税理士法人
加美税理士事務所

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「法人化は“経理の手間が増える”だけじゃありません。社宅や退職金制度など、理容室の未来を守る選択肢が広がります。」

理容室に詳しい税理士が法人化をおすすめします。法人化タイミング、役員報酬、社宅や退職金制度の活用方法まで丁寧に解説。開業準備・資金調達・節税対策までフルリモートによる全国対応でサポートします。会計ソフト導入を含む経理業務効率化もお手伝いします。

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理容室の法人化:メリット・タイミング・手続き【税理士が詳細解説】

こんにちは、税理士法人加美税理士事務所です。 本記事では、理容室経営における法人化について、メリット・デメリットから適切なタイミング、法人化で可能になる節税策、そして具体的な手続きまで総合的に解説します。対象となるのは、これから理容室を開業予定の方、開業後3年以内の個人事業主として理容室を経営している方、そしてすでに法人として理容室を運営して従業員を抱えるオーナーの方です。どの段階の方にとっても有益な情報を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。

法人化には費用負担や手間といったデメリットもありますが、その反面で大きな節税効果や信用力向上など魅力的なメリットも存在します。「いつ法人化すべきか」については利益規模や売上規模、事業計画によって判断基準があります。本記事を読むことで、理容室を法人化するメリット・デメリットを正しく理解し、法人化に適したタイミングや準備すべきことが見えてくるはずです。当税理士事務所の全国対応サポートやリーズナブルな顧問料、弥生会計への対応力なども交えつつ、専門家の視点からわかりやすく解説いたします。

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まずは、理容室を法人化することで得られる主なメリットから見ていきます。税制面の優遇や社会的信用の向上、人材面での効果など、法人化には多岐にわたる利点があります。以下の項目ごとに詳しく説明します。

理容室を法人化する最大のメリットの一つが節税効果です。個人事業として理容室を営む場合、事業所得には累進課税の所得税・住民税が課され、利益が大きくなるほど高税率が適用されます(所得税率は最大45%+住民税10%)。一方、法人化して中小企業向けの軽減税率の適用を受ければ、法人税等の実効税率は概ね20〜30%程度(年間利益800万円までは約15%の法人税率、800万円超部分は23.2%の法人税率※に地方税を加味)に抑えられます。つまり、一定以上の利益が出る場合には法人の方が税負担を大幅に軽減できる可能性が高いのです。

さらに法人化すると、オーナー自身に役員報酬(給与)を支給できるようになります。法人がオーナーに支払う役員報酬は法人の経費(損金)となり課税所得を減らせるうえ、受け取ったオーナー側では給与所得控除という大きな控除が適用されます。給与所得控除は給与収入に応じて一定額が差し引かれる制度で、例えば年収500万円なら約154万円、800万円なら約200万円強が控除されます(※具体的な金額は給与額により異なります)。個人事業主としての事業所得にはこの控除が無いため、法人化して給与という形で利益を受け取るだけで所得税・住民税の課税対象額を減らす効果があります。加えて、役員報酬と会社利益に分散させることで所得分散にもなり、結果的に手元に残る利益を最大化できるのです。

例えば、年間の事業利益が1,000万円程度あるケースを考えましょう。個人事業のままだと高い税率が適用され、税金と社会保険料で半分近くが持っていかれる可能性もあります。しかし法人化して適切に役員報酬を設定し、会社の経費として落とせるものは経費計上すれば、トータルの税負担率を20〜30%程度まで下げることも十分に可能です。極端な例ではありますが、条件次第では年間数十万円以上の節税が実現できるケースもあります。

もちろん、節税効果が見込めるかどうかは利益規模に左右されます。後述するように、利益が年数百万円程度に留まる段階では法人化による節税メリットよりコストの方が大きいかもしれません。しかし、ある程度利益が出てきた場合には法人化による税率引き下げメリットがコストを上回り、最終的な手取り額増加につながる可能性が高まります。当税理士事務所では、お客様の利益規模に応じた節税対策のシミュレーションも行っております。法人化すべきか判断に迷う場合はお気軽にご相談ください。

※法人税の軽減税率…資本金1億円以下の中小法人は、年間所得800万円までは15%(令和5年度時点)の法人税率が適用され、800万円超部分は23.2%の税率が適用されます。別途、地方法人税や法人事業税・住民税が課されますが、トータルでも個人の高所得時より低い実効税率となります。なお、個人事業主には青色申告特別控除(最大65万円)などがありますが、法人化による節税メリットと比べると規模が限定的です。青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。

法人格を取得することは対外的な信用力アップにつながります。 理容室を法人化すると、法人名(会社名)で登記され、誰もが法務局で存在を確認できる正式な事業体となります。これは金融機関や取引先にとって「しっかりと組織化された事業である」という安心材料となり、融資審査や取引審査で有利に働きます。

特に金融機関から設備資金や運転資金の融資を受けたい場合、個人事業主よりも法人の方が信用評価が高くなる傾向があります。事業計画にもよりますが、新たに店舗を増やすための融資交渉や、改装資金の借入などでも、法人の方が承認を得やすいのが実情です。実際、「売上が順調に伸びてきたので2号店を出したいが、銀行融資を受けるには法人化した方が良いのでは?」という相談も多く寄せられます。

また、補助金や助成金など公的支援策の対象が広がる点も信用力に関連したメリットです。法人格であれば、中小企業向けの各種補助金・助成金に応募できるケースが増え、自己資金を温存しつつ事業拡大を図ることも可能です。例えば、従業員を雇用する際の助成金や、新規設備導入に対する補助金など、個人事業では対象外でも法人なら受給できる制度があります。こうした資金面のサポートを得られれば、理容室経営のさらなる発展に繋げられるでしょう。

以上のように、法人化により社会的信用度が向上すると資金繰りや取引面での選択肢が広がります。理容室という業態でも、金融機関からの評価が上がれば大きな強みとなりますので、将来的な融資ニーズがある方は法人化を検討する価値が高いでしょう。

法人化は人材面や事業展開面にもプラスの影響をもたらします。まず、人材採用においては応募者に与える印象や待遇面で有利です。求人票を見る求職者の立場からすると、「法人(会社)=しっかりした雇用環境が整っていそう」というイメージがあり、個人経営より安心感があります。また法人になると社会保険への加入義務が発生しますが、裏を返せば求人に「社会保険完備」と明記できるようになり、人材募集時のアピールポイントになります。厚生年金や健康保険に加入できる職場は福利厚生が整っている証拠でもあり、優秀な人材が集まりやすく定着もしやすくなるでしょう。

実際、従業員が増えてきた理容室オーナーの中には「法人化して社会保険を整備した途端、人手募集への応募が増えた」「従業員の離職率が下がった」という声もあります。法人化によって従業員に安定した雇用環境を提供できることは、ひいてはサービスの質向上やお店の評判アップにもつながります。

次に、事業拡大のしやすさです。法人は組織として規模拡大に対応しやすい器と言えます。例えば、将来的に多店舗展開(二号店・三号店の出店)を考えている場合、法人の方が経営管理を体系立てて行いやすいメリットがあります。法人名義で複数の店舗用不動産契約を結んだり、各店舗ごとに部門管理を行ったりしやすく、銀行融資も含めた資金調達面でも計画を立てやすくなります。また、会社という形であれば出資を受け入れて資本金を増強したり、共同経営者を迎えることも制度上可能です(株式発行や持分譲渡による)。個人事業ではオーナー1人に依存する形ですが、法人なら組織的・継続的に事業を拡大していける土台が作れます。

さらに、法人は「有限責任」である点も事業拡大時には安心材料です。仮に複数店舗経営の中で一店舗が不振に陥ったり事故・トラブルが発生しても、法人の財産範囲内で責任を負う形となり、オーナー個人の財産までダイレクトに危険に晒すリスクを抑えられます(※個人保証や連帯保証を伴う借入の場合など例外もあります)。このリスク管理のしやすさは、大胆なチャレンジをする際の精神的支えにもなるでしょう。

以上のように、法人化は人の面・物の面の両方でスムーズな事業拡大を後押ししてくれます。理容室を将来的にチェーン展開したい、スタッフをどんどん育てて店舗を任せたい、といった明確なビジョンがある方は、早めに法人化して組織基盤を整えておくことをおすすめします。

