あなたの「このままでいいのかな」を、「やってよかった」に変える法人化。税理士の力で税務も経営も強くします。
美容室経営は個人事業主と法人どちらを選ぶべきか?
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まずは個人事業主として美容室を開業する場合のメリットとデメリットを見てみましょう。個人事業は開業手続きがシンプルで始めやすい反面、法人に比べて不利な点もあります。
- メリット: 開業コストが低く、手続きも簡便です。法人設立のための登録免許税や定款認証費用(後述)も不要で、所轄税務署へ提出する開業届を出せば事業を開始できます。経理処理も比較的平易で、自分ひとりで帳簿を付けやすい点も利点です。また所得税の「青色申告」制度を活用できるのも大きなメリットです。青色申告を行えば最大65万円の特別控除が受けられ、赤字が出た場合も最長3年間の繰越控除が可能になるため、節税上有利です。青色申告について詳しくは「青色申告の特集ページ」をご覧ください。
- デメリット: 社会的信用の面で法人に劣る点が挙げられます。金融機関や取引先から見ると、個人経営の美容室は事業の永続性や信用力で会社組織に劣ると判断され、融資の審査や物件賃貸契約などで不利になることがあります。また所得税の税率が累進課税で高くなる点も注意が必要です。事業利益が大きくなると所得税率は段階的に上がり、住民税と合わせて最大で約55%にも達します。利益が増えるほど税負担が重くなり、一定以上の稼ぎが出ると法人より税金面で不利になりがちです。さらに、事業用経費として認められる範囲にも制限があり、家族への給与支払など法人なら認められる経費計上が個人事業だと制約されるケースもあります。
続いて、法人(会社)を設立して美容室を開業する場合のメリット・デメリットです。法人化には手間とコストがかかりますが、その分得られる効果も多岐にわたります。
- メリット: 個人事業に比べて社会的信用度が高まるのが最大の利点です。会社として登記されることで、公的に存在が証明されるため、銀行からの融資や物件契約、各種取引で信用を得やすくなります。また節税面で有利になるケースが多いです。法人の所得(課税所得)に対する税率は原則一律で、特に中小法人の場合、年800万円までの所得は15%(または19%)の軽減税率が適用され、それを超える部分も約23%程度です。法人住民税なども合わせた実効税率の上限も約33%程度です。これは所得税の最高税率45%(住民税含め最大約55%)と比べて大幅に低く、事業利益が大きくなるほど法人の方が税負担を抑えやすいことを意味します。さらに、法人では事業上の損失を10年間繰り越すことが可能(個人事業の損失繰越は3年まで)であり、利益が出た年との相殺によって長期的な節税が図れます。加えて、有限責任によるリスク軽減もメリットです。会社形態であれば原則として事業の責任は会社の資産範囲内に限定され、万一倒産しても出資額以上の個人資産を失うリスクはありません(もっとも、小規模企業では金融機関融資の際にオーナー個人が連帯保証人を求められるのが通常で、この場合は実質的に無限責任と変わらない点には注意が必要です)。
- デメリット: 設立時および維持コストがかかる点は見逃せません。会社設立には定款の作成・認証や登記に関わる費用が発生し(株式会社の場合で約28万円前後、合同会社なら約13万円程度)、さらに毎年の法人住民税(均等割)として利益の有無にかかわらず最低7万円程度の支払い義務があります。加えて、規模によっては税理士顧問料や決算申告費用など専門家への依頼コストも計上しなければなりません。事務手続きが煩雑になる点もデメリットです。会計処理は複式簿記が必須となり、決算書や法人税申告書の作成など専門知識が必要な業務が増えます。経営者自身が対応するには限界があるため、専門家の力を借りる必要性が高まるでしょう。また、法人化すると社会保険への加入が強制になる点にも注意が必要です(詳細は次項)。法人設立と同時に会社は社会保険の適用事業所となり、従業員がたとえ1人でも健康保険・厚生年金への加入手続きを行わねばなりません。これにより会社は従業員(オーナー自身含む)の社会保険料の半額を負担する義務が生じるため、人件費以外に毎月の固定的なコストが増加します。小規模な個人事業では社会保険未加入(国民健康保険・国民年金で対応)も可能でしたが、法人化すると避けられない負担となる点は注意が必要です。
初めて美容室を開業するにあたり、税理士など専門家に相談しておくことは多くのメリットがあります。開業前の段階で税理士にアドバイスを受けておけば、後々の税務・会計面のトラブルを防ぎ、節税機会を逃さないで済むでしょう。
- 適切な開業形態の判断: 個人事業主と法人のどちらが有利かはケースバイケースです。税理士に相談すれば、売上予測や利益見込みに基づいて最適な開業形態のシミュレーションをしてもらえます。所得税・法人税の試算や社会保険料負担も含めた総合的な比較により、自身の美容室経営に合った選択が可能になります。
- 各種手続きのサポート: 税理士は開業時の各種届出や手続きを的確に指導・代行してくれます。個人で開業する場合は開業届や青色申告承認申請、法人設立の場合は法人設立届や税務署・役所への届出など、煩雑な書類手続きをスムーズに進めることができます。「何をいつまでに提出すればいいか分からない」「書類の書き方が不安だ」といった悩みも専門家のサポートで解消します。
- 節税・資金調達のアドバイス: 美容室特有の経費や減税措置についても税理士に相談するメリットは大きいです。例えば、高額な美容機器を導入する際の減価償却の方法や、開業資金を調達するための日本政策金融公庫からの融資申請サポート、消費税の納税義務開始時期の見極めなど、専門的な助言が得られます。特に消費税は売上規模によって新規開業時の免税措置など有利な制度がありますので、プロの判断を仰ぐことでタイミングを誤らずに済みます(※消費税については後述および別ページ「消費税の特集ページ」参照)。
