税率も最高で約55%(所得税45%+住民税10%)まで上がります。一方、医療法人の利益にかかる法人税等は一定の低税率で頭打ちとなります(例:年800万円までは15%、800万円超部分も23.2%程度)。概ね年間の事業所得が1,800万円を超えるようなケースでは、法人化によって所得税率を大きく抑えられ、トータルの税負担が軽減されます。また、法人から院長先生個人に支払う役員報酬(給与)には給与所得控除という大きな所得控除が適用されます。給与所得控除は言わば「みなし経費」であり、高額所得者ほど控除額も増える仕組みです。個人事業にはないこの制度を活用できる点でも、法人化は有力なクリニック節税対策となります。
  • 事業承継・相続対策: 医療法人化はクリニックの事業承継を円滑にする手段でもあります。個人でクリニックを営んでいる場合、親族に事業を引き継ぐ際にはクリニックの財産や収益に対して相続税・贈与税が生じる可能性があります。しかしクリニックが医療法人になっていれば、法人の代表者を交代するだけで事業を承継できます。法人そのものは不変であり、患者さんとの診療契約や医療機器・備品も法人に帰属するため、代替わりによる事業継続がスムーズです。また、出資持分のない医療法人形態を選択すれば、出資の払戻請求権(財産権)を持たないため、相続財産を大幅に減らすことも可能です。医療法人化は、親子承継などをご検討中のドクターにとって、事業承継対策として非常に有効と言えるでしょう。
  • 社会的信用の向上と資金調達力: 医療法人は所轄庁の認可を受けて設立されるため、社会的な信用度が高まる傾向があります。実際に金融機関から見ると、個人より法人の方が組織的・継続的な経営基盤があると評価され、融資を受けやすくなるメリットがあります。また、法人になると病院や施設との取引においても信用力が増すため、医薬品の仕入条件が良くなる、優秀な人材を採用しやすくなる、といったプラス効果も期待できます。
  • 複数施設の運営・事業拡大: 前述の通り、個人の開業医は1箇所しか診療所を開設できません。しかし医療法人化しておけば、将来的に分院の開設や介護施設の併設など事業拡大が可能になります。例えば現在は内科クリニック1軒のみでも、法人化後に二院目のクリニックや関連施設を開設するといった地域医療ネットワークの構築がしやすくなります。将来の事業ビジョンを考えたとき、法人化によって選択肢が広がる点は大きな利点です。
  • 資産保全とリスク分散: 法人と個人は法律上別人格です。クリニックを法人に移行することで、事業用資産と先生個人の資産を明確に分離できます。万一クリニックが多額の負債を抱えた場合でも、その債務は法人が負う形となり、先生個人の資産を守りやすくなります(もっとも金融機関から借入をする際には代表個人の連帯保証を求められることが一般的ですが、それでも法人成りによる責任区分の明確化はメリットです)。また、開業時に先生個人が負っていた借入金(医療機器購入資金など)についても、法人化を機に医療法人へ引き継いで法人債務とし、個人の保証債務を減らすことが可能な場合があります。こうした資産保全の観点からも、クリニックの法人化には意義があります。
  • 経費計上の幅拡大: 医療法人になると、個人事業では経費にしづらかった様々な費用を法人経費として計上しやすくなります。例えば生命保険料役員退職金、社宅制度による住宅費負担など、法人であれば損金(経費)扱いできる項目が増えます(詳細は後述の「法人ならではの節税対策」で解説します)。経費計上の幅が広がるということは、その分課税所得を圧縮できる余地が増えることを意味します。結果として節税の選択肢が増え、資金繰りや将来の備えに柔軟性が生まれます。
  • 欠損金の繰越控除期間の延長: 個人事業の青色申告では赤字(損失)の繰越控除は最長3年間ですが、医療法人の欠損金は最大10年間繰り越すことができます。開業当初の設備投資等で一時的に赤字が出ても、法人であればその損失を長期間にわたり翌期以降の黒字と相殺できるため、長期的な視点で見た税負担を平準化しやすくなります。

