本業も不動産法人も、どちらも大切な事業。両方を見渡せる税理士がいれば、節税スキームも資産管理ももっと合理的に最適化できます。経営戦略とタックスプランニングの両立、私たちが実現します。
不動産投資専門税理士が解説!サブリーススキームの仕組み・メリットと注意点
ページコンテンツ
- 本業も不動産法人も、どちらも大切な事業。両方を見渡せる税理士がいれば、節税スキームも資産管理ももっと合理的に最適化できます。経営戦略とタックスプランニングの両立、私たちが実現します。
- 不動産投資専門税理士が解説!サブリーススキームの仕組み・メリットと注意点
- サブリーススキームの基本概念と仕組み
- 【ここが最重要】サブリースを活用した節税戦略とタックスプランニング
- サブリースのメリットとデメリット
- サブリース契約と法務のポイント
- サブリース契約における税務・金融評価・運用のポイント
- サブリース業界の動向と今後の展望
- 【ここも重要】オーナー属性別:サブリース活用のポイントと注意点
- 税理士法人加美税理士事務所のサポート内容と強み
- まとめ:サブリーススキームを賢く活用し安心・安定の賃貸経営を
- よくあるご質問
- お問い合わせ
- 関連ページ
サブリースとは、オーナーが所有する賃貸物件を不動産会社等のサブリース会社に一括で貸し出し、サブリース会社が第三者である入居者に転貸(また貸し)する仕組みの賃貸経営手法です。日本語では「一括借上げ契約」とも呼ばれます。その名のとおり、建物全体(または複数戸)を一括して借り上げる契約で、サブリース会社が物件運営の責任を負います。オーナーに代わってサブリース会社が入居者募集や賃貸管理を行い、オーナーは物件を提供するだけで済みます。
簡単に言えば、オーナーがサブリース業者に物件をまるごと貸し、その業者が入居者にまた貸しするという形態です。個々の入居者と直接契約するのはサブリース会社なので、オーナーと入居者との間に直接の賃貸借契約関係は生じません。この点が通常の賃貸管理委託とは異なるサブリース独自の特徴です。
サブリース契約では、三者三様の役割分担があります。まず、物件オーナーはサブリース会社との間で建物の賃貸借契約(マスターリース契約)を締結し、建物の使用をサブリース会社に委ねます。この契約に基づき、オーナーは貸主、サブリース会社が借主となります。次に、サブリース会社は自らを貸主として入居希望者と転貸借(また貸し)の契約、すなわちサブリース契約を結びます。ここではサブリース会社が大家さん役、入居者が借主の関係です。
つまり、オーナー → サブリース会社(→ 入居者)という 二段構えの契約関係 になっているのがポイントです。オーナーから見ると借主はサブリース会社のみであり、入居者とは直接契約を結ばないため、賃貸経営上の細かな実務(募集・契約・クレーム対応等)はサブリース会社側に委ねられます。一方、入居者から見ると貸主はサブリース会社なので、家賃の支払いや物件の管理に関する連絡窓口もサブリース会社となります。この当事者関係の整理により、オーナーは煩雑な賃貸管理業務から解放されることになります。
サブリース最大の特徴は、サブリース会社による家賃保証にあります。物件が一時的に空室になった場合でも、サブリース会社がオーナーに対して一定額の賃料を支払う契約になっているため、オーナーの収入は安定します。具体的には、入居者が支払う家賃のうち一定割合(サブリース手数料を差し引いた額)が毎月オーナーに保証家賃として支払われる仕組みです。
例えば満室時の家賃収入が月100万円見込める物件であれば、サブリース契約ではその80~90%程度(80~90万円前後)の賃料が保証されるケースが一般的です。残りの10~20%はサブリース会社の手数料となります。空室リスクを気にせず決まった家賃収入が得られるのはオーナーにとって大きなメリットですが、その裏側で実際に得られる収益は市場家賃の7~8割程度に抑えられる点には注意が必要です。思っていたほど手取りが伸びない可能性があるものの、空室による収入ゼロのリスクを排除できる安心料と考えることもできます。
収入フローとしては、入居者から支払われた家賃が一旦サブリース会社に入り、そこから所定の手数料が差し引かれ、残額がオーナーに送金される流れです。サブリース会社はその手数料収入で管理サービスを提供し、万一の空室時にもオーナーへ保証賃料を支払う原資としています。なお契約によっては、新築時や入居者退去後の免責期間(一定期間家賃保証の対象外となる猶予期間)が設けられる場合や、数年ごとに保証賃料の見直し条項がある場合もあります。このため契約締結前に、保証賃料が支払われない期間の有無や条件、将来的な賃料改定のルールを確認しておくことが大切です。
一口にサブリース契約と言っても、その類似制度や形態はいくつか存在します。代表的なのが「マスターリース契約」と「家賃保証契約」です。一見似た言葉ですが、指す内容が異なるので整理しましょう。
- マスターリース契約(一括借上げ契約): オーナーとサブリース会社との間で締結する一括借上げの賃貸借契約を指します。サブリース会社が借主となり転貸を前提とする契約で、サブリース会社自らが家賃保証を行うのが特徴です。オーナーはサブリース会社から一定の家賃(保証賃料)を受け取り、管理業務も一任します。
- 家賃保証契約: 上記とは別に、近年普及している家賃保証会社との契約を指す場合があります。これは主に入居者側の保証人代行としての意味合いが強いもので、例えば入居者が家賃滞納した際に保証会社が立替払いをする仕組みです。またオーナー向けの商品として、物件の空室率が一定水準を超えた場合に不足分家賃を保証してくれる空室保証サービスも「家賃保証」と呼ばれることがあります。これらはサブリース会社自身が借り上げるマスターリースとは異なり、契約の相手が「保証会社」である点が大きな違いです。空室保証型ではオーナーが保証料(保険料)を支払う代わりに一定の家賃減収リスクをカバーしてもらう仕組みで、物件管理はオーナー自身または別の管理委託会社が行います。
