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学習塾に強い税理士が解説!個人事業主・法人のための節税対策ガイド
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学習塾経営では、売上から講師への報酬や教室の家賃など多くの費用が差し引かれ、残った利益に対して税金が課されます。節税対策をしなければ、せっかくの利益も税金で減ってしまい、手元に残る資金が少なくなります。手元資金を十分に確保できれば、教材の充実や設備の改善、優秀な講師の雇用など、教育サービスの質を高めるための再投資に回すことが可能です。また、学習塾は季節による生徒数の変動や、入会キャンペーンなどで収支が変動しやすい業種です。資金に余裕があれば、繁忙期・閑散期の波を乗り越え、急な支出や設備投資にも対応できる安心感が生まれます。
もちろん、納税は経営者の義務であり、「脱税」のような法律違反は論外です。しかし、合法的に活用できる制度や経費計上をきちんと行うことで、払わなくてもよい税金まで余計に支払わないことが大切です。適切な節税は経営の効率化であり、塾の安定運営につながります。特に開業間もない時期や規模の小さい教室ではキャッシュフローが命綱ですから、節税によって資金繰りの余裕を確保するメリットは非常に大きいでしょう。
学習塾を個人事業主として開業したら、まず検討したいのが青色申告です。青色申告とは、一定の要件を満たした適正な帳簿を備え付けることで、税制上のさまざまな優遇を受けられる制度です。最大のメリットは、青色申告特別控除65万円が受けられる点です。複式簿記で正しく記帳し確定申告をすれば、所得から最高65万円を控除(差し引き)でき、課税所得を大きく圧縮できます。たとえば年間500万円の利益が出た場合、青色申告なら控除後の課税所得は435万円となり、その分の所得税・住民税を節約できます。
さらに、青色申告には他にも節税上の特典が多数あります。赤字が出た年の損失を最長3年間繰り越して翌年以降の黒字と相殺できる純損失の繰越控除や、家族に支払う給与を経費にできる青色事業専従者給与の制度もその一例です。特にご夫婦で塾を切り盛りしている場合、配偶者や親族に適正な給与を支払って経費計上することで、所得の分散と税負担の軽減が図れます。以上のように青色申告は学習塾のような小規模ビジネスにこそメリットが大きいため、開業初年度からぜひ活用したい制度と言えます。※青色申告を利用するには事前に税務署への承認申請が必要なのでご注意ください。
青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。
事業が順調に拡大し、塾の規模や利益が大きくなってきたら法人化(法人成り)を検討するタイミングです。一般に、年間の利益額が約500万円〜900万円を超えるあたりで、法人化による節税メリットが生じやすいと言われます。法人税率は所得税率より低く抑えられるレンジがあり、利益が大きくなるほど個人より法人の方が税負担が軽減される可能性が高まります。また、法人にすると経営者自身への給与(役員報酬)を経費にできるため、所得分散によって個人と法人の双方で税率の高い課税ゾーンに入らないよう調整することも可能です。
節税面以外でも、学習塾を法人化することで得られるメリットは多々あります。対外的な信用力の向上はその代表例です。金融機関からの融資を受けやすくなったり、賃貸物件の契約やフランチャイズ展開の際に法人の方が信頼されやすくなったりします。さらに、法人ならではの経費計上の幅が広がる点も見逃せません(後述する社宅制度や福利厚生費の活用など、法人だけが使える節税策があります)。ただし法人化には設立コストや毎期の決算申告、社会保険加入義務など新たな負担も生じます。「いつ法人化すべきか」は利益規模や将来計画によって判断が異なりますので、税理士など専門家と相談してタイミングを見極めると安心です。
法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。
節税を効果的に行うためには、日々の経費計上や帳簿付けを適切に行い、ルールに沿った申告をすることが大前提です。経理の基礎がしっかりしていれば、青色申告の65万円控除など各種メリットも確実に活かせますし、万一税務調査が入っても慌てずに済みます。ここでは、学習塾経営者が押さえておきたい経費・帳簿・減価償却のポイントを解説します。