良いことばかりに見える法人化ですが、当然ながらデメリットや負担増となる点も存在します。ここでは、理容室を法人化する際に特に注意すべき主なデメリットを挙げます。法人化の判断にあたっては、これらのマイナス面も十分に考慮しましょう。

法人を設立・維持するには金銭的コスト事務的手間の両面で負担が発生します。設立時には定款の作成や認証、法務局への登記申請などが必要で、登録免許税や定款認証費用としておよそ20〜25万円程度の費用がかかります(株式会社を設立する場合。合同会社なら費用はやや抑えられますが信用度で株式会社を選ぶケースが多いです)。また、法人印鑑の作成費用や各種証明書取得費用など細かな支出も発生します。

設立後もランニングコストがかかります。まず法人住民税の均等割として、赤字で利益がゼロの期でも毎年最低7万円程度(資本金1,000万円以下の場合)の税金負担があります。さらに事業年度ご決算ごとの税務申告が必要で、専門家に依頼すれば顧問料・申告料が発生します(当税理士事務所ではリーズナブルな料金設定で決算申告までサポート可能ですが、市場相場としては年間20〜50万円程度の会計・税務コストを見込むケースもあります)。自社で会計ソフトを購入・利用する場合にもソフト代や時間的コストがかかります。

事務手続き面の手間も増加します。法人化すると、日々の記帳から給与計算、源泉所得税の納付、社会保険の手続き、各種届出など、個人事業時代には無かった事務が色々と発生します。小規模な理容室とはいえ、「社長兼経理」となってすべてをこなすのは容易ではありません。後述するように、これら事務負担を軽減するため専門家に依頼したり、クラウド会計ソフト(例:弥生会計やfreee等。当税理士事務所でも弥生会計データ対応可能です)を活用することも検討しましょう。

また、法人を一度作ると簡単には畳めない点も留意が必要です。事業がうまくいかず廃業する場合でも、法人の解散・清算には手続きを踏む必要があり費用もかかります。個人事業なら廃業届を出すだけで済むところ、法人だと清算人を立て登記を抹消し…と時間とコストがさらにかかります。将来にわたり長く運営していく覚悟が無いと法人化の恩恵を十分に享受できません。

このように法人化には初期費用と継続費用、そして日々の事務作業負担というコストが伴います。節税額や信用力向上によるメリットと天秤にかけて、それでもプラスが大きいと判断できるかどうか、慎重に見極めることが重要です。

法人化すると、社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入が強制されます。法人は従業員数に関わらず適用事業所となり、社長(役員)本人も含め従業員は全員、会社を通じて厚生年金・健康保険に加入する義務があります。これはつまり、会社が毎月支払う社会保険料の負担が発生することを意味します。

具体的には、従業員(役員含む)の給与に対しておおむね総額14%前後(健康保険約5%+厚生年金約9%)を会社が社会保険料として負担します(本人も同額負担)。たとえばオーナー兼理容師である社長自身に月給30万円を支給すると、会社はその約15%にあたる4万5千円前後を毎月社会保険料として納めることになります。年間では約54万円もの会社負担です。同様に、スタッフに支払う給与についても会社負担分が発生します。個人事業で国民健康保険・国民年金に加入していたときと比べ、社会保険料の負担は大幅に増えることになります。

一方、個人事業主の場合は常時従業員5人未満であれば厚生年金・健康保険への加入義務はありません(業種による。理容業は5人以上で強制適用)。そのため、従業員が数名規模であれば国民健康保険・国民年金で済ませていたケースも多いでしょう。法人化すると規模の如何に関わらず社会保険加入となるため、「社員が自分一人だけど厚生年金に入らねばならない」という状況も起こります。特に若い創業期にはこの負担増を重く感じるかもしれません。

ただし考えようによっては、前述のように「社会保険完備」は人材採用面でのアピール材料にもなります。またオーナー自身にとっても、将来受け取れる年金額が国民年金より厚生年金の方が増える、副業で収入がある家族も被扶養者にすれば保険料負担なしで健康保険に加入できる等のメリットも一応あります。とはいえ総じて短期的にはコスト増となるため、この点は法人化のデメリットとしてしっかり認識しておきましょう。

社会保険料負担を少しでも抑える工夫としては、後述する社宅制度の活用などが考えられます。社宅を利用すれば住居手当分を給与から外すことができ、その分給与(報酬)額を低めに設定できるため社会保険料の基礎を下げる効果があります。こうした方法で適正な範囲で報酬額をコントロールし、社会保険料負担を軽減する節税対策も可能です(詳しくは「社宅制度」の項で解説します)。

法人化すると、会計・税務処理の難易度が格段に上がります。個人事業主の場合、現金主義的な簡易帳簿でもある程度は許容されますし、青色申告決算書の作成も比較的シンプルです。しかし法人は必ず複式簿記による帳簿管理と決算書(貸借対照表・損益計算書など)の作成が必要となり、会計知識が不可欠です。日々の取引をすべて仕訳記帳し、減価償却や棚卸資産の評価なども正確に処理しなければなりません。経理の専門知識がないままでは対応しきれず、専門家(税理士)や会計ソフトの力を借りる必要が出てくるでしょう。

また税務申告書類の複雑さも桁違いです。法人税の申告書は別表と呼ばれる多数の様式から成り、税務調整や各種別途控除・加算の計算など専門知識なしでは太刀打ちできません。消費税についても、課税事業者になれば原則として事業年度ごとに確定申告が必要ですし、源泉所得税の納付や法定調書の提出など法人特有の税務手続きも増えます。日々の給与計算と源泉税管理も重要な業務です。従業員や役員に給与・賞与を支給する場合、その都度源泉所得税を天引きして納付し、年末調整を行う必要があります。個人事業主として一人でやっていたときには無かった煩雑さです。

加えて、税務調査のリスクにも注意が必要です。法人の場合、帳簿や経費の管理がずさんだと税務署から指摘を受けやすく、場合によっては税務調査(経営規模によっては数年ごとに実地調査が入ることも)につながります。特に同族会社である理容室法人では、オーナー個人と会社の経理を明確に分けることが重要です。個人の生活費を会社経費と混同しない、家族への給与支給は適正水準にする、といったガバナンスを意識しないと、税務上問題視される可能性があります。

以上のように、法人化すると経理・税務処理は複雑化し高度な専門知識が要求されます。会計ソフトの導入や専門家への相談は必須と考えてよいでしょう。当税理士事務所でも、弥生会計をはじめ主要な会計ソフトに対応しつつ、理容室経営者の方が本業に専念できるよう経理・申告業務をサポートしております。特に初めての決算期には分からないことだらけだと思いますので、早めに税理士に相談いただくことをお勧めします(税務調査への対応について不安がある方は、下記のページも合わせてご参照ください)。

では、具体的にどのようなタイミングで法人化を検討すべきか、判断基準となるポイントを解説します。理容室の規模や収益状況によって最適なタイミングは異なりますが、一般的によく言われる目安をまとめました。これらを参考に、ご自身の状況に当てはめてみてください。

法人化を検討し始める一つの目安が、年間の利益(所得)900万円前後に達したときです。前述のとおり、日本の法人税率は中小法人の場合、課税所得800万円以下の部分が15%と低く抑えられています。一方で個人の所得税・住民税は累進課税で、課税所得が695万円を超えると税率は住民税含め約33%、900万円超では約43%にもなります。つまり利益水準が900万円を超える頃から、個人より法人の方が税率面で有利になるケースが多くなるのです。

実際、利益500〜900万円程度を一つの範囲として「そろそろ法人化した方が節税メリットが大きいかも」と言われます。利益900万円を超えてくれば法人化でかなりの税負担軽減が期待できるでしょうし、500万円台後半〜600万円台でも他の要素次第で法人化メリットが出始めることがあります。もちろん経費の状況や扶養家族の有無など個別要因で変わりますが、少なくとも年900万円超の利益が安定的に見込めるなら法人化を強く検討すべき段階と言えます。

例えば、年間利益が800万円の場合をシミュレーションすると、個人事業主のままだと所得税・住民税で約180万円前後(社会保険除く)の負担になるのに対し、法人にして役員報酬適正額を設定すれば法人税等は100数十万円+オーナーの所得税と住民税少々で済む、といった具合にトータルの税負担を数十万円圧縮できる可能性があります。利益が大きくなるほどこの差は開く一方です。

