「何が経費?」「法人化すべき?」そんな疑問を放置せず、あなたの夢と未来を守る節税プランを税理士と一緒に描いていきませんか。
美容室経営における節税対策の基本とメリット
ページコンテンツ
これから美容室を開業しようと準備している方、あるいは開業して間もない個人事業主の美容室オーナーの方は、スタート時からしっかりと税務戦略を立てることで大きな節税メリットを得られます。当税理士事務所にも開業前からご相談いただくケースがありますが、開業時に適切な手続きを行い、経理体制を整えることで、後々まで効いてくる節税効果を享受できます。以下では、美容室の開業予定者が押さえておくべき具体的な節税対策を解説します。
まず最初に検討すべきは、青色申告の活用です。青色申告とは、一定の要件を満たした帳簿付け(複式簿記による記帳など)を行うことで税制上の優遇を受けられる申告方法で、個人事業主として開業するならぜひ選択したい制度です。青色申告を行うことで得られる代表的なメリットは次のとおりです。
- 青色申告特別控除による所得控除: 青色申告で確定申告をすると、所得から最大65万円(通常は55万円、簡易帳簿等の場合10万円)の特別控除を受けることができます。控除額65万円を適用できれば、その分課税所得が減り税金が軽減されます(65万円控除を満額受けるには電子申告(e-Tax)の利用や電子帳簿保存要件を満たす必要があります)。仮に所得税・住民税の合計税率が30%の方なら、65万円控除で約20万円もの税額軽減効果が得られる計算です。これは美容室オーナーにとって非常に大きな節税メリットと言えます。
- 青色事業専従者給与の活用(家族への給与支払): 青色申告を選択すると、生計を一にするご家族への給与(専従者給与)を必要経費にできるという特典も受けられます。例えば、配偶者や親族が美容室の経営を日常的に手伝っている場合、所定の手続きを行えばその家族に支払う報酬を全額経費計上できます(青色申告専従者給与)。白色申告では配偶者は年86万円、その他の親族は年50万円が上限という制限がありますが、青色申告の場合は上限なく給与を経費算入可能です。家族に適切な給与を支払うことで所得の分散による税率軽減効果も得られ、一石二鳥の節税策となります。ただし専従者給与を利用すると配偶者控除など一部の所得控除は使えなくなるため、支払い額との比較で有利か判断が必要です。
- 純損失の繰越控除(赤字の繰越し): 開業当初は設備投資や宣伝費など初期費用がかさみ、事業が赤字になることもあります。青色申告者であれば、仮に事業が赤字(純損失)になってもその損失を最長3年間将来の黒字と相殺するために繰り越すことが可能です。例えば開業1年目に100万円の赤字が出て、2年目に200万円の黒字が出た場合、青色申告なら2年目の所得から1年目の赤字100万円を差し引いて申告でき、結果として2年目の課税所得を100万円に圧縮できます。このように赤字を無駄にせず将来の節税に活かせるのも青色申告の重要なメリットです(白色申告では赤字の繰越控除は認められません)。さらに言えば、法人化した場合は赤字を最大10年間繰り越せる制度がありますので、事業規模拡大時には法人化も検討すると良いでしょう(法人化については後述します)。
これらの他にも、青色申告には少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産の即時償却※)や貸倒引当金の設定など、節税に有利な特典が用意されています。ただし青色申告を行うには、開業から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、日々の取引を複式簿記で記帳して決算書類を作成するなど一定の要件を満たす必要があります。最初はハードルが高く感じるかもしれませんが、現在は市販の会計ソフトやクラウド会計サービスを使えば比較的容易に複式簿記に対応できますし、税理士に依頼すれば煩雑な帳簿作成も代行してもらえます。多少の手間と費用をかけても青色申告を選ぶ価値は大きいため、開業予定の方はぜひ前向きに検討してください。当税理士事務所でも開業に合わせた青色申告導入支援を行っていますので、不安な点があればお気軽にご相談いただければと思います。
青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。
節税対策の基本中の基本は、必要経費をもれなく計上して課税所得を圧縮することです。所得税・住民税は「所得」(=収入-必要経費)に対して課税されますから、経費が多くなればなるほど課税対象となる所得が減り税額も小さくなります。裏を返せば、経費にできる支出を経費計上し忘れていると、その分だけ余計に税金を払ってしまうことになるのです。
美容室経営では日々様々な支出がありますが、それらが事業の遂行に必要なものであれば原則として必要経費に計上できます。個人事業主の場合、プライベートな支出との区別がややこしい場面もありますが、事業に関連する費用は領収書やレシートをしっかり保管し、漏れなく経費として計上する習慣をつけましょう。経費計上の精度を上げることで、結果的に節税効果が高まり手元資金を増やすことができます。
では、美容室経営において必要経費として認められる主な費用項目を具体的に挙げてみます。以下のような支出は、美容室の売上を上げるために直接または間接に必要な経費と言えますので、忘れず計上しましょう。
- 店舗関連費用: 美容室の賃貸物件の家賃(地代家賃)、店舗の電気代・水道代・ガス代(水道光熱費)、物件の修繕費や内装工事費、店舗で加入する火災保険・損害保険の保険料など。
また、新店舗の改装費用や内装工事費用は金額によって一度に経費にできず固定資産として減価償却する場合もありますが、少額(例えば工具や美容機器で10万円未満)のものは消耗品費等で購入時に全額経費化可能です。 - 備品・消耗品費: お客様に施術で使用するシャンプー、トリートメント、カラー剤、パーマ液などの薬剤類や、タオル・クロス等の消耗品は経費計上できます。また、スタイリストが使うハサミ、ドライヤー、ブラシ等の美容機材も業務用途であれば経費です。10万円以上する高価な機材は固定資産扱いとなりますが、少額減価償却の特例等で一括償却する方法もあります。加えて、店内に置く雑誌や書籍(新聞図書費)もお客様サービスに必要なら経費になります。
- 人件費・外注費: 従業員に支払う給料・賞与、雇用にかかる社会保険料の事業主負担分、アルバイトへの時給などは人件費として経費です。従業員がいない場合でも、繁忙期だけ手伝ってもらうフリーランス美容師への業務委託費(外注費)なども経費になります。なお、個人事業主本人(オーナー自身)への給与は事業上は発生しないため経費計上できません(個人の儲け=事業主所得とみなされます)。この点は法人との大きな違いです。
- 広告宣伝費: 新規集客や顧客維持のために使ったチラシ印刷費、ポスティング費用、看板作成費、ウェブサイト制作費、SNS広告費などは広告宣伝費として経費になります。ホットペッパービューティー等の掲載料や、美容室予約サイトへの手数料も忘れず経費にしましょう。
- 通信費・事務費: サロン用の電話・スマホ代、インターネット通信費は事業用部分が経費です。予約管理や会計に使うパソコンやタブレットも業務利用分は経費計上できます。また、印刷用紙や筆記具などの文房具代(事務用品費)、レジ袋や掃除用具など雑務に関する消耗品費も含めましょう。
- 接待交際費・会議費: 取引先や同業交流で必要な打ち合わせ時の飲食代や、業界の情報交換会に参加した際の懇親会費用などは、業務上必要であれば交際費または会議費として経費にできます。例えば、美容ディーラーとの商談での喫茶代は会議費に該当します。ただし私的な飲み代を経費にすることは認められませんので、業務目的が明確な場合に限ります。
- 研修費・教育費: スタイリストの技術向上のために参加したセミナーの受講料、講習会の参加費、美容師免許の更新講習費用などは研修費として経費計上できます。美容室組合の会費など業界団体の会費(諸会費)も事業に関連する支出なので経費です。
- 交通旅費: 仕事で外出した際の交通費(電車代、バス代、駐車料金等)や、業務出張があればその宿泊費・旅費も経費になります。たとえば美容師向けのヘアショーや展示会に出向いた場合の交通費は忘れず落としましょう。自家用車を業務で使用した場合は、そのガソリン代や高速料金も事業利用分は経費にできます(私用との按分計算が必要です)。
- 租税公課: 事業に関連して発生する税金のうち、個人事業税や固定資産税(店舗や設備にかかる分)などは経費として扱われます。個人事業税は年間事業所得290万円超で発生する地方税ですが、確定申告時に必要経費に計上可能です。一方、所得税や住民税は経費にはできません。また美容室で加入する従業員の労災保険料や雇用保険料の事業主負担分も経費です。
以上は主な例ですが、「それが仕事に必要な支出か?」という観点で判断すると経費計上漏れを防げます。「これは経費になるかな?」と迷うものがあれば、遠慮なく税理士に相談してみましょう。当税理士事務所でも経費になるか微妙な支出についてご質問をいただくことがありますが、一つ一つ丁寧にアドバイスしております。
一方で、事業に関係ないプライベートな支出はいくら美容室名義のクレジットカードで払った領収書があっても経費にはできません。経費計上が認められない代表的な例として以下のものがあります。
- 私的な支出: 家族の生活費や自宅の家賃・光熱費、プライベートな旅行代、個人的な食事代や交際費などは経費になりません。事業とは無関係の純粋なプライベート出費を会社名義で払っても経費計上は不可です。美容室オーナーの場合、仕事とプライベートが混在しやすいですが、事業に関係ない費用はきっぱりと分けるようにしましょう。