- 本業に集中できる環境づくり: 開業後の記帳代行や決算申告まで税理士に依頼すれば、煩雑な経理業務から解放されます。経営者はサービスの向上や集客に専念できるため、結果的に売上アップにも繋がります。税理士法人加美税理士事務所でも、美容室オーナーが本業に集中できるよう創業支援から経理代行までトータルサポートを提供しています(詳細は後述)。専門家と二人三脚で進めることで、安心して開業と経営をスタートできるでしょう。
個人経営で順調に成長してきた美容室も、事業が拡大するタイミングで法人化することによるメリットが一段と大きくなります。ここでは、美容室を法人化することで得られる主なメリットを、事業拡大にプラスとなる効果に焦点を当てて解説します。
税制上、法人化には大きなメリットがあります。まず挙げられるのが「税率の違い」です。個人事業主の所得にかかる所得税率は累進課税で利益が大きくなるほど最高55%(所得税45%+住民税10%)まで上昇します。一方、法人の所得に対する法人税率は原則一律で、中小法人であれば年間利益800万円までは15%(要件により19%)、超過部分も23.2%程度です。法人住民税なども合わせた実効税率の上限も約33%程度です。たとえば年間利益1,000万円規模になると、個人事業では税負担が数百万円単位になるのに対し、法人ならその半分以下で済むケースもあります。こうした税率構造の違いから、利益が一定規模を超えると法人の方が明らかに有利になるのです。
さらに法人では経営者に役員報酬を支給することで所得を分散し、税負担を軽減できます。法人がオーナーである美容師に給与(役員報酬)を支払うと、その金額は法人の経費となり法人税の課税所得を圧縮します。オーナー個人は給与所得として所得税を支払いますが、給与所得控除が適用されるうえ、所得税率も法人の利益に直接課税される場合と比べて低い階層に抑えられる可能性があります。会社と個人に所得を振り分けることで両者の税率差を利用し、トータルの税負担を最適化できるのが法人化の強みです。特に家族を従業員として給与を支給すれば、所得を一家で分散でき、結果として税率の高騰を防ぐ効果も期待できます。
また消費税の面でも法人化にはメリットがあります。個人事業の場合、前々年の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が生じますが、新たに設立した法人は原則として設立1期目と2期目は消費税が免除されます(※資本金1,000万円以上で設立した場合等を除く)。つまり、事業が成長して消費税の負担が発生するタイミングで法人化すれば、向こう2年間は消費税の納税を合法的に回避できるため資金繰りにゆとりが生まれます。消費税率10%の時代ですので、この2年間の免税メリットは非常に大きいでしょう。ただし、同一事業の実態を引き継ぐ法人化では適用に制限がある場合もあるため、具体的な適用可否については専門家に確認する必要があります。消費税について詳しくは下記のページをご覧ください。
法人化すると社会的な信用力が向上し、資金調達の面で有利になります。会社組織は登記によって法人名や所在地、役員などが公示されるため、事業の継続性や信頼性が客観的に証明されます。金融機関から見ると、個人事業よりも法人の方が事業基盤がしっかりしていると評価されやすく、融資の審査も通りやすくなり、借入可能額も増える傾向があります。実際に、「法人でなければ事業融資は難しい」と言われるケースも多く、新規出店のための資金調達や大きな設備投資を行う際に法人であることが大きな強みとなります。
また、国や自治体の中小企業向け補助金・助成金についても、法人格がある方が応募資格や採択率の面で有利に働く場合があります。事業計画の信頼性や財務基盤の明確さなど、補助金審査では法人であることで加点される要素も少なくありません。美容室の経営では、店舗改装補助や雇用助成など様々な支援策を利用できる可能性がありますが、法人化しておくことでそうした公的支援を受けやすくなる効果も期待できます。もちろん法人だから絶対に融資・補助が下りるわけではありませんが、信用面の下地を整える意味で法人化には大きなメリットがあると言えるでしょう。
優秀なスタイリストやスタッフを採用・定着させやすくなるのも法人化のメリットです。求職者の多くは雇用の安定や福利厚生の充実を重視する傾向があります。その点、法人経営の美容室であれば正社員として雇用契約を結び、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できるため、従業員にとって将来への安心感が高まります。個人経営で社会保険未加入のサロンよりも、社保完備の会社組織のサロンの方が魅力的に映るのは明らかです。実際、「福利厚生がしっかりしている会社で働きたい」という理由で法人経営のサロンを選ぶ美容師も少なくありません。
法人化によりスタッフの待遇面が安定することで離職率の低下にもつながります。社会保険や厚生年金への加入はスタッフの将来的な保障となり、長く安心して働ける職場環境を提供できます。また、会社組織になることで労働時間管理や有給休暇制度の整備など労務管理も適切に行われやすく、結果的に働きやすい職場づくりが進むでしょう。こうした点から、法人化は人材確保・人材育成の基盤づくりにも寄与し、優秀な人材の応募が増える、社員の定着率が上がるといったプラス効果が期待できます。
法人になると事業上認められる経費の範囲が拡大し、結果として節税のチャンスが広がります。個人事業主の場合、事業とプライベートの線引きが厳しく問われ、経費として計上できる費目に限りがありますが、法人では会社の経費として認められる範囲がより柔軟です。
例えば、社宅制度を活用してオーナーや従業員の住宅を会社名義で借り上げることで、家賃の大部分を法人経費にできます(詳細は後述)。個人で払えば課税後の所得から支出する家賃を、法人経費として計上できるため、その分だけ税負担が軽減されます。さらに社宅を提供することで給与を抑えることができれば、社会保険料の負担も軽減できます。このように法人ならではのスキームで実質的な手取り収入を増やす工夫が可能です。
また、役員退職金の積立制度も法人ならではの経費戦略です(これも後述します)。会社がオーナーに対し将来支給する役員退職金を準備するために生命保険等を活用すれば、一定の範囲で保険料を経費処理しつつ将来的な退職金原資を確保できます。退職金そのものも支給時に法人経費となり、受け取る個人側では優遇税制が受けられるため大きな節税効果があります。個人事業ではオーナー自身の退職金制度は作れませんから、この点でも法人化のメリットは明確です。
