不動産投資で節税を目指したのに、税務調査リスクが心配…。そんなときこそ、税務調査に強い税理士の伴走が必要です。
税務調査の概要:不動産投資家が知っておくべき基礎知識
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税務調査とは、税務署や国税局の税務調査官が納税者の申告内容をチェックし、正しく納税が行われているかを確認するための調査です。毎年の確定申告書に記載された所得や経費が正しいかどうか、帳簿や領収書などの証拠資料と照らし合わせて検証します。いわば「税金の申告内容の監査」のようなものと考えると良いでしょう。
税務調査には大きく分けて、任意調査(通常の税務調査)と強制調査(マルサによる脱税摘発など)がありますが、一般的な不動産オーナーに対して行われるのは任意の税務調査です。これは事前に通知をしてから行われる調査で、基本的には納税者の協力のもとで進められます。一度の税務調査で対象となる期間は通常過去3年分程度ですが、必要に応じて5年分程度まで遡って調べられることもあります。また、悪質な所得隠しが疑われる場合には、さらに長期間(最長7年)について調査・追徴されるケースもあります。
税務調査が行われる頻度は人それぞれですが、一般に法人の場合で3〜5年に一度、個人事業主(副業を含む)では5〜10年に一度程度とも言われます。実際、税務調査が行われる割合(実調率)は法人全体で約3.2%、個人事業主では約1.1%というデータもあります。単純計算すれば、法人なら約30年に一度、個人なら100年に一度という低い確率ですが、あくまで全体平均の数字です。事業内容や所得状況によって調査の可能性は変わりますし、「自分は大丈夫」と油断していると不意打ちを受けることにもなりかねません。正しく申告・納税していれば本来恐れる必要はありませんが、万一に備えて基本を理解しておくことが大切です。
税務調査の目的はシンプルに言えば「本来納めるべき税金がきちんと納められているか」を確認することです。税務署は申告内容に誤りや漏れがないかをチェックし、もし本来より少ない税額しか納めていなかった場合は追徴課税によって是正します。裏を返せば、適法かつ正確に納税している限り、調査官から指摘を受けることはありません。当税理士事務所でも「真面目に申告していれば調査官も味方」というスタンスで日頃から指導しています。
では、どんな不動産投資家が税務調査の対象になりやすいのでしょうか。税務署も人手に限りがあるため、すべての納税者を網羅的に調べるわけではありません。過去の傾向や申告データに基づき、「誤りが潜んでいそうな」事案や規模の大きな事業者を重点的に選定する傾向があります。以下に、不動産投資家で特に調査対象となりやすいケースを挙げます。
本業で会社から給与を得ている給与所得者の場合、給与以外に副収入がある場合はその金額に応じて確定申告が必要です。具体的には、給与以外の所得(副業の利益や不動産の家賃収入など)の合計が年間で20万円を超えると、確定申告をしなければなりません。例えばサラリーマン大家が得た家賃収入から経費を差し引いた不動産所得が20万円を超えれば、会社で年末調整を受けていても別途確定申告が必要になるわけです。
この「20万円ルール」を知らずに申告を怠っていると、税務署に把握された時点で調査が入る可能性が高まります。税務署は不動産の登記情報やローンの支払利息記録などから、副収入を把握する術を持っています。特に近年はマイナンバー制度の浸透により、副業収入も把握されやすくなっています。サラリーマンであっても年間20万円超の家賃収入があるなら、「自分も確定申告と税務調査の対象になり得る」と認識しておきましょう。
副収入の有無にかかわらず、売上や事業規模が大きい不動産投資家ほど税務調査の対象になりやすい傾向があります。例えば個人でもアパートを複数棟所有して家賃収入が高額なケースや、不動産管理会社(法人)を設立して大規模に賃貸経営をしているケースです。こうした規模の大きい大家さんは扱う金額も多いため、申告漏れがあれば追徴できる税額も大きくなる可能性があります。税務署としても効率的に税額を確保するため、ある程度規模のある事業者には定期的にメスを入れる傾向があります。
また、過去に申告ミスや指摘を受けたことがある人も注意が必要です。一度調査で誤りを指摘された経歴があると、「また何か見落としがあるのではないか」と税務署にマークされ、再調査の頻度が高くなる傾向があります。同じミスを繰り返していないか、常に慎重に申告するようにしましょう。
さらに、不動産の売買や収支の変動が大きいタイミングも調査が入りやすいポイントです。例えば高額な不動産を取得した直後や物件を売却して大きな譲渡益(または損失)が出た年などは、資金の出所や申告の内容を確認するために税務署が動きやすいと言われます。物件購入時にはその資金計画(親族からの贈与や多額の借入をしていないか等)を、不動産売却時には譲渡所得の申告漏れや誤りがないかを、それぞれチェックされる可能性があります。
以上のように、副業で一定以上の所得がある人や事業規模が大きい人、そして過去にミスがある人や大きな取引を行った人は、不動産投資家であれば税務調査の対象となりやすいといえます。「自分が当てはまるかも」と感じた方は、日頃からより一層注意深く記帳・申告を行いましょう。
(※不動産投資における青色申告のメリットや確定申告方法については、当税理士事務所の別ページでも詳しく解説しています。節税効果もありますので、該当する方はぜひご覧ください。)
税務調査の基本を押さえたところで、次に実際の調査はどのように進むのか、その一連の流れを見ていきましょう。税務調査は通常、事前の電話連絡から始まり、調査実施、結果の通知という段階を経て完了します。ここでは、調査の事前通知から当日の進行、そして結果通知とその後の対応について解説します。事前に流れを知っておけば、実際に連絡を受けても落ち着いて対処できます。