まず、「どこまでを経費にできるか」を理解しておきましょう。経費に計上できるものとは、塾の事業運営に必要な支出です。逆に経費にできないものは、事業と関係ないプライベートな出費や、税法上損金算入が認められないものです。学習塾における具体例を挙げると、以下のような分類になります。
- 経費にできる主な費用の例:教室や事務所の家賃・光熱費(※自宅兼用の場合は事業利用分を按分)、講師やスタッフへの給与・謝礼、教材や文房具の購入費、生徒募集のための広告宣伝費、業務で使うパソコンやプリンター等の備品費、業務上の交通費や通信費 など
- 経費にできない費用の例:塾長自身や家族の私的な生活費全般(住宅ローンや家庭の食費など)、事業に無関係な娯楽費、必要以上に高額な接待交際費(常識の範囲を超えるもの)、自家用車の私用分、仕事に直接関係のない衣服代(※通常のスーツ代などは不可) など
上記のとおり、事業に関連するかどうかが経費計上の判断基準です。学習塾の場合、教室運営に必要な支出であれば幅広く経費にできますが、公私混同は禁物です。経費として認められるものは漏れなく計上することで課税所得を減らせますが、認められないものまで計上すると税務調査で否認されペナルティを受ける可能性もあります。正しく経費を計上することが節税の土台だと心得てください。
経費や売上の領収書・レシートは、節税の証拠となる大切な書類です。これらを適切に整理し、日々帳簿に記録しておくことで、確定申告時に慌てずに済みますし、青色申告の要件もクリアしやすくなります。コツは、こまめな記帳と書類の整理整頓です。
具体的には、毎日または毎週の頻度で経理時間をとり、売上帳や経費帳に取引を記入しましょう。会計ソフトを活用すれば簿記の知識がなくても自動で仕訳が行われ、青色申告に必要な複式簿記にも対応できます。また、領収書類は日付順や科目別にファイリングしたり、スマホで撮影してクラウド保存しておくと、安全かつ検索も容易です。こうした習慣を続ければ、決算前に「レシートの山に埋もれて集計に追われる」という事態を防げます。
日々記帳をして正確な帳簿を備えておけば、青色申告特別控除の適用も安心です。万が一税務署から質問があっても、根拠資料が揃っていれば速やかに説明できます。学習塾経営は授業準備や生徒対応で忙しいとは思いますが、帳簿付けを後回しにしないことが結果的に節税への近道と言えるでしょう。
学習塾を運営していく中で、教室の設備や備品への投資も必要になってきます。パソコンや机・椅子、空調設備、ホワイトボード、プロジェクターなど、高価な物を購入した場合は減価償却という会計処理で少しずつ経費計上していく仕組みになっています。減価償却とは、資産の購入費用を耐用年数(その資産が使えるとされる期間)にわたって分割し、毎年経費として配分する方法です。例えば、50万円のパソコンを購入した場合、通常は数年に分けて少しずつ経費に落としていきます(耐用年数の例:パソコンは4年、学習机や椅子はそれぞれ5年など)。
しかし、中小規模の事業者向けには減価償却を簡便化できる特例も用意されています。少額減価償却資産の特例を活用すれば、取得価額が30万円未満の備品は購入年度に一括で経費処理することが可能です(青色申告をしていることが前提)。例えば、一台20万円のノートPCであれば、その年に全額を経費にでき、税負担の即時圧縮につながります。また、10万円未満のものはそもそも減価償却資産ではなく消耗品費等で全額経費計上できます。複数の教室に設備を導入する際などは、「高額な機器を一度にまとめて買うより、金額を分散して少額資産として計上できないか」検討すると良いでしょう。
減価償却のルールを知っておくことで、設備投資のタイミングを調整し、賢く節税することができます。ただし、節税目的だけで不要な設備を購入するのは本末転倒です。あくまでも教室運営に必要な投資を行う際に、税法上の有利な処理を選択するといった視点で活用しましょう。
個人経営で学習塾や個別指導塾を運営している方向けに、学習塾の節税に役立つ具体的な方法を見ていきましょう。小さな塾であっても、工夫次第で税負担を大きく減らすことができます。
前述のとおり、青色申告を選択すれば青色申告特別控除65万円を受けられます。これは単年度で非常に大きな控除額ですので、ぜひ満額活用したいところです。ただし65万円控除を受けるには複式簿記に基づく正確な帳簿作成に加え、電子申告や電子帳簿保存など所定の要件を満たす必要があります(要件を満たさない場合は控除額が55万円に減額)。せっかく青色申告の承認を受けても、帳簿不備で控除額が減ってはもったいないため、日々の記帳や締め処理まで丁寧に行いましょう。