その他にも、法人であれば接待交際費の損金算入枠が認められる(中小法人は年間800万円まで全額経費算入可能)点や、事業専用の自動車・パソコン・スマートフォン等を会社経費で購入し減価償却できる、といった具合に経費計上できる費目・金額の自由度が高まります。結果として課税所得を圧縮でき、節税の幅が広がることになります。法人化によりこうした経費戦略を駆使できる点は、利益拡大時の節税策として見逃せません。
法人化は事業のさらなる拡大にも追い風となります。まず、多店舗展開を目指す場合に法人組織であることはほぼ必須といえます。2店舗目、3店舗目と店舗数が増えると、組織的な管理や資金調達力が求められますが、会社であれば本部機能を整備したり、銀行からの融資を受けて新店舗開業資金を調達したりしやすくなります。法人であることで社会的信用が高まり、賃貸契約でも好条件の物件を借りやすくなるなど、店舗拡大のスピードを加速させる要因となります。
さらに、将来的に事業承継や売却、フランチャイズ展開を考える際も法人組織の方が圧倒的に有利です。株式や持分の形で事業を譲渡・売買できるため、事業価値を明確に評価できますし、外部から資本提供を受けてフランチャイズ展開することも可能になります。個人事業では事業=個人の信用に依存するため、こうしたスケーラビリティに限界がありますが、法人なら事業自体を資産として膨らませることができるのです。
また、法人化によって経営判断の透明性や組織体制の整備が進みます。役員会や就業規則の整備、人事評価制度の導入など、会社としての体裁を整える中で内部統制が強化され、経営の質が向上する効果も期待できます。結果として従業員の意識改革やサービス品質の向上にも波及し、事業全体の成長につながるでしょう。以上のように、法人化は単に形式を変えるだけでなく、事業拡大への土台を作る一手となるのです。
ここまで法人化のメリットを見てきましたが、法人化にはデメリットや注意すべき点もあります。社会保険料の負担増や各種コスト、事務負担など、事前に把握しておきたいポイントを確認しましょう。デメリットを理解した上で、メリットとのバランスを考慮することが大切です。
法人化する最大の注意点の一つが、社会保険料の負担増です。前述の通り、法人は設立と同時に社会保険(健康保険・厚生年金)の強制適用事業所となり、社員や役員を含め加入が義務付けられます。具体的には、従業員と会社が折半で保険料を納める形になるため、会社側は給与支払い額の約15%前後(健康保険・厚生年金の合計)を追加負担するイメージです。例えば月給20万円のスタッフ一人当たり、会社負担の社会保険料は月3万円程度にもなります。人数が増えれば負担総額も増大し、人件費とは別に固定コストがかかる点は十分な資金計画が必要です。
一方、個人事業主の場合は社会保険の加入義務が緩やかです。常時5人以上の従業員を雇用する一部業種(金融業や法律業など特殊業種を除く)でなければ、健康保険・厚生年金への加入義務はありません。そのため、小規模な美容室では従業員を国民健康保険・国民年金に加入させ、事業主負担なしで雇用するケースも見受けられます(※ただし労災保険と雇用保険は従業員数に関わらず従業員に適用されます)。法人化するとこのような“社会保険なし”の状態は許されなくなるため、「今まで社会保険料をかけずに運営できていたのにコストが一気に上がってしまった」という事態になり得ます。もっとも、社会保険加入は従業員の福利厚生充実につながる前向きな側面もありますので、負担増を見越した上で人件費計画を立て直すことが重要です。
法人化には初期費用および毎年の維持費用が発生する点にも注意しましょう。会社設立時には、法務局への登記にかかる登録免許税が必要です。株式会社を設立する場合、最低でも登録免許税として15万円(資本金額により変動)を納める必要があります。また定款を公証役場で認証する費用が約5万円(紙で定款を作成する場合は収入印紙代としてさらに4万円)かかります。つまり株式会社設立にはトータルで約20数万円程度の費用負担となります。合同会社(LLC)なら定款認証が不要で登録免許税も6万円と割安ですが、それでも数万円規模の費用は見込んでおく必要があります。
設立後も毎年必ず発生するコストがあります。代表的なのが法人住民税の均等割です。これは赤字か黒字かに関係なく支払う法人市民税・県民税の定額分で、東京23区の場合で年7万円(資本金等1,000万円以下、従業員50人以下の場合)です。事業規模が大きくなると均等割額も上がります。つまり会社にしただけで最低7万円/年の税負担が生じるわけです。また、自社で決算申告を行わない場合は税理士への顧問料・申告料が毎年かかります。一般的な小規模法人の税理士顧問料は月額数万円、決算申告料が20万円前後というケースも多く、こちらも無視できないコストです。さらに、社会保険や労働保険の手続きを社労士に委託すればその報酬など、専門家サービス利用に伴う費用も発生し得ます。
このように、法人を維持するだけで固定費が嵩む点は念頭に置かなければなりません。個人事業では必要なかった出費が増えるため、利益が小さい段階で法人化すると「税金は多少減ったが、維持費の方がかさんでしまった」ということにもなりかねません。法人化による節税メリットがこれらコスト増を上回るかどうかを見極めることが重要です。
法人化すると会計・税務の事務が格段に増える点もデメリットとして挙げられます。個人事業主であれば現金主義の簡易帳簿付けも認められる場合がありますが、法人では原則として複式簿記による厳密な会計帳簿の作成が求められます。日々の取引を仕訳記帳し、月次試算表を作成し、年度末には貸借対照表や損益計算書といった決算書類を作成しなければなりません。また法人税・消費税の確定申告書や勘定科目内訳明細書など、提出すべき税務書類の種類も増加します。これらを経営者一人でこなすのは困難であり、専門知識を持つ税理士や会計ソフトの活用が事実上不可欠となります。