以上のように、法人化には多角的なメリットがあります。特に親子承継などでクリニックの代替わりを予定している場合、医療法人化によって事業承継時の相続税負担を抑える効果は見逃せません。親族へのスムーズな事業承継について詳しく知りたい方は、下記リンクの「親子承継・代替わりドクター向けのページ」もぜひご参照ください。

メリットの多い医療法人化ですが、闇雲に行えば良いわけではありません。法人化のタイミングを誤ると、かえってデメリットが上回ってしまう可能性もあります。では、院長先生のクリニックではいつ法人化すべきか、判断の目安となるポイントを見てみましょう。

  • 収益規模が大きくなってきたとき: クリニックの利益水準が高まり、毎年納める所得税額が大きくなってきたら法人化を検討すべきタイミングです。一般的に、事業所得が年間1,500万~2,000万円(目安として約1,800万円)を超えると、法人化による節税メリットが所得税の累進負担を上回り始めると言われます。また、社会保険診療報酬の年間収入が5,000万円超、または総売上が7,000万円超になると、個人事業で使える簡易経費計上制度(概算経費)が使えなくなります。そうしたクリニックの規模拡大に伴い税負担率が上がる局面は、法人成りの好機といえるでしょう。
  • 開業から数年が経過し経営が安定してきたとき: 開業してすぐに法人化するのはハードルが高いため、まずは個人事業でクリニック経営の基盤を固めるのが通常です。開業後5~7年ほど経ち、患者数や収益が安定して将来の見通しが立ってきた段階で、法人化を検討し始める先生が多くいらっしゃいます。医療機器の減価償却が一巡し、当初の開業投資の償却負担が軽くなる頃合いも、一つの目安と言えるでしょう。十分な準備金が蓄えられ、役員報酬など法人運営の計画が立てられる状態になった時期が狙い目です。
  • 従業員が増えスタッフ体制が拡大したとき: クリニックのスタッフ数が増えてきた場合も法人化のタイミングとして考えられます。社会保険の加入義務は個人事業では常勤5人超から発生しますが、人員拡大とともにいずれそのラインを超えるなら、早めに法人化して社会保険を整備する選択肢もあります。法人化して福利厚生を充実させておくことで、従業員の定着率向上や優秀な人材採用にもつながります。「人」が増えてきたら、組織としての体制作りを見据えて法人化を検討しましょう。
  • 事業承継や引退を視野に入れたとき: 院長先生が一定の年齢となり、将来的にクリニックを誰かに引き継ぐ可能性が出てきたら、事業承継対策として法人化を検討すべきです。特にお子様が医師でクリニックを継ぐ予定がある場合や、将来第三者への譲渡・M&Aを検討する場合には、個人事業より法人格である方がスムーズに承継ができます。事業承継には計画と準備が欠かせませんので、少なくとも継ぐ予定の数年前には法人化を済ませておくことが望ましいでしょう。また、開業医の先生がご勇退(リタイア)を考える際も、法人化して退職金制度を整えておくことで有終の美を飾ることができます。
  • 分院展開や新規事業を計画するとき: 現在のクリニックとは別に、新たな診療所を開設したり介護・予防医療など関連分野に進出したりといった事業拡大の構想がある場合は、早めに法人化しておくべきです。医療法人でなければ複数施設の運営はできないため、分院開設の計画が具体化した段階で法人化に着手する必要があります。事業拡大のタイミングに合わせて法人化を行うことで、資金調達や人材採用もスムーズに進められるでしょう。

このように、法人化のタイミングはクリニックの収益状況、スタッフ規模、将来計画などによって判断することになります。一般的に、開業直後から法人化するケースは少なく、上記のような条件が整った段階で法人成りを選択する院長先生が多いです。また、一度法人化すると基本的には個人事業に戻すことはできない(医療法人を解散するのは容易ではない)ため、将来の計画を踏まえて慎重に判断することが重要です。不安な場合は税理士や専門コンサルタントに相談し、メリット・デメリットをシミュレーションした上で適切な時期を見極めると良いでしょう。