加えて、年間900万円以上利益が出る規模になってくると、事業用資産の購入や将来の蓄えなど節税策の幅も広がる段階です。法人であれば役員退職金の引当や法人保険の活用など将来を見据えた節税が可能になるため、利益規模が大きくなったら早めに法人化して長期的な税務戦略を立てるのも有効でしょう。

補足: 年間利益とは経費や青色申告控除等を差し引いた後の最終的な事業所得を指します。900万円という数値は目安であり、業態や経費率によって実際の分岐点は上下します。当税理士事務所では、個々のケースで法人化による節税試算を行い、ベストなタイミングをアドバイスしております。迷われる場合はお気軽にご相談ください。

年間売上(年商)が1,000万円を超えたら、消費税の扱いについても法人化を視野に入れる必要があります。日本では、基準期間(個人事業主の場合は前々年)の課税売上高が1,000万円超だと消費税の納税義務が生じます。個人事業主ですと、開業から2年後以降に年商1,000万円を超えるとその2年後から消費税課税業者になります。また前年度上半期(1〜6月)の売上が1,000万円超でも翌年課税となる場合があります。

一方、法人を資本金1,000万円未満で新規設立した場合、原則として設立1期目と2期目は消費税が免除(免税事業者)となります。つまり、個人事業で消費税課税が目前に迫っている場合でも、タイミング良く法人化すれば最長2年間消費税の納税を回避できる可能性があります。これは大きな節税メリットです。消費税率は現在10%ですから、年間売上が例えば1,200万円で経費があまり掛からない業態なら、単純計算で年間100万円近い消費税負担が発生するところを、法人化により免税期間中は支払わずに済むわけです。

ただし留意点として、単に消費税を逃れるためだけの法人化には慎重さも必要です。法人化すれば上述のようなコスト増も伴いますし、利益が少ない状態で無理に法人化してもトータルでは損になる可能性もあります。消費税の負担額と法人化コスト・他のメリットを総合的に比較して判断することが大切です。

年商1,000万円前後の理容室オーナー様からは、「消費税を支払わずに済むなら法人化した方が得ですよね?」というご質問をいただきます。確かに売上規模が大きく消費税負担が重くなりそうなら、法人化で2年間免税を享受しつつ、その間に節税資金を設備投資や貯蓄に回す戦略は有効です。その後も基準期間における売上が1,000万円を超え続ければ法人も3期目以降は課税事業者になりますが、一度得た2年分のキャッシュフローの猶予は事業拡大の追い風となるでしょう。

なお、2023年以降は適格請求書等保存方式(インボイス制度)の開始により、免税事業者だと取引先から消費税額の仕入控除を敬遠されるケースも出てきています。しかし理容室はお客様が消費者(一般の方)であることが多く、インボイス制度の影響は比較的限定的です。このあたりも踏まえ、消費税対策としての法人化を検討すると良いでしょう。(消費税について詳しく知りたい方は下記のページをご覧ください。)。

事業計画の面で、多店舗展開従業員の本格的な増員を考え始めたタイミングも法人化の検討どきです。理容室を「一国一城の主」として1店舗のみ自分の腕で回していくのであれば個人事業でも問題ありませんが、店舗数を増やしてチェーン化したい、従業員を育てて事業規模を拡大したいというビジョンがあるなら、早めに法人組織にしておく方がスムーズです。

複数店舗を運営するには、人の管理・お金の管理ともに組織だった仕組みが必要です。法人化しておけば、法人名義で店舗毎の銀行口座を持ったり、店舗責任者に一定の権限委譲をする社内ルールを整備したりと、経営管理の体制を作りやすくなります。社内規程を整え役職を設けるなど組織運営もしやすく、単なる「店主と従業員」から「会社の上司と部下」という形でマネジメントもしやすくなるでしょう。

また、従業員を増やしていくなら前述の社会保険完備の話も出てきます。個人事業では5人未満なら社会保険任意適用でしたが、5人以上雇用する規模を本格的に考えるなら結局厚生年金への加入が必要になります。であれば、いっそのこと法人化して会社として社保に加入し、人材採用・定着を促進する方が理にかなっている場合も多いです。法人化により労務管理も一元化できますし、求人募集でも「社会保険完備・会社組織」となるので良い人材を確保しやすくなります。

資金面でも、店舗数を増やす際には前述のとおり金融機関からの融資が欠かせません。法人化によって融資を引き出しやすくなることは大きな追い風です。また、自治体や商工会などの開業支援策(補助金・融資あっせん等)も法人の方が対象枠が大きかったり、信用保証の枠が広がるケースもあります。「自分の腕一本」から「組織で戦う経営」へ舵を切るタイミングでは、ぜひ法人化をご検討ください。

ここまで既存の個人事業からの法人化を前提に話してきましたが、開業当初からいきなり法人を設立するケースもあります。理容室の場合、新規開業時はまず個人事業主としてスタートする方が多い印象ですが、状況によっては最初から会社形態で始めた方が良い場合もあり得ます。

例えば、「開業初年度から利益がかなり出る見込みがある」「親族や共同経営者と出資し合って最初からしっかり会社組織で始めたい」「銀行から開業資金の融資を受ける条件として法人化が望ましいと言われた」等のケースです。これらの場合、開業届の提出と同時に法人設立登記も行い、スタートから法人として事業を行うことになります。

開業時から法人化するメリットは、後から組織変更する手間が省けることです。途中で法人化すると、銀行口座や各種契約、許認可の名義変更手続きが発生します。最初から法人ならそうした変更が不要で、経理体制も最初から法人用に構築できるためスムーズです。また、ブランドイメージ的にも「〇〇株式会社」として開業することで、地域や取引先に対し最初から信用を得やすいという面もあるでしょう。

ただし、開業直後は売上が読めない中で法人維持コストがかかるリスクもあります。初年度は設備投資などで赤字になることも多く、その場合でも前述の均等割7万円は払わねばなりません。最初から法人にすべきか否かは、事業計画と資金繰りを踏まえて慎重に判断しましょう。当税理士事務所では、理容室の開業支援サービスの一環として、法人化するか個人事業でスタートするかのご相談にも応じております。創業段階から専門家のアドバイスを受けたい場合はぜひご活用ください。開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。

次に、法人化することで可能になる主な節税策についてご紹介します。個人事業主のままでは利用できない、または効果が限定的な節税ポイントが法人には数多く存在します。ここでは代表的なものとして以下の4つを解説します。

  1. 役員報酬の設定と給与所得控除の活用
  2. 家族への給与支給による所得分散
  3. 経費にできる範囲が広がる
  4. 消費税の納税タイミングをコントロール

理容室を法人経営する上で知っておきたい節税対策ばかりです。適切に活用すれば大幅な税負担軽減につながりますので、ぜひ参考にしてください。その他の一般的な節税対策については下記のページもご参照ください。

法人化後の節税策としてまず挙げられるのが、役員報酬の活用です。前述したように、法人ではオーナーに対して役員報酬という形で給与を支払うことができます。この役員報酬は法人の必要経費(損金)となり、その分だけ法人の課税所得を圧縮できます。さらに、オーナー自身は給与所得者として所得税の計算を受けることになるため、給与所得控除が適用され大幅な非課税枠を得ることができます。

給与所得控除額は収入に応じて決まりますが、例えば年収500万円なら約154万円、800万円なら約200万円超が控除されます。個人事業主の場合、自分の事業所得にこのような控除はありませんので、給与所得控除の存在そのものが大きな節税メリットと言えます。法人化して役員報酬を支給することで、同じ利益額でも課税対象となる所得金額を大きく圧縮できるのです。

もう一点、所得分散(分離課税化)による節税効果もあります。個人事業主の場合、事業の利益は全て本人一人の所得となり累進課税で高税率が適用されます。法人にして役員報酬を支給すると、その分会社の利益は減りますが、オーナー個人の給与所得としては分離され別個に課税されます。会社は法人税、個人は所得税という形で税率の低い部分を二重に使えるようになるイメージです。極端な例ですが、利益1,000万円を個人一人で稼いだ場合と、法人で500万円ずつ会社利益と役員報酬に分けた場合とでは、後者の方が低率区分を二重に使える分、税額が少なくなります。