さらに、法人化に伴い事務手続きも煩雑になります。例えば、もともと個人事業で使っていた資産を法人に引き継ぐ場合、その資産の名義変更や処理を行う必要があります(自動車の名義変更、銀行口座の開設など)。また、法人は登記事項に変更が生じるごとに登記変更手続きを行わねばなりません。会社の住所変更や役員の改選・増員、事業目的の追加といった変更時には都度、法務局での登記申請と登録免許税の支払いが発生します。事業形態が一度固まると変更に手間と費用がかかる点も柔軟性という意味ではデメリットと言えるでしょう。
加えて、従業員を雇用している場合には法人化を機に給与計算や年末調整、社会保険・労働保険の各種届出(例えば毎年の算定基礎届や労働保険年度更新)など、雇用主としての事務作業が増えます。これらは個人事業でも発生しますが、法人になると対外的な責任も重くなるため一層正確さと期日遵守が求められます。総じて、法人化すると事務負担が格段に増えることは覚悟が必要であり、時間的・人的リソースの確保や外部専門家への依頼も含めた対策が重要になります。
上述したメリット・デメリットを踏まえ、「いつ法人化すべきか」のタイミングと判断基準について考えてみましょう。美容室オーナーが法人化を検討するきっかけは主に「事業規模の拡大」と「経営環境の変化」に関係します。以下では、売上や利益水準から見た目安、スタッフ数や店舗展開の状況、迷ったときの相談先について解説します。
法人化による節税メリットがコストを上回りはじめる利益規模が一つの目安になります。一般的によく言われるのは、年間の事業利益(所得ベース)がおおむね800万~900万円を超えるあたりから法人化を検討すべきだということです。これはその利益帯に達すると、個人事業では所得税・住民税の負担が約40%以上となり、社会保険料も含めると手元に残る割合が急激に目減りする一方、法人化すれば先述のように税率を抑えたり所得分散が可能になるためです。実際、税理士よしむらともこ氏の試算では「年間利益900万円超であれば法人の方が税金を抑えられる」とされています。
ただし、この金額は一律の正解ではなく、ケースバイケースである点に注意しましょう。例えば利益はまだ500万円程度でも、将来の設備投資に備えて消費税免税のメリットを得たい場合や、利益率が高く今後急成長が見込まれる場合は早めの法人化が有効かもしれません。一方で利益900万円程度までは個人事業のまま様子を見ても、税負担と法人維持コストの差はそれほど大きくないという見解もあります。概ね「利益500~900万円のレンジ」が法人化の検討ゾーンと捉え、自身の事業の収益性や将来計画を踏まえて判断するのが良いでしょう。
加えて売上規模も考慮が必要です。特に年間売上高が1,000万円を超えるタイミングは、消費税の課税事業者になる節目であり、法人化を検討する好機となりえます。前述のように新設法人なら最長2期は消費税免税となるため、売上1,000万円超で消費税負担が生じる直前に法人化してしまうことで、納税を先送り・圧縮できる可能性があります。例えば、年商1,200万円・利益600万円のケースでは、個人事業のままだと消費税約120万円の納税が必要ですが、法人新設で免税されればこの分のキャッシュを設備投資や運転資金に回せます。ただし、売上規模だけでなく利益や経費構造も含め総合判断すべきです。
人員が増えたり複数店舗展開を検討し始めたタイミングも法人化を考える重要なポイントです。スタッフ数が増えてくると、給与計算や労務管理、採用活動など経営管理が複雑化します。法人化して組織体制を整えることで、就業規則の作成や社会保険の完備、役職の明確化など従業員を抱える経営体制としての信頼性が向上します。スタッフにとっても「きちんとした会社」の社員になることで安心感が生まれ、長期的な雇用関係を築きやすくなるでしょう。
また、新規出店や多店舗経営を計画する段階も法人化の好機です。2店舗目の物件契約や内装工事で高額な設備投資を要する際、法人の方が金融機関からの融資を受けやすく、自己資金だけに頼らずに事業拡大を図れます。実際、法人格であれば事業計画書を作成して創業融資や制度融資に申し込み、数百万円~数千万円規模の資金調達を行うことも可能です(個人事業だと信用力の面で融資限度が低めになる傾向があります)。このように、事業を大きく展開したいときには法人化による信用力アップが背中を押してくれるでしょう。
さらに、店舗展開時にはスタッフのポジションも増え、マネージャーや店長職の設置など組織運営が必要になります。法人化しておけば、役職に応じた肩書き(店長=取締役やマネージャー=執行役員等)の付与など組織の格付けが行いやすくなり、従業員のモチベーション向上にも繋がります。「いずれ自分の店を何店舗も出したい」「スタッフに幹部候補として活躍してほしい」と考え始めたら、法人化を視野に入れる時期と言えるでしょう。
「法人化のメリットもデメリットも分かったけれど、自分の場合どちらが得策か決めきれない」という場合も多いでしょう。判断に迷う場合は、遠慮なく税理士に相談することをおすすめします。税理士は法人・個人それぞれの税負担を試算し、社会保険料や法人維持費も含めたシミュレーションを行ってくれます。例えば、「今年の利益○○万円なら法人化するとこれだけ税金が減り、コストはこれくらい増える。5年後に2店舗目を出す計画なら早めに法人化した方がトータルで有利」等、具体的な数字に基づいたアドバイスが得られます。
特に美容室経営に強い税理士であれば、同業の事例も踏まえて的確なタイミングの提案をしてくれるでしょう。「売上1,000万円目前だけど直後に大きな設備投資予定がある」「利益はまだ少ないがスタッフを増やしたい」といったケースごとに最適解は異なります。自分では見落としがちなポイント(例えば、法人化初年度は決算期を調整して節税するテクニックや、消費税課税事業者選択の有無など)も専門家なら考慮に入れて判断材料を提示してくれます。
税理士法人加美税理士事務所でも、法人化するか否かの無料相談やシミュレーションサービスを提供しています。数字に基づく判断は経営の重要事項ですから、専門家の知見を借りて検討することで将来の後悔を防げるでしょう。迷ったときこそプロに相談し、最適なタイミングでベストな選択をすることが、経営の賢明なスタートと言えます。