要するに、マスターリースはサブリース会社が物件を借り上げて自ら家賃を保証・運営する形、家賃保証契約(空室保証)は第三者の保証会社がオーナーに対し収入減を補填する保険的な契約です。後者は管理業務の委託が含まれないため、「収入の安定性」だけをカバーする手段と言えます。サブリース(マスターリース)の方がオーナーの手離れは良い反面、保証料が実質的に高く設定される傾向があります。ご自身のニーズに応じて、どちらの方式が適切か検討すると良いでしょう。
サブリーススキームは単に賃貸経営の手間を省くだけでなく、税務戦略上もうまく活用することで大きなメリットを生み出す可能性があります。特に、高所得のサラリーマン大家さんや複数物件を所有するオーナーにとっては、不動産管理法人の活用や所得分散による節税効果は見逃せません。本章では、不動産投資専門の税理士が知るサブリース×税務の実践的なポイントを解説します。当税理士事務所では豊富な節税提案実績がありますので、具体的な検討にあたっては専門家のアドバイスもぜひ参考にしてください。節税対策について詳しくは下記のページをご覧ください。
まず注目したいのが、サブリーススキームを不動産法人の活用と組み合わせる節税策です。これは、個人オーナーが自ら資産管理会社(不動産管理法人)を設立し、その法人とサブリース契約を結ぶ手法になります。具体的には、「個人オーナー → 自身の管理会社」がマスターリース契約を結び、管理会社が入居者と転貸契約を行う形です。こうすることで、家賃収入の一部を個人から法人へ移転させることができます。個人オーナーが管理会社から受け取る家賃(=法人がオーナーに支払う借上げ賃料)をあえて低めに設定すれば、その分だけ個人の不動産所得を圧縮することが可能です。この減らした分の収入は管理会社側の利益となります。
では、所得を法人側に付け替えても結局税金は変わらないのでは?と思われるかもしれません。しかし、個人の所得税率と法人税率には大きな差があります。個人の所得税・住民税は累進課税で、所得が増えると最高で55%程度(所得税45%+住民税10%)もの高税率が適用されます。一方、法人税等の実効税率は最高でも約33%程度です。したがって、高い税率帯にある所得を法人側に移すだけで税負担を大幅に軽減できるわけです。
例えば、本業の給与収入が高く不動産所得にも課税最高税率が及んでいるサラリーマン大家さんであれば、管理法人を活用して家賃収入の一部を法人所得に振り替える意義は大いにあります。また、企業オーナーで本業とは別に不動産事業用法人を運営している方も、個人で保有する物件について自社とサブリース契約を交わすことで、法人個人間での所得調整が可能です。こうしたスキームによって所得税・住民税の節税(所得移転)や、法人内部に利益をプールして資金を有効活用するといった効果も期待できます。
もっとも、この手法を検討する際には収支バランスの試算が重要です。法人を設立・維持するには登記費用や毎年の顧問税理士費用など一定のコストが発生します。さらに、法人は赤字でも毎年約7万円の地方税(均等割)を納める必要があり、決算申告にも手間と費用がかかります。そのため、節税によるメリットがこうしたコストを上回る規模であることが前提になります。一般に不動産収入が年数百万円規模以上、かつ個人の税率が高い層で有効と言われます(例えば課税所得900万円超などが目安)。一方、もともと所得税率が低い方(例えば税率10%程度)だと、法人化によって却って税負担が増えるケースもあります。自身の適用税率や物件規模を踏まえ、事前にシミュレーションすることが肝心です。
当税理士事務所では、不動産投資の法人化支援にも力を入れています。全国対応で多数の設立実績があり、税務調査にも精通した専門家が最適なサブリース節税スキームを提案いたします。法人化すべきかどうかお悩みのサラリーマン大家さんも、お気軽にご相談ください。
法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。
税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。
不動産管理法人を導入した場合、役員報酬の設定や所得分散のテクニックによってさらなる節税が可能です。まず、オーナー自身(法人の役員)に支払う報酬額を調整することで、法人と個人それぞれの課税所得をコントロールできます。法人に利益を残しすぎず、かといって個人の給与が高額になりすぎないようバランスを取ることで、トータルの税負担を最小化することが可能です。例えば、法人の所得が800万円を超える部分には通常約23%の法人税がかかりますが、その前に役員報酬として支給すれば法人税を圧縮できます。ただし給与として受け取った側では所得税が発生するため、個人・法人の税率差や社会保険負担も考慮して適正額を設定する必要があります。
さらに有効なのが、家族への給与支給による所得分散です。資産管理会社の役員にオーナー本人だけでなく配偶者や子供を就任させ、役員報酬(給与)を支払うことで所得を家族に分散できます。個人の所得税は累進課税で、一人に所得が集中すると高率の税がかかりますが、複数人に報酬を振り分けることでそれぞれの税率区分を下げ、結果として世帯全体の税負担を軽減できるのです。例えば専業主婦の奥様やアルバイト収入程度のご子息に年間103万円までの給与を支給すれば各人の所得税・住民税は発生せず、その額は法人の経費にもなります(いわゆる103万円の壁の活用)。また、給与という形で毎月家族に現金を渡すことは資産の生前分与にもなり、将来の相続税対策にもつながります。
ただし、家族に支払う給与については「職務実態に見合った金額」であることが重要です。税務上、実質的な扶養手当や生活費の肩代わりとみなされるような過大な役員報酬は損金不算入(経費否認)とされるリスクがあります。適正水準の報酬設定や職務分担の実態づくりについては、専門家の助言を得ながら進めましょう。適切に行えば、役員報酬の調整と所得分散は高額所得者の所得税対策の切り札となります。