- 事業と関係ない借入金返済: 例えば自宅マイホームの住宅ローン返済や、個人的な借金の返済元本部分は経費になりません。事業用の設備資金融資の返済であっても元本は経費不可で、支払利息のみが経費計上できます。この点も押さえておきましょう。
- 所得税・住民税などの個人税金: 前述のとおり所得税、住民税、自動車税(自家用車)など個人に課される税金は経費になりません。美容室の事業に直接かかる税金(事業税や消費税等)とは区別して考える必要があります。
- 事業主本人や家族従業員への過剰な給与・生活費: 個人事業主であるオーナー自身への給与は経費にできず、生活費の引き出しは事業主貸(利益処分)という扱いになります。また専従者給与として届出していない家族に対し、経費で落とそうとして実態のない給与を支給するような行為も認められません。家族に支払うなら前述の専従者給与制度を正しく利用しましょう。
- 業務と無関係な資産の購入費: 事業用途とは言えない高級車の購入費や過度に高額な私物なども経費にはできません。業務上使う車であっても、必要以上に高額で事業規模に見合わないと判断されれば一部が経費否認される可能性があります。また、仕事に必要ない衣服やアクセサリーも経費計上はできません(制服や仕事用ユニフォームとして明確なものであれば認められるケースもあります)。
- 罰金・違約金: 駐車違反の反則金や延滞税、加算税、行政処分による罰金など反社会的行為に起因する支出は経費にならないと税法で定められています。例えば美容室の営業中に出た駐車違反の反則金を経費計上することはできません。
以上のような経費として認められない支出をうっかり経費に入れてしまうと、あとで税務調査で指摘され追徴課税となるリスクがあります。「これは怪しいかな?」という支出は初めから除外するか、事前に税理士に確認しましょう。特にプライベートと事業が混在する支出については、合理的な按分根拠をもって事業割合のみ計上することが大切です。例えば自宅の一室を事務所兼在庫置き場にしている場合、自宅家賃や光熱費の事業按分割合をきちんと計算し記録しておく必要があります。同様に、自家用車や携帯電話を仕事でも使う場合は、その利用割合を明確にしておきましょう。
必要経費を計上して課税所得を減らすことと並んで、個人の所得控除を余さず活用することも重要な節税対策です。所得控除とは、所得税計算の際に所得から差し引けるプライベート要因の控除で、納税者の事情に応じて様々な種類があります。代表的な所得控除として以下のものがあります。
- 基礎控除: 全ての納税者が無条件に受けられる控除で、現在は一律48万円が所得から差し引かれます。令和2年に従来の38万円から引き上げられ、手厚くなりました。事業所得者も給与所得者も誰でも適用されます。
- 配偶者控除・配偶者特別控除: 配偶者に収入がない、または一定以下の場合に適用される控除です。例えばオーナーの配偶者が年間所得48万円以下であれば配偶者控除38万円を受けられます。配偶者にある程度収入があっても、上限を超えない範囲なら配偶者特別控除として段階的な控除が適用されます(配偶者の所得95万円まで控除あり)。ご夫婦で美容室を営んでいる場合、どちらかを専従者給与にするか配偶者控除を使うかは所得水準によって有利不利が変わりますので検討が必要です。
- 扶養控除: 扶養している家族(16歳以上の子どもや親など)がいる場合の控除です。例えば高校生以上の子を扶養していれば一人当たり38万円(19歳~22歳なら63万円)の控除があります。お子さんがアルバイトで一定以上稼いだ場合は対象外になるため注意しましょう。
- 社会保険料控除: 国民年金保険料や国民健康保険料など個人で支払っている社会保険料は全額が所得控除になります。美容室オーナーは国民年金・国保に加入されている方が多いと思いますので、1年分の支払額をきちんと控除しましょう。年末に送付される控除証明書を用いて確定申告で申告します。
- 生命保険料控除・地震保険料控除: 個人で加入している生命保険や地震保険の支払保険料も一定額まで控除できます。生命保険料控除は一般生命・介護医療・個人年金の3区分があり、それぞれ最大4万円(合計で最大12万円)の所得控除が受けられます。地震保険料控除は上限5万円です。例えば将来に備えて民間の生命保険に加入していれば、その年払った保険料の一部を控除できます。
- 医療費控除: 自分や家族のために1年間に多額の医療費を支払った場合(年間合計10万円超が目安)、超過分を所得控除できます。美容室経営とは直接関係ありませんが、大病や出産などで医療費がかさんだ年は申告しましょう。なお、美容整形や美容目的の費用は対象外ですが、仕事中のケガの治療費などはもちろん含めてOKです。
- 寄附金控除(ふるさと納税等): 支払った寄付金も一定額控除可能です。特にふるさと納税は自己負担2,000円を除いた全額が所得控除(もしくは税額控除)となる人気制度です。地方自治体への寄付という形で税金を前払いし、その見返りに返礼品も受け取れるため、多くの方が利用しています。美容室オーナーも所得が多い年はふるさと納税を上手に活用すると良いでしょう。
上記のような所得控除を漏れなく適用することで、課税所得が圧縮され税額が減少します。特に個人事業主の場合、自動的に適用される控除以外は自分で申告しないと適用されません。毎年の確定申告時には、自分が該当する控除をリストアップし、必要な証明書類(保険料控除証明書など)を揃えて臨みましょう。「控除の申告忘れ」は非常にもったいないので注意してください。
また、前述した小規模企業共済やiDeCoへの掛金も「小規模企業共済等掛金控除」として全額が所得控除扱いになります。これらは次の項目で詳しく説明しますが、事業用経費だけでなくプライベートの所得控除も総動員して税負担を軽減することが節税の基本です。当税理士事務所ではお客様に合わせた控除適用のアドバイスも行っておりますので、「こんな控除があると聞いたが自分も使える?」といった疑問もぜひご相談ください。
美容室を新規開業する際、オープンまでに様々な準備費用がかかります。物件取得の礼金・仲介手数料、店舗の内装工事費、開店告知の広告宣伝費、スタッフ採用費、開業前研修や講習参加費、開業に向けた交通費など、開業前に発生した支出は一見すると経費にならないように思えます。しかし、ご安心ください。開業前の支出の多くは「開業費」として処理することで節税に活用できます。
開業費とは、事業を開始するまでに特別に支出した費用のことで、税法上は繰延資産という扱いになります。具体的には、開業準備のために支出した費用(店舗の賃借契約のための不動産屋への礼金、オープン告知チラシの印刷代、備品購入費、開店前研修費、開業前に取得した各種許可申請費用など)が該当します。これら開業費は、事業開始後にまとめて経費計上することが可能です。
開業費のポイントは、任意償却といって計上タイミングを選べることです。計上方法として主に2通りあり、(1) 開業した年に全額を一括で経費に落とすか、(2) 数年間(例えば5年以内)で均等に分割して償却するかを選択できます。多くのケースでは、開業初年度に利益が出ていれば一括で全額経費にしてしまう方が早期に節税効果を得られます。一方、初年度が大幅赤字になるほど開業費を使った場合には、あえて全額は落とさず一部を翌年以降に繰り延べることも可能です。例えば、開業前に総額200万円の費用を支出していて初年度利益が少ないなら、開業費としてそのまま資産計上しておき、利益が出たタイミングで必要に応じて償却(経費化)するといった調整ができます。
重要なのは、開業前の領収書や支出内訳をしっかり記録・保存しておくことです。開業費として計上する際には「〇年〇月〜〇月 開業準備費用 一式○○円」などとまとめて仕訳することもありますが、その内訳エビデンスとして領収書を取っておく必要があります。開業から時間が経つと意外と忘れがちなので、開業準備段階から経費ノートなどに支出をメモし、証憑をファイリングしておきましょう。
なお、法人の場合は「開業費」ではなく「創立費・開業費」として扱われ、株式設立登記の費用なども含めてやはり繰延資産となります。法人でも任意償却は可能ですが、5年均等償却(法律上の耐用年数)とすることもあります。個人・法人いずれにせよ、開業前の支出を忘れず経費化することは新規開業時の基本的な節税対策です。
小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、将来の備えをしながら現在の所得税・住民税を減らせる強力な節税ツールです。美容室オーナーのような小規模事業者に特におすすめの制度なので、それぞれ概要を押さえておきましょう。