法人化すると、これまで紹介したように税制上の有利な点が出てきますが、加えて法人ならではの節税対策も活用できるようになります。ここでは、美容室を法人経営にすることで実践できる具体的な節税策について掘り下げてみましょう。役員報酬の設定から社宅の活用、退職金制度、さらに法人独自のスキームまで、法人化によって広がる節税の手段を解説します。
役員報酬の設定は法人ならではの強力な節税手段です。美容室オーナーが法人の代表取締役(役員)となった場合、自らに支給する役員報酬の額を調整することで、会社利益と個人所得のバランスを最適化できます。法人税等の実効税率が上限約33%であるのに対し、個人側の所得税率は段階的に上がり最大で55%です。両者の累進税率を考慮しながら会社利益を減らして役員個人の給与所得に振り替えることで、所得税・法人税の両面でトータル税額を抑えられる可能性が高まります。
さらに、美容室経営では家族がサロン業務を手伝うケースも多いでしょう。法人化すれば、家族を従業員や役員にして給与や報酬を支払うことも節税に有効です。配偶者や親族に対して適正額の給与を支給すれば、その分会社の経費が増えて利益を圧縮できますし、受け取る家族側も基礎控除や所得控除を活用して低い税率で課税されます。個人事業主でも「事業専従者給与」として配偶者等に給与を支給できますが、事前届出や金額の制約がある上、支給先が配偶者と親族合わせて2人まで等の制限があります。その点、法人なら家族であっても社員・役員としてフルに給与支給できるため、一家全体で所得分散して税負担を軽くすることが可能です。
ただし、役員報酬による節税を最大化するには適切な設定と運用が必要です。税法上、役員報酬は原則として毎期同額を定め、期中で増減できません(定期同額給与の原則)。期の途中でボーナス的に増額すると損金不算入になるリスクがあるため、期首にしっかりと報酬額を決定しておく必要があります。売上の季節変動がある美容室では、翌期の収支予測をもとに慎重に報酬額を設定しましょう。また、社会保険料負担とのバランスも重要です。役員報酬を増やしすぎると会社・個人双方の社会保険料も上がりますので、社会保険料込みで最適な手取りになる報酬額をシミュレーションすることが大切です。
社宅の活用は法人経営者にとって非常に有効な節税スキームです。美容室オーナーが自身の住居を社宅扱いにすれば、居住にかかる家賃の大部分を会社の経費として計上できます。具体的には、会社がオーナーの借家契約を結んで家賃を支払い、オーナー個人からは税法上定められたごく一部の使用料(家賃の一部)を徴収する形にします。オーナーから徴収する使用料は給与として扱われますが、非常に低廉な定額(物件の広さや構造によって算定される基準家賃)で済み、残りの大部分は会社負担です。この会社負担分が経費となり、法人の利益を減らすことができます。
社宅スキームを使うことで、オーナー個人は実質的な家賃負担を大幅に減らせるうえ、受け取る給与を抑えられるメリットもあります。例えば本来月20万円の家賃のマンションに住む場合、社宅制度を使えば会社が15万円を負担し、オーナーの給与から5万円のみ天引きする、といった形にできます。この場合、オーナー個人としては20万円の家賃を自腹で払う代わりに5万円だけで済み、残り15万円は自分の手取りから出さずに済みます。可処分所得がその分増えることになり、非常にお得です。
また、給与から控除する家賃相当額が低くなる分、社会保険料の計算対象となる報酬額も減少します。社会保険料(健康保険・厚生年金)は報酬月額に保険料率を乗じて決まりますが、社宅提供により給与を低めに設定できれば報酬月額が下がり、会社・個人双方の保険料負担が軽減されます。つまり、社宅スキームは税金だけでなく社会保険料の節約にも寄与するのです。
社宅制度を導入する際の注意点として、社宅として提供する物件が常識的な範囲の家賃である必要があります。高額すぎる豪華な住居を社宅にすると、税務上「社宅」と認められず経費否認される恐れがあります。また、オーナー個人から徴収する家賃相当額も、税務上適正な金額(賃貸借契約がある場合はその金額、社宅規定による場合は算定式による金額)を徴収しなければなりません。これらルールを守れば、社宅は法人経営者の住居費を会社経費化する強力な節税策となります。美容室経営の場合、自宅と店舗が近いケースも多いでしょうから、うまく社宅制度を取り入れて経費にできないか検討する価値は高いでしょう。
役員退職金の活用は、法人化による節税とオーナーの将来準備を両立できる制度です。法人では役員(オーナー)に対し退職金を支給することができます。適正な金額の範囲内であれば、その役員退職金は支給した事業年度の法人経費となり、大きな利益圧縮効果があります。例えば、長年経営に貢献したオーナー社長が勇退する際に1,000万円の退職金を支給すれば、その期の会社の課税所得を1,000万円減額できます。加えて、受け取る個人側にとっても退職所得として優遇税制が適用されます。退職所得控除により相当額が非課税となり、残りも1/2課税となるため、同額を給与で受け取るより格段に低い税率で済みます。
さらに大きな利点は、退職金には社会保険料がかからないことです。給与や賞与と異なり、退職時に受け取る一時金には厚生年金や健康保険の保険料は課されません。つまり、在任中に給与として受け取れば社会保険料負担が発生したお金を、退職金としてまとめて受け取れば保険料ゼロで手にできるのです。オーナーにとっては、生涯のトータルで見た所得の取り方を工夫することで、社会保険料を最適化できるという観点でも役員退職金制度は有効です。
役員退職金制度を活用するにあたっては、計画的な準備がポイントです。いざ退職金を支給しようにも会社に資金がなければ絵に描いた餅になってしまいます。そのため、在任中から生命保険商品などを使って退職金原資を積み立てておく手法がよく用いられます。例えば、法人名義で長期の養老保険や終身保険に加入し、退職時期に解約返戻金を受け取って退職金に充てるという方法です。支払保険料の一部または全部を損金算入できるタイプの保険商品を使えば、積立期間中も一定の経費効果を享受できます(※2020年以降、法人向け保険の損金算入ルールが改正され一律ではなくなったため、商品選定は専門家と要検討)。