サブリーススキームや不動産法人の活用と並行して、不動産投資に伴う各種税制優遇をフル活用することも大切です。例えば、個人で賃貸経営を行う場合は損益通算による節税効果を検討しましょう。賃貸物件の減価償却費やローン金利などにより不動産所得が赤字になった場合、その損失を給与所得等と相殺することで所得税・住民税を軽減できます(ただし過度な節税目的の赤字計上には注意が必要です)。一方、法人で物件を保有している場合でも、青色申告による欠損金の繰越控除(赤字の繰越し)を活用し、数年スパンで見た税負担の平準化を図ることが可能です。将来売却益が出た際に過去の繰越欠損と相殺すれば、大幅な税圧縮も期待できます。
また、不動産投資には各種の税優遇制度があります。例えば、耐震・省エネ改修を行った際の固定資産税減額や、新築賃貸住宅に対する固定資産税の減免措置、さらには相続時精算課税制度や小規模宅地の特例など、長期的視点で税負担を軽減できる制度は積極的に検討しましょう。特に高齢オーナーの場合、相続税対策として賃貸経営を継続するメリットがあります。賃貸物件は貸家として評価額が30%減額される上に、土地についても小規模宅地等の特例で最大80%減額される場合があります。サブリース契約で満室経営を維持すれば、この「貸家の評価減」を最大限に受けられ、結果的に相続税評価額を抑えることができます。
これらの税制優遇を活かすには、長期的な税務プランニングが不可欠です。現時点の所得税・法人税だけでなく、将来の相続まで見据えてトータルで税負担を最小化する戦略を立てましょう。例えば、「今は所得税節税を優先しつつ、将来的には法人に資産を承継して事業承継税制を検討する」といったシナリオも考えられます。不動産オーナー一人ひとり状況が異なるため、税理士とともにシミュレーションを行い、最適な節税メニューの組み合わせを見つけることが大切です。事業承継について詳しくは下記のページをご覧ください。
ここまでサブリース契約の概要と節税への応用策について見てきましたが、続いてサブリースのメリット・デメリットを整理しておきましょう。サブリースにはオーナーにとって多くの利点がある一方で、注意すべきリスクや落とし穴も存在します。特に契約期間の長いスキームですので、良い面だけでなく悪い面も十分理解した上で導入判断することが重要です。
サブリースを利用する最大のメリットは、賃貸経営における安心感と手間の軽減にあります。具体的な利点を順番に見ていきましょう。
まず、前章で触れた不動産管理法人を絡めたサブリース節税スキームのメリットです。高所得のオーナーであれば、個人で家賃収入を受け取るよりも法人経由にした方が税率が低く抑えられる可能性が高いです。例えば家賃収入500万円に対し個人であれば30%以上の所得税・住民税がかかるケースでも、管理法人に付け替えて利益を出せば法人税は15~23%程度で済むことがあります。所得税と法人税の税率差を利用した節税は、特に課税所得の大きいサラリーマン大家や資産家オーナーに有効です。
また、管理法人側で経費算入できる範囲が広がる点もメリットです。たとえば法人名義で管理業務に必要な車両や事務所を用意すれば、その費用を経費化できますし、家族への給与支給で所得分散することもできます。これらは個人の不動産所得では制限がある部分なので、法人化により節税の選択肢が増えると言えます。さらに、法人を活用すれば将来的な事業承継(株式の承継)による資産移転もしやすくなるため、相続対策の一環としてメリットを感じる高齢オーナーもいらっしゃいます。
サブリース契約最大のメリットは、何といっても家賃収入の安定性です。賃貸経営において空室期間は収入ゼロになるリスクですが、サブリースならサブリース会社が空室の有無にかかわらず決まった賃料をオーナーに支払ってくれます。たとえ一時的に入居者がゼロになっても、毎月決まった額の家賃が振り込まれるため、ローン返済計画も立てやすく精神的な負担も軽減します。
特に、副業として不動産を持っているサラリーマンの方にとって、本業収入とは別に「第二の給料」のように安定収入が得られる意義は大きいでしょう。空室が埋まるかどうか夜も眠れない…という心配から解放され、長期的な収支見通しが立てやすくなります。「毎月安定した家賃収入」はサブリースの最大の魅力であり、この点を評価して契約を選ぶオーナーは非常に多いです。
意外に思われるかもしれませんが、サブリース契約には税務手続きの負担軽減というメリットもあります。通常、個人で賃貸経営をする場合、毎年の確定申告では複数入居者からの家賃や更新料、修繕費・管理費など経費を細かく集計しなければなりません。入居者が増えるほど記帳や領収書管理の手間も増大します。しかしサブリース契約なら、賃貸借契約の相手はサブリース会社ひとつだけです。サブリース会社が毎月発行する収支報告書(オーナーへの送金額と控除明細が記載)をもとにまとめて申告すれば良いため、煩雑な経理作業から解放されます。
例えば、賃貸物件をいくつも持っている方や、本業が忙しいサラリーマン大家さんにとって、確定申告の手間が減るのは大きな利点です。「家賃○○円、管理費○○円、○号室退去に伴う原状回復費○○円…」と個別明細を管理する必要がなく、サブリース会社からの一括入金額と手数料明細だけを確認すれば申告書が作成できるという簡便さは見逃せません。税理士に依頼する場合でも、資料がシンプルな分コスト削減につながる可能性があります。
サブリース契約そのものではありませんが、賃貸物件を所有していること自体に相続税対策上のメリットがあります。居住用や遊休の不動産と比べ、他人に貸している不動産(貸家・貸付事業用宅地)は相続評価額が低く計算される優遇があるためです。具体的には、賃貸中の建物は「貸家の評価額」として固定資産税評価額からさらに30%減額されます。土地についても、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例により50%または80%もの評価減が適用され、相続財産の圧縮が可能です。
サブリース契約を結ぶと物件が安定稼働しやすいため、常に満室に近い状態を維持しやすくなります。これはすなわち、「賃貸割合」が高い状態を保てることを意味し、前述した貸家評価減の計算上も有利に働きます(賃貸割合が大きいほど評価額の減少幅が大きくなる)。その結果、オーナーの相続発生時に課税評価額を抑えられ、相続税の軽減につながるというわけです。高齢オーナーで将来の財産承継を心配されている方にとって、賃貸経営を続けること自体が有効な節税策になり得る点は押さえておきましょう。