通常の税務調査は事前に税務署から連絡が入るところから始まります。ある日、納税者(またはその顧問税理士)宛に税務署から電話がかかってきて、「○月○日に税務調査を行いたいのですが…」と通知されます。この電話が税務調査の事前通知です。連絡を受けたら、まずは調査の日程を税務署担当者と調整します。
電話で伝えられる主な内容は、「調査を行う旨」「調査の対象となる税目(所得税や消費税など)と課税期間」「調査担当官の所属・氏名」「調査予定日と場所」などです。個人の不動産所得に関する調査であれば、対象税目は所得税(必要に応じて消費税も)で直近数年分、調査場所は自宅(自宅兼事務所)や物件の管理事務所、場合によっては顧問税理士の事務所などで行われることが多いです。ご自宅に来られるケースでは、応接室やテーブルなど調査官が作業できるスペースを確保しておくと良いでしょう。
日程調整に関しては、指定された日がどうしても都合が悪い場合、相談すれば変更も可能です。税務署もある程度融通はきかせてくれますので、仕事などで難しい場合は遠慮なく申し出てください。ただし、あまり先延ばしにしすぎると心証を損ねかねませんので、可能な範囲で速やかに日程を決めましょう。また、税理士に立ち会いを依頼する場合は、税理士の予定も踏まえて調整する必要があります。
近年の税制改正で、原則として税務調査は事前通知を行うことがルール化されています。したがって通常は突然自宅に調査官が訪ねてくるようなことはありません(よほど悪質な脱税が疑われるケースなど一部例外を除きます)。まずは電話連絡がありますので、落ち着いて対応しましょう。その電話連絡の段階で、「どの年度のどの税金について調べる予定か」「特に用意しておく書類はあるか」などを確認しておくと、後の準備がスムーズです。
事前通知から当日までの準備としては、以下の点に留意します:
- 過去数年分の確定申告書、決算書、青色申告決算書(該当する場合)を手元に用意し、内容を改めて確認しておく。
- 調査対象期間の帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)や現金出納帳をきちんと整理して印刷または画面提示できるようにする。
- 家賃収入の入金状況がわかる預金通帳や、経費支出の領収書・請求書類を年度ごとにまとめておく。
- 賃貸借契約書(物件ごとの家賃や敷金の契約内容がわかる資料)や不動産の売買契約書(購入時や売却時の書類)も確認されることがあるため、関連書類があれば用意。
- 顧問税理士がいる場合は早めに連絡し、立会いの依頼と事前打ち合わせをしておく。
こうした準備をしておくことで、調査当日に「あの資料が見当たらない!」と慌てずに済みます。特に領収書類の整理には時間がかかることもありますので、通知を受けたら早めに取りかかりましょう。
いよいよ税務調査当日です。通常、当日は調査官が朝から訪問し(多くの場合、午前10時前後に来られることが多いです)、まずは簡単な挨拶と調査の概要説明があります。調査官は身分証明証(税務署職員証)を携帯していますので、不安な場合は提示をお願いしても構いません。調査官は原則2名体制で来訪し、一人が主査(リーダー格)、もう一人が補助ということも多いです。
当日の流れは大まかに言えば、「朝はヒアリング、午後から帳簿・書類の検証」ということが多いでしょう。午前中は調査官とのインタビューやヒアリングが行われます。例えば不動産賃貸を始めた経緯や物件数、家賃収入の推移、本業との兼ね合いなど、世間話を交えつつ事業の概要を聞かれることがあります。緊張するかもしれませんが、聞かれたことには事実を丁寧に答え、余計な推測や嘘は絶対に避けましょう。雑談の中にも調査のヒントが隠れていることがありますので、リラックスしつつも気を引き締めて対応してください。
ヒアリングの後、帳簿類や証憑類のチェックが本格的に始まります。事前に用意した決算書や総勘定元帳を元に、調査官が収入や経費の内訳を確認していきます。「この〇〇費用△△円というのは何の支出ですか?領収書はありますか?」といった具体的な質問が出てきますので、それに対して該当する領収書や契約書を提示して説明します。賃貸物件ごとの家賃入金について銀行通帳と帳簿を突合されたり、経費計上された領収書の裏付け確認が行われたりします。
立会いについてですが、納税者本人(不動産オーナー)だけでなく、可能であれば税理士など専門家にも同席してもらうことを強くおすすめします。税理士がいれば、専門的なやり取りや税法解釈の説明などは税理士が代わりに対応してくれますし、調査官も必要以上に踏み込んだ質問は控える傾向があります。当税理士事務所でも、顧問先の税務調査には必ず税理士が立ち会うようにしており、専門家の目線で適切かつ円滑に調査が進むようサポートしています。
もちろん税理士が同席しない場合は、オーナー自身が立ち会うことは必須です。調査官だけで勝手に書類を調べさせるのではなく、必ず傍について対応しましょう。理由は、質問にその場で答えるためと、調査官のチェック内容を把握するためです。調査官がどの書類のどの点を確認しているかを見ておけば、何に関心を持っているかが分かります。もし調査官が休憩などで席を外すときも、書類を預けっぱなしにせず回収するようにしましょう(基本的に調査官が無断で書類を持ち出すことはありませんが、大切な原本はその場から離れないよう注意します)。
調査は通常1日がかりですが、内容次第では2日以上にわたることもあります。不動産の件数が多かったり取引が複雑な場合は、初日のチェックが終わらず「続きは翌日以降改めて」ということもあります。その際も日程調整は柔軟に対応してくれますが、できるだけスムーズに終わらせるためにも資料は整理整頓して出しやすい状態にしておきましょう。