65万円の控除は、たとえば税率20%前後の層であれば税額に換算して約13万円もの節税に相当します。塾の規模によらず使える強力な節税策ですので、税理士などのサポートも受けながら青色申告のメリットを最大限引き出しましょう。
自宅の一部を教室や事務所として使っている場合、家事按分によって家賃や水道光熱費の一部を経費計上できます。家事按分とは、プライベートと仕事で共用している費用を事業用と私用に按分(割合分け)することです。たとえば、5部屋中1部屋を塾の教室に使っているなら家賃や電気代の20%を経費にする、といった具合です。
具体的に経費算入できるのは、自宅の家賃や光熱費・通信費など事業利用分にあたる金額です。按分割合に明確な決まりはありませんが、客観的に妥当な根拠をもって計算する必要があります(面積比や利用時間比など)。按分計算のメモや根拠資料(間取り図や光熱費の明細など)はしっかり保存し、税務署に説明できるようにしておきましょう。自宅兼教室の場合、家事按分を行うだけで年間数十万円規模の費用を経費化できるケースもあり、大きな節税効果があります。
事業の経費ばかりに目が行きがちですが、確定申告時の所得控除も忘れずにフル活用しましょう。所得控除とは、個人の事情に応じて所得から差し引ける制度で、適用できるものが多ければ多いほど納める税金が減ります。塾経営者として押さえておきたい主な所得控除には次のようなものがあります。
- 基礎控除:一律48万円が所得から控除されます(全納税者共通)。
- 配偶者控除・扶養控除:配偶者や16歳以上の扶養親族に所得がない(一定以下)場合、一人につき最大38万円の控除。
- 社会保険料控除:国民年金保険料や国民健康保険料、介護保険料など支払った社会保険料は全額控除。
- 生命保険料控除:生命保険や地震保険の保険料の一定額(支払額に応じ上限あり)を控除。
- 医療費控除:1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超過分が控除対象。
- 小規模企業共済等掛金控除:後述する小規模企業共済やiDeCoの拠出額は全額が所得控除になる。
上記の他にも、障害者控除など該当すれば控除できる項目があります。「申告すれば減税になるものはすべて適用する」という方針で臨み、漏れがないようにしましょう。特に保険料控除証明書や医療費の領収書は確定申告前にまとめて確認し、必要に応じて医療費控除の明細書を作成してください。所得控除は見えにくい部分ですが、侮れない節税効果があります。
小規模企業共済とiDeCo(個人型確定拠出年金)は、将来の備えをしながら現在の所得税・住民税を軽減できる一石二鳥の制度です。どちらも個人事業主の方にとって強力な節税手段となります。
まず小規模企業共済は、学習塾など小規模な個人事業主や法人の役員が加入できる国の共済制度です。毎月の掛金(最大7万円)を積み立て、廃業時や退職時に共済金(退職金)を受け取るしくみで、支払った掛金全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から控除されます。年間84万円拠出すればその分丸ごと課税所得を減らせるため、節税効果は絶大です。将来受け取る共済金は退職所得扱いとなり税制優遇がありますので、節税しながら退職金を積み立てているイメージです(万一廃業した場合の生活保障にもなります)。
一方のiDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で積み立てる年金制度です。掛金の上限は個人事業主の場合月々6.8万円(年81.6万円)で、その全額が所得控除となります。運用益も非課税で運用でき、60歳以降に給付金を受け取れますが、原則60歳まで引き出せない点に注意しましょう。
これらの制度は、毎年の節税額が大きいだけでなく長期的な資金形成にも役立つため、学習塾オーナーにぜひ検討していただきたい方法です。「手元資金に余裕が出てきたら共済やiDeCoに回す」という習慣をつければ、将来の安心にもつながるでしょう。
個人で学習塾を立ち上げたばかりの方は、開業費の計上も重要です。開業費とは、開業するまでに事業準備のために支出した費用のことで、税法上「繰延資産」という扱いになります。開業後、任意のタイミングで必要経費として落とす(償却)ことができ、初年度から全額を経費計上することも可能です。