適正な退職金額の算定には業種や在任年数に応じた社内規定が必要ですが、美容室業界の場合、同業他社の事例などを参考に無理のない範囲で制度設計すると良いでしょう。役員退職金は、オーナー自身の「老後の蓄え」を会社のお金で用意する仕組みとも言えます。法人化すればこの制度を合法的に活用できるため、将来に備えつつ節税もできる一石二鳥のメリットを享受できます。
上述以外にも、法人化すると可能になる多様な節税策があります。いくつか代表的なものを挙げてみましょう。
- 交際費の損金算入枠拡大: 中小法人には交際費(取引先との会食代や贈答品代等)の損金算入枠が設けられています。年間800万円までの交際費は全額を経費計上でき(800万円超は50%まで損金算入)、交際費の範囲が限定される個人事業と比べて交際費を使った販促・顧客サービスがしやすく、税務上も有利です。美容室でも顧客との関係構築やスタッフ慰労などに交際費を使う場面がありますが、法人化すればその支出の多くを経費処理できます。
- 損金算入可能な生命保険の活用: 前述の退職金準備の例以外にも、法人契約の生命保険は節税に活用できます。一時期は「法人保険を使った節税」が流行し、多額の保険料を損金に落として利益調整をする手法が取られてきました。現在は税制改正で使える商品が限定されていますが、それでも一部損金算入可能な定期保険や、福利厚生目的の養老保険(ハーフタックスプラン)など、保険を使って課税の繰り延べや準備金形成ができるメリットは健在です。個人事業では事業主自身を被保険者にした保険料は基本的に経費になりませんが、法人なら必要経費として計上できる点が大きな違いです。
- 消費税の簡易課税制度の選択: 法人化後、消費税課税事業者になるタイミングでは、業種によっては簡易課税制度の選択が節税になる可能性があります。美容室は第5種事業(サービス業)に該当し、みなし仕入率50%が適用されます。実際の仕入や材料費が少ない場合、簡易課税を選ぶことで実際よりも仕入控除額を多く見積もれ、消費税負担を軽減できるケースがあります。個人事業でも適用できますが、法人化の際に改めて選択届を出すことで有利になることもあります。
- 決算期の柔軟な設定: 個人事業の決算(月)は固定(12月)ですが、法人は事業年度を自由に決められます。繁忙期・閑散期の収支を睨んで決算月を有利に設定することで、節税につながる戦略も可能です。例えば繁忙期直後に決算が来るようにして賞与引当金を計上しやすくしたり、設備投資のタイミングに合わせて減価償却費をコントロールしたりといった工夫ができます。
以上のように、法人だからこそ取れる節税の手段は多岐にわたります。もちろん節度ある範囲で適切に活用することが重要ですが、個人事業では実現できなかった発想で節税策を講じられる点は、法人化のメリットとして見逃せません。税理士と相談しながら、自社に合った手法を取り入れていくと良いでしょう。
法人化のメリット・デメリットが明確になったら、実際に法人化するための手続きも把握しておきましょう。ここでは、美容室を法人化する際の会社設立から各種届出まで、一連の流れを解説します。個人事業から法人へ移行する場合も、新規に会社を立ち上げる場合も、基本的な流れは共通です。適切な手順を踏んでスムーズに法人化を実現しましょう。
まず決めるべきは会社の形態(種類)です。日本で一般的な会社形態には、「株式会社(いわゆる Inc.)」と「合同会社(LLCに相当)」があります。それぞれ特徴が異なるため、美容室経営においてどちらが適切か検討します。
- 株式会社: 最もポピュラーな会社形態で、取締役や株主総会などの機関設計が整備されています。知名度・信用度という面では株式会社の方が高い傾向があり、対外的なイメージ戦略として株式会社を選ぶケースも多いです。また将来的に株式公開(IPO)を目指す可能性がある場合や、複数の出資者で会社を所有する場合は株式会社が適しています。ただし設立コストがやや高く、運営上も株主総会議事録の作成など形式的な手間が増えます。
- 合同会社: 比較的新しい会社形態で、設立費用が安く手続きも簡略なのがメリットです。出資者=社員(オーナー)による内部自治的な運営が可能で、決算公告義務もないなど小規模経営に向いています。美容室のようにオーナーひとり(または夫婦など少人数)の出資で運営する場合、合同会社は低コスト・シンプル運営が魅力です。対外的信用度も近年は向上し、「株式会社でないと契約できない」というケースは少なくなりました。ただし、将来的に株式発行による大規模な資金調達を行う計画がある場合などは株式会社を選ぶ方が無難でしょう。
美容室経営においては、まず合同会社で設立し、必要に応じて後に株式会社に組織変更するという選択肢もあります。実際、設立時は費用を抑えて合同会社にしておき、事業拡大に伴って株式会社へ変更する事例も見られます。とはいえ、組織変更にも手間と費用がかかるため、最初の段階で将来像を考えて選択するのがベターです。オーナー1人で完結する小規模経営を続けるなら合同会社、将来多店舗展開や外部資本導入も視野に入れるなら株式会社、といった観点で検討してみてください。
会社形態を決めたら、会社の基本事項を定めた定款を作成します。定款には会社名(商号)、事業目的、本店所在地、資本金額、発起人(出資者)、役員構成などを記載します。美容室の場合、事業目的には「美容業(美容室の経営)」等を入れますが、将来的に関連する物販やスクール事業なども行う可能性があれば包括的に目的を記載しておくと良いでしょう。
株式会社を設立する場合、作成した定款は公証役場で公証人の認証を受けなければなりません。オンラインで定款を作成し電子認証を受ければ印紙代4万円が不要になるため、近年は電子定款で進めるケースが増えています。合同会社の場合は定款認証は不要で、紙に印刷しても印紙代もかからないので必要最低限のコストで済みます。
定款を整えたら、出資金(資本金)の払い込みを行います。発起人名義の銀行口座に資本金を入金し、その通帳コピー等をもって払い込み証明とします(発起設立の場合)。資本金は1円からでも会社は作れますが、実態に即した適切な額にすることが重要です。美容室開業の場合、初期投資や運転資金として数百万円~数千万円規模の資金が必要でしょうから、その範囲で無理のない額を設定します。なお、資本金を1,000万円未満に抑えることで均等割(法人住民税の一種)という税額を低く抑えられることと設立後2期の消費税免税を受けられる利点があります(資本金1,000万円以上で設立すると初期免税が適用されません)。このため、均等割りと消費税対策として資本金は1,000万円未満に設定するのが一般的です。ただし、あまりに低額すぎる資本金(例:10万円など)は信用面でマイナスになり得るため、事業規模に見合った常識的な金額にしましょう。美容室1店舗開業であれば100~300万円程度を資本金とするケースが多いようです。