サブリースを利用すれば、日々の煩雑な賃貸管理業務をすべてプロに任せることができます。入居者募集から審査、契約手続き、家賃集金、クレーム対応、退去時の精算・リフォーム手配まで、物件管理に伴う一連の業務をサブリース会社が代行します。オーナー自身は物件の大枠の方針決定(例:リフォームの許可など)以外は基本ノータッチでOKです。
この手間の軽減は非常に大きなメリットです。例えば、夜中に入居者から水漏れトラブルの電話が鳴る心配もなく、退去募集のたびに不動産屋巡りをする必要もありません。専門の管理会社が24時間365日対応してくれるケースも多く、管理ストレスから解放される安心感は計り知れません。特に賃貸経営の経験が浅いオーナーや、本業が多忙な方にとって、プロのノウハウに任せられるのは心強いポイントです。実際、「自分で管理していた頃に比べ、サブリース契約後は電話が鳴らなくなって精神的に楽になった」という声もよく聞かれます。
さらに、管理業務を委ねることで時間の節約にもつながります。浮いた時間を本業やご家族との時間に充てたり、新たな投資物件の調査に充てたりと、有効活用できます。複数物件をお持ちの方でも、窓口がサブリース会社一社に集約されるため管理効率が飛躍的に向上します。煩雑な管理業務から解放され、安心して不動産経営を続けられること──これもサブリースが支持される大きな理由です。
上記メリットの総まとめとして、サブリースは「手間をかけず安定運用したい」オーナー層にマッチした仕組みと言えます。例えば、高齢のオーナー様で体力的に現場対応が難しくなってきた場合でも、サブリースなら管理の大部分を任せられるため安心です。「入居者と直接やり取りする負担がなくなり、年金代わりの賃料収入を確保できている」といったご高齢のオーナーの声もあります。また、多忙なサラリーマン大家さんにとっても、平日昼間に入居者対応や業者打ち合わせをする必要がなくなるため、本業に支障をきたしません。
不動産投資専門の知識や時間がなくてもプロに任せておけば大丈夫というのは、初心者オーナーにとっても大きな安心材料です。サブリース会社側も物件経営のプロ集団ですから、空室対策や賃料設定について蓄積されたノウハウがあります。「自分で運用する自信はないけれど資産活用したい」という方にとって、サブリースはローリスク・ローリターンながら手堅い選択肢となるでしょう。
以上のように、サブリース契約には安定収入・業務負担軽減・節税など多方面のメリットが存在します。では反対に、どのようなデメリットやリスクがあるのか、次に確認しておきます。
メリットの多いサブリースですが、契約内容や運用次第ではオーナーに不利に働く点もあります。以下、主なデメリットや注意点を順に見ていきましょう。
まず、不動産管理法人を設立してサブリース方式で節税を図るスキームの留意点です。前述のとおり、法人設立・維持にはコストがかかります。株式会社を作る場合は設立時だけで登録免許税や定款認証費用など合計20万~30万円程度、合同会社でも10万円前後の費用が必要です。さらに設立後は、決算申告に伴う税理士報酬や毎年の地方税(均等割7万円)が固定費として発生します。物件規模が小さいうちは、せっかく節税してもコスト倒れになるリスクがある点を忘れてはいけません。「節税のために会社を作ったのにトータルでは損をしてしまった」ということのないよう、事前にシミュレーションして判断しましょう。
また、節税効果にも限界があります。管理法人が受け取る借上げ家賃を極端に低く設定しすぎると、今度は個人側の手取りが少なすぎて固定資産税やローン返済を賄えない恐れがあります。逆に高く設定しすぎれば個人の税負担が減らず法人側が赤字になるなど、本末転倒です。適正なバランスを見極めるのが難しい点はデメリットと言えるでしょう。さらに、法人スキームによる節税は高所得者限定のメリットでもあります。個人の所得税率が低い人にとっては、法人化するとむしろ税金が増えてしまう場合があります(例えば所得税率10%の人がわざわざ法人税15%を払うと逆効果)。節税効果が限定的で、自力運用より税負担が増えるケースもあり得る点には注意が必要です。
加えて、税務上グレーなスキームを取ると税務調査で否認されるリスクもゼロではありません。家族への給与が名義貸しと見做されたり、マスターリース料が不相当に低額だと判断されたりすれば、税務署から指摘を受ける可能性があります。こうしたリスクを回避するには、事前に税理士と相談して適切な契約条件を設定し、帳簿や契約書類を整備しておくことが重要です。万一税務署から問合せが来ても、専門家のサポートがあれば適切に対応できます。当税理士事務所でも節税スキーム導入後の税務調査対応まで含めてサポートしておりますので、安心してご相談ください。税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。
外部とのサブリース契約では安定収入が得られる反面、オーナーの取り分は相場家賃の7~8割程度に抑えられる点をデメリットとして認識しておきましょう。サブリース会社がリスクヘッジとサービス提供の対価として差し引く手数料は決して小さくありません。例えば本来満室なら月100万円取れる物件でも、サブリース契約だと保証賃料は月80万円になる、といった具合です。空室リスクの軽減と引き換えに収益性が下がるのがサブリースの構造上避けられない部分です。
長期的に見ると、この差は大きな金額になります。毎月の20万円の差が10年で2,400万円、30年で7,200万円にもなります。「手間を考えれば安いもの」と感じるか「それだけ収益を失うのは痛い」と感じるかはオーナー次第ですが、安定の裏に収入減ありという点は契約前に認識しておきましょう。特に、自己資金で余裕があり物件を常に満室にできる自信があるオーナーにとっては、手数料分だけ利益を逃しているとも言えます。サブリース手数料は広義の「保険料」のようなものだと割り切れるかが判断のポイントでしょう。