開業費に含められる典型例としては、開業前の広告宣伝費(チラシの印刷代、Webサイト制作費等)、物件探しの交通費、内装工事費(資産計上すべきものを除く)、教材の購入費、開業に関するセミナー受講料、開業前に行った市場調査費用などが挙げられます。これらは事業開始前に支出しているため日常の経費とは別管理になりますが、忘れずに「開業費」として申告しましょう。例えば開業準備に50万円かかっていたなら、その年の事業所得からまとめて50万円を差し引くことができます。初年度から一括償却して税負担をゼロ近くまで抑える戦略も可能です。
開業時は何かとバタバタして経費管理が後手になりがちですが、領収書や支出メモを大切に保管し、税理士と相談しながら適切に処理しましょう。せっかくの節税チャンスを逃さないよう、スタートダッシュの節税対策として開業費計上を徹底してください。
開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。
続いて、法人(会社)として学習塾を経営している方向けの節税策を見てみましょう。法人ならではの制度を活用することで、個人事業では難しかった大きな節税効果が得られる場合があります。
学習塾を法人化した場合、経営者は会社の役員(役員報酬を受け取る立場)となります。ここで重要なのが、その役員報酬額の設定です。会社の利益をどれだけ役員報酬として支給し、どれだけ会社内に残すかによって、法人税と所得税のバランスが変わります。
一般的に、役員報酬として支給した金額は法人の経費となり法人税を圧縮しますが、受け取った個人側では所得税の課税対象となります。報酬を低く抑えすぎると法人に利益が残り法人税が多くなり、高くしすぎると個人の高額所得となり所得税・住民税が重くなってしまいます。したがって、法人と個人の税率がなるべく低くなる範囲で利益を配分することが重要です。
例えば、法人税の税率はある程度の利益までは約15%と低めなのに対し、個人の所得税率は所得が増えるほど20%、30%超と高くなります。大きな利益が出た場合でも、役員報酬として適度に支給して個人の課税所得を抑え、法人側も利益を圧縮すれば、両者とも税率の高いゾーンに入らずに済みます。
役員報酬額の決定は、事業規模や家族構成によって異なります。期初に税理士とシミュレーションを行い、最も節税効果の高い報酬設定を検討するとよいでしょう。なお、役員報酬は原則として年度途中で増減できないため、期首に適切な額を設定する必要があります。
学習塾を法人で経営している場合、「退職金の支給」は有効な節税手段となることをご存じでしょうか?法人が役員や従業員に支給する退職金は、適切に設計すれば法人税の軽減、所得税の圧縮、社会保険料の削減など、多方面にわたって節税メリットが期待できます。ここでは、学習塾法人が退職金制度を導入することで得られる節税効果と注意点について、税理士の視点からわかりやすく解説します。
法人が役員や従業員に退職金を支払うと、その金額は損金(=法人の経費)にできます。たとえば、500万円の退職金を支給すれば、その分だけ法人の課税所得が減るため、法人税の負担が軽減されるのです。
ポイント:役員退職金も損金算入できる
代表者や役員に対して支払う退職金も、一定の合理性があれば損金算入が認められます。具体的には「最終役員報酬 × 勤続年数 × 功績倍率(一般的には2〜3)」といった算式で適正額を算定します。
退職金は、退職所得控除という優遇制度により、通常の給与よりも大幅に税負担が軽減される仕組みになっています。
たとえば、20年勤務した場合、退職所得控除は800万円(40万円×20年)となり、退職金のうち800万円までは非課税です。それを超えた部分についても、実質的には半分の金額にだけ所得税が課税される(1/2課税)ため、税率がぐっと下がります。
給与で受け取るより圧倒的に有利
たとえば役員報酬として毎年500万円を受け取れば、その年に高い所得税率(20〜33%)が適用されます。一方、同額を退職金として後年まとめて受け取れば、税負担は大幅に軽減されるのです。
給与や賞与と違い、退職金は社会保険料の対象外です。これは法人経営者にとって非常に大きなポイントです。
たとえば役員報酬で支給すれば、会社と役員の双方に健康保険・厚生年金保険の負担が生じます。一方、退職金であればこの保険料が一切発生しないため、同じ支給額でも手取りベースで有利となります。