ただし、役員報酬を使った節税策を最大限に活かすには適切な報酬額の設定が重要です。報酬を出しすぎると今度は個人の高額所得となってしまい税率が上がりますし、逆に少なすぎると法人の利益が大きく出て法人税がかさんでしまいます。会社利益と役員給与のバランスを見極めてトータルで最も税負担が低くなるポイントを探る必要があります。また、役員報酬は基本的に毎期初めに定額を決めたら1年間は原則として変更できません(期中で増減させると税務上損金不算入となる可能性があります)。そのため、事前の綿密なシミュレーションと計画が欠かせません。

当税理士事務所では、オーナーご家族の生活費や今後の展望も踏まえ、最適な役員報酬額の設定についてアドバイスしております。給与所得控除を最大限に活かしつつ、法人・個人トータルで節税できるようサポートいたします。

節税策の二つ目は、家族を従業員(役員)として給与を支給することで所得分散を図る方法です。法人では、オーナーの配偶者やご家族を会社の役員や従業員にして給与を支払うことが可能です。もちろん実際に業務に従事してもらう必要はありますが、家族に対して適正な給与を払えばそれも会社の経費となり、かつ家族それぞれの所得として税計算されます。

これにより、一家全体での所得税・住民税の総額を抑えることができます。例えば、夫婦で理容室を経営している場合、夫に500万円の所得が集中するより、夫と妻それぞれ250万円ずつ給与所得があった方が各人の税率は低く済みます(配偶者控除等との兼ね合いもありますが)。さらに給与所得控除も夫婦それぞれに適用されますから、税負担の軽減効果は大きくなります。

個人事業主にも配偶者や親族に給与を支払う専従者給与制度がありますが、法人の場合はより柔軟かつ実効的に所得分散が可能です。専従者給与は事前に税務署へ届出が必要で金額も一定の範囲内でないと認められないなど制約がありますが、法人の従業員給与であれば家族といえど一般従業員と同様に扱えることもあります。極端に高すぎる給与は問題視されますが、仕事の内容に見合った適正水準であれば全額経費にできます。

注意点として、家族への給与も仕事内容・貢献度に見合った金額である必要があります。全く働いていない家族に給与を支払ったり、相場とかけ離れた高額給与を支給したりすると、税務上否認されるリスクがあります。きちんと出勤実態を作り、タイムカードや業務日誌を備えるなどの対応も重要です。

なお、法人では配偶者を役員(取締役)に登記して役員報酬を支払うこともできます。夫婦で共同経営的に理容室を切り盛りしている場合、配偶者を役員としある程度まとまった役員報酬を支給するといった方法も有効です。この場合も先述の給与所得控除を夫婦それぞれに享受できるため、大きな節税となります。ただし役員にすると社会保険の加入義務も伴いますので、給与額とのバランスや会社の業績を見ながら検討しましょう。

法人化すると、経費として認められる費用の範囲が広がる点も見逃せません。個人事業主でも事業に関係する支出は経費計上できますが、法人の方が制度上経費算入できるメニューが豊富です。いくつか例を挙げます。

  • オーナー報酬の経費算入: 先ほどから述べている通り、オーナー自身への支払(役員報酬)を会社の経費にできるのは法人ならではです。個人事業主だと自分の取り分は利益であって経費とはなりませんから、大きな違いです。
  • 社宅・住宅関連費の経費算入: 法人名義で社宅を契約し、オーナーや従業員に低額で貸与することで、家賃の大部分を会社経費にできます(詳細は後述の「社宅制度」で解説)。個人事業主だと自宅兼店舗の場合に按分計上する程度ですが、法人なら住居費を大胆に経費化するスキームが可能です。
  • 自動車やバイク等の経費: 理容室の業務で使う車両があるなら、法人名義で保有すれば減価償却費や維持費をすべて会社経費にできます。個人事業でも事業用途分は経費にできますが、法人の方が公私の切り分けが明確になる分堂々と経費計上しやすくなります。
  • 旅費日当の支給: 法人は出張や講習会参加の際に役員・従業員に対して旅費日当(出張手当)を支給できます。旅費日当は一定の範囲内であれば受け取った側の非課税所得となり、会社にとっては損金算入できます。例えば1日あたり数千円の出張手当をオーナーに支給すれば、それだけで会社の利益を圧縮でき、本人にも非課税で手元に残ります。個人事業では自分に手当を出す概念がないので使えない節税手法です。
  • 福利厚生費の充実: 法人は従業員の慰労や健康増進のための費用を福利厚生費として幅広く経費にできます。社員旅行や懇親会費用、制服や作業着の支給、インフルエンザ予防接種費用など、事業に必須とはいえない費用でも福利厚生として認められる場合があります。理容室規模ではそこまで豪華な施策は無いかもしれませんが、飲食代などもレクリエーションであれば非課税で福利厚生費とすることが可能です(個人事業では基本的に事業主や家族の飲食は生活費と見做されてしまいます)。
  • 接待交際費の取り扱い: 中小法人なら交際費は年間800万円まで全額損金算入できます(資本金1億以下の場合)。個人事業でも取引先との打合せ飲食代等は経費にできますが、法人の方が税法上のメリットが大きい枠組みになっています。

以上のように、法人は経費計上できる幅が個人より広いため、結果として課税所得を低く抑えることができます。ただし、経費計上は何でもありになるわけではなく、あくまで事業に関連する支出であることが前提です。法人の場合は事業とプライベートの財布をしっかり分け、経費の線引きを明確にしましょう。経費の範囲拡大メリットを享受しつつ、税務調査で指摘されない健全な経費処理を行うには、専門家のチェックも有用です。当税理士事務所でも、理容室経営者の皆様にどこまで経費計上できるか合法的な節税を心がけてアドバイスいたします。

法人化後にぜひ活用を検討したい節税策として、社宅制度があります。社宅とは会社が借り上げた住宅を社員に低廉な賃料で貸与する制度です。理容室オーナー兼社長であるあなた自身も社員(役員)ですから、この社宅制度を利用することで自宅の家賃負担を軽減し、かつ社会保険料も削減できる可能性があります。

社宅制度とは、企業が従業員のために住宅を用意し、低廉な料金で貸与する福利厚生制度です。一般企業では社員寮や家族社宅などが典型ですが、小規模企業のオーナー社長でもこの制度を自社に導入することが可能です。

具体的には、会社(法人)が住宅を賃貸契約して借り上げ、その住宅に役員または従業員が住む形を取ります。居住者(オーナー社長)は会社に対して一定の賃料を支払いますが、市価よりずっと低い金額で構いません。税法上、社宅として役員等に貸与する場合の最低賃料の目安が定められています。結果的に市場家賃の半額程度を居住者から徴収すれば要件を満たすケースが多いです。裏を返せば、残り半分の家賃は会社負担にできるということです。

理容室オーナーでも、自分が住む家を社宅として会社名義で契約し直せば、この制度を利用できます。会社が家賃を支払い、それを経費に計上できるので、従来は個人のポケットマネーから出していた住居費を会社の費用に振り替えることができるのです。個人事業主のままでは自宅家賃を経費にするのは按分計算で一部が限度ですが、法人+社宅制度ならルールに沿って契約することで住居費の大部分を堂々と経費化できる点が魅力です。

なお、社宅として会社が契約できるのは賃貸物件に限られます。オーナーが持ち家に住んでいる場合は社宅の枠組みは使えません(会社がオーナーの家を借り上げる形にすると貸主と借主が実質同じであり、税務上もメリットが出にくいです)。したがって、現在賃貸のマンションやアパートに住んでいる場合に有効な節税策となります。

また、理容室そのものが自宅併設の店舗の場合などは少し話が複雑になります。店舗部分と居住部分を明確に区分し、店舗部分は事業用地として会社契約、居住部分は社宅契約、といったスキームも考えられなくはないですが、賃貸契約上難しい場合もあるでしょう。このあたりは大家さんや不動産管理会社の理解も必要です。

大切なのは、社宅契約は個人ではなく会社が行うことです。現契約をオーナー個人名義で結んでいる場合は、法人設立後に貸主の承諾を得て契約名義を法人へ変更するか、改めて法人と契約し直す必要があります。ここをクリアすれば、理容室オーナーでも社宅制度を利用することができます。