すべての調査日程が終了すると、最後に調査結果の説明があります。通常、調査最終日の終了時か、内容によっては後日改めて時間を設けて、税務署から結果が伝えられます。ここでは、「申告内容に誤りがあったかどうか」「追徴すべき税額が発生するか」が示されます。
もし申告に特に問題がなかった場合は、「申告是認(ぜにん)」といって、「あなたの申告内容は適正でした」という通知が交付されます。これはいわば調査のお墨付きで、調査官から口頭で「特に今回指摘事項はありませんでした」と言われるケースです。実務的には何か小さな指摘があっても厳重な追及がない限り、是認にしてもらえることもあります。是認の場合、その調査はそれで完了となり、特に追加の納税も発生しません。
一方、申告内容に誤りや漏れが見つかった場合は、税務署から修正申告による是正を求められます。多くの場合、調査官は納税者に対して「○○の所得金額が漏れているので修正申告してください」あるいは「△△の経費は認められないためこの分税額が不足しています」等の指摘を行い、自主的な修正申告を促してきます。
修正申告とは、自ら申告書を訂正して不足分の税金を納め直す手続きです。調査官の指摘に納得した場合は、指摘内容に基づいて修正申告書を作成し、追加の税金を速やかに納付します。修正申告を行えば、税務署からの心証も良くなり、加算税(ペナルティ)も幾分か軽減されます。具体的には、税務調査の事前通知後でも調査の着手前に自主的に修正申告を提出すれば「更正の予知がない修正申告」と扱われ、過少申告加算税(10%〜15%)が課されないケースもあります。ただし、調査官から指摘を受けてからの修正では通常10%の過少申告加算税が課されます。また、修正申告により不足税額に対して延滞税(年利ベースで一定割合)が日数分かかりますので、これも併せて納付が必要です。
もし指摘に納得がいかない場合は、すぐに修正申告せず意見を述べたり交渉したりすることも可能です。税理士が立ち会っていれば、この場で調査官と粘り強く交渉し、指摘事項が事実誤認であれば撤回してもらえる場合もあります。当税理士事務所でも、お客様に不利益となる事項で明らかに妥当性に疑問がある場合は、その根拠をただし、合法的に認められる範囲の主張を行います。それでも結論として税務署が譲らない場合は、一旦指摘を受け入れて修正申告をし、後日不服申立て(異議申立てや審査請求)を検討することもあります。このあたりは専門的判断が必要なので、税理士と相談して進めるとよいでしょう。
最終的に追加の納税額が確定したら、税務署から後日送付される納付書を使って不足税額と加算税・延滞税を納付します。指定された期限内に支払えば一連の手続きは完了です。納付が遅れると延滞税がどんどん加算されますので注意してください。金額によっては分割払いの相談も可能ですので、資金繰りが厳しい場合は税務署に相談しましょう。
以上が税務調査の基本的な流れです。まとめると、事前通知 → 調査実施 → 結果説明 → 修正申告・納税というステップになります。いざ調査となっても、適切に対応すれば必要以上に恐れることはありません。特に税理士のサポートがあれば、円滑に調査を終え本業に専念できるようになります。
次に、税務調査で不動産投資家が指摘を受けやすいポイントと、その予防策について解説します。調査官は申告内容のどんな部分に注目しやすいのか、あらかじめ把握しておくことで日々の経理処理でも注意を払うべき点が見えてきます。ここでは特によく問題になりがちな「収入や経費の計上漏れ・ミス」「証憑書類や帳簿の不備」「経費計上の妥当性」の3つの観点から、具体例と対策を述べます。
不動産の賃貸収支に関する申告ミスで多いのが、収入または経費の計上漏れ、あるいは経理処理の誤りです。税務調査では、申告漏れの有無を重点的にチェックされます。不動産オーナーがやりがちなミスや、悪質と見なされかねない処理の例を挙げてみましょう。
- 家賃収入の計上漏れ:現金で受け取った家賃を口座に入れず手元保管していたため申告から抜け落ちた、駐車場代や物置利用料など細かな収入を申告していなかった、など。特に銀行入金ではなく現金授受の収入は見落としやすいので注意が必要です。また、12月分の家賃が翌年の1月に振り込まれる場合などの未収となっている家賃収入の計上もれにも注意しましょう。
- 敷金・礼金の扱いミス:礼金を受け取ったのに収入に計上していなかった、返還不要の敷金を退去時にそのままもらい切ったのに収入計上漏れしていた、といったケースです。礼金は受領した年度の不動産所得になりますし、敷金も返還しなかった部分は雑収入として計上しなければなりません。こうした契約上の特殊収入も見逃さないようにしましょう。
- 経費の二重計上や計上漏れ:同じ修繕費を誤って二度経費に入れていた、逆に経費に落とせるはずの管理費や固定資産税を計上し忘れていたケースなどです。前者は税務署から指摘され追徴になりますし、後者は本来減らせた税金を多く払っていたことになります。帳簿を作成する際はダブルカウントや漏れがないか確認しましょう。
- 勘定科目の誤り・処理ミス:本来は資産計上(減価償却)すべき多額のリフォーム代を全額その年の経費にしていた、事業用と私用で兼用している車のガソリン代を全額経費に入れてしまった、などの不適切計上です。固定資産に該当する支出(資本的支出)は一度に経費化できませんし、家事按分すべき費用は事業割合のみしか認められません。このような処理ミスは必ず訂正を求められます。
上記のような事例は、税務署も典型的な誤りパターンとして目を光らせています。したがって、日頃から収入と支出を正確に記録し、性質に応じた正しい処理を行うことが最大の対策となります。具体的な対策としては:
- 家賃収入は口座振込を基本とし、通帳と帳簿を定期的に突き合わせて未計上がないか確認する(現金で受領した場合も必ず帳簿に記載し領収書を発行する)。
- 礼金・敷金など特殊な項目については契約書をよく読み、課税対象となるタイミングで計上漏れがないよう管理する(必要に応じて税理士に判断を仰ぐ)。
- 経費については、科目ごとに集計して集計漏れや重複がないかチェックする。特に固定資産税や火災保険料など毎年決まった時期に支払うものはチェックリスト化すると良いでしょう。
- 修繕費や設備投資の判定は慎重に。迷った場合は資本的支出か否かを税理士に相談し、適切な処理を行う。
- 自家使用との区分が必要な経費(自宅と兼用の電気代、水道代、車両関連費など)は、合理的な按分基準で事業分のみ計上する。調査で根拠を尋ねられた際に説明できるよう、按分計算のメモを残しておく。
このように、一つ一つの収入・支出について正しい会計処理を心がけることが重要です。分からないまま自己流で処理すると、後で指摘を受けるリスクが高まります。税理士に記帳代行やチェックを依頼するのも有効な対策でしょう。
証憑書類(しょうひょうしょるい)とは、取引の事実を証明する書類の総称で、領収書・レシート、請求書、契約書、通帳などが該当します。不動産所得の申告において、こうした証憑類を適切に保存・整理しているかは税務調査で必ずチェックされます。なぜなら、申告書に記載された数字の裏付けとなるのが証憑であり、これが欠落していると申告内容の信頼性が損なわれるからです。
例えば経費として多額の修繕費を計上していたのに領収書や請求書が見当たらない場合、調査官は「本当にその支出をしたのか」「経費と認められるものか」疑いを持ちます。証憑が提出できなければ、最悪その経費は否認(税金計算上認めない)されてしまいます。また家賃収入についても、入金記録(通帳記帳や振込明細)が不明確だと漏れなく計上されているか確認できません。
こうした事態を避けるために、日頃から証拠書類をしっかり整理・保管しておくことが不可欠です。具体的なポイントを挙げます:
- 領収書やレシートは年度・月別にファイルして保管する。物件ごとや費目ごとに分けておくと、後から検索しやすく便利です。ノートに貼る方法でも構いませんが、剥がれたり紛失しないよう注意しましょう。
- 電子データで受け取った請求書やクレジットカード明細などは、紙に印刷するかPDFでフォルダ分けして保存します。2022年の電子帳簿保存法改正により、電子取引データは原則デジタル保存が義務化されていますが、紙出力でも一定期間は認められています。とにかく散逸させないことが大事です。
- 帳簿(仕訳帳・経費明細表など)と証憑を紐付けておく。例えば領収書に日付と金額だけでなく仕訳番号や勘定科目をメモしておくと、帳簿の該当箇所とすぐ照合できます。調査官に聞かれたときスムーズに提示できるでしょう。
- 保管期間は少なくとも7年間(法人は10年間)は確保する(青色申告の場合、所得税では原則7年の保存義務があります)。古い年分の領収書も捨てずに保管庫や段ボールにまとめてしまっておきましょう。「もう昔のだから…」と処分してしまうと、過去に遡って調査が入ったとき困ります。
- 金額の大きな取引については、領収書だけでなく契約書・見積書・請求書・支払い証明など一連の流れが分かる資料をセットで保存する。特に物件購入・売却の際の契約関連書類や、不動産仲介業者とのやり取り記録なども、後で譲渡所得計算の根拠資料として重要です。
当税理士事務所のお客様にも常々お伝えしているのは、「領収書や契約書は未来の自分を助ける宝だと思って大事に保管してください」ということです。面倒に感じるかもしれませんが、小さなレシート1枚が数万円の税金を左右することもあります。最近ではスマホで撮影してクラウド保存するなど簡便な方法もありますので、自分に合ったやり方で構いませんから、とにかく証拠を残す習慣をつけましょう。
また、帳簿の徹底という点では、単に数字を合わせるだけでなく内容の質も問われます。経理ソフトで自動仕訳していても、摘要欄に内容を詳しく書いておく、科目の使い分けを明確にする、といった工夫で帳簿の説明力が格段に上がります。調査官に帳簿を提示した際、「きちんと管理されているな」と印象付けることができれば、調査自体も比較的スムーズに進む傾向があります。
不動産投資家にとって、経費をいかに計上するかは節税対策の要でもあります。しかし、節税を意識するあまり無理な経費計上をすると税務調査で痛い目を見ることになります。ここでは、経費計上の適正化とそれによる節税効果のバランスについて考えてみましょう。
まず大前提として、経費として認められるのは「その収入を得るために必要とされた支出」のみです。言い換えれば、不動産賃貸業に関係ないプライベートな支出や、必要以上に高額な支出は経費になりません。税務署も、「その支出が本当に業務に必要なものか?」という観点で経費をチェックします。
例えば、家族旅行の費用を「物件視察の旅」と称して経費計上するような露骨なケースはもちろんNGですし、実態のない外注費や架空の高額な管理料なども一発で否認されます。一方で、本当に必要な経費であれば遠慮なく計上するべきです。調査を恐れるあまり、正当な経費まで落とさないのは税負担上もったいないことです。
重要なのは、適正な経費を漏れなく計上することと、経費にする以上はきちんと証拠と妥当性を備えておくことです。例えば:
- 親族に物件の管理を手伝ってもらっているなら、適切な範囲で報酬や給料を支払い経費とする。ただし、その場合は雇用契約や職務内容を明確にし、金額も相場に照らして妥当な範囲に収める(家族だからと非常識な高給にすると否認リスクがあります)。