退職金の節税メリットを最大化するには、次のようなポイントに注意が必要です。
① 就業規則・取締役会議事録の整備
退職金制度を導入する際には、従業員用の就業規則、役員用の退職金規程など、社内での明文化が必要不可欠です。また、実際に支給する際には、取締役会の決議や議事録の作成も忘れてはなりません。
② 不相当に高額な退職金は損金否認される可能性あり
税務上、過大な退職金は損金として認められません。業績や功績に比して不当に高額な場合には、税務調査で否認され、追徴課税を受けるリスクがあります。
③ 節税目的だけの「架空退職」はNG
名目上退職させて退職金を支給し、その後すぐ復職するようなケースは、税務上問題視されることがあります。実態と整合性のある支給でなければ、節税どころか逆効果になりかねません。
学習塾のように、役員が長期的に事業に関わり、従業員も比較的安定して勤務する業態では、退職金制度の導入による節税効果は非常に高いといえます。
- 退職金は法人税の軽減につながる損金
- 所得税上も優遇され、税率が大幅に下がる
- 社会保険料がかからず、手取りベースで有利
節税を考えるのであれば、早い段階から退職金制度の整備を検討することをおすすめします。
法人ならではの節税手段として生命保険や損害保険への加入があります。いわゆる「法人保険」を活用することで、将来の資金準備やリスクヘッジをしながら当面の税負担を軽減できます。
例えば、経営者向けの生命保険に法人で加入すれば、一定の保険料を経費計上できます。また、従業員の福利厚生目的で医療保険などに加入し会社が保険料を負担するケースでは、その支払保険料も損金となります(社員にとっても手厚い福利厚生となります)。これらはいずれも支払保険料の分だけ課税所得を減らせるため、その分法人税が軽減されます。
注意点として、法人保険の中には解約時に返戻金を受け取ると収益計上が必要になる商品もあります。これは税金の繰り延べに過ぎないため、長期的なプランの中で活用することが大切です。とはいえ、適切に利用すれば業績好調な年の利益圧縮や将来の退職金積立に役立つでしょう。保険加入を検討する際は、節税効果だけでなく保障内容や解約時の扱いまで含め、専門家に相談すると安心です。
個人事業主向けに小規模企業共済があるように、法人経営者におすすめなのが経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。取引先の倒産や緊急時に備えて中小企業基盤整備機構が運営する共済制度で、法人・個人を問わず中小事業者が加入できます。毎月の掛金は最大20万円で、拠出した掛金は全額を損金(必要経費)に算入可能です。
例えば、毎月10万円(年間120万円)を積み立てれば、その分だけ法人税課税所得を減額できます。万が一主要取引先が倒産した場合には積立金の範囲内で無利子融資を受けられますし、掛金は40ヶ月以上積めば途中解約して引き出すこともできます。解約金は収入になりますが、業績が振るわない年に解約すれば相殺できるため、これも一種の税金繰り延べ策と言えます。経営セーフティ共済は「備え」と「節税」の両立が図れる制度なので、資金に余裕がある塾経営者の方はぜひ検討してみてください。
借上社宅制度とは、会社が住宅を借り上げて社員に貸与する制度です。学習塾を法人運営している場合、経営者ご自身や社員の住居を社宅扱いにできれば、大きな節税メリットが生まれます。
具体的には、会社が物件を法人名義で契約し家賃を支払います。社員は社宅の利用料として低廉な金額(家賃の一部)を会社に納め、残りの家賃は会社負担です。社員にとっては本来給与から支払っていたはずの家賃を非課税の福利厚生として受けられ、会社にとっても同じ補助を給与で出すよりコストを抑えられます。
例えば月10万円の賃貸物件を社宅にした場合、社員負担は月1~2万円程度に抑え、残り8~9万円を会社が負担します。社員は10万円分の住居補助を受けながら、そのうち1~2万円分しか給与課税されません。会社側は支払家賃10万円を損金算入できますが、もし同額を給与として支給すると税や社会保険料の負担でより高いコストがかかったでしょう。借上社宅制度を利用すれば、双方にメリットがあることが分かります。
社宅制度を導入する際は、物件の契約を会社名義で行い、社内規程を整備する必要がありますが、中小企業でも十分活用可能です。塾長ご自身が現在個人で家賃を払っているなら、社宅制度に切り替えるだけで年間数十万円規模の節税になるケースもあります。