医療法人化によって可能になる節税策について具体的に見てみましょう。法人でなければ実行が難しい方法がいくつかあります。クリニックを法人化した場合に活用できる代表的な節税対策を以下に挙げます。

  • 役員退職金の支給: 法人化すると、将来院長先生が引退する際に役員退職金を支給することができます。退職金は給与と比べて所得税の税負担が軽く、勤続年数に応じた退職所得控除が大きいため、高額の退職金を受け取っても税率は優遇されています。例えば勤続20年以上であれば退職所得控除額は800万円+70万円×(勤続年数-20年)といった計算になり、非常に手厚い控除が受けられます。医療法人から院長先生個人に支払われた退職金は、法人の経費(損金)となるためクリニック側の節税にもなります。個人事業では自分自身に退職金を支給する制度自体がありませんので、退職金による節税効果は法人化ならではの大きなメリットです。
  • 社宅の活用: 医療法人が住宅を借り上げ、院長先生に貸与する形で住まいを提供する社宅制度も有効な節税策です。法人が住宅の家賃や管理費を負担し、先生個人は給与課税としてごく一部の賃借料相当額(通常は物件価額等に応じた低廉な計算額)のみを負担することで、住宅費用の大半をクリニックの経費とすることが可能です。個人事業主の場合、ご自宅の家賃や住宅ローンは基本的に経費にできませんが、法人の社宅制度を使えば実質的に住居費を法人負担に振り替えられます。結果として院長先生の手取り収入を増やす効果が期待できます。
  • 生命保険を利用した資金備蓄: 医療法人では、法人名義で生命保険に加入し、保険料を損金算入しながら将来の資金準備を行うことができます。例えば逓増定期保険などの商品を活用すれば、保険料の一部を経費計上しつつ、解約返戻金を将来の役員退職金支払い原資として積み立てることが可能です。法人契約の生命保険は掛金の全額または一部を経費にできる種類があり(契約内容によります)、適切に活用することで税負担を平準化しながらクリニックの内部留保を高める効果があります。個人事業では生命保険料は経費になりませんので、法人化することで使える節税手法の幅が広がる一例と言えます。
  • 所得分散と家族給与の有効活用: クリニックを法人化すると、家族を役員や従業員として正式に雇用し給与を支給することが容易になります。個人事業でも青色事業専従者給与の制度によりご家族に給与を支払うことは可能ですが、事前届出や金額の制約があります。法人の場合、役職に応じた適正な報酬を自由に設定でき、配偶者やお子様を役員・職員として迎えて働いてもらうことで、所得を家族に分散させて一家全体の税負担を軽減できます。また、役員報酬や給与を得たご家族は社会保険に加入でき将来の年金受給額が増えるなど、家族にとってもメリットがあります。クリニックの節税対策として所得分散を図りつつ、家族経営の一体感を高めることができるでしょう。

以上が法人化することで実行可能となる主な節税策です。これらのほかにも、社用車の活用や医療機器のリース導入による経費計上、経営者保険の活用など、状況に応じた様々な税負担軽減の方法があります。当事務所では院長先生の状況に合わせた最適な節税対策をご提案しておりますので、詳しくは下記のリンク先のページもご覧ください。

法人化に際して留意すべきポイントとして、社会保険料負担の変化があります。前述のように、個人事業のクリニックではスタッフが少数の場合に社会保険加入が任意であったため、院長先生ご自身やスタッフが国民健康保険・国民年金に加入していたケースも多いでしょう。法人化すると強制的に厚生年金・協会けんぽ等の健康保険へ加入することになり、クリニックは事業主として社会保険料の半額を負担しなければなりません。

つまり、法人化後はクリニックが毎月支払う社会保険料が新たに発生することになります。院長先生個人に着目すれば、今まで国民年金のみで月額約1.6万円前後の負担だったものが、法人の役員給与に応じた厚生年金保険料(月額報酬の18.3%程度を法人と個人で折半)の負担に変わるため、給与額によっては年間で数百万円単位の社会保険料を納めるケースもあり得ます。またスタッフについても、法人になれば全員を厚生年金・健康保険に加入させる必要があり、法人と従業員双方から保険料を徴収することになります。