- 自宅を事務所兼用にしているなら、家賃・光熱費の一部を事業用経費に按分して計上する。これも按分基準(面積割合や使用時間割合)を合理的に設定し、説明できるように資料を残しておきます。
- 減価償却費(建物や設備の減価の費用)は忘れずに計上する。減価償却は現金の流出を伴わない費用であり、不動産投資の大きな節税ポイントです。未償却残高が残っているのに償却費を計上しないのは単純に損ですので、毎年適切に計上しましょう(税務署も減価償却の計算ミスはよくチェックしていますので、計算方法は正確に)。
- 青色申告をしている場合、青色申告特別控除(65万円または10万円)を適用するには正規の簿記による帳簿作成が条件です。この控除も立派な経費の一種ですから、帳簿をきちんとつけて控除を漏らさず受ければその分節税になります。
適正に経費計上することは合法的な節税です。税務調査でも、合理的かつ証拠のある経費であれば何ら問題なく認められますし、結果的に不当に税金を多く払いすぎないことにつながります。当税理士事務所でも、クライアントの経費計上については「取れるものはきちんと取る、ただし線を踏み越えない」ことをモットーにアドバイスしています。
万一、経費計上について調査官から疑問を呈された場合でも、「これはこういう必要があって支出したもので、金額もこのように算定しています。証拠書類もこちらです」と論理立てて説明できれば、まず問題ありません。逆に説明に窮するような経費(根拠が曖昧、私的な要素が強い等)は初めから入れないか、どうしても必要なら事前に税理士に相談するなどして備えるべきでしょう。
節税効果という観点では、不動産投資に関連する様々な手法があります。しかしそれらも適法かつ実態に合っていることが大前提です。例えば、法人を活用する節税や、消費税還付スキームなどもありますが、これらもルールを外れると調査で否認されます。次章では、不動産管理法人(法人化)に関する節税メリットと注意点について掘り下げます。
(※不動産投資における節税対策の具体的な方法については、当税理士事務所の別ページで詳しく解説しています。さらに踏み込んだ節税スキームに興味がある方は、ぜひ下記リンク先のページもご参照ください。)
ここまで見てきたとおり、税務調査で問題となるのは主に「申告内容の誤り」や「帳簿・証憑の不備」です。裏を返せば、日常の業務で適切な経理と管理をしておけば、税務調査も怖くありません。この章では、不動産オーナーが日頃から実践できる税務調査への事前対策を紹介します。特別なことをする必要はなく、基本的なことを確実に行うことが最大の防御策となります。
まず第一に、正確な記帳と申告を心がけることです。当たり前に聞こえるかもしれませんが、これが何より重要です。調査で指摘される多くの問題は、日常の記帳段階でのミスやズボラが原因となっています。したがって、最初から正しく帳簿付けを行い、確定申告書を誤りなく作成していれば、税務調査で慌てる場面自体が減るのです。
正確な記帳のポイントとしては:
- 日々または少なくとも月次で帳簿をつけ、タイムリーに取引を記録する。記憶が新しいうちに入力することで漏れや誤りを防ぎます。
- 会計ソフトやクラウド会計を活用し、自動取り込み機能(銀行明細やクレジットカード明細の自動取得)を使うことで入力モレを減らす。特に家賃収入やローン返済など定期的な入出金は自動連携させると便利です。
- 科目の選択や仕訳の方法が分からないときは専門家に確認する。誤った科目で記帳してしまうと後から修正が大変です。例えば固定資産と消耗品の区分、前払費用や未払金の処理など、判断に迷うものは税理士に気軽に質問しましょう。
- 期末には帳簿残高と実際の現金預金残高の突合(いわゆる残高試算)を行い、貸借が合っているか確認する。現金過不足や仕訳抜けがないかをチェックします。
そして正確な申告ですが、記帳がきちんとできていれば半分達成したも同然です。あとは確定申告書(青色申告決算書も含め)の数字に転記ミスがないか、添付書類の漏れがないか最終確認しましょう。例えば減価償却費の損益計算書計上漏れ(計算したのに書き写すのを忘れた)や、青色申告特別控除の適用漏れなど、単純ミスで税額が変わってしまうこともあります。提出前にもう一度チェックする習慣をつけましょう。
青色申告の方は、先述のとおり65万円控除を受けるために正規の簿記が要件ですから、必然的に記帳は精度高く行うことになります。青色申告を活用すること自体が日頃の記帳を正しく行うインセンティブになりますし、結果として税務調査にも強い帳簿が出来上げります。もしまだ白色申告でざっくりとしか帳簿をつけていないという方は、青色申告への切り替えを検討するとよいでしょう。
こちらも先ほど詳述しましたが、証拠書類の整理整頓は日頃からの積み重ねが重要です。調査直前になって何年も前の領収書をかき集めるのは大変ですし、漏れが生じるリスクも高まります。日常業務の中で以下を習慣化しましょう:
- 支払いを行ったらすぐに領収書を保管フォルダに入れる。財布の中に入れっぱなしにせず、「経費用」のファイルや箱を用意しておき、帰宅後すぐ入れる習慣をつけます。
- 月に一度は領収書ファイルを整理し、日付順・科目別に整理整頓する。ついでに帳簿への入力漏れがないかも確認します。「入力済」チェックをつけておくと管理しやすくなります。
- インターネットで受領する領収書(メール添付のPDFなど)は、ダウンロードして決められたフォルダに保存する。メールボックスに埋もれてしまうと探すのが困難なので、必ず所定の場所に保存しましょう。可能なら紙に印刷して他の領収書と一緒にファイリングしておくと万全です。
- 契約書類や重要な請求書は、コピーをとって普段参照用にし、原本は防水のケースに入れて保管する。火災や水害対策として、クラウドにもスキャンデータを保存しておくと安心です。
