税理士法人
加美税理士事務所

全国のお客様に税務サービスをご提供しています


「本院が軌道に乗った今、次の挑戦へ」その想いを、専門医クリニックに精通した税理士が資金調達・分院展開戦略で後押しします。

専門医クリニックに精通した税理士が分院展開を全面支援。資金調達・事業計画・人件費管理まで、開業予定から法人化済みまで幅広く対応。全国フルリモート可、節税と経営を両立する戦略を提案。無料相談あり、初期対応も柔軟です。実績豊富な事務所が伴走します。

透かしロゴ

クリニックの分院展開とは|整形外科・耳鼻咽喉科・眼科・皮膚科・精神科・心療内科・泌尿器科向け

クリニックの経営において、現在の本院に加えて新たな診療所を開設する「分院展開」は、さらなる事業成長を目指す有力な戦略の一つです。分院展開とは、簡単に言えば、既存のクリニック(本院)とは別の場所に新しいクリニック(分院)を設けて多拠点で診療を行うことを指します。例えば、整形外科クリニックが地域医療ニーズの高まりに応えるために第二の院を開設したり、耳鼻咽喉科クリニックが隣接するエリアにも診療拠点を構える、といったケースです。

最近では、整形外科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科、心療内科、泌尿器科など専門クリニックの先生方から、「本院が軌道に乗ったので次の分院を出したい」「複数拠点で患者さんを診たい」という相談が増えています。特に都市部では患者ニーズに応えるために複数エリアへクリニックを多店舗展開する動きも見られます。一方で、分院展開は魅力的な成長戦略である反面、決して簡単な道ではありません。本院とは異なる場所で新たな経営を行うことになるため、資金計画や人員配置、税務上の対応など検討すべき課題が多岐にわたります。

本記事では、税理士法人加美税理士事務所の医療経営支援のノウハウに基づき、分院展開のメリット・デメリットから、資金計画・財務シミュレーション人件費管理多拠点経営のポイント、さらには税務・会計上の注意点まで、分院展開を成功させるために知っておくべきポイントを総合的に解説します。これからクリニックの分院展開を検討している先生はもちろん、「いずれは分院も…」と将来を見据える開業予定の方個人事業主の院長先生、そして既に医療法人としてクリニック経営を行っている方にも役立つ情報をお届けします。それでは、具体的な内容に入りましょう。

ページコンテンツ

分院展開を検討するにあたり、まずはそのメリットデメリットを正しく理解しておきましょう。特に数字や経営の観点を持つことが重要です。税理士の視点から、分院展開によって得られる利点と注意すべきリスクを整理します。

<分院展開のメリット>

  • 売上・収益の拡大:拠点を増やすことでクリニック全体の患者数を増やし、売上アップが期待できます。診療圏を広げ、現在の本院ではカバーしきれない地域の患者ニーズを取り込めます。本院で培った集患ノウハウやサービス品質をそのまま新しい分院に活かせれば、効率よく利益増加を図れるでしょう。
  • 経営ノウハウの横展開:新規開業時とは異なり、既に本院の運営で得た成功パターンやノウハウがあります。それらを分院にも適用することで、立ち上げの試行錯誤を減らし、軌道に乗るまでの時間を短縮できます。例えば、○○○(整形外科や皮膚科など)で本院が確立した診療フローやスタッフ教育法を、そのまま分院に展開できるでしょう。
  • スケールメリット(規模の経済):事業規模が大きくなることでコスト面のメリットも生じます。医薬品や医療材料をまとめて購入して単価を引き下げたり、複数院分を対象に一度にスタッフ募集を行って採用コストを抑えたりできます。また、人材面でも柔軟性が増します。各分院間でスタッフを融通したり、適材適所の配置転換を行うことで、人材ロスの低減や効率的な人員配置が可能です。
  • 医療の幅出し・相乗効果:本院と分院でそれぞれ機能や役割を分担し、患者のニーズに幅広く応えることもできます。例えば、眼科クリニックでは本院に手術設備を整え、分院は外来診療や検査に特化するといった展開が考えられます。このように連携することで患者紹介がスムーズになり、患者さんを他院に流出させずにすみます。

<分院展開のデメリット>

  • 初期投資負担と経営リスクの増大:分院開設には、本院開業時と同程度かそれ以上の多額の初期費用がかかります。物件取得費用(保証金・敷金・礼金)、内装工事費、医療機器購入費、人件費など、数千万円単位の資金が必要です。分院が軌道に乗るまでは赤字を補填する余力も求められます。もし分院経営がうまくいかなかった場合、本院で稼いだ利益で分院の赤字を補填せざるを得なくなり、グループ全体で見れば収支が悪化してしまうリスクがあります。また、分院閉鎖に追い込まれれば内装設備投資も回収不能です。
  • 人材確保・マネジメントの負担増:分院を出せばスタッフも増えます。特に、院長を任せる分院長というキーパーソンを見つけることが最重要課題です。信頼できる医師に分院を任せられないと、院長自身が複数拠点を掛け持ちするのは現実的に困難です。適任者探しに失敗すると分院の評判や業績に直結するため、ここで手を抜くと失敗リスクが高まります。また、スタッフの数が増えることで、これまで以上に人材教育や組織マネジメントに時間と手間を割く必要があります。院長一人で管理できる範囲を超えると、事務長など経営管理を専門とする人材の登用も検討すべきでしょう。
  • 院長の負担増と意思決定の複雑化:分院展開初期は、どうしても本院の院長(理事長)が現場の診療と経営管理を兼務する「プレイングマネージャー」になりがちです。日中は本院で診療し、終業後に分院の経営管理やスタッフフォローを行う生活が続けば、心身の負担は相当なものになります。また、複数拠点になると経営判断も複雑になります。どの地域に注力するか、資金や人材をどの院に配分するか、各院の特色に合わせたマーケティング戦略をどう練るか――考えるべきことが一気に増え、適切な意思決定を下すハードルが上がります。
  • サービス品質の維持:本院と同じクオリティの医療サービスを分院でも提供できるかという課題もあります。自分の目が届かない分院でスタッフが患者対応を誤ったり、分院長の診療スタイルが本院と大きく異なって患者満足度が下がったりすれば、クリニック全体の評判にも影響します。サービス標準を維持するための仕組みづくりや、定期的なコミュニケーションが欠かせません。

以上のように、分院展開には大きなメリットがある一方、経営上のリスクや負担も増えることを十分認識しておく必要があります。次章からは、分院展開を成功に導くために押さえておきたい具体的ポイントについて順に解説していきます。

分院展開を成功させるには、「いつそれに踏み切るか」が非常に重要です。では、どのようなタイミング・状況で分院展開を検討すべきなのでしょうか。一般的なチェックポイントをいくつか挙げてみます。