このように社会保険料の負担増は法人化のデメリットとも言えますが、一方で得られるメリットもあります。院長先生やスタッフが厚生年金に加入することで、将来受け取れる年金額や保障内容が手厚くなる点は見逃せません。特に院長先生ご自身は、国民年金に比べて格段に高い給付水準の厚生年金に加入することで、老後の年金額や万一の障害年金等が大きく増えます。また、スタッフにとっても社会保険完備の職場になることで福利厚生が充実し、働きやすさや安心感が向上します。これは職員の定着率アップや求人募集時の魅力向上につながり、結果的にクリニック経営の安定にも寄与するでしょう。

それでも社会保険料負担の増加は無視できないコストですので、法人化の判断にあたってはこの点も含めたシミュレーションが欠かせません。法人化後に「思った以上に手元資金が減ってしまった」ということがないよう、事前に年間の社会保険料負担額を算出し、給与設定やスタッフ雇用計画に反映させる必要があります。当事務所では、法人化による税金面のメリットだけでなく社会保険料等も踏まえた総合的なシミュレーションを行い、ベストな提案を差し上げています。

医療法人への移行を決断したら、次は具体的な法人化の手続きに移ります。クリニックの法人化には複数のステップがあり、計画から完了までおおよそ半年程度の期間を見ておくと良いでしょう。ここでは、個人事業のクリニックを医療法人に移行する際の一般的な流れとスケジュールについて解説します。

  1. 事前準備と計画立案: まずは現在のクリニックの状況を整理し、法人化のための準備計画を立てます。医療法人設立には満たすべき要件(理事3名以上・監事1名、必要資金の確保など)がありますので、家族や関係者の中から役員候補を選定し、資本金や出資の方法を決めます。また、各都道府県で医療法人設立のスケジュール(認可申請の受付時期や事前相談)が定められている場合があるため、早めに所轄の担当部署へ確認を行いましょう。必要に応じて行政の設立事前相談会説明会に参加し、提出書類やスケジュールの概要を掴んでおきます。この段階で税理士や司法書士といった専門家に相談すれば、資金計画や節税見込みのシミュレーション、手続き全体の段取りについてアドバイスを受けられます。
  2. 定款の作成と設立認可申請: 次に医療法人の定款を作成します。定款には法人の名称・所在地、目的(診療科目等)、役員構成、出資金に関する事項などを盛り込み、公証人の認証を受けます(医療法人の場合は厳密には寄附行為と呼ぶケースもあります)。役員となる理事・監事予定者の間で設立趣旨を確認し、必要に応じて設立総会の議事録を作成します。そして、各都道府県知事宛てに医療法人設立認可申請書を提出します。申請書には非常に多くの添付書類が必要です。例えば事業計画書予算書、直近の確定申告書控え、クリニックの診療所開設許可証の写し、土地建物の権利関係書類、役員の経歴書や誓約書など、多岐にわたります。自治体によっては提出書類が50種類以上にも及ぶことがあり、不備なく用意するには相当の労力がかかります。こうした負担を軽減するため、多くの自治体では仮申請(事前チェック)と本申請の二段階の審査プロセスを採用しています。仮申請で書類の形式や内容を確認してもらい、指摘事項を修正したうえで正式な本申請に移る流れです。申請から認可が下りるまでの期間は自治体のスケジュールによりますが、概ね3~6ヶ月程度は見込んでおきましょう。
  3. 医療法人の設立登記: 都道府県から医療法人設立の認可がおりたら、指定された期間内に法務局で法人設立登記を行います。これをもって医療法人が正式に発足します。登記の際には登録免許税(資本金の額に応じて変動、最低でも15万円)や定款認証費用などが発生します。一般的には行政書士・司法書士に依頼して登記手続きまで代行するケースが多く、設立にかかる費用総額は約100~120万円程度になることが多いです(内訳:認可申請手数料・報酬、定款認証料、登録免許税など)。
  4. クリニック運営の移行手続き: 医療法人が成立したら、クリニックの運営主体を個人から法人へ移行します。具体的には、現在個人で開設している診療所について開設者の変更手続きを行います。都道府県や保健所に対し、従前の個人による診療所を廃止し、新たに法人を開設者とする診療所の開設許可申請を提出します(実質的には同じクリニックが継続する場合でも、開設者名義が変わるため手続きが必要です)。病床を有する診療所であれば有床診療所の許可に関する手続きも並行して行います。また、厚生局に対して保険医療機関指定申請を行い、医療法人名義で健康保険診療の指定を受ける必要があります。これらの許可・指定が完了すれば、以後は医療法人として保険診療報酬の受領が可能になります。併せて、診療報酬の振込口座を新法人の銀行口座に変更したり、医薬品の仕入契約や医療廃棄物処理契約などの各種契約類も法人名義で再締結します。クリニックの建物や医療機器が院長先生個人所有である場合は、医療法人へ賃貸する契約現物出資する手続きなどで法人に利用権を移す必要があります。スタッフの雇用契約も一旦個人事業主との契約を終了し、医療法人との契約に切り替えます(継続雇用の場合、労働条件通知書の交付や社会保険・雇用保険の事業所変更手続きを行います)。このように法人化に伴って契約や届出の名義変更作業が多岐にわたりますが、漏れなく行うことで患者さんや取引先との取引を滞りなく引き継ぐことができます。
  5. 各種届出と旧事業の清算: 法人化に伴い、新設した医療法人について税務署や自治体への各種届出を行います。具体的には法人設立届出書青色申告承認申請書(法人税)給与支払事務所等の開設届出書、都道府県民税・事業税の設立届等を期限内に提出します。社会保険の新規適用手続き(年金事務所への新規適用届)も必要です。一方、院長先生の個人事業については廃業届を税務署に提出し、個人の青色申告は事業廃止までの期間で決算・確定申告を行います。期中で法人化した場合、個人と法人でそれぞれ申告が必要となるため注意が必要です。また、個人から法人への資産譲渡や現物出資を行った場合、その時価評価や譲渡対価の設定によっては譲渡益課税や消費税の課税関係が生じることがあります。専門家と相談の上、税負担が過大にならない方法で個人資産の引継ぎを行いましょう(必要に応じて税務上の届出書提出や契約書の整備を行います)。