前述の減価償却の節でも触れましたが、法人でも中小企業であれば少額減価償却資産の特例を利用できます。取得価額30万円未満の資産について、その年の経費に全額算入できる制度です(年間合計300万円まで適用可)。例えば備品をまとめて購入する際、発注を分けて一つひとつを30万円未満に収めれば、それぞれ即時に経費計上できる可能性があります。
この特例を活用すれば、通常は数年かけてしか経費化できない設備投資について、節税効果を前倒しで享受できます。青色申告を適用している中小企業なら利用可能ですので、大きな備品購入を検討する際は顧問税理士に相談してみましょう。
法人経営の場合、出張手当(日当)を活用した節税も検討できます。社内で定めた旅費規程に基づき出張時に日当を支給すれば、その日当は従業員に非課税で支給でき、会社は経費計上できます。大きな出張機会が少ない学習塾でも、研修参加などの際に活用すればわずかながら節税になるでしょう。
節税を追求する際には、税務調査への対策も同時に考えておく必要があります。無理な節税は調査リスクを高めますし、日頃から適正な経理を心がけることが結局は一番の防御策となります。ここでは、節税と税務調査対策をセットで考える重要性について解説します。
「経費は多いほどいい」「利益をできるだけゼロに近づけたい」と考えるあまり、過度な節税に走るのは危険です。税務署は、不自然な決算内容や業種平均とかけ離れた申告には敏感に反応します。学習塾ならではのチェックされやすいポイントもありますので注意しましょう。
例えば、家族経営の塾で家族全員に不相応に高い給与を支払っている場合、それは実態のない経費(利益の移転)とみなされるかもしれません。また、生徒数や授業料の相場から見て異常に売上が少ないと、売上計上漏れを疑われる可能性があります。個人経営の塾では現金収入も多いため、預金通帳や領収書控えと売上計上がきちんと一致しているか調査官は細かく見てきます。同様に、プライベートな出費を経費に混ぜていないかもチェック対象です。交際費名目で家族旅行の食事代を計上していたり、自家用車のガソリン代を全額経費にしていたりすれば、まず間違いなく指摘を受けるでしょう。節税もやりすぎは禁物であり、「適切な範囲内で漏れなく行う」ことが肝心です。
税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。
学習塾の経営において、税務調査で指摘されがちな経費項目には傾向があります。その一つが前述した家事按分です。自宅教室で家賃や光熱費を按分するのは正当な経費計上ですが、按分割合が明らかに大きすぎると疑問を持たれます。按分根拠(面積比や時間比)は客観的に説明できるよう準備し、証拠となる資料(住宅の平面図や光熱費明細など)も用意しておきましょう。
また、人件費の処理も要注意です。講師に支払う報酬を「外注費」として処理している場合、実態が従業員であれば認定が覆され源泉所得税の未納を指摘される恐れがあります。アルバイト講師であっても給与として適切に源泉徴収し、給与台帳を整備しておくことが重要です。家族に支払う専従者給与や役員給与についても、勤務実態や金額が妥当かどうか確認されますので、業務内容を明確にし適正額を設定してください。
さらに、月謝制の場合は前受金の処理を誤ると売上計上漏れの原因になります。この点も税務調査で確認されるため注意しましょう。
以上のように、学習塾特有の経費処理については、事前に対策を講じておくことが大切です。不安な点があれば税理士に相談し、指摘リスクの高い処理がないかチェックしてもらうと安心です。
ここまで何度も述べてきたように、日々の帳簿管理と証拠書類(領収書等)の整備こそが、節税成功の最大の鍵です。適切に経理処理された帳簿と十分な裏付け資料があれば、多少大胆な節税策を講じていても税務署に認めてもらいやすくなります。逆に、どんなに慎重に経費計上していても、帳簿や領収書がずさんでは調査で認められなくなる可能性があります。
特に青色申告をしている場合、決算書や貸借対照表など帳簿一式の提出が求められますが、普段から記帳をしっかり行い領収書を整理しておけば何も恐れることはありません。現金取引の控えや銀行口座の通帳、請求書や契約書類も5〜7年間保管する義務がありますので、大切に保管しましょう。また、近年は電子帳簿保存法の活用で領収書をスキャナ保存することも可能になっています。いずれにせよ、「経理は後回しにしない・証拠はすべて残す」を徹底することが、結果的に一番の節税対策と言えます。