社宅制度を活用すると、税金面と社会保険面で二重のメリットが得られます。

まず税金面では、社宅の家賃を会社が負担することで法人の経費が増え、法人税の課税所得を減らせる効果があります。例えば月20万円の物件に社長が住んでいるケースで考えると、社長個人が全額払っていたら会社経費0円ですが、社宅にして会社が負担すれば年間240万円が会社経費になります。法人税等の実効税率が仮に30%だとすると、それだけで年間約72万円の税金が減る計算です。

一方、社長個人は社宅の賃料として会社に低額な使用料を支払います。上記例で最低賃料が仮に月5万円だったとすると、年間60万円を会社に支払うだけで残り180万円分の家賃は会社負担となります。個人側から見れば、本来なら税引後の手取りから支出していた住居費180万円を払わずに済んだ形です。その分、個人の可処分所得が増える効果があります。

さらに重要なのが社会保険料の軽減効果です。社宅制度を使うと、オーナー社長に高額の住宅手当を支給しなくても良くなります。本来なら家賃相当分をカバーするため給与(役員報酬)を多めに設定していたかもしれませんが、社宅があれば給与を上げる必要がありません。給与が抑えられれば、そこに掛かる厚生年金保険料・健康保険料も抑えられます。例えば月20万円相当の住宅手当を支給しなくても済めば、その分約14%に当たる2.8万円/月(会社負担分だけでなく本人負担分合わせると約5.6万円/月)の社会保険料負担が削減できる計算です。

また、税務上も社宅の貸与は適正な賃料を受け取っていれば役員給与の現物支給(経済的利益)に該当しない扱いとなります。つまり社長が受けている住宅の便益について追加課税されることは基本的にありません。適正な範囲の賃料負担さえしていれば、会社負担分の家賃について社長個人の所得税・住民税も非課税なのです。

まとめると、社宅制度を導入すれば:

  • 会社: 家賃の大部分を経費にでき法人税が減る
  • 社長個人: 実質的な住宅費負担が減り手取りが増える&その分給与を下げられるので所得税・社会保険料も減る

という二重のメリットが生まれます。まさに経費計上と福利厚生の合わせ技による節税スキームと言えるでしょう。

社宅制度を利用する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。正しく運用しないと税務上認められなくなる恐れもありますので、以下を確認してください。

  1. 契約名義を法人にする: 繰り返しになりますが、社宅として扱うには賃貸借契約の借主が法人である必要があります。契約書や賃貸人の承諾書など、形式面をきちんと整えましょう。個人名義のまま会社が家賃を立替払いしているだけでは、税務上は社宅と認められず、会社負担分が役員への給与(現物支給)と見做されてしまいます。
  2. 入居者から適正な賃料を徴収する: 社長(または従業員)から会社が徴収する賃料が低すぎると、低額分が給与課税されてしまいます。税法で定める最低賃料を下回らない水準で賃料設定してください。一定の計算式で出る金額以上を徴収していれば問題ありません。迷う場合は税理士に計算してもらうと安心です。
  3. 住宅の用途区分を明確に: 社宅として借りた物件は基本的に居住目的です。店舗兼住宅の場合、事業で使用する部分と居住部分を明確に分け、事業部分は通常の事務所契約または店舗賃料として計上し、居住部分のみ社宅扱いにするなどの工夫が必要になるケースもあります。
  4. 持ち家の場合は別の策を検討: オーナーが持ち家に住んでいるケースでは社宅スキームは使えません。その場合、会社から家賃をもらうと逆に不動産所得が個人に発生しややこしくなります。持ち家の方は、小規模企業共済を利用して将来の退職金原資を積み立てる等、別の節税策を検討しましょう。
  5. 社宅規程の整備: 社宅を導入するなら、社内規程として「社宅制度規程」を作成しておくとベターです。貸与対象者や賃料計算方法、入退出手続き等を定めておけば、税務調査時にも恣意的ではない運用として説明しやすくなります。

これらの点を守っていれば、社宅制度は理容室経営者にとって非常に強力な節税ツールとなります。導入にあたっては不動産オーナー(大家さん)への交渉や契約変更など実務的ハードルもありますので、難しい場合は当税理士事務所までご相談ください。社宅制度の導入支援や税務上のシミュレーション等、専門家としてバックアップいたします。

法人化すると、役員退職金という形で将来大きな節税ができる可能性があります。これは、個人事業主にはない法人ならではのメリットです。理容室経営は体力勝負の側面もありますので、オーナーご自身の引退時に備えた退職金制度について知っておきましょう。

法人では、役員(社長を含む)が退職する際に退職金(役員退職慰労金)を支給することができます。役員退職金はその支給額の全額を会社の損金(経費)に算入できるため、支給した事業年度の法人税を大きく減らす効果があります。一方で、受け取る個人(元社長)はその退職金に対し退職所得控除という非常に大きな控除を受けられます。さらに退職所得は他の所得と分離して1/2だけ課税される特例もあり(勤続年数5年超の場合)、税率面でも大幅に優遇されています。

具体例を挙げると、勤続30年で退職する場合、退職所得控除額は1,500万円(20年まで800万円+以降70万円×10年)となります。もし退職金が1,500万円以下であればその全額が所得税・住民税非課税になります。仮に2,000万円の退職金を受け取った場合でも、超過分500万円の半分=250万円にしか課税されません。数千万円規模の金額でも、退職金で受け取ればかなり低い税負担で済むのです。これは、同じ金額を現役時代に役員報酬で受け取っていたら累進課税でがっつり税金を取られていたであろうことを考えると、破格の優遇措置と言えます。

個人事業主にはそもそも退職金という概念がないため、このメリットは享受できません。もちろん個人事業主でも、小規模企業共済に加入して積立を行い将来共済金(退職金代わり)を受け取る方法はあります。共済金は退職所得扱いになるため節税効果がありますが、掛金上限(月7万円)から算出される共済金額は高が知れています。それに対し法人の役員退職金は、会社の業績と功労に応じてまとまった額を準備できる点でメリットが大きいです。

理容室オーナーとして長年頑張ってきた自分へのご褒美を、税負担を最小限にして会社の経費で支給できるのが役員退職金制度なのです。受け取った本人側では上記の通りほとんど税金がかからず、社会保険料も不要で、一度に大きな現金を手にすることができます。これを老後の資金に充てられますし、万が一相続が発生しても死亡退職金には相続税の非課税枠(500万円×法定相続人数)もあります。

このように、役員退職金は節税と資金確保の両面で非常に有利な制度です。法人化すればこの選択肢が得られるという点は、長期的視野で見た大きなメリットと言えるでしょう。

役員退職金には、税金面だけでなく社会保険料が一切かからないというメリットもあります。厚生年金保険料や健康保険料といった社会保険料は、基本的に在職中の給与・賞与に対して課されます。退職によって支払われる退職一時金は「長年の勤務に対する功労金」という性質上、給与とはみなされません。したがって、その支給額に対して厚生年金や健康保険の保険料を納める必要はありません。

これは大きな違いです。もし在職中に役員報酬や賞与として2,000万円を受け取ろうとしたら、その都度会社と個人から合計約28%(概算で560万円)もの社会保険料が差し引かれていた計算になります。しかし退職金で2,000万円を受け取れば、社会保険料はゼロです。労働保険(雇用保険・労災保険)についても同様で、退職金には雇用保険料もかかりません。このように、退職金は税金だけでなく社会保険の面でも非常に優遇されています。

以上のように、役員退職金は「税金が安い」「社会保険料がかからない」という二重のメリットを持つ資金受取手段です。法人化すればこの恩恵を自らの将来に活かせる点は大きいでしょう。

ただし、役員退職金による節税を最大限活用するためには、適正な金額設定計画的な準備が欠かせません。

税務上、役員退職金は「その役員の在任期間の功績等に照らして相当と認められる金額」であることが求められます。不相当に高額な退職金は、法人の経費として認められなかったり、一部を役員賞与(損金不算入)とみなされたりするリスクがあります。業種にもよりますが、一般的には「最終報酬月額×在任年数×功績倍率(役職に応じた係数)」といった計算式で相場感が語られます。中小企業のオーナー社長の場合、功績倍率は1.5~3倍程度とされるケースが多いです。例えば、最終月額報酬50万円・在任30年・功績倍率2の場合、退職金相場は3,000万円という計算になります。この程度であれば妥当と判断されやすいですが、明らかにそれを超える金額(例えば最終報酬の10年分以上など)は注意が必要でしょう。