以上が法人化完了までの主な手順です。全体を通して、行政への申請業務が多岐にわたるため、かなりの時間と労力を要する点は否めません。したがって、法人化を決めたら早めに準備を開始し、余裕をもってスケジュールを組むことが大切です。特にクリニックの運営を続けながらの手続きとなるため、繁忙期を避ける、年度末に合わせるなど計画的なタイミング設定もポイントになります。

なお、法人化にあたっては消費税の取り扱いにも注意が必要です。通常、資本金1,000万円未満の新設法人は設立後2期分の消費税が免税となります。ただし開業医療機関の場合、保険診療収入は消費税非課税であるため法人化による直接的な影響は小さいケースが多いです。一方で、自費診療や物販収入が多いクリニックでは、法人成りの時期によって消費税の課税事業者判定が変わる場合があります。例えば個人事業で直前期に売上が基準を超えていると、新設法人でも特定期間の要件により初年度から課税事業者となるケースもあり得ます。このように、消費税の扱いは状況によって複雑になるため、法人化の計画段階で専門家へ税務相談し、有利不利を試算しておくことをお勧めします。

消費税について詳しくは下記のページをご覧ください。

医療法人化の検討から実際の設立手続き、そして法人化後の経営まで、一連のプロセスには専門知識と戦略的な対応が求められます。そこで頼りになるのが、クリニック業界に精通した税理士など専門家の存在です。当事務所(税理士法人加美税理士事務所)では、これまでクリニック専門税務に携わってきた経験を活かし、院長先生の法人化をトータルでサポートいたします。当事務所の主な強みは次のとおりです。