- 小規模企業共済の活用: 小規模企業共済は、常時使用する従業員が20人以下の個人事業主や中小企業の役員が加入できる退職金積立制度です。毎月の掛金を1,000円から7万円まで500円単位で自由に設定でき、支払った掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除になるという大きなメリットがあります。年間最大84万円(月7万円)の積立を行えば、その84万円分まるごと課税所得を減らせるわけです。例えば課税所得が500万円の方が年間84万円積み立てれば、所得税住民税を合わせて数十万円規模の節税になります。さらに、この共済はオーナーが廃業・退職する際に共済金(積立金+α)が受け取れ、その受取金は退職所得扱いになります。退職所得は税法上かなり優遇されており、長期間積み立てた場合は大きな退職所得控除があるため受取時の税負担も軽減されます。つまり積み立て時も受取時も節税になる二重のメリットがあるのです。注意点として、短期間で解約すると元本割れするケースがあるなど中長期の積立が前提の制度ですが、万一資金繰りが厳しい場合は積立金の範囲で貸付を受ける制度もあります。将来のための退職金準備と現在の節税を兼ねられる小規模企業共済は、美容室オーナーであればぜひ加入を検討したい制度です。当税理士事務所でも加入手続きのサポートやシミュレーションを行っています。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用: iDeCoは自分で掛金を積み立て、自分で運用し、60歳以降に受け取る私的年金制度です。こちらも掛金全額が所得控除になり、運用益も非課税となるため節税と資産形成を両立できます。美容室オーナーのような自営業者(国民年金第1号被保険者)の場合、iDeCoの掛金上限は月額6.8万円(年額81.6万円)と他の職業より高めに設定されています。これは会社員と違って厚生年金や企業年金がない分、自助努力で老後資金を準備できるようにするためです。仮に上限いっぱいの月6.8万円を積み立てれば年間81.6万円の所得控除となり、小規模企業共済と合わせれば年間160万円近く課税所得を減らすことも可能です(十分な利益がある場合)。積み立てた資金は60歳まで引き出せない制約がありますが、その分確実に老後資金を確保できるメリットとも言えます。受取時も、一時金で受け取れば退職所得控除、年金で受け取れば公的年金等控除が適用され、税制優遇があります。注意点として、加入から受取までの手数料や運用商品選びなど考慮すべき点はありますが、長期的に見れば節税効果+運用益非課税+老後資金形成というメリットは大きいです。現在、自営業者のiDeCo加入可能年齢は60歳未満(2022年以降、加入上限年齢が65歳に段階的引上げ中)で、加入後は原則60歳まで積立運用します。国の制度変更で今後さらに上限額引上げ等が検討されていますので、情報をアップデートしつつ活用しましょう。
小規模企業共済とiDeCoはいずれも「節税しながら将来に備える」制度であり、個人事業の美容室オーナーにとって心強い味方です。ただし、毎月積み立てる資金繰りの余裕や、途中解約時のデメリット(小規模共済は20年未満での解約だと元本割れ、iDeCoは原則途中解約不可など)も踏まえて無理のない範囲で加入しましょう。「老後の年金が国民年金だけでは不安…」という方は積極的に検討をおすすめします。これらの制度は金融機関等で手続きできますが、当税理士事務所でもご希望があれば制度の仕組みからご説明いたします。
美容室を開業する段階で税理士に相談することは多くのメリットがあります。経営を軌道に乗せることに注力したい開業時期だからこそ、税務・経理のプロのサポートを得ることで最初から正しい節税対策と経理体制を築けるのです。当税理士事務所にご依頼いただくお客様からも、「もっと早く相談しておけば良かった」というお声をいただくことが多いです。主なメリットを挙げてみましょう。
- 青色申告のスムーズな導入: 前述のように、開業時には青色申告の届出や帳簿体制の構築が重要です。税理士に相談すれば、期限内の青色申告承認申請書の提出から適切な記帳方法の指導まで一括してサポートしてもらえます。自分で手探りで進めると漏れがちな手続きも、専門家の助言で確実に行えます。例えば当税理士事務所では、お客様の業種に適した会計ソフト選定や初期設定までサポートし、経理未経験の方でもスムーズに帳簿付けを始められるようお手伝いしています。
- 節税の事前対策アドバイス: 開業段階からその年の利益予測を立て、先手先手で節税策を講じるのも税理士の役割です。例えば、「今年は設備投資が多く利益が出にくいので、敢えて小規模共済は少なめに積み立て、来年利益が出そうなら増額しましょう」「年内にこれこれの経費を計上しておくと税負担が減ります」といったタイムリーな節税アドバイスが受けられます。開業後に「あれをしておけば良かった…」と後悔することが減ります。
- 経理事務の効率化と本業専念: 開業直後はサロン運営で忙しく、レシート整理や帳簿付けに手が回らないこともあります。税理士に依頼すれば、日々の記帳代行や経理体制の構築を支援してもらえ、オーナーは本業であるサービス提供や集客に注力できます。当税理士事務所ではクラウド会計を活用し、レシート撮影や銀行データ取込で自動記帳する仕組み作りも提案しています。経理時間を削減して経営に集中できるのは大きなメリットです。
- 各種届出・手続きの代行: 個人事業の開業に伴い、税務署や役所へ出す書類は意外と多くあります(開業届、青色申告申請、給与支払事務所の届出、減価償却方法の届出等)。税理士に依頼すれば、必要な届出書類の作成提出を代行してもらえます。漏れがちな各種届出が適切に行われることで、後々余計な税金を払わずに済みますし、心理的負担も軽減されます。
- 経営相談・融資支援: 税理士は節税だけでなく、経営全般の相談相手にもなり得ます。開業時の資金繰りや融資についてアドバイスをもらったり、事業計画書のブラッシュアップ、金融機関紹介などを受けられる場合もあります。当税理士事務所でも日本政策金融公庫の融資相談に同行した実績があります。税理士は数字に強い味方ですから、経営判断に迷ったとき専門家の視点を借りられるのは心強いでしょう。
このように、開業時に税理士と顧問契約を結ぶことは、長い目で見て節税と経営安定につながる賢い選択です。当税理士事務所「税理士法人加美税理士事務所」でも、他業種を含め多数の開業支援実績があり、経理・税務のスタートアップを丁寧にサポートしております。初回相談は無料ですので、「とりあえず話だけ聞いてみたい」という段階でもお気軽にお問い合わせください。私たちが二人三脚で美容室経営の成功をサポートいたします。
最近では、美容室の経営に加えて副業で収入を得たり、SNSで人気を集めてインフルエンサー的な収入を得ている美容室オーナーの方も増えてきました。例えば、美容室の合間にYouTubeチャンネルでヘアアレンジ動画を配信して広告収入を得たり、Instagramで商品紹介を行って報酬を受け取ったりするケースです。複数の収入源がある場合、その税務処理はやや複雑になりますが、きちんと対策すればこちらも節税の余地があります。このセクションでは、副業収入やインフルエンサー収入がある美容室オーナー向けに、知っておくべき申告方法と節税ポイントを解説します。
まず押さえておきたいのは、収入の種類ごとに所得の区分を正しく判断することです。美容室の売上から生じる収入は通常「事業所得」に該当します。一方、YouTubeやブログの広告収入、SNSでのタイアップ収入などは、その状況によって「事業所得」とみなせる場合と「雑所得」とされる場合があります。
- 事業所得として申告できるケース: 副業的な収入であっても、営利性・反復性があり事業的規模で行っている場合は事業所得として申告できます。例えば、YouTubeチャンネル運営を継続的に行い毎月広告収入を得ている場合や、インスタでのプロモーション投稿を定期的に受託している場合などは、一つの事業として扱える可能性があります。事業所得になれば、メインの美容室所得と合算して青色申告特別控除の適用を受けることもできます(青色申告者で事業所得が複数ある場合、合計で55万/65万円控除が1回受けられます)。また、後述するように副業収入に関連する経費もしっかり計上でき、赤字であれば他の事業所得と相殺することも可能です。
- 雑所得として申告すべきケース: 副業収入が趣味的・臨時的な性格であったり、収入額がごく僅かで事業と呼べるほどではない場合、税務上は「雑所得」として扱うのが適切です。例えば、ごくたまにSNSで商品紹介してお礼に数万円受け取る程度であれば雑所得に該当するでしょう。雑所得の場合、青色申告の特典(特別控除や損失繰越など)は使えません。また雑所得同士は損益通算できますが、雑所得の赤字を事業所得の黒字と相殺することはできません。つまり雑所得で損失が出ても他の所得の節税に使えないのです。
以上を踏まえ、副業収入があるオーナーは自分の副業が事業所得レベルか雑所得かを判断する必要があります。判断基準としては収入金額の大きさ、活動の継続性、事業としての設備投資の有無、社会的認知などが考慮されます。明確に線引きできない場合も多いので、迷ったら税理士に相談するのが安全です。適切な区分で申告することで、後々税務署との認識違いによるトラブルを避けられます。
なお、会社員を続けながら副業で美容室をやっている方などは、給与所得以外の所得合計が20万円を超える場合は確定申告が必要になります(20万円以下でも住民税申告は必要なケースがあります)。副業所得が20万円以下だから申告しなくて良い、というのは会社員の場合の特例ですので、個人事業主として事業を行っている方には関係ありません。美容室オーナーとして既に確定申告している場合は、副業の収入が少額でも必ず申告に含める義務がありますので注意してください。
美容室オーナーが得る可能性のある広告収入には例えば次のようなものがあります。
- ウェブ広告収入: 自分の運営するブログやYouTubeチャンネルに表示される広告(Googleアドセンス等)からの収入。
- SNSタイアップ報酬: InstagramやTikTokで美容関連商品の紹介投稿を行い、その報酬や提供品を受け取るケース。
- 店舗での広告掲載料: 美容室内に他社の商品パンフレットを置く代わりに受け取る紹介料やポスター掲示料など。
これらの収入を適切に処理し節税するポイントは、「収入に対応する経費を確実に落とすこと」と「収入の性質に応じた申告区分にすること」です。