また、法人にとって退職金の支払いは大きなキャッシュアウトフローです。十分な内部留保や準備がないと、いざ支給という時に会社のお金が足りず払えない、といった事態にもなりかねません。そうならないよう、計画的に準備を進めることが重要です。具体的には、毎期少しずつ利益を留保して純資産を積み上げておく、あるいは生命保険を活用して退職金原資を積み立てる方法もあります。例えば、法人契約の終身保険や養老保険に加入し、解約返戻金で退職金の一部を賄うといった手法は中小企業でよく使われます。保険料は一定割合が損金になりますし、計画的に資金を準備できる点で有効です。

さらに、役員任期の長さも考慮しましょう。税法上、勤続5年以下の役員に支払う退職金には先述の1/2課税優遇が適用されません。短期間で退職金を受け取ると旨味が減ってしまうため、節税のためには可能な限り長期間役員を務めることが望ましいです。理容室オーナーの場合、ご自身が引退するまでずっと代表取締役であり続けるでしょうからこの点は問題ないと思いますが、万一一時的に法人を畳んでしまうと勤続年数がリセットされますので注意してください。

最後に、退職金制度を導入する際は就業規則等への明記も検討しましょう。社長一人だけの会社だとしても、「役員退職慰労金規程」を作成して支給額の算定方法や支給手続きを定めておくと、税務上も社内手続き上もスムーズです。

以上を踏まえ、役員退職金による節税は長期戦略として計画することが大切です。法人化したらゴールではなく、その先の引退時まで見据えて、ぜひ早い段階から準備を始めましょう。当税理士事務所でも、退職金規程の作成支援や適正額のシミュレーション、保険活用のアドバイスなど、経営者の将来設計を税務面からサポートいたします。

ここまでメリット・デメリットや節税策について述べてきましたが、実際に理容室を法人化しようと思ったら必要な手続きは多岐にわたります。会社設立の基本的な流れから、設立後に行うべき各種届出まで、順を追って確認しましょう。

理容室に限らず会社(法人)を設立する際の大まかな手順は以下のとおりです。

  1. 会社の基本事項を決める: 商号(会社名)、事業目的、本店所在地、役員構成、資本金額、決算期(事業年度)などを決定します。理容室の場合、商号に「理容」「BARBER」といった文言を入れても構いませんし、業種に縛りはありません。事業目的には理容業の他、「美容業」「雑貨販売」など将来手掛ける可能性のある事業も入れておくと良いでしょう。資本金は1円からでも設立可能ですが、金融機関や取引先の印象を考慮し100万円~300万円程度に設定する方が多いです(資本金1,000万円未満であれば消費税免税の恩恵があります)。
  2. 定款の作成・認証: 会社の憲法である定款を作成します。上記基本事項を盛り込み、発起人(設立者)全員が署名押印します。株式会社の場合、公証役場で定款認証を受ける必要があり、その際に約5万円の公証人手数料と印紙税(紙定款なら4万円、電子定款なら不要)がかかります。理容室のようなサービス業なら特殊な定款条項は特にありませんが、発行可能株式総数や公告方法など法定記載事項を漏れなく記載します。
  3. 出資金(資本金)の払込み: 定款認証後、発起人は資本金予定額を所定の銀行口座に振り込みます。振込記録を払込証明書として残し、資本金の準備完了です。理容室開業資金として既に銀行融資を受けている場合、その口座を使うこともできます。資本金=手持ち資金ではないので注意しましょう(借入金は資本金とは別です)。
  4. 設立登記申請: 法人設立の本丸です。法務局にて設立登記申請を行います。必要書類は定款(認証済み)登記申請書役員就任承諾書資本金払込証明書、発起人の印鑑証明書などです。株式会社の場合、登録免許税として資本金額の0.7%(最低15万円)が必要です(電子申請だと収入印紙でなく納付金納付)。理容室だからといって特別な書類は不要ですが、会社の目的に理容業を入れているときは美容所開設届の提出予定などを聞かれることもあるかもしれません(通常はありません)。
  5. 会社設立完了: 法務局への申請から約1~2週間で登記が完了し、晴れて会社が成立します。登記が完了したら会社の登記事項証明書(登記簿謄本)会社印鑑証明書を取得できますので、必要に応じて銀行口座開設や許認可名義変更の手続きを行います。会社実印や銀行印をまだ作っていなければ作成しましょう。

以上が大まかな流れです。理容室の場合、開業にあたって保健所への理容所開設届を提出して営業許可を得ているはずですが、個人から法人に切り替える際にはこの許可の名義変更手続きも忘れずに行いましょう。営業許可は営業者単位ですので、法人設立後は営業者が個人→法人に変わるためです。所轄の保健所に問い合わせ、法人で新規開設扱いとするのか名義変更届で良いのか確認してください。

なお、「株式会社」と「合同会社」の選択について迷う方もいるかもしれません。合同会社は設立費用が安く(登録免許税6万円、定款認証不要)、運営も柔軟ですが、対外的信用力では株式会社に一歩譲る面があります。理容室の場合、取引先は個人顧客が中心なので合同会社でも問題ないとの考え方もありますが、求人募集や銀行融資等を考慮すると株式会社を選ぶオーナーが多い印象です。当税理士事務所でも、大半のお客様は株式会社設立を選択されています(※合同会社での設立を否定するものではありません。ケースバイケースです)。

会社設立の過程では専門用語や法的手続きが多く、不安な場合は司法書士や税理士などの専門家に依頼することもご検討ください。当税理士事務所では会社設立手続きについて提携司法書士と連携し、電子定款認証から登記申請までスムーズかつ低コストで代行するサービス(全国対応)も提供しております。初めてのことで戸惑う方も多いと思いますので、ぜひ遠慮なくお問い合わせください。

会社設立が完了した後も、様々な行政機関への届出や手続きが待っています。抜け漏れのないようチェックしましょう。主なものを挙げます。

  • 税務署への届出: 会社設立後、所轄税務署に対して「法人設立届出書」を提出します。設立日から原則2ヶ月以内です。また、法人も青色申告による税務メリットを享受するため「青色申告の承認申請書」を提出します(設立から3ヶ月以内かつ最初の事業年度末まで)。これを提出して承認されれば、赤字の繰越控除(10年)など青色申告特典を受けられます。さらに、給与支払いを開始した場合は「給与支払事務所等の開設届出書」を提出し、従業員や役員への給与支払事務を開始したことを届けます。従業員が常時いる場合は源泉所得税の納期の特例の申請(従業員が常時10人未満なら年2回納付にできる)も同時に行うと良いでしょう。なお、設立初年度・2年度目に消費税課税事業者を選択する場合は「消費税課税事業者選択届出書」も提出します(免税を享受するなら不要です)。最後に、個人事業から法人成りした場合、個人の廃業届や事業廃止の青色申告取りやめ届なども出しておきます。
  • 都道府県・市区町村への届出: 地方税関連の届出も必要です。都道府県税事務所と市区町村役所(東京23区なら都税事務所のみ)に、「法人設立届出書」を提出します。これは設立から1ヶ月以内など自治体によって期限が異なりますので確認してください。個人事業の廃業届もそれぞれ提出が必要です(個人の住民税・事業税関連)。
  • 社会保険の加入手続き: 法人設立と同時に社会保険(健康保険・厚生年金)の適用事業所となります。管轄の年金事務所にて「新規適用届」を提出し、会社として健康保険・厚生年金に加入しましょう。あわせて社長や従業員の「被保険者資格取得届」も提出します。設立後5日以内など早い段階での届出が求められるので忘れずに行います。社会保険料の納付は毎月発生しますので、支払方法(口座振替など)の設定も行います。
  • 労働保険の加入手続き: 従業員を一人でも雇用している場合、労災保険と雇用保険の加入が必要です。労災保険は労働者災害補償保険といい、従業員を使用する全ての法人で強制適用です。所轄の労働基準監督署に「労災保険関係成立届」および「労働保険概算保険料申告書」を提出します。雇用保険は従業員が週20時間以上働き31日以上雇用見込みがあれば適用されます。管轄の公共職業安定所(ハローワーク)に「適用事業所設置届」と「被保険者資格取得届」を提出します。理容室の場合、見習いスタッフなど雇う場合は該当するでしょう。社長一人だけで従業員0人なら雇用保険は不要ですが、労災保険はパート1人からでも必要です(社長自身は労災の対象外ですが、特別加入制度を使えば労災適用も可能です)。
  • 許認可・契約の名義変更: 個人で取得していた営業許可(理容所開設届)を法人に変更する手続きを行います。具体的には、新たに法人名義で理容所開設届を提出し直すことになるでしょう。念のために管轄の保健所に確認してください。また、お店の不動産賃貸借契約や電話・光熱費契約なども、法人名義に変更します。これにより支払いも法人の経費として処理できます。銀行口座も法人口座を開設し、今後の売上入金や支払いは極力法人口座経由に切り替えていきます。クレジットカード決済など導入している場合も、法人名義の決済口座に変更の届出をしておくと良いでしょう。