外部とのサブリース契約には、契約時には想定していなかったオーナー不利の条件変更が後から発生し得る点にも注意が必要です。具体的には、契約更新時の賃料見直しと中途解約の制限です。
まず、契約期間満了時(あるいは数年ごとの定期見直し時)に保証賃料の減額を求められるリスクがあります。建物は年数が経てば劣化しますし、市場家賃も変動します。そのため、「当初10年は○万円で保証するが、その後は見直し」のような条項が契約に盛り込まれている場合があります。実際、サブリース会社側から「近隣相場の下落」を理由に賃料の引き下げ交渉を受けたり、契約更新時に一方的に保証賃料を下げられたりするケースも報告されています。借地借家法では借主(この場合サブリース会社)の賃料減額請求権が認められており、法的にもサブリース会社に有利な側面があります。長期契約の場合、将来的に収入が減る可能性があることを織り込んでおきましょう。
次に、中途解約のしにくさも大きなデメリットです。一度サブリース契約を結ぶと、オーナー側から任意のタイミングで契約を終了させることは難しくなります。法律上、サブリース会社は賃借人(借主)の地位にあるため、正当事由がない限りオーナーからの解約は認められません。さらに契約書で「○年間は中途解約不可」等の特約が付されている場合も多く、違約解除しようとすれば高額な違約金が発生します。一般に違約金は家賃6ヶ月~12ヶ月分程度と設定されることが多く、場合によっては数百万円単位の負担となります。
その結果、「赤字が続いてサブリースをやめたいが、違約金がネックで抜け出せない」という状況に陥るオーナーも少なくありません。つまり、一度契約すると身動きが取りにくいのがサブリースの弱点です。契約前には必ず解約条件やペナルティを確認し、納得できる内容かチェックしましょう。将来的な売却や自主管理への切り替えの可能性がある場合、柔軟に対応できる契約にしておくことが重要です。
サブリース契約は相手企業の信用に依存する面もあります。つまり、サブリース会社自身の経営リスクがオーナーに波及する恐れがあるのです。万が一サブリース会社が経営難に陥り倒産してしまった場合、家賃保証の支払いが止まってしまう事態になります。このとき、オーナーは本来の空室リスクに晒されるだけでなく、預けていた敷金や当月分家賃などが未回収になる可能性もあります。
現実には大手管理会社でも経営破綻した例があり(かぼちゃの馬車事件等)、絶対安全とは言い切れません。サブリース契約を結ぶ際は、相手会社の財務健全性や信頼性をしっかり見極めることが重要です。具体的には、貸借対照表の自己資本比率や設立年数、親会社の有無、管理戸数の実績、社会的信用などをチェックしましょう。契約後も、サブリース会社からの振込遅延や担当者の頻繁な交代など不穏な兆候がないかアンテナを張っておくことをおすすめします。最悪の事態に備えて、いざというとき自主管理に戻す段取りや、他社へ管理替えするプランBも考えておくと安心です。
サブリース契約をしても、物件オーナーとして負担し続ける費用がある点にも注意しましょう。代表的なのが建物の大規模修繕費や退去時の原状回復費用です。日常的な物件清掃や軽微な修理はサブリース会社が対応してくれるとしても、実際にかかる工事代金自体はオーナー負担となる契約が一般的です。例えば外壁の塗り直しや屋上防水工事、空室になった部屋のリフォーム費用などは、結局オーナーの持ち出しになります。
加えて、サブリース会社に管理を任せきりにしていると、修繕費用が割高になりがちという一面も指摘されています。業者選定から施工までサブリース会社主導で進むため、場合によっては相場より高い工事費を支払ったり、必要性の低い箇所まで修繕してしまったりするケースもあるようです。オーナー側が細かくチェックしにくい分、コスト管理の面で不透明になりやすい点はリスクと言えます。
また、退去時の原状回復費(クリーニング代や補修費)も契約内容によりますが、多くの場合オーナー負担です。サブリース会社が入居者から敷金を預かっているケースでは、その清算も間接的になるため明細が見えづらいことがあります。「すべて任せきり」には危険も潜むことを念頭に、定期報告書に目を通したり大規模修繕の際は見積もりを比較するなど、オーナー自身もある程度関与する姿勢が必要です。
最後に、節税の観点から見たサブリース活用の限界について触れておきます。サブリース契約や不動産管理法人の設立は、うまくハマれば大きな節税メリットがありますが、誰にとっても万能な方法ではありません。特に、前述したとおり個人の税率が低い層では、法人スキームを使っても節税メリットが乏しいどころかコスト増になるケースもあります。例えば、年収がそれほど高くないサラリーマン大家さんが無理に法人化すると、法人維持コストの方が税効果より大きくなり、結果的に手取りが減ってしまうことがあります。
また、外部とのサブリース契約そのものについて考えると特に節税効果はありません。確かにサブリース手数料のおかげでオーナーの所得は低く抑えられるため所得税・住民税は減ります。しかしそれは同時に「収入自体が減っている」ということであり、言わば税金を減らす代わりに稼ぎも減らしている状態です。純粋な手取りベースで見たとき、サブリースによる節税効果は手数料負担とトレードオフの関係にあります。極端な話、まったく家賃を取らなければ所得税はゼロになるわけですが、それでは意味がないのと同じです。
要するに、サブリースは本来経営上のメリット(安定と手間軽減)を享受するためのもので、節税はあくまで副次的な位置づけです。節税策として期待しすぎると「思ったほど節税できない」と感じる可能性があります。むしろ節税だけを目的に複雑なスキームを組むと、前述のように税務署から否認されるリスクも高まります。大切なのは、経営判断として合理的かつ税務的にも整合性の取れた方法を選ぶことです。サブリースを使うかどうか迷ったら、収支シミュレーションと税効果の両面から税理士に意見を求めると良いでしょう。