まず、広告収入が発生したらその原資となった活動に関連する支出を経費計上しましょう。例えばYouTubeでヘアアレンジ動画を撮影しているなら、撮影機材(カメラ・照明)の購入費、動画編集ソフトの利用料、撮影用に使った消耗品(スタイリング剤等)やセットの小道具費用、通信費などが経費になります。自宅やサロンの一角を撮影スタジオにしているなら、その電気代や家賃の一部も按分経費にできます。Instagramのタイアップであれば、撮影用の衣装やメイク用品費、撮影場所への交通費などが考えられます。収入を得るために直接要した費用はできるだけ漏れなく経費にし、実質的な所得を圧縮することが節税の基本です。
次に、その広告収入自体の所得区分を決めます。前項で述べた通り、広告収入が事業的規模なら「事業所得」、そうでなければ「雑所得」です。例えばYouTubeで毎月収益を上げているような場合、それ自体を美容室の事業の一部(広報活動の延長)とみなして事業所得に含めることも可能です。その場合、広告収入も美容室の売上の一部として経理し、関連経費も事業経費として落とせます。青色申告特別控除等の恩恵も及ぶため有利です。逆に、本業の片手間で年数回しか発生しないような臨時収入であれば雑所得として分けて申告し、雑所得としての必要経費を差し引いて所得計算します。
具体例で考えましょう。ある美容室オーナーAさんはサロンワークの傍ら個人ブログを運営し、年間で広告収入が30万円ありました。このためにかかった費用はサーバー代1万円、記事用の商材購入費2万円程度です。この場合、収入規模的にも副次的活動なので雑所得として扱うのが自然です。確定申告では「雑所得:ブログ広告収入 30万円、必要経費3万円、雑所得=27万円」と計上します。一方、オーナーBさんはYouTubeチャンネルで毎月美容情報を発信し年120万円の広告収入があり、撮影編集にかなり労力を割いています。関連機材費や経費も年間50万円ほど発生しています。この場合は一種のメディア事業といえますから、Bさんは青色申告の事業所得にこのYouTube収入を含めました。結果、事業所得(美容室+YouTube)の中で広告収入120万-経費50万=70万円の利益が上乗せされる形になります。
このように、広告収入を含む副業の所得区分次第で節税効果は大きく変わります。収入額が多く経費もかかっている場合は事業所得化して青色申告のメリットを享受する方が有利です。ただし事業所得とするには、税務署から「単なる趣味ではなく事業だ」と認められるだけの客観的事実(専用の設備がある、継続的に取り組んでいる、収入規模が大きい等)が必要です。どちらに該当するか判断が難しい場合は、当税理士事務所のような税理士に相談していただければ適切な申告方法をご提案いたします。
SNSやインフルエンサーとして収入を得る場合、経費計上についていくつか注意しておくべきポイントがあります。副業収入をしっかり経費で圧縮して節税するために、以下の点に気を付けましょう。
- プライベート利用との区別を明確に: スマホ代や自宅光熱費、車両費など、インフルエンサー活動にも使うがプライベートでも使うものは、事業用途の割合を合理的に算出して経費計上します。例えば「自宅の1部屋を撮影スタジオにしているので、家賃の20%を経費計上する」や「スマホは仕事用と私用半々で使うので通信費の50%を経費にする」といった按分が必要です。按分根拠となる使用時間や面積比などはメモや資料に残しておくと、税務調査で説明を求められた際に安心です。
- 衣装や美容費の扱い: インフルエンサー活動では見た目も大切なため、衣服やメイク用品にお金がかかります。ただし一般的に着用する衣服や個人的な美容代は原則経費になりません。経費にできるのは、例えば「撮影やイベント出演のために特別に購入した衣装で日常では使わないもの」や「作品づくりのために必要なコスチューム」などに限られます。グレーな領域ですが、税務上は「業務上必要な特殊な支出かどうか」が基準です。迷う場合は保守的に考えておく方が無難です。
- 提供品・現物報酬の申告: インフルエンサー活動では、現金ではなく商品提供という形で報酬を受け取るケースがあります。この場合もその商品の時価相当額を収入(雑所得など)に計上しなければなりません。もらった商品をそのままプライベートで使うなら経費にはなりませんが、レビューのために使用した消耗品であれば使用後に廃棄して経費計上することも考えられます。提供品だからノーカウント、ではなく金銭に換算して収入処理が必要という点に注意です。
- 旅費交通費の範囲: SNS取材や撮影のために遠方へ出向いた場合、その交通費・宿泊費は経費です。ただし旅行が主目的でSNS投稿はついで、のような場合は全額を経費にするのはリスクがあります。仕事目的とプライベート目的が混在する出張の場合、スケジュールや目的を記録しておき、事業関連部分のみ経費計上するようにしましょう。
- 経費の証拠保管: 副業関連の経費こそ領収書や支出記録をきちんと残すことが大事です。例えばオンライン決済でソフトウェアを購入した場合はその明細をプリントアウトする、交通系ICカードの利用履歴を記録しておく、などです。美容室本業とは別に副業用フォルダを用意し、関連する書類をまとめておくと確定申告時に便利です。
このように、インフルエンサー・副業活動の経費計上は本業以上に「どこまでが仕事か」の線引きが重要です。税務署も近年ネット副業には注目しており、いい加減な経費計上をしていると指摘を受ける可能性があります。業務上必要と言える経費だけを計上するのが基本スタンスです。不安な点は税理士に確認し、適切な処理を心がけましょう。
美容室経営の収入に加えて副業収入やインフルエンサー収入がある場合、複数の収入源をできるだけ一元的に管理することが節税上も有効です。具体的には、会計帳簿や口座を事業用にまとめる、できれば同じ青色申告の中で計上するなどの工夫です。
複数の収入源を一元管理することで得られる節税上のメリットとして、まず損益通算がしやすいことが挙げられます。例えば、美容室の事業が黒字でも、副業が立ち上げ期で赤字の場合、その赤字を他の黒字と相殺できれば全体の所得が圧縮され税負担が減ります。青色申告で複数事業を営んでいる場合、事業所得同士は通算して申告できますので、一方の赤字を他方の黒字から差し引いて節税することが可能です。もし副業を雑所得で申告していたら、このような損益通算はできません。したがって、「副業も事業として一本化できないか?」という視点で検討する価値があります。
また、収入源ごとに別々に経理していると、経費計上漏れや重複計上のリスクが高まります。統一した会計ソフトでまとめて収入・支出を管理すれば、「同じ経費を二重に計上してしまった」「こちらでは計上したのに向こうでは失念していた」といったミスを防げます。特に経費は共通するものも多いでしょうから(例:パソコンや家賃は美容室経営にも副業にも使っている等)、共通経費は按分ルールを決めて一括処理した方が合理的です。別々に管理していると按分漏れや割合の不整合が起きがちです。
さらに、税務署とのやり取りも一元化できます。収入源ごとに別々の申告をしていると、自分でも煩雑ですし税務調査の際にも説明がややこしくなります。一つの確定申告書に全ての所得をまとめて記載してあれば、税務署も全体像を把握しやすく、不要な疑念を抱かれにくいでしょう。
もし収入源が増えて規模も大きくなってきた場合には、法人化を検討するタイミングかもしれません。一つの株式会社を設立し、美容室事業もSNS発信事業もその法人でまとめて行う形にすれば、経理も一本化できます。法人内であれば複数事業の利益と損失は当然相殺されますし、法人税率の適用で節税になるケースもあります。ただし法人化すると社会保険の加入など新たなコストも発生しますので、一概に良いとは限りません。この点も含め、複数収入がある場合は税理士と相談しながらベストな管理方法を選ぶことをおすすめします。
当税理士事務所では、美容室オーナー様の副業収入も含めてトータルで節税最適化するご支援を行っています。複数の通帳やレシートがごちゃごちゃ…という状態でも大丈夫です。こちらで整理し、最も有利になる申告方法をご提案しますので、お困りの際はご相談ください。
事業が軌道に乗り売上・利益が拡大してくると、事業形態を「法人化」することによる節税メリットが顕在化してきます。個人事業主から株式会社や合同会社といった法人を設立することを一般に「法人成り(法人化)」と呼びますが、法人化には節税面や事業拡大面で様々なメリットがある一方、新たな義務やデメリットも存在します。この章では、美容室経営者が法人化を検討すべき状況と、そのメリット・デメリット、さらに法人化後に留意すべき税務対応について解説します。
法人化の最大のメリットは、所得に対する税率を引き下げられる可能性が高いことです。日本の所得税・住民税は累進課税で、個人事業主の所得が増えるほど税率も上がり、課税負担が大きくなります。最高税率は所得税45%+住民税10%で55%にも達します。しかし、法人(中小企業)の場合、所得金額にかかわらず適用される法人税率は原則一律23.2%(※年800万円以下の所得部分は15%の軽減税率)です。さらに法人住民税・事業税等を加味した実効税率でも、通常30%前後(所得次第で20数%~約35%程度)に収まります。つまり高所得層では個人より法人の方が税率がかなり低いのです。