  • 本院経営が安定し始めたとき:開業直後はまず本院の黒字化と経営安定が最優先ですが、開業から数年(目安として3~5年)経ち患者数・収益ともに順調に推移している場合、次の成長策として分院を視野に入れるケースが多いようです。まずは現在のクリニックの経営が堅調であることが大前提となります。
  • 患者ニーズに余裕がなくなってきたとき:本院の患者数が増えすぎて待ち時間が長くなったり、診療スペースが手狭になったりしている場合、別拠点を設けて患者さんの受け皿を増やすタイミングかもしれません。「〇〇駅の近くにもクリニックがあれば通いやすいのに」という患者の声が多い場合も、分院開設の好機と考えられます。
  • 十分な利益蓄積や資金余力ができたとき:分院開設にはまとまった資金が必要ですので、自己資金に余裕が出てきたタイミングも重要です。目安として、本院の年間売上が5000万円を超え、事業所得が2000万円前後に達してきたら、税務面で医療法人化(法人への組織変更)を検討する水準と言われます(後述)。こうした収益規模に達したタイミングは、節税対策と合わせて分院展開の準備を始めるサインと考えられます。また、本院開業時の借入金の返済が順調に進み、新たな借入余力が出てきたかどうかも判断材料です。
  • 信頼できる医師・スタッフの目途が立ったとき:分院を任せる分院長候補となる医師や、主要スタッフを確保できる見込みが立ったら、分院展開への具体的な動きに移りやすくなります。例えば、大学病院の後輩医師や信頼できる勤務医がタイミングよく分院長就任に協力してくれることになった、という場合は好機です。逆に言えば、人材の算段がつくまでは時期を待った方が無難です。
  • 院長自身が新たな展望を描けたとき:本院の経営に一区切りつき、将来に向けた展望や事業計画が明確になったタイミングも重要です。「〇年後までにもう1院開設し、地域医療ネットワークを形成したい」など具体的なビジョンが固まった段階であれば、分院展開への準備を進めやすくなります。ただし、「なんとなくマンネリ化してきたから」といった動機だけで分院を出すのは危険です。単なる気分転換ではなく、分院で何を実現したいのかという明確な目的意識を持つことが大切です。

以上のような条件が揃ったと感じたら、分院展開の具体的な準備段階に入ります。特に重要なのが段取りの順序です。物件探しから始めるのではなく、まずは現在のクリニックが個人経営であれば医療法人化を検討し、並行して分院長となる医師の選定・招聘に動くことが理想です。その上で具体的な分院候補地の物件を選定し、資金計画を固めていくのがスムーズな流れと言えるでしょう。この順序を誤ると、せっかく良い物件が見つかっても人材が足りない、あるいは法人化が間に合わず開設ができない、といった事態に陥りかねません。適切なタイミングと手順を踏むことが、分院展開成功の第一歩です。

分院を開設するとなれば、避けて通れないのが資金の確保です。ここでは、分院展開にあたって必要となる主な費用項目と、その資金をどのように調達するかについて解説します。

新たにクリニックを一つ開業するため、分院開設には本院開業時と同様のコストが発生します。主な費用項目を洗い出し、必要な資金総額を把握しましょう。

  • 物件取得費用:テナント物件を借りる場合は保証金・敷金・礼金などの初期費用がかかります。都心部の好立地であれば保証金だけで数ヶ月分の家賃(数百万円単位)を求められるケースもあります。物件契約時には仲介手数料や前家賃も必要です。クリニック専用の建物を新築・購入する場合は、さらに高額な投資となります。
  • 内装工事・設備工事費:クリニック仕様に物件を改装するための費用です。待合室や診察室、処置室などのレイアウト工事、空調・水回り設備の整備、看板工事などが含まれます。診療科にもよりますが、医療機関としての衛生基準や動線を満たすために専門業者による設計・施工が必要であり、内装費は開業コストの中でも大きな割合を占めがちです。
  • 医療機器・備品購入費:診療に必要な医療機器類の導入費用です。整形外科であればレントゲン装置やリハビリ機器、眼科なら検査機器や手術装置など、高額な機器では1台数百万円〜数千万円するため、導入する範囲によって費用総額が大きく変動します。電子カルテやレセコン(レセプトコンピューター)等のITシステム、クリニック家具(待合椅子・デスク等)も含め、備品類の購入費も見積もりに入れましょう。
  • 人件費(採用・教育コスト):分院のスタッフを採用し、開業前研修を行うための費用です。求人広告の掲載費用、人材紹介会社へのフィー、採用面接の時間コストなどが発生します。看護師や医療事務スタッフ、受付スタッフなど、本院から一部異動で賄う場合でも、新たに補充採用が必要になることが多いでしょう。採用後の研修期間中も給与を支払う必要があるため、人件費も開業前コストに含めて資金計画を立てます。
  • 広告宣伝費:分院の存在を周知し、患者さんを集めるための宣伝費用です。内覧会の開催費用、折込チラシやウェブサイト制作費、看板・サインのデザイン費などが考えられます。特に新規エリアでゼロから患者を獲得する場合、開業直後の集患施策にはある程度予算を充てる必要があります。
  • 運転資金(当面の維持費):分院開業後、軌道に乗るまでの数ヶ月~1年程度の赤字をカバーするための運転資金も確保しておく必要があります。家賃、光熱費、スタッフ給与、医薬品の仕入れ費用など、毎月発生する固定費・変動費を見込み、余裕を持って資金を用意します。本院が黒字であっても、分院の立ち上げ期に全体でキャッシュアウトが増えることを織り込んでおきましょう。

以上を合計した初期費用総額は、クリニックの規模や診療科によって様々です。小規模な皮膚科や心療内科のクリニックで最低限の設備で開業する場合は数千万円程度に抑えられるケースもありますが、整形外科でリハビリ設備を充実させたり、眼科で手術設備まで導入したりするとなると1億円前後の投資になる可能性もあります。分院展開を計画する際は、本院開業時以上に綿密な資金計画を練り、見積もり漏れがないか専門家(税理士や開業コンサルタント)のチェックを受けることをおすすめします。

では、こうした多額の開業資金をどのように調達すれば良いでしょうか。資金調達方法として考えられる主な選択肢は次の通りです。

  • 自己資金の活用:本院の診療によって蓄積した内部留保(貯蓄)を充てる方法です。自己資金が潤沢であれば、新たな借入を増やさずに済むため、返済負担の面では有利です。ただし、開業後の運転資金が不足しないよう、自己資金だけで賄う場合でも一定の余裕資金を残しておく必要があります。
  • 金融機関からの融資(設備資金借入):多くのクリニックでは、分院開設時に銀行などからの融資を活用します。日本政策金融公庫や民間銀行の医療機関向け融資枠を利用するケースが一般的です。本院の経営実績が好調であれば、その実績が信用材料となり、融資審査も有利に働くでしょう。ただし、本院開業時の借入が残っている場合、新たな借入によって毎月の返済負担が過大にならないか慎重にシミュレーションする必要があります。金融機関から融資を受ける際は、分院の事業計画書や収支予測をしっかり作成し、説得力のある計画を示すことが重要です。
  • 医療機器リース・割賦購入:医療機器の中にはリース契約や割賦販売(分割払い)が可能なものもあります。特に高額な機器を導入する場合、初期費用を平準化するためにリースを検討する価値があります。リース料は経費計上できますが、長期的には買い取りより割高になる傾向もあるため、メリット・デメリットを検討しましょう。