節税と税務調査対策を万全にする上で、やはり税理士のサポートは心強い味方です。税理士であれば、学習塾の経費構造や業界特有の慣習も踏まえて、どの程度の経費計上が妥当かアドバイスできます。自分では「このくらい大丈夫だろう」と思っていた処理が、プロの視点では危ないケースもあります。定期的に帳簿をチェックしてもらうだけでも、リスクの高い処理を事前に修正できるでしょう。
また、いざ税務調査となった場合、税理士がついていれば事前準備から当日の立ち会い、追加資料の提出対応まで全面的にバックアップしてくれます。税務署との交渉もプロに任せられるため、精神的な負担も大きく軽減されます。特に学習塾に強い税理士であれば過去の経験から調査でチェックされやすいポイントも熟知していますので、より的確な対策が可能です。
「節税したいけど調査が不安」という方こそ、ぜひ税理士に相談してください。日常の記帳指導から決算対策、調査対応まで一貫してサポートを受けられれば、本業の教育に専念できる環境が整います。
最後に、学習塾ならではの実践的な節税ノウハウや事例を紹介します。他の業種とは異なる視点から、人件費管理やオンライン運営、複数校舎展開時のポイントなどを見ていきましょう。
学習塾経営において人件費は最も大きなコストの一つです。特に個別指導塾では多数のアルバイト講師を雇用するケースも多く、給与計算の方法次第で経営効率が変わります。節税の観点から人件費を賢く管理するコツを押さえておきましょう。
まず、講師に支払う報酬はその実態に応じて給与として支払うか、外部委託費(業務委託契約による報酬)として支払うかを適切に判断します。アルバイトとして雇用すれば源泉徴収や社会保険の適用が必要ですが、業務委託契約であれば源泉徴収(報酬の10.21%)のみで社会保険は不要です。ただし、実質的に指揮命令下で働くのであれば雇用とみなされますので、形式だけ業務委託にして保険料逃れをするのはリスクがあります。税務上も労務上も問題ない範囲で契約形態を選択しましょう。
次に、アルバイト講師を雇う場合はシフト管理を工夫することで人件費の無駄を省けます。授業コマ数に合わせて必要な人員を配置し、閑散期には契約時間を調整するなどして、残業代や待機時間の発生を抑えることがポイントです。給与計算そのものは、会計ソフトや給与計算ソフトを用いて正確・迅速に行いましょう。源泉所得税の控除漏れや年末調整のミスを防ぐことは、余分な税金やペナルティを防ぐことにつながります。賢い人件費管理は節税と表裏一体です。講師への適切な報酬設定と支払い方法を整えることで、健全な労務環境と税務コンプライアンスの両立を図りましょう。
昨今はオンライン専門の学習塾も増えています。自宅や貸しオフィスからオンラインで指導を行う形態では、独自の節税ポイントがあります。まず、教室を持たない分家事按分や在宅勤務関連の経費を最大限活用しましょう。自宅を仕事場にしているなら前述の通り家賃・光熱費の按分計上は必須です。また、オンライン指導には高速インターネット回線やPC機材が欠かせませんから、その通信費や機材購入費ももちろん経費になります。
例えば、オンライン会議システムの有料プラン利用料や学習管理システム(LMS)の月額費用など、オンラインならではの支出は全て必要経費です。ウェブカメラやペンタブレット、専用ソフトウェアライセンス等の購入費用も漏らさず計上しましょう。逆に交通費や教室維持費がほとんどかからない分、利益が出やすいモデルとも言えます。利益が順調に出ている場合は、設備投資の前倒しや小規模企業共済・iDeCoへの加入などで所得を圧縮し、翌年の納税資金を確保しておくと安心です。
なお、売上規模が小さいオンライン塾の場合、消費税の免税事業者のままでいられるケースがあります(前々年または設立初年度の年商1,000万円以下なら納税義務なし)。規模拡大により課税事業者となる際はインボイス制度への対応も必要ですので、その点も含め計画しましょう。
学習塾が順調に発展し、複数の教室を展開したりフランチャイズ化したりする場合、税務面でもスケールに合わせた戦略が必要です。まず留意すべきは、事業規模拡大に伴う消費税の問題です。前述の通り年商が1,000万円を超えれば消費税の納税義務が生じますし、多店舗展開すればまず課税事業者となるでしょう。消費税は預かった分を納める税ですが、経費に含まれる仕入税額とのバランスで納税額が決まるため、店舗全体での経費管理も重要になります。