以上、サブリーススキームの仕組みからメリット・デメリット、さらには節税への応用方法まで網羅的に解説しました。サブリース契約は、不動産投資の安定運用に役立つ一方で、オーナー側にも十分な理解と準備が求められる手法です。大事なのは、「なぜサブリースを利用するのか」を明確にし、自分の投資目的や財務状況に合った判断をすることです。サラリーマン大家の方なら本業との両立や税負担軽減、高齢オーナーの方なら相続対策や体力面の不安解消など、人それぞれ重視するポイントがあるでしょう。
私たち税理士法人加美税理士事務所は、こうした不動産オーナーの皆様の目的達成を税務面から強力にサポートいたします。全国対応で培った豊富な知見を活かし、節税対策のご提案から税務調査対応までワンストップでお任せください。サブリースの活用可否に悩まれている方も、ぜひ一度専門家へご相談いただき、自身にとって最適な不動産運用プランを見つけていただければと思います。健全で賢い不動産投資によって、皆様の資産形成と安定収入が実現することを願っております。
節税対策について詳しくは下記のページをご覧ください。
不動産オーナーに一括借上げ(サブリース)を提案するサブリース会社(物件管理会社)には、ビジネスモデル上さまざまなメリットがあります。オーナーから建物を一棟まるごと借り上げて転貸する仕組みで、毎月一定の賃料をオーナーに支払い、空室リスクや管理業務を肩代わりする代わりに、その対価を得る構造です。以下ではサブリース会社側の主なメリットを、税務面も含めて解説します。
サブリーススキームは、不動産オーナー自身が設立した不動産管理会社(不動産法人)を活用することで節税効果を狙うことも可能です。例えば、サラリーマン大家や企業オーナーの方が個人で賃貸収入を得る場合、最高税率は所得税・住民税で合計約55%にも達します。一方、家族で出資して不動産管理法人を設立し、その法人がオーナーから物件を借り上げて賃貸経営を行えば、法人税等の実効税率(中小法人では最高33%程度)で利益を計上でき、個人の高い累進課税を回避できます。具体的には、課税所得が900万円超といったケースでは、法人化による節税メリットが大きくなると一般に言われています。
さらに所得分散の効果も見逃せません。不動産管理会社を設立し、オーナー本人や配偶者・親族を役員に据えて給与を支払えば、家族に所得を移転できます。これにより一人ひとりの所得水準を下げ、結果的に一族全体での税負担を軽減することが可能です。また、個人が直接物件を所有する代わりに法人名義で保有・運用する形にすれば、将来の相続税対策にもつながります。例えば不動産そのものではなく法人の株式を次世代に承継する形にすれば、株価評価の方が実物不動産より低く抑えられるケースが多く、相続税の圧縮が期待できます。法人化により事業承継もしやすくなるため、高齢オーナーの方で後継者にスムーズに資産と事業を引き継ぎたい場合にも有効です(※事業承継計画の策定も重要です。)事業承継について詳しくは下記のページをご覧ください。
税理士目線で見ると、不動産投資における法人スキームは強力な節税策となりえます。ただし注意点もあります。法人設立・維持には登記費用や毎年の顧問税理士費用、社会保険料負担などコストがかかり、節税効果がそれら費用を上回らなければ意味がありません。また、オーナー個人と法人との取引(賃料設定や経費精算)が不当に偏った場合、税務上「同族会社間の特殊関係による行為計算」とみなされ、適正な賃料設定でないと否認されるリスクもあります。賃料を極端に低く設定して個人の所得を圧縮しすぎると、税務調査で寄附金認定(法人から個人への利益移転)されたり、法人側で経費が否認される可能性があります。そうした問題を防ぐためにも、不動産法人スキームを活用する際は不動産投資に強い税理士に相談しながら進めることが不可欠です(当税理士事務所では不動産管理法人による節税スキームのご提案から税務調査対応まで万全のサポート体制があります。)税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。
適切な顧問税理士の選任も重要で、もし現在の不動産法人の顧問税理士を変更したい場合も専門知識のある税理士への切り替えを検討すると良いでしょう。
サブリース会社の基本的な収益源は、オーナーに支払う保証家賃と入居者から受け取る実際の賃料との差額(サブリースフィー)です。保証賃料は満室想定賃料の約80〜90%に設定されるのが一般的で、例えば満室時の家賃収入が月100万円の物件なら、サブリース会社はオーナーに80〜90万円程度を毎月支払い、入居者から満室になれば100万円の家賃を回収します。その10〜20%程度の差額がサブリース会社の売上となり、そこから空室期間の損失補填や管理コストを差し引いたものが利益になります。
このモデルでは、サブリース会社にとって入居率の向上が直接利益拡大に繋がるインセンティブとなります。たとえば保証賃料の水準を「想定入居率85%」に相当する額に設定した場合、実際の入居率が85%を上回れば、その超過分の収入はすべてサブリース会社の利益となります。通常の管理委託契約で得られる管理手数料(家賃の5%前後が多い)よりも高い利幅を得られるため、サブリース会社は物件の稼働率アップに積極的になります。一方で、仮に保証賃料を95%相当の高い水準で設定すると会社側の利幅は極めて小さくなり、少し入居率が悪化しただけで逆ザヤに転落するリスクがあります。そのため、サブリース会社は保証賃料率とリスクのバランスを見極めて契約条件を決めています。いずれにせよ、空室の有無に関係なく安定収入を確保しつつ建物管理も任せられるという点がこの仕組みの売りであり、オーナーに安心感を提供する代わりにサブリース会社は家賃差額を事業収益として獲得しているのです。
サブリース会社にとって、空室リスク引受け=家賃保証の提案は管理物件数を飛躍的に拡大する有効な手段です。賃貸経営上、オーナーの最大の不安材料である空室リスクや家賃滞納リスクを肩代わりするサブリース契約は、特に賃貸経営初心者や本業が忙しいサラリーマン大家、高齢オーナーなどに強く訴求します。「空室になっても一定の家賃が入ります」「煩わしい入居者対応もすべて当社が行います」というサブリース会社の営業トークにより、空室による収入減の心配がない安心感からアパート経営に踏み出すオーナーも増えてきました。オーナー側にとって魅力的な提案である分、サブリース契約を武器にすれば多くの物件オーナーを獲得でき、結果として管理戸数を一気に増やすことが可能になります。