いずれの方法を取るにせよ、無理のない返済計画を立てることが肝心です。分院開設後は本院と分院双方の収支で返済を賄っていく必要があるため、楽観的に考えすぎず慎重に資金繰りをシミュレーションしましょう。必要であれば税理士やファイナンシャルプランナーと相談し、最適な資金調達プランを検討してください。

資金計画を立てたら、次に重要なのが財務シミュレーションです。分院を開設した場合に、収益と費用がどのように推移し、クリニック全体の財務状況がどう変化するかを事前に数値でシミュレーションしておくことで、経営上のリスクを可視化できます。

分院開設を決断する前に、必ず収支の試算を行いましょう。具体的には、分院の開業から少なくとも数年間にわたる損益計画を立て、本院と分院を合算したキャッシュフローの動きを予測します。

  • 患者数・売上予測:分院で見込める1日あたりの患者数、診療単価(平均的な保険点数や自費診療収入)、稼働日数などをもとに、月次の売上高を予測します。地域の人口動態や競合状況、診療科特性(例:花粉症シーズンに患者数が増える耳鼻科など)も考慮した現実的な数字を設定することがポイントです。楽観的すぎず、控えめなシナリオと比較的順調なシナリオの複数パターンで見積もっておくと安心です。
  • 費用計画と損益分岐点の算出:分院にかかる固定費(家賃、人件費、リース料など)と変動費(患者数に比例する医薬品費用など)をすべて洗い出し、月次の費用総額を算定します。その上で、月間何人の患者を診れば損益分岐点(利益がトントンになるライン)を超えられるかを計算します。例えば、「月○○人の患者を診療できれば家賃・人件費を含めた費用をカバーできる」といった具体的な目安が分かれば、開業後の目標設定もしやすくなります。
  • 資金繰りシミュレーション:初期費用の投下や融資の借入・返済、そして分院開業後の赤字期間を経て黒字転換するまでの資金推移をシミュレーションします。本院の黒字でどれだけ分院の赤字を補填できるか、融資返済は滞りなく行えるか、自己資金は底をつかないか――キャッシュフローの見通しを立てておきます。仮に予測より患者数が少なく収入が低迷した場合でも倒産しないラインを維持できるかどうか、事前にシビアにチェックすることが重要です。

このような財務シミュレーションは、エクセルなどで自作することも可能ですが、前提条件の設定やシナリオ分析には経験がものを言います。過去の開業医のデータや医療業界特有の収支構造を熟知した専門家のサポートを受けることで、より精度の高い試算が可能になります。

医療法人やクリニック向けの財務シミュレーション支援サービスを活用すれば、分院展開の意思決定に大いに役立ちます。例えば、税理士法人加美税理士事務所では、開業医の先生方向けに事業計画策定や収支シミュレーションの支援を行っています。具体的には、過去の診療報酬データや業界ベンチマークを参考に複数の患者数シナリオを想定し、予測損益計算書や資金繰り表を作成します。さらに、設備投資に伴う減価償却費や、法人化した場合の法人税・消費税の影響まで織り込んだ精緻なシミュレーションを行い、分院展開がクリニック全体の財務に与える影響を定量的に評価します。

このようなプロの支援を受けることで、「○年後には借入金を完済し、クリニック全体で年間▲▲円の利益増が見込める」「最悪シナリオでも自己資金内で持ちこたえられる」といった具体的な見通しを得ることができます。また、作成した事業計画は金融機関への融資交渉資料としても活用できます。分院展開に踏み切る前に、ぜひ財務シミュレーション支援サービスを活用してみてください。

分院展開を成功させるには、人件費の管理が極めて重要です。クリニック経営において人件費は大きなウェイトを占める固定費であり、適切にコントロールできないと利益を圧迫してしまいます。また、スタッフ体制の良し悪しが分院のサービス品質や運営の安定性にも直結します。ここでは、分院展開におけるスタッフ配置の考え方と、人件費コントロールの具体策について説明します。

まず、分院を開設する際にはどのようなスタッフ体制で運営するかを明確に設計する必要があります。本院と同等の診療サービスを提供するために、必要な人員と役割を洗い出しましょう。

  • 分院長(医師)の配置:分院には原則として責任者となる医師(分院長)が必要です。本院の院長が自ら毎日分院を兼務することは現実的に難しいため、信頼できる医師を新たに迎えるか、本院の勤務医を昇格させて分院長に据えるケースが一般的です。例えば、整形外科クリニックであればリハビリ担当の非常勤医師を分院の常勤院長として起用するといった形です。本院長は全体統括に回り、分院の日常診療は分院長に任せる体制を構築します。
  • 必要スタッフの洗い出し:診療科や分院の規模に応じて、必要なスタッフ数を検討します。看護師、受付・医療事務、検査技師、リハビリスタッフなど、本院と同様の職種が必要になりますが、分院の想定患者数に見合った人数に抑えることが重要です。例えば、皮膚科の小規模クリニックの分院なら看護師1名・事務1名でも運営可能かもしれませんが、整形外科でリハビリ施設を併設する分院なら複数のリハスタッフが必要になるでしょう。
  • 本院との人員シェア:分院立ち上げ時には、本院から経験豊富なスタッフを一時的に派遣し、現地で指導・支援させることも有効です。本院で培ったカルチャーや業務手順を分院スタッフに浸透させるために、開院直後の数週間~数ヶ月は本院スタッフが応援に入るケースもあります。また、複数拠点を運営する場合、スタッフを本院と分院で兼務させたり、シフトで融通し合ったりできると、人件費の効率化につながります。たとえば、非常勤スタッフに週の半分は本院、半分は分院で働いてもらうことで、フルタイムの人件費を増やさずに済む場合もあります。
  • 管理部門の役割分担:2院体制までは院長自身が経営管理を兼任できるかもしれませんが、分院が増えて3院以上の多拠点経営となる場合には、経営管理に専念する事務長やエリアマネージャーを置くことも検討しましょう。請求事務や経理、人事管理などバックオフィス業務は本院で一元管理し、各院の現場スタッフは診療業務に専念できるようにすることが理想です。このように本部機能と現場の役割を明確に分けておくと、組織が大きくなってもスムーズに運営できます。