具体例を考えます。個人事業主のままでは課税所得が900万円を超えると、そこから先は税率33%(住民税含め43%)以上になります。一方、法人化していれば800万円まで15%(軽減税率)、800万円超部分も約30%程度です。したがって、利益水準が高くなるほど法人税率の方が有利になるのです。一般的に「所得が900万円を超えたら法人化した方が節税になる」と言われるのはこのためです。実際、所得1000万円超を個人で稼ぐ状況だと、法人化しないと「一刻も早く法人化を検討すべき」と言われるほど税負担に差が出ます。
また法人化すると、所得の分散が図りやすくなります。個人事業では事業の儲けは全て事業主個人の所得になりますが、法人にすると儲けを法人の利益と役員報酬(オーナーへの給与)に配分できます。役員報酬は法人にとって経費となり法人税を減らす効果がありますし、その報酬を受け取ったオーナー個人も給与所得控除が使えます。給与所得控除とは、給与所得者に一律認められるみなし経費のようなもので、例えば年収600万円の役員報酬なら約154万円の給与所得控除が適用されます。つまり同じ600万円を取っても、事業所得で600万より給与所得で600万の方が個人側の課税所得は低くなるわけです。さらに、法人がオーナーのご家族を役員や従業員にして給与を支払えば、一家の所得を複数人に分散できます。家族それぞれが基礎控除等を享受でき、各人の税率も低く抑えられるため、トータルの税額が減ることになります。
まとめると、法人化すると「法人税率の低さ」と「給与という形で所得分散・控除活用ができる」ことで大きな節税効果が期待できます。もちろん、法人維持にはコストもかかりますが、所得水準が一定以上になればそのコストを払っても十分な節税メリットがあります。一般には年間利益が900万円を超える頃が法人化の目安とされますが、実際には事業の将来性や社会保険負担も考慮して総合判断すべきです。次項以降でも触れますが、安易に法人化するとかえって負担が増えるケースもありますので、タイミングと事前準備が重要です。
法人化すると、法人ならではの経費戦略が使えるようになります。個人事業では認められなかった支出も、法人では要件を満たせば経費計上が可能になり、結果として経費の幅が広がることも大きなメリットです。美容室経営者が法人化後に活用しやすい経費戦略の例を挙げます。
- 役員社宅の活用: 法人が住宅を借り上げ、それを役員(オーナー)の社宅とする制度です。具体的には、会社名義で自宅マンション等を契約し会社が家賃を支払う形にします。会社は家賃を経費計上できますし、役員からは定められた低廉な使用料(月額家賃の20~50%程度の計算)を徴収するだけで良いルールになっています。結果、役員本人は家賃の大部分を会社負担にしてもらい、個人で払う家賃を大幅に節約できます。一方会社はその家賃を全額損金(経費)にして法人税を減らせます。社宅制度を使うことで、オーナーの住宅費を実質的に税引前資金でまかなうことができ、個人・法人双方にメリットがあります。ただし適用には社宅と認められるための契約や役員からの使用料徴収など形式要件がありますので、税理士の助言のもと正しく導入しましょう。
- 社用車・車両費の計上: 個人事業主では自家用車の経費計上に制限がありましたが、法人になれば社用車として会社が車を所有・リースし、関連費用を幅広く経費にできます。美容室の業務で車を使う場面(買い出し、送迎、出張美容サービス等)がある場合、社名義で車を保有すればガソリン代、駐車場代、車検・修理代、自動車税・保険料など維持費をすべて会社経費にできます。役員がプライベートでも使う場合は、その分は役員賞与的な扱いにならないよう一定額を役員に負担させる(もしくは利用記録を付ける)必要がありますが、大部分を経費化できるメリットは大きいです。社用車として高級車をリースし、経費にしつつ接客サービスの付加価値にする、といったことも可能です(節税目的が過度だと認められない場合もあるので節度は必要ですが)。
- 役員への出張手当: 法人では役員や従業員に対して出張手当(日当)を支給できます。一定の範囲内であればこの出張手当は受け取る側に非課税で、支払う会社側では損金算入できます。例えば役員が地方の美容セミナーに出張した際、会社の規程に基づいて1日5,000円の出張手当を支給すると、その5,000円は役員の給与課税なしで受け取れ、会社の経費になります。個人事業では自分に日当を出す仕組みはありませんでしたが、法人化すれば日当という形で利益を社外に出し非課税で手元に残すことも可能です。もちろん手当を出すには社内規程整備などが必要ですが、出張が多いほど節税効果が高まります。
- 役員退職金の支給: 法人では、オーナーである役員が引退する際に役員退職金を支給できます。役員退職金は法人の損金となり経費になりますし、受け取る個人側も退職所得扱いとなり大きな控除が受けられます。長年経営に尽力したオーナーへの報奨として多額の退職金を支給すれば、法人税を圧縮しつつ個人側の税負担も抑えられる(退職所得は1/2課税かつ退職所得控除額が大きい)という効果があります。個人事業主の場合、事業をやめても退職金という概念はないため、この点も法人化の大きな魅力です。
- その他の福利厚生費: 法人では、従業員のための福利厚生制度を設け、それにかかる費用を経費にできます。例えば社員旅行やレクリエーション費用、慶弔見舞金、健康診断費用などです。規模にもよりますが、美容室を法人経営してスタッフに還元したい場合、福利厚生費として経費化しつつモチベーションアップにつなげることができます。オーナー自身も従業員として恩恵を受けられます。
このように、法人になると経費として認められる範囲が広がり、節税の自由度が上がるのです。特に役員社宅や役員退職金のメリットは大きく、うまく活用すれば数十万円~数百万円単位で税負担が変わるケースもあります。ただし、税務上適切な範囲を逸脱すると「やり過ぎ」として否認されるリスクもあります(いわゆる租税回避と見なされる場合)。節税効果が高い策ほど専門家のサポートを受け、安全策を講じながら導入することをお勧めします。当税理士事務所は法人向け節税策にも精通しておりますので、法人化後の経費戦略についても遠慮なくご相談ください。
法人化には多くのメリットがありますが、デメリットや注意点も理解しておく必要があります。知らずに法人化して「こんなはずでは…」とならないよう、主なポイントを押さえましょう。
- 社会保険料の負担増: 個人事業主では、原則従業員が5人未満の場合は厚生年金・健康保険への加入義務がありませんでした(従業員がいても国民健康保険・国民年金で済む)。しかし法人になると、従業員が一人でも必ず厚生年金・協会けんぽ等に加入しなければなりません。オーナー自身も会社の代表役員兼従業員として社会保険加入が義務付けられ、会社と本人で保険料を折半負担します。厚生年金と健康保険の保険料は給与の約30%弱(会社負担分と本人負担分合わせて)にもなるため、今まで国民年金・国保だけで済んでいた場合と比べかなりのコスト増となります。例えば月額報酬50万円だと会社負担だけで約9万円/月、本人負担も同額といった規模です。個人事業主で社会保険未加入だった方が法人化すると、手取り収入が減るor会社の負担が増える点はしっかり認識しておきましょう。もっとも、社会保険加入によって将来の年金給付が増えたり手厚い健康保険給付が受けられたりというメリットもありますので、単純な損ではありませんが、金銭負担としては重いです。
- 法人維持コストと事務負担: 法人を設立・維持するにはコストがかかります。設立時には定款認証や登記に最低20万円前後の費用が必要です。設立後も、毎年法人住民税の均等割(赤字でも7万円程度)を納めねばならず、会計帳簿の作成・保存や決算申告など事務負担も個人事業時代より格段に増えます。また税理士報酬も、法人の方がやや高く設定される傾向があります。さらに法人名義の銀行口座開設や融資手続き、各種契約変更など、法人化に伴う煩雑な変更作業も発生します。法人化すれば社会的信用は上がる反面、法的な管理義務やコストが増えることを念頭に置きましょう。
- 赤字でも税金がかかる: 個人事業では赤字なら所得税・住民税は基本ゼロでしたが、法人は赤字でも法人住民税の均等割という税金(地方税の一部)を毎年支払う必要があります。東京都など多くの自治体で資本金等1,000万円以下・従業員50人以下の中小法人の場合、年7万円の均等割が課税されます。また2期連続で赤字だと青色申告の欠損金繰越控除で多少救済されますが、それでも均等割は免れません。「赤字=税金ゼロ」とはいかなくなるデメリットを理解しましょう。
- 利益の私的流用に制限: 個人事業主時代は、儲かったお金を自由に生活費や個人的投資に使えました。しかし法人の資金は会社のものですので、オーナーといえども自由に引き出すことはできません。会社からお金を取るには、役員報酬か賞与、 配当などの正規の手段が必要で、それぞれ税金や手続き上の制約があります。もし法人のお金を経理処理なく引き出せば「役員貸付」などとなり、最悪の場合会社資金の私的流用として問題視されます。法人化後は会社と個人のお金をきっちり区別しなければならないという点も覚悟しましょう。
- 廃業・撤退の手間: 万一事業が振るわず撤退する場合、法人の解散・清算手続きは個人事業をやめるより手間と費用がかかります。解散登記や残余財産の処理、清算結了まで期間も要します。事業が軌道に乗っているうちは良いですが、リスク時の身軽さは個人の方が上という意見もあります。
以上のように、法人化には社会保険料増加・維持費用増・事務負担増というデメリットがあります。特に「社会保険に入りたくない(今まで未加入だった)」という方は、法人化で強制加入となる点は大きな懸念材料でしょう。そのため、税金面のメリットがデメリットを上回るかを総合的に判断することが重要です。単に「儲かってきたから節税したい」で飛びつかず、社会保険料負担や事務処理体制も含めたシミュレーションをすることをお勧めします。当税理士事務所では法人化による税額試算だけでなく、社保費用やトータルコストも考慮したアドバイスを行っています。メリットとデメリットを両天秤にかけ、納得の上で法人化に踏み切りましょう。