実際、サブリース契約の普及により、急速に管理戸数を伸ばした企業もあります。管理会社にとって戸数の拡大は経営基盤の強化そのものです。戸数が増えればスケールメリットで広告費や管理コストを効率化でき、知名度向上によってさらに顧客(オーナー)を呼び込む好循環も生まれます。また、空室リスクを負うことでオーナーからの信頼を得やすくなり、「任せて安心」と評価されれば長期契約にも繋がりやすいでしょう。サブリース契約の提案そのものが管理会社の営業戦略として強力な武器となり、結果的に市場シェア拡大に直結するのです。
もっとも、空室リスクを引き受ける以上、サブリース会社側は高い入居率を維持するために人一倍の努力が求められます。具体的には、地域の需要動向を分析して適正な賃料設定を行ったり、空室が出れば迅速にリフォーム・クリーニングを実施して次の入居者募集に繋げたりといった積極的な空室対策が不可欠です。空室リスクを抑えるノウハウと運営力がある管理会社ほど、サブリース事業で成功しやすく、結果として管理戸数を着実に増やしていけるでしょう。
サブリース契約下では、物件オーナーとサブリース会社の関係は「貸主」と「借主」となり、サブリース会社が物件を一括して借り上げる形です。この仕組みにより、サブリース会社は物件管理の主導権を実質的に握ることになります。通常の管理委託では、入居者募集や賃料設定、修繕の判断などで逐一オーナーの承認を仰ぐ必要がありますが、サブリースの場合、サブリース会社が一定の裁量をもって賃貸運営を行える契約になっていることが多いです。その結果、煩雑な調整コストを省き、効率的な一括運営が可能になります。
具体的には、サブリース会社は物件ごとの募集賃料やキャンペーンを市場状況に合わせて機動的に変更できますし、入居者の選定基準も自社のノウハウで統一して実施できます(滞納リスクの低減など)。また、複数物件を一括管理していれば、定期点検やメンテナンス、人員配置を全体最適で計画でき、スケールメリットを活かしたコスト削減も期待できます。例えば、サブリース会社が多数の物件を抱えていれば、修繕業者や清掃業者との取引条件を有利にできるため、個々のオーナーが単独で依頼するより安価かつ迅速に修繕対応できる場合があります。
さらにサブリース会社は借主の立場として物件を預かっているため、入居者との細かなやり取り(クレーム対応や契約更新手続き等)も一元的に対処できます。オーナーに逐一報告・了承を得る必要がなく、自社の判断でスピーディに対応できることは、入居者サービス向上にもつながります。結果として空室期間の短縮や入居者満足度の向上を図りやすくなり、物件の資産価値維持にも寄与します。
このように物件管理のイニシアチブを握ることで、サブリース会社は自社のノウハウをフルに発揮した運営が可能となり、高収益を狙うことができます。言い換えれば、サブリース会社にとって物件を一括借上げすることは「自らが大家になる」ようなものです。経験豊富な不動産プロとしての腕の見せ所でもあり、効率的な運営によって得られた利幅が自社の利益に直結するため、モチベーション高く管理業務に取り組める点もメリットと言えるでしょう。
サブリース契約は長期契約が一般的で、契約期間が10年・20年・30年に及ぶケースもあります。オーナー側にとっては長期間にわたり家賃収入が保証される安心感がありますが、これはサブリース会社側から見れば長期にわたる安定事業収入の確保につながります。通常の賃貸管理業務では、管理委託契約はオーナーからいつでも変更・解約されるリスクがありますが、サブリース契約で一括借上げしている間は基本的にサブリース会社が物件から退くことはありません(契約期間中は継続的に家賃支払い義務を負うため)。契約で定められた期間にわたり一定の賃料収入を得られる可能性が高く、サブリース会社は自社の中長期の事業計画を立てやすくなります。
また、長期契約で物件を確保できれば、サブリース会社は事業基盤の安定化や金融機関からの信用向上といった副次的メリットも享受します。毎月定額の家賃収入が見込めるためキャッシュフローが安定し、金融機関から見ても「安定収益を生む事業」と評価され融資を受けやすくなる傾向があります。実際、空室リスクをサブリース会社が負担する形であれば、融資を行う銀行側も返済原資が安定していると判断しやすく、オーナーにとっても有利な融資条件が引き出せるケースがあるほどです(サブリース契約書を金融機関に提示することで、融資審査上プラス材料となる場合があります)。
さらに、サブリース会社にとって長期契約は顧客との長期的関係構築を意味します。契約期間中、オーナーとはパートナーシップが続くため、信頼関係を深める機会が多くなります。きめ細かな対応や経営サポートを通じてオーナーの満足度を高めれば、契約更新や追加物件の管理委託など新たなビジネス機会にもつながるでしょう。以上のように、長期契約による安定収入はサブリース会社にとって事業の柱となり、収益基盤の安定と拡大の双方に寄与する重要なメリットと言えます。
他方で、サブリース会社側にも事業上のリスクやデメリットが存在します。空室保証という性質上、景気動向や不動産市況の影響を受けやすく、契約や法規制面でも注意すべき点があります。ここではサブリース会社側が直面しうる主なデメリット・リスクを解説します。
まず、不動産管理法人を活用したサブリース節税スキームのリスクについてです。法人を設立することで税率面のメリットはありますが、設立コストや維持コストも無視できません。不動産法人を設立すれば定款作成・登記に20万円前後、さらに毎年最低でも均等割の地方税(約7万円)や顧問税理士費用、社会保険料の負担が発生します。小規模法人でも社会保険加入義務が生じ、役員1人でも厚生年金と健康保険への加入が必要となるため、人件費以外に数十万円規模のコストが固定的にかかります。このような費用負担が、法人化による節税効果を上回ってしまうと本末転倒です。特に不動産収入規模がそれほど大きくない場合、法人化によるメリットは薄く、費用倒れになるリスクがあります。