次に、分院展開時に人件費を適切にコントロールするための具体的な方法をいくつか紹介します。

  • 適正な人員配置と業務効率化:必要以上にスタッフを増やし過ぎないように注意します。分院開設当初からフルスタッフを揃えてしまうと、患者数が目標に達するまで人件費ばかりが先行して利益を圧迫します。開業時は最低限のスタッフでスタートし、患者の増加に応じて段階的に増員するのも一策です。また、一人ひとりのスタッフがマルチタスクで動けるように教育し、業務の効率化を図ることで、人手を増やさずに対応できる場面も増えます。
  • シフト調整と勤務形態の工夫:診療時間帯や曜日ごとの患者数の波に合わせて、シフトを細かく調整します。繁忙時間帯のみパートスタッフに入ってもらい、閑散時間帯は最小人数で回すなど、メリハリのある勤務体系を取り入れます。例えば、耳鼻咽喉科で花粉症患者が多い春季のみ看護師を増員し、それ以外の季節は絞る、といった柔軟な対応も可能でしょう。残業(時間外勤務)が常態化すると人件費が膨らむため、診療スケジュールや業務フローを見直して残業削減に努めることも重要です。
  • 人件費の見える化と予実管理:人件費が適正にコントロールできているかを把握するため、人件費率(売上に占める人件費の割合)を定期的に算出・チェックしましょう。分院を含むクリニック全体での人件費率をモニタリングし、目標値から乖離していれば原因を分析して対策を講じます。例えば、予想以上に人件費率が高騰している場合、スタッフの勤務シフトや業務プロセスに非効率がないか点検し、必要なら配置転換や業務改善を行います。
  • IT活用やアウトソーシングの検討:業務の一部をIT化・自動化したり、外部委託することも人件費削減につながります。例えば、オンライン予約システムや問診票の電子化により受付業務の負荷を軽減すれば、少ない人数でも回せるようになります。また、清掃や医療廃棄物処理などは専門業者に委託し、看護師や事務スタッフが本来業務に集中できる環境を整えることも大切です。給与計算や経理業務を税理士事務所にアウトソーシングすることで、院内で専任スタッフを抱える必要をなくすこともできます。

人件費を適切にコントロールできれば、分院展開後の利益率を高く維持しやすくなります。ただし、人件費削減を意識するあまり、サービスの質が低下したりスタッフに過度な負担がかかったりしては本末転倒です。患者さんの満足度とスタッフの働きやすさを両立しつつ、ムダのない効率的な人員体制を追求していくことが、多店舗展開を長期的に成功させるコツと言えます。

分院展開を果たした後も、経営者として気を配るべきポイントは数多くあります。多拠点経営では、本院だけを運営していた頃とは異なるマネジメント上の課題が生じます。ここでは、分院展開後のクリニック経営で押さえておきたい管理ポイントと、よくある課題への対処法を解説します。

複数の拠点を経営する場合、拠点間の財務管理を適切に行うことが重要です。どの分院がどの程度収益を上げ、どの程度コストがかかっているのか、正確に把握できなければ経営判断を誤る恐れがあります。

  • 分院別の収支管理:医療法人として一括で会計処理を行う場合でも、院ごとの収支状況を把握できるよう科目や部門を分けて管理します。各分院ごとに毎月の売上・費用・利益を集計し、本院と比較したり目標値と照らし合わせたりしましょう。分院Aは黒字幅拡大、分院Bは想定より利益率が低下、など一目でわかるようにしておけば、早期に対策を打ちやすくなります。
  • 資金配分と内部補助:開設直後の分院は赤字になることも想定されますが、本院の稼ぎや他の分院の黒字で補う内部補助の仕組みを整えます。ただし、特定の分院の慢性的赤字を放置すると全体の財務を圧迫するため、一定期間を過ぎても改善しない場合は、追加の集患策を講じる、経費構造を見直す、場合によっては縮小や撤退を検討するなど、意思決定を行う必要があります。感情的に「せっかく出した分院だから」と引きずらず、数字に基づき冷静に判断することも経営者には求められます。
  • 統一会計システムの導入:本院と分院で異なる会計ソフトや管理方法を使っていると、集計に手間がかかりミスのもとになります。できるだけ統一の会計システム・クラウドサービスを導入し、リアルタイムで各拠点の経営データを確認できる体制を作りましょう。これにより、離れた場所にいる院長でも各院の状況を把握しやすくなり、適切なタイミングで経営判断を下せます。また、医薬品・備品の在庫管理や発注も一本化し、まとめて仕入れることでコスト削減と在庫最適化を図ることができます。
  • 年度予算とKPI管理:複数院の経営では、各院ごとに年度の予算目標を設定し、実績との差異を管理する手法が有効です。分院長やスタッフにも売上目標や経費予算を共有し、チームとして目標達成に取り組みます。また、患者数、新患数、リピート率、単価、スタッフ一人当たりの売上など、クリニック経営のKPI(重要業績指標)を複数設定し、定期的にモニタリングすることで、問題の早期発見と対応が可能になります。

最後に、分院展開後に直面しがちな課題と、その解決策についてまとめます。

  • コミュニケーションと統制の課題:院長の目が行き届かない分院で、スタッフ間の連携不足や方針のブレが生じることがあります。これを防ぐには、定期的なコミュニケーション機会を設けることが有効です。例えば、定例会議として本院と分院の管理者がオンラインミーティングで情報共有する、月に一度全スタッフが集まる機会を作る、グループウェアやチャットツールで日々の報告・連絡・相談を徹底する、といった施策が考えられます。また、診療マニュアルやサービス標準を文書化して全院で共有し、新人研修も本院と同じプログラムで行うことで、院ごとのばらつきを減らすことができます。
  • 人材定着と組織文化:複数院体制になると、勤務地が異なるスタッフ同士の一体感が薄れがちです。人材定着率を高めるためにも、組織文化づくりに力を入れましょう。具体的には、院をまたいだ勉強会や親睦会を開催して横のつながりを作ったり、分院間でスタッフを交換留学させて視野を広げてもらったりする取り組みが有効です。分院長会議を定期開催し、各院の課題や成功事例を共有することも、お互いの士気向上につながります。スタッフに「自分たちは◯◯クリニックグループの一員」という意識が芽生えれば、離職防止にも寄与するでしょう。
  • 分院長との信頼関係・契約管理:分院長を任せているドクターとの間で、経営方針の食い違いや将来的な独立志向による緊張が生じることがあります。こうしたリスクに備え、分院長とは明確な役割・責任の合意を交わすとともに、万一退職する場合の引き継ぎや競業避止に関する取り決めも契約に盛り込んでおきます。一方で、分院長がやりがいを持って働けるよう、裁量権を与えたり成果に応じた報酬(インセンティブ)制度を導入したりすることも重要です。分院長自身が経営の一端を担っているという意識を持てれば、クリニック全体への貢献度も高まるでしょう。
  • サービス品質と評判維持:分院の増加に伴い、サービス品質のばらつきが生じると患者さんの評判に影響します。これを防ぐために、患者満足度調査やアンケートを定期的に実施し、本院と分院の評価を比較することをおすすめします。もし特定の院で待ち時間や接遇面の評価が低ければ、直ちに原因を調査し改善策を講じます。また、インターネット上の口コミにも目を配り、悪い評判が出ていないかチェックすることも大切です。全院で均一の高品質な医療サービスを提供し続けることで、「あの○○クリニックはどの場所でも安心だ」というブランド信頼を築けます。

分院展開を進めるにあたっては、税務・会計面の対応も忘れてはなりません。事業規模が大きくなることで、これまで以上に正確な会計処理と適切な税務申告が求められます。ここでは、分院展開に関連する税務上のポイントと、税務調査リスクへの備えについて解説します。

まず押さえておきたいのは、分院展開に伴う税務申告上の変更点です。特に、個人でクリニックを営んでいた場合は分院開設のタイミングで医療法人化(法人設立)することが多いため、税務申告の方法も大きく変わります。