このように、資料管理も立派な経営スキルです。特に不動産投資は長期にわたる事業ですから、書類も膨大になります。1枚1枚は小さくても、後で必要になったときにすぐ取り出せることが肝心です。税務調査に限らず、金融機関から融資を受ける際や、物件売却の際の書類整理などでもこうした日頃の習慣が生きてきます。
正確な記帳と証憑管理以外にも、日常的にできる税務調査への備えはいくつかあります。
- 税務知識をアップデートし専門家に相談: 税制改正や制度の変更に注意しましょう。不動産オーナーに関係する制度(住宅ローン減税や消費税のインボイス制度など)は変わることがあります。常に最新情報を意識しつつ、分からないことや判断に迷う取引があれば早めに税理士など専門家に相談することが肝心です。
- 公私の口座を分ける: プライベート用と賃貸事業用の銀行口座を明確に分けておきましょう。入出金の流れが把握しやすくなるだけでなく、税務調査でも収支を説明しやすくなります。個人の生活費と賃貸収支が混在していると疑念を招く場合もあるため、公私分計を徹底してください。
- 決算数値の異常をチェック: 決算書ができたら前年との比較で異常な増減がないか確認しましょう。経費率が極端に上がって赤字になっていないか、家賃収入が前年の半分以下になっていないかなど、大きな変動は調査官も注目します。正当な理由があるなら説明を用意し、特に理由がないのに異常値がある場合は記帳ミスを疑って修正しておきます。
(※不動産投資における消費税の取扱いや、将来の事業承継に備えた対策については、各トピック毎に当税理士事務所の別ページで解説しています。特に課税売上が一定以上ある方や高齢オーナーの方は、消費税や相続・事業承継対策のページもぜひ参考にしてください。)
不動産投資を続け事業規模が拡大してくると、不動産管理法人の設立(法人化)を検討する方も多いでしょう。法人化には税率面でのメリットがある一方、個人と法人を使い分けることで生じる税務リスクも存在します。この章では、不動産賃貸の法人化による節税メリットと、法人スキーム特有の税務調査上の注意点について解説します。
まず法人化のメリットから確認しましょう。不動産所得が個人で高額になってくると、所得税・住民税の累進課税によって税率がどんどん上がってしまいます。最高税率は所得税45%(住民税と合わせると約55%)にも達します。しかし法人税は一定の税率(中小法人の所得800万円以下部分は15%、超過部分は23.2%程度、法人住民税等を含めた実効税率でも約33%程度)で計算されます。したがって、個人で高い税率が適用されるくらいなら法人に利益を移した方が税率を抑えられる可能性があるのです。
例えば、個人で不動産所得が年間1,000万円超もあるようなケースでは、所得税率33%〜40%が適用されます。一方、法人を設立して利益を分散させれば、法人税20%前後+個人の給与所得税(所得に応じて変動)に抑えられるかもしれません。法人に利益を残せばさらに個人課税を繰り延べできます。この所得分散と繰延が法人化の大きな節税ポイントです。
また、法人化することで使える節税策もあります。たとえば:
- 役員報酬の活用: 法人の利益を代表者(オーナー)や家族に役員報酬として支払えば、法人にとっては損金(経費)になります。オーナー側では給与所得として税金はかかりますが、給与所得控除が使える分有利ですし、家族に配分すれば一家全体の税率を下げられる可能性もあります。
- 経費の範囲拡大: 個人事業では認められなかった経費が、法人形態にすると計上しやすくなる場合もあります。例えば、法人名義で社宅契約をしてオーナーがそこに住めば、家賃の一部を経費として落とす、といったスキームも状況によっては可能です(合理的な家賃設定と社内規定が必要)。法人は交際費や旅費規程などを定めて福利厚生費・交際費を一定額まで非課税枠で使えるなど、税務戦略の自由度が増します。
- 消費税還付のスキーム: 住宅用賃貸収入は消費税非課税のため個人で運用していると消費税の申告義務はありませんが、あえて法人化して課税事業者となり、大規模修繕や物件購入の際に消費税還付を受けるスキームもあります。ただしこちらは要件が厳しくなっており、平成28年度改正で新設法人の還付スキームは大きく制限されています。安易な活用は禁物です。
- 相続税対策: 資産を法人に移しておくことで、将来的な相続財産を減らす効果も期待できます。株式評価の方が不動産現物より低く抑えられるケースや、オーナーが亡くなっても法人として事業が存続するため賃貸経営が円滑に継続できるというメリットがあります。ただしこれは節税というより資産承継の観点ですので、詳細は「事業承継の特集ページ」をご参照ください。
以上のように、法人化には多角的な節税メリットがある一方、デメリットや注意点もあります。法人を維持するには毎年の決算・申告が必要で、税理士顧問料などコストもかかります。また社会保険への加入義務(オーナーが法人から報酬を取れば厚生年金・健康保険に加入)も生じます。純粋な税負担だけでなく、こうしたコスト面も考慮してメリットが出る規模か検討しなければなりません。
また後述しますが、法人と個人の間で取引を行うことで、税務上チェックされるポイントが増えるという側面もあります。法人を使った節税スキームが過度だと税務調査で否認されるリスクもあるため、計画段階から税理士に相談することが重要です。
(※不動産投資の法人化のメリット・デメリットやタイミングについては、当税理士事務所の別ページでも詳しく解説しています。法人設立を検討中の方は、ぜひ下記のリンク先のページも併せてご覧ください。)