  • 医療業界に精通した専門チーム: 当事務所には医療法人やクリニック支援の経験が豊富な税理士が在籍しております。内科クリニックから外科・歯科医院に至るまで、様々な医療分野のノウハウがあり、業界特有の経営指標や会計処理にも精通しています。専門用語や制度についても、院長先生にご理解いただけるまで丁寧にご説明しますので、ご安心ください。
  • 全国対応とオンライン支援: 当事務所は全国どこからでもご相談いただけます。遠方の先生でもWEB会議システム等を活用し、対面と遜色ないサポートを実現します。日常のやり取りには電子メールやチャットツールを用い、必要に応じてクラウド会計ソフトで財務データを共有しながらリアルタイムで経営状況を確認いただけます。場所にとらわれず迅速できめ細やかな対応が可能です。
  • 初回無料相談と節税シミュレーション: 「クリニックを法人化すべきか迷っている」「法人化すると税金や手続きがどう変わるか知りたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料にて承っており、現在の収支状況から法人化した場合のメリット・デメリットを分かりやすく試算いたします。法人化だけでなく、クリニックの節税対策や経営改善支援に関するご相談も歓迎です。
  • ワンストップの手続き代行: 法人化を決めた後の各種申請・届出についても、当事務所がフルサポートいたします。提携する司法書士や社会保険労務士とも連携し、医療法人設立認可申請から登記、そして社会保険の手続きまでワンストップで対応可能です。先生には本業の診療に集中していただきながら、煩雑な事務手続きは専門家にお任せいただけます。必要書類の準備から行政対応まで伴走し、スムーズな法人化を実現します。
  • 法人化後の継続サポート: 医療法人化はゴールではなく新たなスタートです。法人化後も引き続き、記帳代行や決算申告といった税務顧問業務はもちろん、節税対策のご提案、資金繰り計画の策定など経営コンサルティング面でも支援いたします。また、将来的な事業承継や相続対策についても税務のプロの立場からアドバイスを行い、クリニックの永続的な繁栄をサポートします。仮に税務署から税務調査(※)が入った際にも、当事務所の担当税理士が窓口となって適切に対応し、先生が診療に専念できるようバックアップいたします。

※税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。

医療法人化はクリニック経営における大きな転機ですが、適切な準備と専門家のサポートによって、先生の理想とする医療サービスの提供体制を築く絶好の機会にもなります。当事務所は院長先生の良きパートナーとして、法人化の成功まで二人三脚でお手伝いさせていただきます。クリニックの経営について税理士に相談してみようかなと思われたら、ぜひ税理士法人加美税理士事務所にご連絡ください。初回相談は無料ですので、些細な疑問でもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。院長先生のクリニックの更なる発展を、私たちが全力でサポートいたします。

よくあるご質問

FAQ

医療法人化するとどのような節税効果があるのですか?

医療法人化により、法人税率の適用、役員報酬の設定、退職金や社宅制度の活用など、個人開業では難しい節税スキームが可能になります。特に所得が高くなるほど法人化による税率軽減効果が大きくなるため、節税を重視する先生におすすめです。

法人化のタイミングとして最適なのはいつでしょうか?

収益が年間1800万円を超える頃や、分院開設・事業承継を視野に入れたタイミングが適しています。また、開業後の安定期やスタッフが増えて社会保険加入を検討するタイミングも、法人化を考える良い時期です。

医療法人の設立にはどれくらいの期間がかかりますか?

一般的に、医療法人設立には3〜6ヶ月程度かかります。都道府県ごとのスケジュールや審査手続きによって前後しますので、余裕をもって準備を進めることが重要です。当事務所ではスケジュール作成から認可申請まで一括サポートいたします。

開業したばかりでも法人化はできますか?

開業直後でも法人化は可能ですが、通常は収益や経営が安定した段階で行う方が効果的です。新規開業医の方には、法人化の適切なタイミングを含めた税務戦略をご提案いたします。

青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。

医療法人設立時に必要な書類にはどのようなものがありますか?