  • 個人事業から法人へ移行した場合:個人クリニックから医療法人に組織変更すると、以後は法人として決算を行い法人税を申告することになります。法人化した年度は、個人事業としての期途中で事業を終了し、法人として新たに事業を開始するため、個人の確定申告と法人の決算申告をそれぞれ行う必要が生じます(事業承継の手続きについては専門家のサポートが推奨されます)。また、法人設立時には税務署や都道府県税事務所等への各種届出(開設届など)も必要です。
  • 消費税・地方税への影響:分院を開設して売上規模が拡大すると、税負担にも変化が出てきます。例えば、売上規模が拡大すると消費税の納税義務が発生(または増加)し、さらに法人として都道府県への事業税や市町村への法人住民税(均等割)も課されます。拠点を他地域に設ける場合は各自治体への届出なども必要です。
  • 会計処理と経理体制:本院と分院の取引をすべて正確に会計帳簿へ記録し、適切に経費計上・収益計上することが重要です。分院が増えると会計処理量も増加しますので、経理担当者や税理士事務所と連携し、月次決算をきちんと行う体制を整えましょう。分院ごとに部門別損益を管理しつつ、法人全体の決算にまとめる形になります。減価償却費(医療機器や内装の償却)や人件費配分など、複数拠点にまたがる費用の処理についても、会計基準に従って正確に行います。

事業が拡大し売上が増えてくると、税務署から税務調査(いわゆる税務監査)を受ける可能性も高まります。クリニック経営においては、以下の点に注意し、税務調査で指摘を受けない健全な経営を心掛けましょう。

  • 証憑類の整備と記帳:本院・分院それぞれの収入や支出に関する証憑(領収書、レシート、請求書など)をきちんと保存し、日々の取引を正確に記帳しておくことが大前提です。特に分院では本院から離れて経理処理を行うケースもあるため、領収書の紛失や記帳漏れが起こらないよう、本部で定期的にチェックします。税務調査では証憑の提出を求められるため、少額の経費でも社内でルールを決めて保存・管理を徹底しましょう。
  • 現金管理と売上計上漏れ防止:クリニックでは窓口収入の現金を扱うことがありますが、複数拠点になると現金管理のルール統一が必要です。日々の現金収入はレジ締めや日計表で厳密に管理し、本院と分院でズレがないようにします。売上計上漏れ(現金の使途不明)が疑われると調査官の目も厳しくなりますので、レジ締めルールの徹底など基本動作を統一しましょう。
  • 経費計上の適正化:事業拡大に伴い経費も多岐にわたりますが、私的な費用を経費に紛れ込ませないように注意が必要です。家族への給与や院長個人の費用を経費に混在させないようにしましょう。社用車や交際費なども公私混同と見なされないようにします。
  • 税理士との連携:分院展開後は税務処理が複雑になるため、信頼できる税理士との二人三脚で経営数字を管理していくことが肝心です。定期的に決算予測を受けて納税額を把握し、節税策を検討しましょう。また、税務調査の際には税理士の立会いのもと適切に対応することで安心です。日頃から適正な申告と納税を行っていれば過度に恐れる必要はありませんが、「備えあれば憂いなし」の精神で帳簿や証憑の整備を徹底しましょう。

これからクリニックを開業しようと考えている先生にとっても、分院展開を見据えた長期的な開業計画を立てておくことは非常に有益です。最初の本院を開業する段階から、「将来的に分院を出す可能性があるならどうするか」という視点を持っておくことで、後々スムーズに多店舗展開へ移行できる下地を作ることができます。

具体的には、事業計画の段階で将来のビジョンを描いておき、本院のコンセプトや運営方針を将来複数院でも適用できる汎用性の高いものにしておくことです。また、クリニック名やロゴ、内装デザインなどブランディングを統一的に展開できるように設計しておけば、2院目・3院目開設時にも一貫したイメージで認知してもらいやすくなります。開業当初から経験豊富な税理士に相談し、法人化のタイミングや資金戦略について長期プランを共有しておくのもおすすめです。

さらに、開業科目ごとの戦略も視野に入れておきましょう。診療科によって市場環境や必要設備が異なるため、将来の展開性も踏まえて開業計画を立てることが重要です。

  • 整形外科:高齢化に伴う整形外科需要は年々高まっており、地域の患者ボリュームを見極めたエリア選定が鍵です。最初の開業では、診療スペースやリハビリ施設の将来的な拡張余地も考慮しましょう。整形外科は大型機器(MRIやレントゲン)の導入費用が大きいため、本院で投資した設備を最大限活用し、2院目以降は画像診断設備を持たないサテライト型にするなど、役割分担による展開も可能です。
  • 耳鼻咽喉科:耳鼻科は季節による患者増減(花粉症シーズンや風邪の流行期)が顕著です。開業計画時には、ピーク時に対応できるキャパシティを持ちつつ、オフシーズンでも無理なく経営できる収支モデルを作っておくことがポイントです。将来的に分院を計画するなら、1院目は地域の基盤固めに注力し、評判を確立した上で周辺エリアへの展開を検討すると良いでしょう。
  • 眼科:眼科クリニックは、一般診療に加えて手術ニーズ(白内障手術など)への対応をどうするかが戦略の分かれ目です。開業当初から手術設備を備える場合、本院を高度医療中心にし、将来の分院は検査・コンタクト処方中心の小規模クリニックにするといった棲み分けも可能です。逆に、最初は手術なしのクリニックで開業し、患者層が蓄積できた段階で手術センター機能を持つ分院を開設するパターンも考えられます。
  • 皮膚科:皮膚科は保険診療から自費の美容皮膚科まで守備範囲が広い科目です。開業時にどの領域に注力するかで、その後の展開モデルも変わります。保険診療中心で地域密着型の皮膚科として軌道に乗せ、その評判をもとに他エリアに2院目を出すケース、自費美容のクリニックを別ブランドで展開するケースなどがあります。いずれにせよ、1院目で患者さんからの信頼と実績を積むことが、分院成功の土台となります。
  • 精神科・心療内科:メンタルヘルス分野はニーズが高まっていますが、医師一人あたりが対応できる患者数には限りがあります。開業時には予約制やカウンセリング体制を整え、質の高い診療を提供しつつ無理のない範囲で診療するモデルを確立しましょう。将来的に分院を出す際は、医師の確保が最大の課題となるため、早めに人材ネットワークを築いておくことが重要です。例えば、非常勤医師との信頼関係を深めておき、いずれ分院常勤医になってもらうといった計画が考えられます。
  • 泌尿器科:泌尿器科は対象患者が中高年男性に偏る傾向があるため、開業立地の選択がクリティカルです。1院目は競合が少なく需要が見込めるエリアを選び、患者さんとの信頼関係を築くことに注力します。軌道に乗れば、近隣都市やベッドタウンなど、少し離れたエリアに分院を構えることで広域から患者をカバーできます。泌尿器科は診療内容によっては継続受診が必要なケースも多いため、本院・分院間で患者紹介を円滑に行い、どちらの院でも一貫したフォローが受けられる体制を作ることが大切です。