以上、設立後の諸手続きを箇条書きしました。漏れが多いのは税務署への青色申請忘れ社会保険加入の失念です。青色申請をしないと欠損金の繰越ができず、せっかく法人化しても赤字を翌年に活かせません。また社会保険未加入は法律違反となりますので必ず行いましょう(後で督促が来て遡及加入させられ、保険料と延滞金をまとめて払う羽目になります)。

これらの手続きは煩雑ですが、一度しっかりやっておけばあとは年次の決算・申告や社会保険料納付などルーチンワークです。不安であれば税理士や社労士に依頼することも検討してください。当税理士事務所でも、設立後の各種届出代行や、労務手続きについて提携社労士との連携サービスを提供可能です。

法人化の手続きは専門用語も多く、時間と労力を要します。会社設立手続きから設立後の届出まで、専門家に依頼してしまうのも賢明な選択肢です。

例えば会社設立時は定款作成や登記申請でミスがあると受理されず、開業スケジュールに狂いが生じます。司法書士に依頼すれば迅速かつ正確に登記が完了し、電子定款で印紙代4万円も節約できます。設立後の税務署・役所への各種届出も、税理士に依頼すれば漏れなく適切に行ってくれるでしょう。社会保険や労働保険の手続きも社労士に任せればスムーズです。

費用面を心配されるかもしれませんが、当税理士事務所では全国対応で会社設立~税務手続きまでフルサポートするプランをご用意しており、比較的安価な料金で提供しております。専門家に依頼することで得られる安心感や時間節約は大きなメリットです。特に本業が忙しい理容室オーナーにとって、設立作業にかかりきりになるのは避けたいところでしょう。お任せいただければ、その分開業準備や営業に専念できます。

また、専門家に依頼すれば創業時の各種助成金情報や節税アドバイスなど付加価値も得られます。当税理士事務所は開業支援の実績も豊富で、これまで多数の小規模事業者様の法人設立をお手伝いしてきました。私たち税理士法人加美税理士事務所は、お客様の創業を全力でサポートいたしますので、ぜひ安心してお任せください。

ここまで、理容室の法人化について多角的に解説してきました。メリット・デメリット、タイミングの見極め方、法人ならではの節税策、そして実際の手続きと、盛りだくさんの内容でしたがご参考になりましたでしょうか。

法人化はあくまで手段であり、最終目的は理容室経営の成功と発展です。法人化すれば確かに節税や信用力アップのメリットがありますが、一方でコスト増や手間も発生します。そのバランスを見極め、最適な道を選ぶことが肝心です。また、法人化した後も経理や節税対策、人材雇用など経営課題は常に出てきます。

そんな時こそ、私たち専門家の出番です。 税理士法人加美税理士事務所では、理容室をはじめ小規模サービス業の皆様の経営を税務・会計面から支える体制を整えております。当税理士事務所の強みは、全国対応でどこからでもご相談いただける点、そして費用をできるだけ抑えた親身なサポートを提供している点にあります。さらに、会計ソフトの弥生会計やPOSレジ連携など、お客様の現場で使いやすいツールにも対応し、日々の記帳から決算・申告までスムーズにお手伝いいたします。

法人化すべきか迷っている段階のご相談でも構いません。「うちの場合、まだ早いかな?」「節税対策は他に何ができる?」といった素朴な疑問から、具体的な開業支援・法人設立代行のご依頼まで、ぜひお気軽にお問い合わせください。当税理士事務所のスタッフ一同、理容室オーナー様の心強いパートナーとして、専門知識と経験をフル活用してサポートいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。皆様の理容室経営がますます発展することを、私たちも心より応援しております。ご不明点やお悩みがございましたら、どうぞ専門家へ相談する一歩を踏み出してください。初回のご相談は無料で承っておりますので、電話・メールなどご都合の良い方法でご連絡ください。税理士法人加美税理士事務所が全力でバックアップいたします。共により良い未来を築いていきましょう。

(※本記事の内容は執筆時点の税制・制度に基づいています。将来的に法律等が改正された場合は最新情報をご確認ください。)

よくあるご質問

FAQ

理容室の法人化にはどんな手続きが必要ですか?

法人化には、定款作成、登記申請、法人設立届出、社会保険の加入など複数の手続きがあります。登記後には税務署や都道府県への届け出、理容所としての許可再取得なども必要です。税理士法人加美税理士事務所では、提携司法書士との連携により、法人設立に関する煩雑な手続きを一括してサポートできる体制を整えています。弥生会計などの会計ソフトにも対応可能ですので、初めての法人化でもご安心ください。

理容室の法人化を検討するタイミングはいつですか?

一般的に、年間利益が900万円を超える頃が法人化を検討する目安です。この段階で法人化すれば、所得税よりも法人税の軽減税率が適用され、手元に残る利益が増える可能性があります。また、従業員を雇う予定がある方や、事業拡大を計画している方にとっても、法人化は将来的な節税や資金調達の面で有利に働きます。

法人化すると税務処理が複雑になると聞きましたが不安です。

はい、法人化後は複式簿記による帳簿作成、法人税・消費税申告、役員報酬の設定、源泉所得税の納付など、個人事業主の時よりも税務処理は複雑になります。ただし、当税理士事務所では会計ソフトを導入していないお客様でも、記帳代行やクラウド会計導入のご提案を通じて、経理業務の効率化を支援しています。全国対応のオンラインサポート体制も整えておりますので、安心してお任せください。

理容室の法人化後、家族に給料を支払うことで節税できますか?

はい、可能です。法人では、配偶者やご家族を役員や従業員にして給与を支給することにより、所得を分散させることができ、結果として全体の税負担が軽減される場合があります。ただし、実際に働いていることが前提であり、給与額は仕事内容に応じた適正水準でなければなりません。適正な給与設計についても、当税理士事務所がご相談に応じております。

理容室を法人化すると社会保険の加入は必須ですか?

はい、法人の場合は従業員の人数にかかわらず、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入が義務付けられています。オーナーである代表取締役も加入対象となりますので、個人事業時代よりも社会保険料の負担は増える点に注意が必要です。ただし、社宅制度などを活用すれば、社会保険料の負担軽減が可能です。

開業前に法人設立した方が得なケースはありますか?

はい、初年度から利益が大きく出る見込みがある場合や、創業融資・補助金の申請において信用力を高めたい場合は、開業前から法人を設立することで節税や資金調達面で有利になるケースがあります。法人名義での契約もスムーズになりますので、当初から多店舗展開などを視野に入れている方には特に有効です。開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。

法人化した理容室で社宅制度を導入するメリットは何ですか?

社宅制度を活用することで、法人が家賃の一部を負担し、その分を経費として計上できます。オーナー自身が社宅に住む場合も、適正な賃料を支払うことで所得税や社会保険料の軽減が可能になります。節税と福利厚生の両立ができる制度として、理容室オーナーにも有効な方法です。

理容室の法人化で退職金制度を導入する利点はありますか?

はい、法人化するとオーナー自身に退職金を支給できる制度を設けることが可能になり、その支給額は法人の損金として計上できます。さらに、受け取る側では退職所得控除や1/2課税が適用されるため、税制面でも非常に優遇されています。退職金の準備には生命保険を活用する方法もありますので、長期的な資金計画の一環として検討する価値があります。

理容室の法人化後、消費税の取り扱いはどうなりますか?