消費税について詳しくは下記のページをご覧ください。
また、校舎ごとの収益管理も欠かせません。店舗ごとに部門損益を把握できる会計体制を整え、どの教室がどれだけ利益を出しているか常に分析しましょう。儲かっている教室があれば、その校舎で必要な設備投資を行い減価償却費を増やすなど、店舗単位での節税調整も可能です。規模が大きくなるほど税務戦略も複雑になるため、必要に応じて税理士による節税シミュレーションを活用し、法人全体で最適な納税プランを検討してください。場合によっては新規教室ごとに法人を設立するスキームや、将来の事業承継を見据えた株式対策など、長期的な視野での検討も必要になるかもしれません。
店舗展開について詳しくは下記のページをご覧ください。
学習塾や個別指導塾の経営者にとって、税務の悩みは尽きないものです。そんなときこそ、私たち税理士法人加美税理士事務所のように学習塾専門の税理士に税務相談することを検討しましょう。業界に精通した税理士であれば、塾特有の収支構造や経費項目を理解しているため、一般的な税理士以上に的確なアドバイスが期待できます。たとえば、他の塾の経費率や適切な法人化タイミングなど、業界のベンチマークを踏まえた提案が可能です。さらに、学習塾に強い税理士はこれまでの経験から効果的な節税メニューを豊富に知っています。本記事で紹介したようなノウハウも、相談時に自社の状況へ合わせて提案してくれるでしょう。過度な節税と適切な節税のバランス感覚もプロならではで、税務調査に耐えうる節税対策を一緒に考えてくれる点も大きなメリットです。料金面が気になる方も多いでしょうが、最近はオンライン中心で業務効率を高めることで比較的リーズナブルな顧問料を実現している税理士事務所もあります。まずは気軽に相談し、自分の塾に合ったサポートを提供してくれるか見極めてみると良いでしょう。当税理士事務所では、初回無料相談を実施中です。是非お問い合わせください。
近年、税理士サービスもオンライン化が進んでおり、所在地に関係なく専門家のサポートを受けられる時代になりました。当税理士事務所のようにフルリモート対応を掲げる事務所なら、遠方の学習塾オーナーでもインターネット経由で気軽に相談できます。Zoom等でのオンライン面談はもちろん、チャットやメールで日常的な質問にも対応しているため、ちょっとした税務相談や経理の疑問もタイムリーに解消できます。
全国展開のフランチャイズ塾オーナーの方でも、移動時間をかけて税理士事務所に出向く必要はありません。チャットで領収書の送付方法を尋ねたり、メールで試算表を共有したりと、すべてリモートで完結します。これにより、忙しい塾経営者でもスキマ時間にプロと連絡が取れ、迅速なサポートが受けられます。全国どこにいても学習塾に強い税理士の知見にアクセスできるのは、経営者にとって大きな安心材料と言えるでしょう。
当税理士事務所では、初回無料相談もオンラインで実施中です。是非お気軽にお問い合わせください。
税理士に顧問を依頼すれば、面倒な記帳代行や給与計算代行までまとめて任せることも可能です。日々の領収書整理や会計ソフト入力、講師への給与計算・源泉税納付といった事務作業をプロに委ねれば、経営者は本業である教育サービスの充実に専念できます。特に学習塾経営は生徒対応やカリキュラム開発など時間を割くべき業務が多岐にわたりますから、バックオフィス業務をアウトソーシングしてしまうメリットは計り知れません。
実際、当税理士事務所でもクラウド会計システムを活用しながらお客様の記帳をサポートしたり、給与計算・年末調整までトータルでお手伝いしたりしています。専門家が管理することでミスや漏れのない経理が実現し、結果的に節税効果も最大化されます。経営者自身が経理処理に追われてミスをしてしまっては本末転倒です。税務のプロに任せてしまうことで、「任せるところは任せて本業に集中する」という理想的な経営スタイルが築けるでしょう。
学習塾の経営は、情熱と時間を注ぐべき本業領域が明確です。節税対策も含めたお金まわりは信頼できる税理士に任せ、ぜひ教育という本業でさらなる成果を追求してください。私たち税理士法人加美税理士事務所はその裏方として、全力で皆さまをサポートいたします。

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