開業準備段階からこうした戦略を描いておけば、将来的に分院展開を検討する際にも「次に何をすべきか」が見えてきます。実際、当事務所(税理士法人加美税理士事務所)でも、開業前相談の段階から「将来は分院も視野に」という先生に対して、資金計画や法人化のタイミング、スタッフ採用計画など大局的な視点でアドバイスを行うことがあります。目の前の開業準備で手一杯かもしれませんが、ぜひその先の展望についても折に触れて思い描いてみてください。それが実現したとき、本記事で紹介したポイントがお役に立つはずです。

開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。

現在、個人事業としてクリニックを経営されており、年商5,000万円超えといった規模まで成長している院長先生にとって、次なる飛躍として分院展開を検討するタイミングが訪れています。この段階では、税負担の面からも法人成り(医療法人化)を検討すべき時期であり、法人化による節税メリットを享受しつつ分院展開の準備を進めることで、一石二鳥の効果が期待できます。以下に、年商5,000万円規模の個人クリニックが分院展開を目指す際のステップを順に示します。

  1. 現状の経営分析と将来目標の設定
    まずは現在のクリニック経営を客観的に分析しましょう。年商、利益率、患者数の推移、地域での評判などを総点検し、「なぜ分院展開をするのか」「分院を出すことでどのような成長を目指すのか」を明確にします。例えば、「主たる診療圏外からの患者が増えており、そちらに分院を出すことで利便性を高めたい」「現在月商◯◯万円だが、分院開設でグループ全体の月商◯◯万円を目指したい」など、具体的な目標を設定します。
  2. 医療法人化(法人成り)による組織基盤づくり
    次に、個人事業から医療法人への移行手続きを進めます。前述の通り、分院を展開するには法人化が実質的な前提条件となりますが、法人化することで所得分散による節税メリットも得られます。一般に、事業所得が年間1,800万円を超えると法人化によって数百万円単位で税負担が軽減できるケースもあります。法人化にあたっては定款の作成や認可申請など手続きがありますが、税理士や行政書士のサポートを受けながら進めれば安心です。医療法人化が完了すれば、院長先生は理事長として本院および将来の分院を統括する立場となり、組織として分院開設に臨む体制が整います。
  3. 分院展開に向けた資金準備
    法人化と並行して、分院開設に必要な資金の準備を進めます。本院の利益から内部留保を積み立てることに加え、金融機関への事前相談も開始しましょう。法人化後は医療法人名義で融資を受ける形になりますが、銀行から見ると本院の実績がそのまま信用材料となります。このタイミングでしっかりと事業計画書・資金計画書を作成し、融資枠の目安を確認しておくと安心です。※税理士法人加美税理士事務所では、法人化後の資金繰りシミュレーションや金融機関向け資料作成も支援しています。
  4. 分院計画の具体化(場所・人材の検討)
    次に、分院のコンセプトや出店エリアを具体的に検討します。本院の患者動向を分析し、「どの地域に分院を出せば患者の利便性が上がるか」「競合状況はどうか」などマーケティング調査を行います。また、分院を任せる医師(分院長)の確保もこの段階で進めます。候補となるドクターがいれば打診を開始し、いない場合は人材紹介会社などを通じてリサーチします。スタッフについても、看護師や事務員の募集計画を立て、本院からの異動組と新規採用組のバランスを検討します。
  5. 開業手続きと分院開設の実行
    分院計画が具体化したら、物件契約・内装工事・行政への開設届など開業手続きに移ります。法人化済みであれば、分院の保健所への届出や診療所開設手続きもスムーズです(医療法人〇〇会○○クリニック◯◯分院という形で開設)。同時に、スタッフの採用面接・内定者研修を進め、本院のマニュアル類を整備・共有しておきます。開業日が近づいたら広告宣伝(内覧会・HP告知等)を行い、晴れて分院オープンとなります。
  6. 分院開業後の経営モニタリングと改善
    分院開業後は、当初策定した事業計画と実績を突き合わせながら経営をモニタリングします。第○四半期までの患者数・売上が計画比◯%、経費が◯%といった形で定期チェックし、必要に応じて施策の軌道修正を行います。本院と分院の役割分担やスタッフ配置が当初想定と合っているかを検証し、問題があれば早めにテコ入れします。法人化により節税効果が出てキャッシュに余裕が生まれている分、それを活用して広告を強化したり、設備投資を追加で行ったりといった成長投資に回すことも可能です。こうしてPDCAサイクルを回しながら分院経営を軌道に乗せ、さらなる展開の足掛かりとしていきます。

上記のステップを踏むことで、個人経営クリニックから医療法人クリニックへの転換と分院開設をスムーズに両立させることができます。特に法人化による税負担軽減で生まれた余力を分院展開に充てることで、無理のない形で事業を拡大できる点は大きなメリットです。もちろん各ステップで専門家の支援を受けることにより、手続きを効率化し失敗リスクを減らすことができるため、検討段階から税理士にぜひご相談ください。

法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。

すでに医療法人としてクリニック経営を行っている先生方にとっては、本格的な分院展開を進めるフェーズでは、より戦略的な視点が求められます。単に目の前の一院一院を増やすだけでなく、数年先を見据えた多店舗展開のロードマップを描き、組織体制や資金計画も中長期的に最適化していく必要があります。

医療法人クリニックが分院を次々に展開していく際には、まず中期的な事業計画を策定しましょう。例えば、「今後5年間で〇院体制に拡大し、年商△億円規模の医療法人に成長する」といったビジョンを掲げ、それを実現するためのステップとスケジュールを明文化します。これにより、経営陣・スタッフ全員が共通の目標に向かって動きやすくなります。

複数分院を持つ段階では、本部機能の強化も不可欠です。クリニック数が増えるほど、総務・人事・経理・マーケティングなど各専門分野で管理業務が肥大化します。一定規模以上になったら、経験豊富な事務長やマネージャー職を採用したり、アウトソーシングを活用したりして、院長自身が細部の管理業務に追われない体制を築きます。また、ITシステムの導入も一層重要になります。電子カルテや会計システムのみならず、勤怠管理や在庫管理、顧客管理(CRM)など、複数拠点を統合管理できる仕組みに投資することで、規模の拡大による非効率を最小限に抑えられます。

分院展開戦略としては、大きくオーガニックグロース(自院でゼロから新規開設)とM&Aによる展開の二つのアプローチがあります。自前で新規開業する場合、これまで培ったクリニック運営のノウハウを各地に複製していくイメージで、ブランディングやサービス内容の統一性を図りやすい利点があります。一方、地域で評判の良いクリニックを事業承継(M&A)という形で分院に取り込む方法も、本格展開期には有力な選択肢です。経験豊富な医師が運営していたクリニックを医療法人に迎え入れることで、患者基盤やスタッフを一挙に獲得できます。ただし、M&Aの場合は、カルチャーの統合や契約条件の調整など慎重な対応が必要ですので、専門家の助言を仰ぎながら進めることが重要です。