定款の準備と資本金払い込みが完了したら、いよいよ法務局へ法人設立の登記申請を行います。所轄の法務局に定款や登記申請書、役員の就任承諾書、印鑑届書など所定の書類を提出し、登録免許税を納付します。申請が受理され問題なければ、約1~2週間で登記が完了し会社が成立します。登記が完了すると「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」や正式に会社実印(代表者印)が出来上がるので、以後の手続きに使用します。
会社設立後は、税務署や役所への各種届出が必要です。まず税務関係では、所轄税務署に「法人設立届出書」を提出します。設立から原則2ヶ月以内に提出が必要で、定款写しや登記簿謄本のコピーを添付します。あわせて、青色申告の承認申請も忘れずに出します。これは法人税について青色申告の適用を受けるための届出で、原則として設立日から3ヶ月以内または最初の事業年度末まで(早い方)に提出します。青色申告法人となれば欠損金の繰越控除など有利な制度が使えますので、必ず期限内に申請しましょう。
そのほか税務署関連では、給与支払事務所等の開設届出書(従業員や役員に給与を支払う場合)や、源泉所得税の納期の特例の申請(従業員が常時10人未満なら源泉税の納付を年2回にできる)などの手続きを行います。都道府県税事務所や市区町村役場にも、法人設立届を提出します。社会保険関係では、日本年金機構へ新規適用届(健康保険・厚生年金の加入手続き)を行い、労働基準監督署へ労働保険関係の届出(労災保険の適用)とハローワークで雇用保険適用事業所設置の届出を行います(従業員がいる場合)。
こうした開業時の諸手続きは非常に多岐にわたります。個人事業から法人化する場合は、個人事業の廃業届や消費税の事業者区分変更届なども別途必要です。一つひとつ確実に対応する必要がありますが、漏れがあったとしても税理士や社労士に依頼すれば適切にフォローしてもらえるでしょう。税理士法人加美税理士事務所でも、法人設立時の各種届出代行サービスを提供しています。専門家の力を借りて手続きを進めることで、煩雑な書類対応に悩まされることなく本業の準備に集中できます。
法人化は設立して終わりではありません。法人化後も継続して必要となる税務・社会保険上の手続きがあります。主なものを把握しておきましょう。
まず税務面では、法人税・消費税の確定申告が毎期必要です。決算期末から原則2ヶ月以内に法人税等の申告納税を行います(税理士に依頼する場合は事前に試算して資金準備を)。消費税については、新設法人は免税の期間を経て課税事業者となるタイミングで申告が始まりますが、適宜対応が必要です。また、毎年の法人事業税・法人住民税の納付、償却資産があれば償却資産税の申告などもあります。
給与を支払っている場合、源泉所得税の納付と年末調整も法人の義務です。従業員や役員から毎月天引きした源泉所得税を所定のスケジュールで国に納付し、年末には年末調整を行って源泉徴収票を交付します。これらは個人事業でも従業員がいれば必要でしたが、法人の場合は役員報酬についても源泉徴収が必要になる点が増える違いです。また、毎年7月には源泉所得税の納期特例分の納付(適用を受けている場合)や、法定調書合計表の提出、給与支払報告書の市町村提出などの事務も発生します。
社会保険面では、社会保険料の納付が毎月あります。会社と従業員が半分ずつ負担する保険料を計算し、翌月末までに納付します。年に一度、7月には算定基礎届の提出があり、社員の標準報酬月額を再評価して9月以降の保険料額が改定されます。従業員の入退社があればその都度、健康保険・厚生年金の資格取得届や喪失届、雇用保険の資格取得・喪失届を出します。労働保険料についても毎年年度更新(概算・確定申告)が必要です。
このように、法人化後は定期的な税務・労務の手続きが増えるため、経営者自身が全部対応するのは現実的ではありません。多くの美容室オーナーは、税理士や社労士と顧問契約を結んでそれらの実務を委託しています。税理士法人加美税理士事務所でも、法人化後の記帳代行・決算申告、給与計算や(社労士と提携して)社保手続きのサポートなどトータルなバックオフィス支援を行っています。法人化によって増える事務作業は専門家に任せ、オーナーは顧客サービスや店舗運営に専念できる体制を築くのがおすすめです。
最後に、美容室の法人化を成功させるために専門家を上手に活用する方法についてお話しします。法人化のプロセスやその後の経営管理は専門知識を要する部分が多く、税理士をはじめとした専門家のサポートがあると格段にスムーズに進みます。以下では、法人化の際に税理士に依頼できることや、税理士法人加美税理士事務所が提供する法人化支援サービス、その後の長期的なサポート体制について説明します。
税理士は法人化プロジェクトの心強いパートナーです。具体的に、以下のような支援を依頼できます。
- 会社設立手続きのサポート・代行: 税理士事務所では司法書士と連携して会社設立の実務を代行してくれる場合があります。定款の作成方法のアドバイスや、公証役場での認証手配、法務局への登記申請書類の準備など、面倒な手続きをプロに任せることができます。自分でやるにはハードルが高い設立登記も、税理士に依頼すればスムーズです。
- 最適な制度・形態のアドバイス: 税理士は法人化にあたり株式会社と合同会社のどちらが良いか、資本金をいくらにすべきか、決算月を何月に設定するかなど細かな判断について助言してくれます。例えば資本金については消費税免税との兼ね合いや信用力の観点から適切な額を示唆してくれるでしょう。また、役員構成や役員報酬の決定についても、税務上有利になるパターンを提案してもらえます。
- 各種届出・申請の代行: 法人設立後に必要な税務署や役所への届出(法人設立届、青色申告申請、給与支払事務所届、社会保険新規適用届等)を一括して代行してもらえます。漏れが許されない重要な届出ばかりなので、プロに任せて確実に処理してもらう方が安心です。