定款、役員名簿、資産状況報告書、診療所の登記事項証明書、事業計画書、収支予算書など多数の書類が必要です。当事務所では書類作成から提出代行まで対応しておりますので、お忙しい先生もご安心ください。

医療法人化後も個人資産は守られますか?

法人と個人は法律上別人格となるため、事業リスクから院長個人の資産を分離できます。特に借入や債務に関する責任が明確になり、リスク管理の観点でも有利です。法人化は資産防衛策としても有効です。

医療法人化すると社会保険の加入義務はどうなりますか?

医療法人になると、常勤従業員の人数に関係なく原則として厚生年金・健康保険への加入が義務となります。保険料負担は増えますが、将来的な年金額の増加や職員の福利厚生向上にもつながります。

法人化後の税務調査対応もサポートしてもらえますか?

はい、当事務所では法人化後の税務顧問契約の中で税務調査の立会いや事前対策も行っております。遠方でもオンラインで対応可能ですので安心してご相談ください。

税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。

医療法人化による資金調達の有利さについて教えてください。

法人化により社会的信用度が向上するため、金融機関からの融資が受けやすくなります。開業支援や事業拡大の資金調達においても有利に働きます。当事務所では融資サポートも承ります。

個人開業時と比べて、法人化後の会計処理は煩雑になりますか?

会計処理は法人化に伴い複雑になる傾向がありますが、当事務所ではクラウド会計や記帳代行、経理アウトソーシングによって、先生の業務負担を最小限に抑える体制をご提案しております。

法人化にあたってスタッフの雇用契約はどうなりますか?

医療法人設立後は、スタッフとの雇用契約も新たに法人名義で結び直す必要があります。当事務所では、労務面を含めた法人化移行のトータルサポートも行っております。

医療法人化は相続対策として有効ですか?

はい、有効です。法人化により事業用資産を法人に移すことで、相続財産の圧縮が可能になります。親子承継をスムーズに進めたい方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

詳しくは、下記の親子承継・代替わりドクター向けのページをご覧ください。

医療法人の定款に盛り込むべき内容とは何ですか?

名称、所在地、目的、役員構成、出資・財産に関する規定、解散時の処理方法などを明記する必要があります。当事務所では自治体ごとの要件を踏まえた定款作成もサポート可能です。

医療法人の設立費用はどれくらいかかりますか?

一般的に100〜120万円程度が相場ですが、当事務所では提携司法書士との連携により、相場よりも抑えた費用で設立可能なケースが多くあります。費用の内訳や節約ポイントも丁寧にご説明いたします。

医療法人化にあたって院長の自宅を社宅にすることは可能ですか?

条件を満たせば可能です。法人が物件を借上げて社宅とすることで、家賃の多くを法人経費にすることができ、実質的な節税効果が見込めます。詳細な要件については当事務所へご相談ください。

医療法人化のメリットとデメリットを比較して相談できますか?

もちろん可能です。当事務所では、節税、社会保険、事業承継、経営改善などの観点から法人化の効果をシミュレーションし、クリニックに最適な選択をご提案します。初回相談は無料です。

医療法人化の相談だけでも受けてもらえますか?

はい、もちろんです。当事務所では、法人化の必要性があるか迷っている段階でもご相談いただけます。節税や経営改善の観点からシミュレーションし、最適なご提案を行います。

法人化後も会計ソフトがなくても対応可能ですか?

はい、会計ソフトをお持ちでない場合でも、当事務所の記帳代行・経理アウトソーシングサービスをご利用いただけます。経理に時間を割けない先生にも好評です。

医療法人設立後に事業承継したい場合、どのような手続きになりますか?

医療法人では代表理事の交代でスムーズに事業承継が可能です。個人開業に比べ相続税対策にも優れており、親子承継を考える先生には特に有効です。当事務所では事業承継計画の策定からサポートします。

法人化後も柔軟な対応は可能ですか?

はい、当事務所は完全オンライン対応・全国対応の体制を整えており、時間や場所にとらわれず、院長先生のご要望に合わせた柔軟な支援が可能です。経営や税務の変化にも迅速に対応いたします。

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