さらに、エリア戦略も練り直しましょう。既存の本院・分院がカバーしていない地域や、市場成長性の高いエリアをリストアップし、優先順位を付けて進出計画を立てます。同時に、既存拠点同士で患者が食い合わないよう、各院の役割を微調整することも必要です。例えば、本院を中核病院的な位置づけとして専門性の高い診療や手術を集約し、周囲の分院は初期診療や検診にフォーカスする、といったネットワーク戦略も考えられます。

人材面では、将来の分院長候補を社内外で計画的に確保・育成する戦略が求められます。現在の分院長やベテランスタッフに複数院のマネジメントを担当するエリアマネージャー的役割を与え、次世代のリーダーを育てることも有効です。また、分院が増えると医師同士の連携(例えば専門分野の補完や患者紹介)も重要性を増しますので、法人内の異なる診療科間で連携体制を築き、グループ全体で患者さんにトータルな医療サービスを提供できるようにしておくと差別化につながります。

このように、医療法人として本格的に分院展開を進めるには、経営資源を最大限に活用しつつリスクを抑える戦略的舵取りが求められます。当事務所でも、複数分院を抱える医療法人クライアントに対し、中期経営計画の策定支援やM&A時の財務デューデリジェンス、組織再編に伴う会計・税務戦略の立案など、総合的なサポートを提供しております。着実に歩を進めることで、「地域に〇院のクリニックネットワークを持つ〇〇会」という盤石な体制を築き上げていただきたいと思います。

医療法人としての分院展開戦略は、その法人のビジョンや得意分野によって様々です。共通するポイントは、自院の強みを伸ばしつつリスクを分散することにあります。例えば、整形外科系の法人が本院で高度医療、分院で外来フォローと役割分担して効率化を図る戦略もあれば、皮膚科・耳鼻科で複数の小規模院をチェーン展開し、統一した予約システムやサービスでブランド力を高める手法も考えられます。

いずれの場合も、「なぜ分院展開をするのか」「それにより患者さん・スタッフにどんな価値を提供できるのか」を経営陣が共有し、経営理念に沿って判断することが重要です。医療法人として培った信用力とノウハウを武器に、貴法人ならではの分院展開モデルを築いてください。道中の課題には、税理士法人加美税理士事務所が財務・税務の面から全力でサポートいたします。

最後に、私たち税理士法人加美税理士事務所がクリニックの分院展開において提供できるサポート内容をご紹介します。加美税理士事務所は、医療機関専門の会計税務支援に豊富なノウハウがあり、開業前の計画段階から分院展開・多拠点経営に至るまで、一貫して先生方をバックアップいたします。

当事務所の主なサポート領域:

  • 開業・法人化支援:クリニック開業時の事業計画策定、資金調達サポート、法人設立手続き(医療法人化)に関するコンサルティングを行っています。整形外科・耳鼻科・皮膚科など各科目特有の開業ポイントも踏まえ、将来の分院展開を視野に入れた開業支援が可能です。
  • 分院展開プランニング:分院開設にあたっての資金計画・収支シミュレーション作成をサポートします。「何年後にどのくらい利益が増える見通しか」「開業資金をどう調達し返済していくか」といった重要事項を数字で見える化し、経営判断を下支えします。また、適切な法人化タイミングのアドバイスや、分院展開による節税対策の検討なども包括的に支援します。
  • 会計・税務顧問:本院・分院を含めたクリニック全体の会計税務をトータルでサポートします。月次決算の実施によるタイムリーな経営成績の把握、部門別管理による分院収支の見える化、給与計算や社会保険手続きの代行など、煩雑になりがちな経理業務を専門家にアウトソーシングすることで院長先生は診療に集中できます。もちろん年度決算・税務申告も責任をもって対応し、適正な申告と節税を両立します。
  • 経営モニタリングと財務アドバイス:分院展開後も、各院の業績指標や財務バランスをモニタリングし、経営改善策を提案します。人件費率や損益分岐点達成状況などを定期レポートでフィードバックし、必要に応じてコスト構造の見直しや収益アップ策をアドバイスします。また、資金繰り悪化の兆候があれば早期に警鐘を鳴らし、追加融資の検討や支出削減策についても助言いたします。
  • 税務調査対応・節税相談:万一クリニックに税務調査が入る際も、事前準備から当日の立ち会い、指摘事項への対応まで全面的にサポートします。平時から帳簿や証憑類の適切な整備についてアドバイスしているため、調査にも落ち着いて臨めます。また、事業拡大に応じた節税策のご提案や、院長先生個人の相続・事業承継対策についてもトータルでご相談いただけます。
  • 医療経営に関する総合コンサルティング:税務・会計の枠に留まらず、必要に応じて他士業や専門家と連携しながら、クリニック経営全般のご相談に対応します。分院展開に伴う診療報酬制度上の留意点や、スタッフ労務管理上のアドバイス、他院との提携・M&A検討時の助言など、幅広いネットワークを活かしてサポートいたします。

私たちは、「先生方に安心して本業(診療)に専念していただけるよう、経営面を全力で支えること」をモットーにしています。分院展開はクリニックにとって大きなチャレンジですが、適切な専門家の伴走があれば成功率は格段に高まります。税理士法人加美税理士事務所は、開業予定の個人医師から年商5,000万円規模のクリニック院長、そして多拠点展開を目指す医療法人理事長まで、あらゆるステージの先生をサポートいたします。分院展開をご検討の際には、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

よくあるご質問

FAQ

分院展開を検討する前に、整形外科クリニックとしてどのような財務シミュレーションを行うべきですか?

整形外科などの専門クリニックが分院展開を検討する際には、患者数の見込み、診療単価、人件費、家賃、医療機器購入費用などを反映した財務シミュレーションが不可欠です。特に分院開業から黒字転換までのキャッシュフロー管理を入念に行い、損益分岐点を明確にしておくことが重要です。税理士法人加美税理士事務所では、整形外科をはじめとした医療機関に特化した財務シミュレーション支援を提供しています。

耳鼻咽喉科クリニックの分院を開設する場合、税務署へはどのような届出が必要ですか?

耳鼻咽喉科など医療法人が分院を開設する場合、税務署には異動届出書や青色申告承認申請書、給与支払事務所の開設届など複数の書類を提出する必要があります。これらの手続きは期限が定められており、不備があると後の申告に影響するため、専門家の関与が推奨されます。開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。

眼科クリニックの分院展開では、融資申請サポートはどのタイミングで依頼すべきでしょうか?

眼科などのクリニックが分院展開を目指す場合、物件選定や事業計画書作成の段階で融資申請サポートを依頼するのがベストです。税理士法人加美税理士事務所では、診療圏調査や開業資金計画を踏まえたタイムリーな融資サポートを実施しています。資金調達成功のためには早期相談がおすすめです。

皮膚科クリニックの法人成りと分院展開を同時に進めたいのですが、可能ですか?

皮膚科クリニックが法人成りと分院展開を同時に進めることは可能ですが、法人設立認可と分院開設手続きのスケジュール管理が重要です。事前に医療法人設立支援に強い税理士に相談することで、スムーズな進行が期待できます。法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。

精神科クリニックで分院展開する際、人件費コントロールのポイントは?