では、美容室経営者が具体的に法人化を検討すべきタイミングとはいつでしょうか。一般的な目安としてよく言われるのは「課税所得が900万円を超える頃」です。所得900万円を境に所得税率が一段階上がり、法人税率との差が大きくなるためです。実際、多くのケースで所得900万超あたりから法人化した方が手取りが増えるという試算結果が出ます。前述のように、個人と法人では社会保険料負担も変わるため一概には言えませんが、一つの判断ラインになります。
もう一つの目安は売上が年間1,000万円を超えた場合です。なぜ売上かというと、消費税との関係があります。個人事業主では前々年の売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務者になります。一方、新たに法人を設立すると、その法人は設立1期目と2期目は資本金1,000万円未満なら自動的に消費税免税事業者になります。つまり個人で消費税を払い始めるくらいなら法人化して消費税を2年間免除された方が得という判断があるのです。例えば現在すでに売上1,000万円超の美容室なら、法人化するだけで最初の2年間、計数十万円規模の消費税納付が丸ごと免除される可能性があります。この消費税メリットは節税額がインパクト大なので、法人化を強く後押しする要因になります。もっとも、この特例を使うには適切なタイミングで法人設立する必要があり、また将来的には2年免税後にまた消費税納税が始まる点も踏まえる必要があります。最近はインボイス制度開始もあり、単純な比較ではなくなっていますが、消費税対策としての法人化は今でも有効な場面があります。
さらに、店舗展開の計画もタイミングを判断する材料です。2店舗目、3店舗目と展開を考えているなら、早めに法人化しておいた方が組織管理や人材採用の面でも有利です。法人の方が社会的信用が高く銀行融資も受けやすいですし、従業員にとっても福利厚生が整いやすいなど安心感があります。「お店を増やしていきたい」「事業拡大路線に乗せたい」というフェーズなら、節税云々だけでなく経営戦略上法人化が望ましいでしょう。
以上をまとめると、法人化の検討タイミングとしては「利益が大きくなり税率面で不利になる前に」「売上増で消費税負担が発生する前に」「多店舗展開など事業拡大フェーズに入る前に」がポイントになります。もちろんケースバイケースですので、実際は税理士など専門家に試算・相談しながら決めるのが確実です。当税理士事務所でも「法人化すべきかどうか」についてのご相談を多数受けており、お客様の数字を詳しく伺った上で最適な時期をご提案しています。慌てて法人化して後悔したり、逆に遅すぎて税負担が増え過ぎたりしないよう、タイミングを見極めて賢く法人成りしましょう。
法人化した後は、個人事業の頃とは違う税務上の対応事項が出てきます。せっかく法人化しても、その後の税務管理が甘いと節税メリットを十分に享受できません。ここでは、法人化後に特に注意すべき税務対応と、更なる節税のポイントを解説します。
- 法人税の申告・納付: 法人(株式会社や合同会社)は事業年度ごとに法人税の確定申告を行い、納税します。決算日から原則2ヶ月以内が申告期限です。個人の確定申告(年1回、翌3月15日迄)とはスケジュールも様式も異なるため、税理士のサポートを受けることが一般的です。法人化後はまず決算期(事業年度)をいつに設定するかが重要です。美容室業の場合、繁忙期・閑散期を考慮して決算月を選ぶと納税資金準備がしやすくなります(例えば12月繁忙で現金潤沢なら12月末決算にするなど)。決算期は自由に決められる法人化メリットの一つなので、当税理士事務所でもお客様の売上傾向を見ながら適切な決算月をご提案しています。また、法人税では役員報酬の額や利益処分を毎期適切に決定することが節税に直結します。役員報酬は原則毎年同額を支給しなければ損金算入できないため、法人化時にまずオーナーの給与額を慎重に設定します(利益が出過ぎるなら増やす、逆に赤字なら減額する等、タイミングを見て改定可能)。利益が多く出そうな期にはボーナスや広告投資を計画して利益調整するなど、法人ならではの節税策もあります。法人税申告は複雑なのでプロの関与が望ましいですが、経営者として大枠の節税戦略(報酬額や経費化策)は理解しておきましょう。
- 消費税への対応: 前述のとおり、新設法人は当初2期は原則消費税免税ですが、3期目以降または早期に課税事業者選択した場合には消費税申告・納付が必要になります。美容室の売上は基本的に消費税課税売上ですが、顧客は最終消費者のため転嫁が難しく、消費税は実質的に経営者の負担になりがちです。法人化後も、売上規模が大きくなれば免税期間終了後の消費税対策が重要です。具体的には、簡易課税制度の適用検討や適格請求書(インボイス)発行事業者の登録などです。簡易課税は前々期の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者向けで、業種ごとのみなし仕入率で計算する制度です。美容室業は第五種(サービス業等)に該当しみなし仕入率50%なので、実際の仕入・経費割合と比較して有利なら選択します。消費税は制度変更が多いので、法人化を機に税理士と相談しつつ最適な申告方法を選ぶことが求められます。なお2023年開始のインボイス制度下では、美容室のようなBtoC主体業種でも、一部事業取引(美容用品の業者販売等)があれば適格請求書発行事業者になっておく必要があります。当税理士事務所でもインボイス登録の是非についてアドバイスしていますので、不明点はお問い合わせください。
- 帳簿・証憑の厳格管理: 法人では経理処理が煩雑になる分、帳簿書類の保存義務も強化されます。基本的に決算関係書類は7年間、電子帳簿保存法対応の書類は要件を満たして電子保存などが求められます。個人事業の時よりも記録・証憑管理をシステマチックに行いましょう。特に法人カードや法人名義口座を作ったら、私用と区別して利用し、通帳やカード明細を定期的にチェックするなど、内部管理体制を整えることが節税以前に大事です。きっちり管理しておけば経費計上漏れも防げますし、税務調査でも安心です。
- 税務調査対応: 法人になると、一般的に税務調査が入る可能性も高まると言われます。法人の方が金額的に大きくなるためです。税務調査に備えるためにも、前述の帳簿管理を万全にし、領収書のない支出は極力避け、現金の出し入れは適切に管理しましょう。特に同族会社では、役員への貸付や過大な役員借入、役員報酬の異常増減などが調査でチェックされやすいポイントです。税理士と相談しながら「これは問題ないか?」と都度確認しておくことが肝要です。当税理士事務所でも法人顧問先については日頃から調査を見据えた指導を行っております。
- 赤字の繰越控除: 法人税では、青色申告法人なら生じた欠損金(赤字)を最大10年間繰り越して、翌期以降の黒字と相殺できます。個人の時は3年でしたから、大幅に延長されるわけです。美容室事業が拡大期に一時的な投資で赤字になっても、10年以内に黒字化すれば相殺できるため、長期的な節税効果があります。繰越控除を受けるには青色申告の承認や確定申告の適時提出が要件なので、期限を守って申告しましょう。また、欠損金は資本金1億円超の大企業などでは限定的な利用となりますが、美容室規模の中小法人ならほぼ全額を相殺可能です。赤字はしっかり申告し、未来の節税に活かすことが鉄則です。
以上、法人化後の税務対応は専門的な内容も多いですが、信頼できる税理士との連携によってスムーズに対処できます。当税理士事務所は法人化直後の初年度決算から丁寧にサポートし、消費税や各種届出も含めた総合的な税務支援を行っています。法人化して終わりではなく、その後の税務戦略まで含めて伴走できる税理士をパートナーに選ぶことが、最大の節税ポイントと言えるでしょう。
法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。
美容室を2店舗以上に多店舗展開している、あるいは将来的に展開予定である経営者の方は、さらなる高度な節税策も検討できます。事業規模が大きくなるほど活用できる制度やスキームも増えるためです。ここでは、多店舗経営者向けの節税対策をいくつか紹介します。
- 法人分割・複数法人スキーム: 2店舗目以降を出す際に、あえて別法人を設立して運営する方法があります。これは節税上、特に消費税と法人税の軽減税率でメリットを得る目的があります。消費税については、新設法人は前述のとおり最初の2期が免税となるため、例えば1号店と2号店を別会社にすれば、それぞれ創業当初2年間は消費税を免除できます。また法人税の中小法人軽減税率(所得800万円までは15%)も、法人ごとに適用されます。極端な例ですが、1社で2店舗分の利益1,600万円を計上すると800万超部分に23%課税されますが、2社に分けて各社800万ずつ利益を出せば両社とも15%適用で済みます(ただし法人維持コストも2倍になるので純増には注意)。このような複数法人スキームは節税効果がありますが、事業運営が煩雑になるのと、あからさまな分割は税務上「経済的実態のない分社」と見なされれば否認リスクもあります。実際に適用する際は専門家の助言が不可欠です。