- 節税策の提案: 税理士は法人化に伴う節税シミュレーションを行い、どのくらい税金が軽減できるかを試算してくれます。また、前述した役員報酬の設定、社宅や退職金制度の導入、生命保険の活用など、具体的な節税スキームを提案してもらえます。税制改正にも精通しているので、常に最新の有利な制度を踏まえたアドバイスが受けられます。
- 創業融資や補助金のサポート: もし法人化と同時に融資を検討している場合、税理士は事業計画書の作成支援や金融機関との交渉アドバイスも行います。日本政策金融公庫の創業融資に精通した税理士も多く、書類の書き方や面談対策など心強いサポートが得られます。また、タイミングが合えば補助金申請の相談に乗ってくれるケースもあります。
このように、税理士に依頼できることは法人化の準備から実行、そして直後の手続きまで多岐にわたります。専門家の知識と経験を活用することで、オーナー自身は美容室のコンセプト作りやスタッフ採用、顧客獲得施策といった本業の準備に集中できます。特に初めての法人化で不安も多いでしょうから、税理士の存在は頼もしい味方となるでしょう。
税理士法人加美税理士事務所では、美容室オーナーの法人化を全面的にサポートするサービスを提供しています。特徴は、オンライン対応が可能であることと、忙しいオーナーに代わって手続き一切を丸投げで任せられる点です。
例えば、「店舗準備で手一杯なので、会社設立の書類作成や役所手続きを代わりにやってほしい」という場合、当税理士事務所にご依頼いただければ設立準備から各種届出まで一括して代行します。オーナー様は基本的に必要書類に目を通してハンコを押す程度で済み、面倒な手続きのために役所を回る必要はありません。創業時にエネルギーを注ぐべきは店舗づくりやスタッフ育成です。当税理士事務所はそこに集中していただけるよう、バックオフィス面を全力でサポートいたします。
また、遠方のクライアント様や日中サロンワークでお忙しい方向けに、オンラインミーティングやチャットでの相談対応も行っています。Zoomやメールを活用し、対面と遜色ないきめ細かなコンサルティングを提供しますので、東京以外の美容室オーナー様でも安心してご利用いただけます。全国対応可能なオンラインサービスにより、場所や時間の制約を気にせずスピーディーに法人化手続きを進められます。
税理士法人加美税理士事務所は、これまで数多くの小規模事業者の法人化を支援してきた実績があります。他業種にも強みを持つ事務所ですが、サービス業のクライアントも多数ご支援しており、業種特有の勘所も熟知しております。例えば、美容室ならではの売上管理の方法や、消耗品費の扱い、役務提供型事業の消費税の注意点など、専門的な論点も把握しておりますので安心です。さらに、当税理士事務所の美容室に精通した税理士は実務経験10年以上で、難しい税務用語もオーナー様に分かりやすく噛み砕いて説明します。初めて会社設立に臨む方でも、不明点をそのままにせず納得しながら手続きを進められるようサポートいたします。
何より、「丸投げOK」を掲げている通り、法人化に伴うあらゆる事柄をこちらに任せていただければ、煩雑さを感じることなく晴れて会社設立の日を迎えられるでしょう。オンラインでのヒアリングで基本事項をお伺いし、必要書類の準備から届出提出までワンストップで完了させます。税理士法人加美税理士事務所は、美容室オーナー様の新たな門出を陰から全面支援するパートナーとして、全力でお手伝いいたします。
会社設立はゴールではなくスタートです。税理士法人加美税理士事務所では、法人化後も継続して経営を支える総合サポートを提供しています。法人化した美容室が安定して成長できるよう、以下のようなサービスで伴走します。
- 記帳代行・月次監査: 日々の会計仕訳入力や経費整理を当税理士事務所で代行し、毎月の試算表を作成して経営状況をタイムリーに報告します。忙しいサロンワークの合間に経理をする負担がなくなり、常に数字を把握した経営判断が可能です。月次で利益や費用の増減をチェックし、必要に応じて節税策や経費見直しのアドバイスも行います。
- 決算・申告サポート: 年度末の決算書作成から法人税・消費税申告まで一貫して対応します。適切な税務調整を行い、美容室ならではの控除漏れやミスのない申告をお約束します。税制改正や減税措置の情報も踏まえ、最大限のメリットを享受できる申告書を作成しますのでご安心ください。
- 給与計算・労務相談: 希望される場合、従業員の給与計算や年末調整、社会保険手続きについても社労士ネットワークと連携してサポート可能です。面倒な給与計算業務から解放され、人件費の適正管理についても助言を受けられます。スタッフを安心させる労務管理は離職防止にもつながります。
- 経営コンサルティング: 単なる税務処理に留まらず、経営全般の相談役として寄り添います。売上拡大策の検討、原価率の分析、資金繰り計画の策定、追加出店の投資判断シミュレーションなど、会計データに基づいたコンサルティングを提供します。必要に応じて金融機関紹介や補助金情報の提供など、経営者の頼れるブレーンとなります。
- 税務調査対応: 将来税務調査が入った際も、税理士が窓口となって対応いたします。日頃から適切な帳簿管理を行っているので過度に心配する必要はありませんが、万一指摘事項があった場合も専門家がフォローしますので安心です。
このように、法人化後も長期的に経営を支える体制が整っているのが当税理士事務所の強みです。美容室経営者様は、税務・財務のバックアップをプロに任せることで本業に専念でき、数字に強い経営で着実にサロンを成長させていけます。税理士法人加美税理士事務所は、お客様の成功が私たちの喜びと考え、法人化の瞬間からその先の未来まで一貫して寄り添ってまいります。
専門家の力を上手に借りつつ法人化を乗り越え、その後も適切なサポートを受けながら経営を続けていけば、きっと美容室経営はより安定し発展的なものとなるでしょう。法人化をお考えの際は、お気軽に私たち専門家にご相談ください。共に最良の形で美容室の未来を築いていきましょう。

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