不動産投資の法人スキームでよく利用される手法の一つに、サブリース契約(転貸借契約)があります。例えば、個人オーナーが所有する物件を自分の関連法人に一括借上(マスターリース)させ、その法人がテナントに又貸しするという形です。これ自体は一般にも行われるビジネスモデルですが、オーナー個人と法人が実質同族関係にある場合、税務上注意が必要です。
典型的には、個人から法人への賃料を相場より低く設定するケースが問題になります。個人オーナーは法人から低い家賃しか受け取らず、法人側がテナントから通常の家賃を得て利ざやが法人内に溜まるという構図です。こうすると個人側の所得圧縮(節税)が図れ、法人内で利益を留保することで低税率で済むように見えます。しかし、税務署はこれを不自然な所得移転とみなす可能性があります。
具体的には、関連当事者間取引として時価での取引と異なる場合の扱いが問題となります。法人がオーナー個人に支払う賃料が明らかに相場より低いと、法人側に利益移転している(個人から法人への贈与に近い)状況とも取れます。この場合、法人に移った利益部分について、個人側で本来の所得があったものと見做されるリスクがあります。
逆に、個人から法人への賃料を過大に設定した場合(法人が相場以上の家賃を個人に払う)は、法人側の損金が否認されるリスクがあります。こちらは法人から個人への利益移転と捉えられ、役員賞与や寄附金認定されて法人税が加算される可能性があります。
以上のように、サブリース契約を用いた所得移転は税務調査でもチェックが及びやすいポイントです。対策としては、契約賃料を市場相場に照らして適正な水準に設定すること、そして契約書や賃料算定根拠を整備しておくことです。調査で「なぜこの金額なのか?」と問われたときに、近隣相場や管理委託料の相当額を示して説明できればベターです。
当税理士事務所でも、オーナー個人と管理法人の契約見直し相談を受けることがあります。その際は、第三者間であればどうするかという視点でアドバイスを行い、税務上も妥当な契約条件となるようサポートします。サブリース自体は有効な経営手法ですが、税務リスクもあることを十分留意して活用しましょう。
(※不動産投資におけるサブリース契約を利用した節税スキームの詳細や注意点については、当税理士事務所の別ページでも解説しています。ご興味のある方は下記リンク先のページをご参照ください。)
不動産をオーナー個人と自分の法人との間で売買するスキームも節税策として考えられることがあります。しかし、これは税務上非常にリスクの高い手法です。例えば個人から法人へ物件をわざと低価格で売却して個人側の譲渡益を減らすケースでは、法人に相場より安く利益を移転させたとみなされ、税務署から時価での課税を受ける可能性があります。逆に高値で売って個人に損失を出すような場合も、不自然な損失として認められないでしょう。
また、個人と法人間の売買には、譲渡所得税の課税だけでなく、不動産取得税・登録免許税など多額の付随費用も発生します。節税額以上にコストがかかる恐れもあります。さらに、一度法人に売却すると個人側の青色申告の損失繰越控除が使えなくなるなど、事業継続上の影響もあります。
こうした理由から、同族会社との不動産売買による節税は現実にはメリットが乏しく、税務調査でも厳しくチェックされます。安易な資産移転は避け、市場価格に沿った通常の取引でない限り行わない方が賢明です。
(※このような法人と個人間の不動産売買スキームについては、当税理士事務所の別記事で詳しく解説しています。不適切な節税策とならないよう、実例や税務上の論点を知りたい方は参考にしてください。)
不動産投資の節税策として、一部で行われていたのが管理料徴収方式です。これは、オーナー個人が自らの資産管理会社を設立し、その会社に物件管理を委託して高額な管理料を支払うという方法です。オーナー個人側では管理料を経費計上して所得を圧縮し、資産管理会社側で利益が発生するが法人税率の方が低いのでトータルの税負担を減らせる、という目論見です。
しかし、税務上はこのスキームも厳しい目で見られます。まず、管理料の金額が適正かどうかが問われます。通常、不動産管理会社に支払う管理委託料は家賃収入の5%前後が相場と言われます。これに比べて不自然に高い料率(例えば家賃の20%を管理料として個人から法人へ支払っている等)だと、それは単に所得移転を目的とした架空経費だと判断されかねません。
税務調査では、管理委託契約書や管理業務の実態について詳しく調べられます。もしその管理会社がオーナー本人一人しかいない、特に目立った業務をしていないのに多額の管理料を受け取っているとなれば、経費の一部否認は免れないでしょう。たとえば適正とみなされる5%相当分だけ経費を認め、残りの15%は個人の経費から除外(つまり課税)される、といった具合です。場合によっては、その超過部分は法人側では役員報酬の前払いと見做されたり、個人から法人への寄附(金銭の贈与)と見做されるリスクもあります。
要は、管理料の行き過ぎた設定は調査官にすぐ見抜かれるということです。適正水準内であれば、実際に管理業務を行っている限り問題ありません。例えば入居者対応やクレーム処理、清掃手配などを管理会社(家族経営でも可)がきちんと行っていて、その対価として相応の管理料を取っているのであれば、経費として認められるでしょう。
当税理士事務所でも、クライアントから「管理会社にいくら払うのが妥当か?」という質問を受けることがありますが、その際は第三者委託の場合の相場と実際の業務内容を基準にアドバイスします。税務署に説明する際も、「この業務とこの業務を請け負わせており、人件費等を勘案すると◯%程度の管理料は妥当と考えています」と論理立てて示すことが大切です。
もし既に高額な管理料スキームを組んでいる方がいたら、一度見直しをおすすめします。将来調査が入った際に、一度に過年度分まで否認されると多額の追徴となりかねません。節税は「やりすぎない」ことが肝要です。