- 不動産の活用: 多店舗展開し規模が大きくなると、自社で店舗物件を購入するケースも出てくるでしょう。不動産の活用には節税の余地があります。例えば、社長個人が店舗物件を購入し、それを法人に貸し出す形を取れば、法人は家賃を経費にしつつ、個人側は不動産所得として家賃収入を得ることになります。不動産所得は減価償却費など経費が多くとれるため、所得税が圧縮でき、結果的に法人と個人で税率差を利用した節税になる場合があります。また将来の事業承継時に不動産を個人資産にしておく方がスムーズなこともあります。このように不動産オーナー戦略も一つの節税兼経営戦略です。
- 経営資源の分散でリスクと節税効果を両立: 多店舗経営では、1店舗ごとの業績が異なることもあります。ある店舗は黒字だが別店舗は新規立ち上げで赤字、といった場合、同じ法人内なら損益通算できますが、場合によっては別法人にしておき黒字店舗の利益に対し別の節税策を講じる手もあります(例えば黒字法人では役員退職金積立や設備投資減税を使い、赤字法人は黒字化まで耐える等)。グループ全体として税負担を最適化するには、グループ内取引の価格設定や費用配分も調整可能です。ただしグループ内取引は適正範囲で行わないと移転価格税制等の問題も出ますので慎重さが必要です。
- 上場やM&A視野の節税: 更に規模が大きくなり、将来的に株式公開や事業売却を考えるような場合は、短期的な税額の多少よりも財務内容の健全性を優先する局面もあります。節税のために利益を減らしすぎると業績が悪く見えて信用に影響することもあるためです。そのため、多店舗展開フェーズでは税負担の最小化と財務健全性のバランスを考える必要があります。場合によっては利益をしっかり出して税金も払いつつ内部留保を厚くし、自己資本比率を高める方が得策です。節税ばかり追求していると融資が受けにくくなることもあります。このあたりは税金以外の視点も絡む高度な判断になりますので、ぜひ税理士と連携して戦略を練ることをお勧めします。
以上、2店舗以上の多店舗展開時には節税の選択肢も多様化します。ただしその分リスクや管理の難易度も上がりますので、必ず専門家のサポートを受けて実行するようにしてください。当税理士事務所は多店舗展開企業の税務支援ノウハウも豊富です。グループ内の法人税最適化や消費税シミュレーションなども承っておりますので、「さらに踏み込んだ節税を検討したい」という経営者様はぜひ一度ご相談ください。
ここまで合法的な節税対策について詳しく述べてきましたが、最後に税務調査との関係性にも触れておきます。節税はあくまで法律の範囲内で行うものであり、適切に行っていれば何ら問題ありません。しかし、行き過ぎた節税(租税回避)や誤った認識に基づく処理は、税務調査で否認・追徴課税のリスクを高めます。正しい節税対策を実践しつつ、税務調査にも備えることが健全経営の条件と言えるでしょう。
まず大前提として、節税と脱税は似て非なるものです。この違いを経営者が正しく理解していることが重要です。既に冒頭でも触れましたが、再度整理すると:
- 節税: 税法が認める範囲内で税負担を軽減する行為です。控除や特例を活用する、経費計上漏れを防ぐ、事業構造を工夫する等、合法的手段により「払わなくてよい税金を払わない」ことが節税です。納税者の正当な権利の行使であり、むしろ健全な経営努力と言えます。
- 脱税: 税法に違反し、本来納めるべき税金を免れる行為です。収入を意図的に除外する、架空経費を計上する、領収証を改ざんする、二重帳簿を作る等、違法手段によって税金を少なく見せかけることが脱税です。脱税は犯罪行為であり、重加算税や懲役刑など厳しい罰則が科されます。
両者のラインは明白なようでいて、実務上はグレーなケース(租税回避行為と呼ばれるもの)も存在します。しかし、美容室オーナーとして取るべきスタンスは「法律に則った正しい節税のみを行い、脱税まがいのことには手を出さない」という一点に尽きます。例えば、家事関連費を事業経費に按分する場合でも、明らかに無理がある按分(自宅家賃の90%を経費にするとか)はやめ、合理的に説明できる範囲に留めるべきです。「このくらいバレないだろう」と高を括って誤魔化すのは非常に危険です。
税務署もプロですから、業種ごとの平均値などを把握しています。不自然な数字や常軌を逸した節税スキームは目につきます。節税策は常に「適法か」「社会通念上妥当か」を念頭に採用しましょう。不安な場合は当税理士事務所のような税の専門家に確認をとることです。「これはやり過ぎでは?」と思うような提案をする税理士は避けた方が無難でしょう。正しい節税は事業者の権利ですが、脱税は犯罪です。この違いを肝に銘じ、健全な節税対策を実践してください。
一生懸命節税に取り組むのは良いことですが、過度な節税は税務署から「怪しい」と目を付けられる原因にもなり得ます。税務調査官の視点からすると、「利益が出ているはずなのに毎年所得がゼロに近い」「経費率が他の同業に比べて極端に高い」「役員報酬が不自然に安い/高い」「家族への給与が多額だが売上規模と見合わない」等のケースは調査候補になりやすいと言われます。
例えば、美容室業界の平均原価率・経費率から大きく逸脱している申告はチェックされるでしょう。また、売上に比して役員報酬が高すぎて毎期法人利益ゼロ、というのも不自然です。専従者給与についても同様で、家族総出で高額給与を取り利益を圧縮していると、実態調査が入る可能性があります。実際に仕事に従事していない家族に給与だけ払っている場合は論外で、給与カットを求められたり最悪脱税認定されます。
さらに、節税のために実態を伴わない経費計上をしていると、それもリスクです。例えば架空の広告宣伝費やありもしない消耗品費を捻出して利益を消すのは脱税行為そのものです。また、グレーな節税スキーム(法人の複数設立による消費税逃れなど)も、行き過ぎると「単なる税逃れ目的」と判断されれば否認されるリスクがあります。最近では租税回避行為への規制も強まっています(例えば消費税の事業分割スキームに対する新ルール導入など)。
要は、節度をもった節税が肝心ということです。目先の税金を減らしたいあまり奇策に走ると、かえって税務調査で時間と労力を奪われ、追徴課税で節税分以上のペナルティを払う羽目になりかねません。税務署も「適法な節税」は認めますが、「行き過ぎた租税回避」は問題視します。その境界線は専門家でも判断が難しい場合がありますが、当税理士事務所では常に最新の情報を収集しながら「ここまでは大丈夫」「これはリスクが高い」というアドバイスを心がけています。
経営者としても、「変に疑われるくらいなら多少税金を払ってでもクリーンな帳簿にしよう」くらいの気持ちが大切です。特に長く事業を続けるつもりであれば、税務署との関係も円滑にしておく方が得策です。一度マークされると、その後も調査が入りやすくなります。適切な範囲での節税を旨とし、やり過ぎには十分注意しましょう。
節税対策を講じるにせよ講じないにせよ、税務調査に耐えられる帳簿管理と経理体制を整えておくことは、事業者の基本です。むしろ、きちんと帳簿を付け経理を整備していれば、節税策も適切に実行できますし、万一調査が来ても恐れる必要はありません。
税務調査では、売上計上もれや経費の過大計上が主なチェックポイントになります。美容室でありがちなのは、現金売上の申告漏れです。レジ締めの記録と実際の入金が合わない、無断キャンセルなどの理由で売上を除外していないか、などを調べられます。したがって、日々の売上管理を正確に行い、タイムカードや予約台帳など営業実態を示す資料も保存しておくことが重要です。昨今は予約システム等で電子的に管理しているでしょうから、そのデータも一定期間保存しましょう。
経費に関しては、領収書・レシート類の保存が命です。7年間保存義務がありますので、年月ごとにファイリングするなどして整理してください。クレジットカード利用明細も、摘要欄だけでは内容不明なことがあるので必ずレシートと紐付けましょう。特にプライベートと共用の支出(家賃や水道光熱費など)は按分計算表を作成し根拠を示せるようにします。税務調査官は「この費用はなぜ事業必要なのか?」を細かく聞いてきますから、自信を持って説明できる資料を用意しておくことです。
さらに、通帳や現金出納帳の管理も怠らずに。事業用口座とプライベート口座は分け、現金出納も毎日締めて誤差が出ないようにします。美容室だと現金売上も多いでしょうから、現金過不足が頻発すると疑念を招きます。日々の締め処理を徹底しましょう。
もし税務調査になった場合でも、税理士を立ち会わせることでスムーズに進むケースがほとんどです。当税理士事務所でも調査前のシミュレーションや書類準備、当日の立会い、指摘事項への対応まで一貫してサポートしております。適切な節税をしていれば何も恐れることはありません。むしろ税務調査は自社の経理体制を客観的に点検してもらう機会と捉え、真摯に対応すれば大抵は円満に終了します。
結局のところ、日頃の経理をきちんとやることが最大の節税でもあります。漏れなく経費計上し、無駄なく控除を適用し、正しく申告する——これを続けていれば、払い過ぎの税金は減りますし、調査で追徴を食らうこともありません。税務調査と節税は表裏一体、正しい経理は最大の防御であり攻撃(節税)でもあると心得てください。
税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。
最後に、ここまで触れてきたような節税対策を実行・継続していく上でパートナーとなる税理士の選び方についてお話しします。美容室オーナーの皆様が税務の心強い味方を得るために、どのようなポイントに注目すべきか、そして当税理士事務所「税理士法人加美税理士事務所」がどんな強みを持っているのかを紹介いたします。