新設法人の場合、資本金1000万円未満であれば原則として設立後2期は消費税が免除される「免税事業者」となります。ただし、特定期間の課税売上高や給与等支払額の合計が1,000万円を超えると2期目から課税事業者になる場合もあります。消費税について詳しくは下記のページをご覧ください。

青色申告は法人でも必要ですか?

はい、法人にも青色申告制度があります。法人税申告を行うにあたって、青色申告の承認を受けていれば、欠損金の繰越控除や30万円未満の少額減価償却資産の即時償却など多くの税制優遇が受けられます。個人事業主としての青色申告とは別に申請が必要です。

理容室を法人化した際の役員報酬はどうやって決めればいいですか?

役員報酬は会社の利益計画、生活費、税負担、社会保険料負担などを考慮して設定します。税務上は期首に決定し、原則として毎月定額で支給しなければなりません。報酬が高すぎても低すぎても税負担が増えるため、適正な金額設定が重要です。当税理士事務所では報酬シミュレーションを行い、法人・個人トータルで最も有利な水準をご提案しています。

理容室法人でも経費で落とせる範囲は広がりますか?

はい、法人にすることで、社宅の家賃、役員退職金、旅費日当、福利厚生費など、個人事業主では経費にできなかった支出も計上できるようになります。事業に関連する支出であれば、税務的に正当な範囲で幅広く経費処理が可能です。帳簿保存義務や仕訳処理などの正確性が求められますので、記帳代行サービスをご活用いただくのも一つの方法です。

法人化によって理容室の節税効果が出やすくなるのはなぜですか?

法人化することで、役員報酬による給与所得控除、退職金の損金算入、社宅や家族給与の導入など、個人事業主では活用できない節税策が可能になります。また、法人税率は所得税の最高税率より低く設定されており、一定以上の利益がある場合は節税効果が顕著に表れます。節税対策について詳しくは下記のページをご覧ください。

理容室法人の決算や税務申告はどれくらい手間がかかりますか?

決算書(貸借対照表、損益計算書等)や法人税申告書の作成には高度な専門知識が必要です。個人事業と異なり、申告書類は複雑で提出先も複数にわたります。当税理士事務所では、会計ソフト未導入の方にも対応可能な記帳代行や税務申告代行サービスをご用意しており、全国リモート対応で負担軽減をサポートしています。

理容室の法人化後、税務調査のリスクは高まりますか?

法人化すると帳簿の整備義務が厳しくなるため、税務署の目もより厳密になります。特に売上と経費の区分、役員報酬や家族給与の妥当性、社宅の取扱いなどがチェック対象です。ただし、適正な経理を行っていれば必要以上に恐れる必要はありません。税務調査への対応が不安な方は、当税理士事務所の「税務調査」解説ページもご活用ください。

理容室の法人化にかかる費用はどの程度ですか?

株式会社設立であれば、定款認証費用や登録免許税などで約20~25万円が相場です。合同会社ならもう少し抑えられます。当税理士事務所では、提携司法書士と連携し、相場よりも抑えた法人設立費用をご提案できる体制を整えています。また、会計・税務顧問契約の有無によっても総コストは変わりますので、まずは無料相談をご利用ください。

法人化後、理容室の会計ソフトはどのように選べば良いですか?

会計ソフトは、仕訳入力のしやすさ、月次試算表の作成機能、クラウド対応かどうかが重要な選定基準となります。当税理士事務所では、特に弥生会計に精通しており、操作指導やデータ受け渡しに柔軟に対応しています。クラウド会計や記帳代行との組み合わせで、経理業務の効率化も可能です。

法人化するとスタッフの雇用面で何が変わりますか?

法人化により、社会保険への加入義務が発生し、雇用契約や給与支払がより制度化されます。社会保険完備であることは、求人募集時に信頼性や安心感を与え、優秀な人材の確保・定着にもつながります。雇用保険や労災保険の手続きも必要になりますが、当税理士事務所では提携社労士と連携してスムーズな導入を支援できる体制を整えています。

理容室の法人化に際し、どこまで経理を任せられますか?

当税理士事務所では、記帳代行から決算・申告までの一括対応はもちろん、会計ソフトがない方でも丸投げより安価で簡単に経理できる方法をご案内しております。仕訳入力、領収書整理、月次試算表の作成など、面倒な業務を包括的にサポートし、経営者が本業に専念できる環境づくりをお手伝いします。

開業前に事業計画書を作成する必要はありますか?

必須ではありませんが、開業準備段階での事業計画書の作成は、創業融資や助成金の申請だけでなく、経営の方向性を明確にするためにも重要です。理容室の収支計画や設備投資、集客戦略などを整理することで、現実的な経営判断が可能になります。事業計画書の作成支援については「開業支援」ページでも詳しく解説しています。

理容室を法人化すると毎月の会計業務はどれくらい増えますか?

法人化すると、給与計算・源泉所得税の納付・取引先との契約管理などが加わり、会計処理の頻度も増します。ただし、クラウド会計ソフトの活用や記帳代行サービスの導入により、作業時間を大幅に削減できます。当税理士事務所では、弥生会計をはじめとした各種ソフトの導入支援も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

法人化後の税務申告に必要な書類にはどんなものがありますか?

決算書(損益計算書・貸借対照表)をはじめ、法人税申告書、地方税申告書、事業概況説明書などが必要です。また、源泉所得税の納付書や消費税の申告書も含まれます。これらは税務知識がないと作成が難しいため、専門家による申告代行をおすすめします。消費税の扱いについては、以下のリンクもご覧ください。

理容室の法人化後も個人名義の口座や契約を使っていいですか?

法人化後は、事業に関わる銀行口座・契約(電話・水道光熱費など)を法人名義に変更することが原則です。個人名義のままでは、経費精算や税務調査時に問題になることがあります。当税理士事務所では、法人口座開設や名義変更に関する手続きについても丁寧にご案内しています。

青色申告を継続したいのですが、法人化後も可能ですか?

はい、法人でも別途「青色申告の承認申請書」を提出すれば、青色申告を行うことができます。個人での申請とは別に法人としての手続きが必要で、設立から3ヶ月以内または事業年度終了日のいずれか早い日までに申請が必要です。青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。

理容室を法人化した後、税理士にどこまで依頼できますか?

税務申告はもちろん、記帳代行・給与計算・年末調整・税務調査立会・節税アドバイスなど、幅広くご依頼いただけます。当税理士事務所では、会計ソフトを使用していない方や税務が初めての方でも安心してご利用いただけるよう、柔軟なプランをご用意しております。フルリモート対応により全国のお客様に対応可能です。

節税のために今すぐ始められる対策はありますか?

はい、たとえば役員報酬の見直し、社宅制度の導入、家族への給与支給、法人保険の活用、小規模企業共済の加入などがあります。これらは法人でしか利用できない節税策が多く含まれます。節税対策について詳しくは下記のページをご覧ください。

理容室を法人化したことで受けられる補助金や助成金はありますか?

はい、法人であることで対象となる補助金・助成金が拡がる場合があります。例えば、雇用に関する助成金や設備投資に対する補助金などが挙げられます。個人事業では申請できない制度も多いため、法人化により資金調達の選択肢が増える点は大きなメリットです。創業補助金や創業融資などについては「開業支援」ページもご参照ください。

理容室の法人化は途中でやめる(個人に戻す)ことはできますか?

はい、法人を解散・清算すれば事業を個人に戻すことも可能です。ただし、解散登記や税務申告、資産の引継ぎなどに伴う費用と手間がかかりますので、短期で戻すことはおすすめできません。法人化は中長期的な経営戦略とセットで考えるべきです。検討段階から税理士の助言を受けることで、後悔のない判断が可能になります。

理容室の法人化によって収支管理はどう変わりますか?

法人化後は、売上や経費を法人の通帳・会計帳簿で一元管理する必要があります。売上管理表や月次試算表の作成が重要となり、エクセルでは限界があるため、会計ソフトの導入が推奨されます。当税理士事務所では、理容室経営に適した売上管理・経費精算の体制構築をサポートしております。当税理士事務所にご依頼いただく場合は会計ソフトなしでも問題ありません。

理容室の法人化はどんな人におすすめですか?

年間利益が800万円を超える方、消費税の課税が近い方、多店舗展開や従業員雇用を予定している方には特におすすめです。法人化により節税や信用力の向上が期待でき、経営の選択肢が広がります。状況に応じて最適な判断ができるよう、無料相談もご利用ください。

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