精神科クリニックの分院展開では、医師・看護師・心理士など専門職の人件費比率が高くなりがちです。適正な人員配置と業務効率化、勤務形態の工夫による人件費コントロールがカギです。当事務所では収益構造分析を通じたアドバイスも提供しています。

心療内科クリニックの分院開設に向けて、節税対策も同時に考えるべきでしょうか?

心療内科クリニックが分院を開設する際は、初期投資額が大きくなるため節税対策コンサルティングも必須です。設備投資の減価償却や法人税対策を講じることでキャッシュフローに余裕を持たせることができます。節税対策について詳しくは下記のページをご覧ください。

泌尿器科クリニックが多拠点展開を進める際の資金調達方法は?

泌尿器科クリニックが多拠点展開を目指す場合、日本政策金融公庫や民間金融機関からの融資、医療機器リースの活用が一般的です。分院ごとに収支予測を立て、無理のない資金調達計画を策定することが重要です。当事務所では融資申請サポートも行っています。

分院開設にあたり、青色申告に関して注意すべき点はありますか?

個人事業主が分院開設を機に医療法人化する場合、青色申告から法人決算への移行手続きが必要です。青色申告特別控除が受けられなくなるタイミングも注意が必要です。青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。

分院展開に失敗しないためにはどのような資金繰りシミュレーションが必要ですか?

分院展開時には、開業初期赤字をカバーできる運転資金計画と、損益分岐点を超えるまでのキャッシュフローシミュレーションが必須です。当事務所では、医療機関向けの財務シミュレーション支援で資金計画を強力にサポートしています。

分院を出した場合、消費税の申告・納税に変化はありますか?

分院開設後、売上規模が拡大すると消費税の課税事業者要件に該当し、申告・納税義務が生じる場合があります。医療機関の消費税対応について詳しく知りたい方はご相談ください。消費税について詳しくは下記のページをご覧ください。

整形外科クリニックの分院展開における人材採用支援はどのように受けられますか?

整形外科クリニックの分院開設では、医療スタッフの採用が成功のカギです。当事務所では、開業支援の一環として人材採用支援や勤務体制設計アドバイスも行っています。経験豊富な医療専門税理士が全面サポートいたします。

税務調査に強い税理士を探しています。分院展開後の対応も可能ですか?

はい、税理士法人加美税理士事務所では、分院展開後の税務調査にもオンライン立会い対応が可能です。税務調査対策に強みを持ち、医療機関特有の論点にも精通しています。税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。

分院開設時、医療機器購入費用の資金繰りはどのように考えればよいですか?

分院開設時の医療機器購入費用は、自己資金と融資のバランスを考慮して資金繰り計画を立てる必要があります。当事務所では、医療機器リースの活用や減価償却費の試算を含めた資金計画サポートを行っています。

クリニック分院開設後の法人化メリットについて教えてください。

分院開設に伴い法人化を行うことで、所得分散による節税効果、社会保険加入手続きの円滑化、経営資金調達力の向上といったメリットが期待できます。法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。

クリニックの分院展開時に社会保険加入手続きはどう変わりますか?

分院開設により従業員数が増える場合、社会保険適用義務が発生する可能性があります。開設届提出や加入手続きについて、当事務所がサポートいたします。社会保険加入影響分析も行っています。

開業予定の整形外科クリニックでも開業支援サービスは利用できますか?

もちろんご利用いただけます。開業資金計画から融資申請サポート、税務署提出書類まで、整形外科クリニックの開業準備を全面支援いたします。開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。

分院展開後に注意すべきキャッシュフロー管理のポイントは?

分院展開後は本院・分院それぞれの資金繰りを月次でモニタリングし、資金ショートを未然に防ぐことが重要です。当事務所ではクリニック財務シミュレーションやキャッシュフロー管理支援も行っています。

医療法人の節税対策について詳しく知りたいのですが、相談できますか?

はい、医療法人における節税対策コンサルティングを得意としております。役員報酬設計、経費最適化提案など、法人経営を支援する幅広いアドバイスが可能です。節税対策について詳しくは下記のページをご覧ください。

眼科クリニックの分院展開では、診療圏調査は必要ですか?

はい、眼科クリニックに限らず分院展開前には診療圏調査を行うことが重要です。患者数予測や競合状況を把握し、成功確率を高める戦略立案が可能になります。当事務所でも診療圏調査のサポートを行っています。

精神科クリニックの分院長を採用する際のポイントは?

精神科クリニックの分院展開では、信頼できる分院長候補の確保が最重要課題です。診療方針や組織文化を共有できるドクターを選び、インセンティブ設計にも工夫が必要です。当事務所では役員報酬設計支援も行っています。

分院展開後、経営会議はどのように行うべきですか?

複数拠点を持つ場合、定期的な経営会議をオンライン・対面を組み合わせて実施し、拠点間の課題共有・情報統一を図ることが重要です。当事務所では経営会議サポートサービスもご提供しています。

耳鼻咽喉科クリニックの分院展開におけるスタッフ給与設計の注意点は?

耳鼻咽喉科クリニックの分院展開では、診療繁忙期と閑散期の差を踏まえたスタッフ給与設計が必要です。固定費を抑えつつ、適正な報酬体系を構築するため、当事務所が人件費コントロール支援を行います。

開業時に利用できる補助金について詳しく知りたいです。

クリニック開業時には、地域によって医療機関向けの助成金・補助金制度が利用できる場合があります。最新情報に基づきご案内いたします。開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。

皮膚科クリニックが分院展開を検討する際、M&Aによる承継は可能ですか?

はい、皮膚科クリニックにおいてもM&Aによる分院展開(事業承継型)は有効な選択肢です。買収対象のクリニックの財務状況や収益構造を慎重に分析する必要があり、当事務所ではM&A支援サービスも提供しています。

税務署提出書類の作成代行をお願いできますか?

もちろん可能です。開業届や異動届、青色申告承認申請書など、開業・分院展開に伴う税務署提出書類の作成から提出代行まで、当事務所がワンストップでサポートいたします。

心療内科クリニックで法人化せずに分院展開することは可能ですか?

医療法の制限により、原則として個人開業医のままで複数診療所(分院)を持つことはできません。分院展開には医療法人設立が必要です。当事務所では医療法人設立支援に強みがあります。

クリニックの決算申告も税理士に丸投げ可能ですか?

はい、当事務所ではクリニックの決算申告業務を丸ごとサポート可能です。会計ソフトがない場合でも、記帳代行から決算書作成・申告手続きまで一貫して対応いたします。

泌尿器科クリニックが分院展開後、保険診療報酬の管理で注意すべきことは?

分院ごとのレセプト(診療報酬請求)管理を正確に行い、診療実績データを本院・分院単位で適切に把握することが重要です。当事務所では保険診療報酬分析支援も提供しています。

お問い合わせ

ご依頼及び業務内容へのご質問などお気軽にお問い合わせください

関連ページ

Related Pages