最後に、税務調査に備える上での税理士の活用についてお話ししましょう。不動産投資に強い税理士は、日常の税務相談から調査当日の立会いまで、心強いパートナーとなります。ここでは、適切な税理士の選び方と付き合い方、そして税務調査における具体的なサポート内容を解説します。
税理士にも得意分野や経験の豊富な業種があります。不動産投資に関してサポートを受けるなら、やはり不動産関連の税務に強い税理士を選ぶのが重要です。選び方のポイントとしては:
- 実績や経験: 不動産オーナーの顧問実績が豊富な税理士を選びましょう。賃貸不動産の申告事例や節税事例の蓄積がある事務所は、それだけ経験に基づく適切なアドバイスが期待できます。
- コミュニケーション: 投資家目線で話ができ、親しみやすい人柄の税理士かどうかも大事です。専門用語ばかりでなく一般的な言葉で説明してくれるか、相談しやすい雰囲気かを確認しましょう。
- 提供サービス: 記帳代行から決算・申告、節税コンサル、税務調査対応までトータルにサポートしてくれるかをチェックします。不動産管理法人の設立支援や相続税対策など、将来的なニーズも視野に入れて選ぶと安心です。当税理士事務所では全国オンライン対応も行っており、遠方からでも気軽に相談できます。
- 費用: 顧問料や申告料が見合っているかもポイントです。物件数や業務量に応じた適正な料金体系か確認しましょう。当税理士事務所ではクラウド会計連携による効率化でリーズナブルな顧問料を実現しており、費用面でも安心いただけます。
税理士を選んだら、上手に活用することが大切です。丸投げにするのではなく、オーナー側も経理や税金の基本を理解し、積極的にコミュニケーションを取りましょう。例えば、定期的に経営数字を報告したり、気になることは些細でも質問するなどしておけば、税理士も適切なタイミングでアドバイスをくれます。
また、税理士から提案があったときにはぜひ耳を傾けてください。節税アイデアや法改正情報など、自分では気づかない知見を持っています。特に税務調査に関しては、「ここはしっかり書類を残しておきましょう」「この取引は説明資料を用意しましょう」といったアドバイスをもらえるので、素直に従うことをお勧めします。そうした準備がいざという時に威力を発揮するのです。
税務調査の連絡を受けた際、顧問税理士がいる場合はすぐに連絡しましょう。税務署からの事前通知は税理士にも直接行くケースがありますが、念のため自分からも連絡して日程を共有します。そして、税理士と一緒に事前準備に取り掛かります。
事前準備として税理士が行ってくれることの一つが、帳簿や書類のチェックです。いわば事前シミュレーションとして、申告内容を改めて第三者目線で点検してもらえます。具体的には:
- 総勘定元帳や仕訳帳を税理士がざっと確認し、不自然な取引や残高がないかチェックします。例えば貸借対照表に大きな現金残高がある場合「本当にそんな現金が手元にありますか?」などと指摘を受けるかもしれません。調査官と同じ目線でチェックしてもらえるので、事前に修正すべき点が見えてきます。
- 領収書や契約書など必要書類が揃っているか確認します。不足しているものがあれば早めに用意したり、再発行を依頼したりと対策が取れます。
- 過年度の申告との比較もします。「前年より経費が大幅に増えていますが、理由は説明できますか?」など、想定問答をしてもらえることもあります。それに答える形で説明の準備をすることで本番も安心です。
- 税務署から事前に「この点を重点的に確認したい」と連絡がある場合(例えば消費税の特例適用について確認したい等)は、その論点に関する資料や計算根拠を税理士と用意します。プロの視点で抜け漏れなく資料準備できるのは大きな利点です。
このように税理士と入念な事前準備を行えば、調査当日には高い自信を持って臨むことができます。当税理士事務所でも、お客様と二人三脚で万全の準備を整え、「ここまでやれば大丈夫」という状態で調査に臨めるようサポートしています。
税務調査当日、税理士が立ち会ってくれることで得られる主なメリットは次のとおりです。
まず、その場で専門的な対応ができることです。調査官から専門知識を要する質問や指摘があっても、税理士が即座に税法の根拠を示しながら説明・回答してくれます。また、もし調査官の指摘に誤解や行き過ぎがあれば、税理士が論理的に反論してくれるため、不当な追及を防ぐことができます。
次に、税務署との交渉や緩衝役になってくれる点も大きいです。税理士が間に入ることで、調査官は無理な要求や高圧的な質問をしにくくなりますし、納税者本人は直接対決のストレスから解放されます。疑問点や主張したい点があれば税理士を通じて伝えることで、冷静かつ専門的な議論の場に持ち込めます。
さらに、事後対応もスムーズです。調査の結果、修正申告が必要になった場合でも、税理士が速やかに修正申告書を作成し、追加税額の計算や提出手続きを代行してくれます。納税者にとって煩雑な手続きを任せられるのは大きな安心です。
このように税理士が同席して適切に対処してくれることで、精神的な負担も軽減されます。プロのサポートがあるだけで「一人で対応しなくていい」という安心感が生まれ、平常心で臨みやすくなるでしょう。当税理士事務所でも、税務調査において豊富な経験に基づきお客様をサポートし、追徴税額を最小限に抑えてきた実績があります。
(参考:当税理士事務所では消費税対策や青色申告、節税相談、法人化支援、サブリース/売買スキーム対策、事業承継対策など、不動産オーナー向けの総合サポートメニューを用意しています。詳しくは各ページをご覧ください)

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