まず何と言っても、美容業界の実情をよく理解している税理士を選ぶことをおすすめします。業界特有の経費や収益構造を知らない税理士だと、的外れなアドバイスになりかねません。美容室経営には、材料費(薬剤)や人件費の比率、リース利用、現金商売ならではの管理法など独自のポイントがあります。美容室向けの節税ノウハウも、他業種とは異なる部分が多々あります。例えば、美容師さんの教育研修費用の扱い、スタッフの歩合給与計算、予約システムやサブスク導入時の収益認識など、業界慣習に明るい方がスムーズです。
当税理士事務所はこれまで美容室オーナー様の税務をサポートするために蓄積してきたノウハウがあり、美容業界特有の勘定科目の使い方や適切な経費区分について熟知しております。「美容室では何が経費になって何が難しいのか」「同業他社はどのような節税策をとっているのか」といった観点からアドバイスできるのが強みです。他の美容室の事例も踏まえ、オーナー様それぞれに最適な節税メニューをご提案いたします。
また、節税に強い税理士かどうかも重要です。単に帳簿を付けて申告書を作るだけでなく、積極的に節税提案をしてくれる税理士であれば、税務以上の価値を提供してくれるでしょう。例えば当税理士事務所では、毎期の決算前に「今年は利益が出そうなので小規模共済をこれだけ積み増ししましょう」「設備投資は今期中に行えば特別償却で節税になります」といった先回りの提案を行っています。お客様の方から聞かないと提案してくれない、では遅いのです。ぜひ提案力があり、業界知識が豊富な税理士をパートナーにしてください。それが長い目で見て一番の節税につながります。
現代では、税理士とのやり取りも必ずしも対面が必要な時代ではありません。クラウド会計やオンライン会議ツールの発達により、遠隔地からでも十分にコミュニケーションが取れます。したがって、もし地元に美容業界に詳しい税理士が見当たらない場合でも、リモート対応可能な税理士事務所を検討する価値があります。
当税理士事務所はフルリモート対応に力を入れており、全国どこからでもご依頼いただけます。東京の事務所ですが、北海道から九州までお客様のサポート実績があります。メール・電話はもちろん、ZoomやGoogle Meet等でのオンライン打ち合わせ、チャットツールでの日々の連絡にも柔軟に対応しています。月次の試算表もクラウド会計ソフトでリアルタイムに共有し、修正点はチャットで即フィードバックする、といったスピーディーなやり取りが可能です。
「遠方だけど大丈夫かな…」「データの受け渡しはどうするの?」と不安に思われるかもしれませんが、領収書類もスマホ撮影でアップロードいただければ確認できますし、必要に応じて画面共有しながら帳簿を一緒に確認することもできます。ITが苦手な方には丁寧に使い方をご案内しますのでご安心ください。全国対応の強みは、お客様にとっても「自分の業界に強い税理士を全国から選べる」というメリットになります。美容室専門・得意と謳う税理士も都市部に集中していますが、リモートなら距離は関係ありません。ぜひネットの評判や実績も参考に、最適な税理士を選んでください。
税務調査は経営者にとって不安なイベントかもしれません。しかし、税務調査対応に精通した税理士がついていれば大きな安心材料になります。税理士は税務調査の立会いができ、調査官との応答も代弁できます。調査官からの質問に対し、専門知識をもって適切に説明・反論し、お客様の利益を守るのも税理士の重要な役目です。
当税理士事務所には、税務調査に強い税理士も在籍しており、調査のツボや交渉術を熟知しております。過去に税務調査対応を数多く経験してきたことから、どんな点が指摘されやすいか把握しており、事前に問題を潰しておくよう指導しています。また、調査が入った際もお客様には極力ストレスを与えないよう、税理士が窓口となって対応いたします。調査官とのやり取りは専門用語も多く心理的負担が大きいですが、我々が盾となることでオーナー様は平常営業に専念できます。
「税理士がいると調査が来にくい」とまでは言えませんが、税理士関与先の方が結果的に指摘事項が軽微で済むケースが多いのは確かです。なぜなら帳簿の体裁や税法上の要件など事前に整えているからです。税務調査に強い税理士をパートナーにしておけば、「もしもの時もこの人がいれば大丈夫」という安心感が違います。経営に集中するためにも、ぜひ調査対応力のある税理士を選んでください。
法人化について前章で詳しく述べましたが、実際に法人化する際には税理士のサポートがあると非常にスムーズです。法人設立自体は司法書士業務ですが、税理士は法人成りのタイミング検討から設立後の税務届出、法人ならではの経理体制構築までトータルで支援できます。
当税理士事務所は、他業種を含む法人化支援実績も多数ございます。個人事業から法人への移行では、開業届・廃業届や資産の引継ぎなど色々な手続きがありますが、それらを漏れなくフォローします。特に、美容室の場合は在庫している商品の処理や内装設備の名義変更、リース契約の引継ぎなどもあり、経理処理が複雑です。そういった細かな部分まで気を配れる税理士であるかどうかが重要です。
また、法人化にあたっての節税プラン(役員報酬の決定、消費税の事前届出、小規模共済の移行等)もご提案いたします。例えば「法人1期目は消費税免除だから、このタイミングで高額機器を購入しましょう」「青色申告の欠損金繰越は法人に引き継げないので、法人化前に赤字を使い切る計画を立てましょう」といったアドバイスです。こうした法人化ノウハウが豊富な税理士事務所に依頼することで、法人成りによるメリットを最大限享受できます。
実際、税理士によって法人化支援の経験値は様々です。「法人化できますよ」と言われたが実務的な詰めは自分でやらされて大変だった、という話も聞きます。当税理士事務所ではワンストップで法人化をサポートし、司法書士や社労士とも連携して、お客様の負担を最小限に抑えます。美容室特有の留意点も踏まえますので、安心してお任せください。
最後に強調したいのは、税理士は長く付き合うパートナーだということです。美容室の開業時からその成長、多店舗展開、果ては事業承継や相続に至るまで、ビジネスのライフステージに応じた助言ができる税理士と巡り会えると理想的です。
当税理士事務所は、お客様の人生・事業の伴走者でありたいと考えています。開業時の不安な時期に寄り添い、軌道に乗ってからは攻めの経営を税務面から支え、店舗が増えればグループ経営のアドバイスをし、いずれ事業承継の段階では相続税対策まで見据える——そのように一貫してサポートできる体制を整えています。節税だけでなく、補助金情報の提供やスタッフ給与体系の相談など、経営に関わることは何でもまず税理士に相談していただいています。
美容室業界はトレンドの変化や競争が激しいですが、税理士は数字の面から冷静に現状を分析し、将来を見据えた助言ができます。「今期は投資を優先しましょう」「来期は消費税増税が予定されていますので今のうちに…」など、長期的視点でお客様の成功をバックアップいたします。
税理士選びに迷われたら、ぜひ信頼できる人間性とコミュニケーションも重視してください。節税ノウハウはもちろん大事ですが、結局は人と人の付き合いです。困ったときにすぐ話せる、親身になってくれる税理士こそ、経営の力強いパートナーになります。当税理士事務所は「何でも話しやすい」「レスポンスが早くて安心」と多くのクライアント様からご評価いただいております。顧問契約前の無料相談も歓迎ですので、まずは一度お話ししてみませんか。
長文となりましたが、美容室オーナーのための節税対策について包括的に解説してきました。最後に主なポイントを振り返ってみましょう。
美容室経営では、青色申告の活用や必要経費の適正計上、各種所得控除の漏れない適用といった基本対策から、開業費の活用、小規模企業共済・iDeCoによる将来備え型節税まで、できることが沢山あります。副業収入やインフルエンサー収入がある場合も、事業所得化や経費計上の工夫で税負担を減らす余地があります。事業が成長してきたら法人化という大きな節税策が視野に入り、法人ならではの経費戦略や所得分散でさらに手元資金を厚くできます。ただし、社会保険料負担など法人化の留意点も忘れてはなりません。
節税対策を講じる際は、法律の範囲内で適切に行うことが大前提です。正しい節税は経営を助けますが、行き過ぎた行為はリスクを高めます。税務調査に耐えうる帳簿管理を常に心がけ、健全な経営を維持しましょう。そのためにも、税務のプロである税理士を上手に活用してください。特に美容業界に詳しく、節税提案力があり、経営の初期から発展期まで長期的に伴走してくれる税理士と組めば鬼に金棒です。
私たち税理士法人加美税理士事務所は、美容室オーナーの皆様が汗水流して稼いだお金を可能な限り手元に残し、将来の投資や安定経営に活用できるよう全力でサポートいたします。節税によって生まれた余裕資金は、新しい設備導入やスタッフ教育、お店の内装リニューアル、広告宣伝など様々な形でお店に再投資できます。それがさらなる売上向上をもたらし、好循環が生まれるでしょう。税金は適切に減らし、その分を経営に活かす——これこそが節税対策の醍醐味です。
本記事でご紹介した節税策はどれも基本的かつ有効なものばかりです。ぜひできるところから実践してみてください。そして「もっと詳しく知りたい」「自分の美容室ではどう当てはまるの?」ということがあれば、いつでも当税理士事務所にご相談いただければと思います。私たちはお客様の繁栄が何よりの喜びです。節税対策を通じて皆様の美容室経営がより安定し、発展していくことを心より願っております。最後までお読みいただきありがとうございました。一緒に賢く節税し、浮いた資金で夢の実現に邁進していきましょう!

よくあるご質問
FAQ

関連ページ
Related Pages