また、法人スキームは税務面でのコンプライアンスリスクにも注意が必要です。前述のとおり、個人オーナーとその管理法人は特殊関係にあるため、賃料や業務委託料の設定が不自然に低すぎたり高すぎたりすると、税務当局から利益操作を疑われます。適正賃料より低い金額で物件を貸し付けて個人の所得を圧縮していると判断された場合、差額分が個人から法人への利益移転とみなされ、法人側で損金不算入(経費否認)や、個人側で贈与・寄附と認定され追徴課税される恐れがあります。また、家族への役員給与も、実態に見合わない高額報酬を支給すれば経費として認められない可能性があります。こうしたリスクは、税務調査の際に指摘されるケースがあり、過去にも不動産管理会社を使った節税が否認された事例が報告されています。
さらに、不動産管理法人を運用するには経理・事務の手間もかかります。毎月の会計記帳や決算申告、各種税金の納付、役員報酬の適正額の検討など、個人で賃貸していた時には不要だった手続きが増えます。高齢オーナーの場合、ご家族が法人運営をサポートするケースもありますが、それでも法人運営には一定の労力が避けられません。場合によっては顧問税理士や社会保険労務士など専門家との継続契約が必要となり、その費用負担も生じます。
最後に、法人スキームは将来の方針転換が難しい点もデメリットです。一度法人を設立すると、簡単に個人に戻す(法人解散する)ことはできません。また、法人に利益が蓄積した場合、それを個人に引き出すには役員報酬や配当(利益剰余金の分配)に伴う追加課税が発生するため、最終的に個人で使えるお金にする際に二重課税となる点にも留意が必要です。せっかく法人で節税しても、将来資金を個人に戻す段階で税金がかかるようでは本末転倒です。このように、不動産法人を活用した節税策には多面的な検討が必要であり、「法人化すれば何でも節税になる」と短絡的に考えるのは危険です。必ず不動産分野に詳しい税理士と相談し、メリットとデメリットを慎重に天秤にかけた上で判断することが肝要でしょう(当税理士事務所では法人化のタイミングや節税効果についてシミュレーションを行い、最適なプランをご提案しています。)法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。
サブリース会社最大のリスクは、空室率の上昇による逆ザヤの発生です。保証家賃をオーナーに支払う以上、物件の実際の入居率が一定以上で維持されないと、支出が収入を上回り赤字(逆ザヤ)になります。たとえば、想定入居率90%を前提に保証家賃を設定していても、経済情勢の悪化や競合物件増加で入居率が80%台に落ち込めば、その差額分はサブリース会社の持ち出しとなります。
実際に、リーマンショック後や地域の賃貸需要が減退した局面で、サブリース契約が逆ザヤに陥りサブリース会社が苦境に陥ったケースが見られました。空室が発生してもオーナーへの家賃支払いは継続するため、空室が長引くほどサブリース会社の損失は膨らみます。とくに空室期間中の負担を軽減する措置である免責期間(後述)を過ぎても入居者が決まらない場合、その物件は持てば持つほど赤字になる状況に陥ります。
この逆ザヤリスクを軽減するため、サブリース会社は契約時に比較的低めの保証賃料率を設定したり、一定期間ごとに保証家賃の見直し条項を設けたりしています。しかし、それでも予期せぬスピードで市況が悪化する可能性はゼロではありません。例えば昨今の人口減少や地方都市の空室率上昇はサブリース業者にとって大きな懸念材料で、将来的に郊外物件などで逆ザヤ案件が増えるリスクも指摘されています。
逆ザヤが発生するとサブリース会社の収益を圧迫し、経営を揺るがします。大手企業であればグループ全体でリスクヘッジできますが、中小のサブリース業者だと数棟の赤字案件が続くだけで資金繰りが苦しくなり、最悪の場合倒産に至る危険もあります。実際、過去にはサブリース事業に特化したある中堅企業が、想定を超える空室率悪化で採算が合わなくなり倒産した例も報じられています。サブリース会社にとって入居率の維持は死活問題であり、一物件だけでなく多数の契約物件で同時に空室率が悪化する景気後退局面では経営全体がリスクに晒されるのです。
上述の逆ザヤリスクに直面した際、サブリース会社は契約条件の見直しや契約自体の解除を望むことがあります。しかし、契約上および法的に見ると、サブリース会社といえども自由に賃料減額や途中解約ができるわけではなく、ここにジレンマがあります。
契約内容によりますが、多くのサブリース契約では「◯年毎に保証賃料を見直す」「一定の市況変動があれば賃料改定を協議する」といった条項が設けられています。仮にそうした条項がなくても、借地借家法32条2項の規定により、「経済事情の変動等により賃料が不相当となった場合」は当事者(借主=サブリース会社)は将来に向けて家賃の増減額を請求することが可能です。これは強行規定であり契約の定めに優先しますので、周辺家賃相場が下落しているような状況では、契約上の見直し時期を待たずともサブリース会社からオーナーに賃料減額請求が法的に可能です。
しかし、実際にサブリース会社がオーナーに減額交渉を持ちかけても、オーナーがそれを素直に受け入れるとは限りません。オーナーからすれば収入が減る話ですから、「契約した当初の金額を守ってほしい」と考えるのが普通です。ではオーナーが減額要求を拒否した場合、サブリース会社はどうするかというと、契約の中途解除を検討することになります。実際、多くのサブリース契約書ではサブリース会社側に一定の中途解約権が盛り込まれており、所定の通知期間をもって契約解除できる旨が定められています。その条項に従って、サブリース会社は「このままでは採算が取れない」と判断した場合に契約解約を申し入れることが可能です。
ただし、ここにもリスクがあります。契約解除は最終手段であり、実行すればオーナーとの関係は決裂し、自社の管理物件が減少してしまいます。サブリース会社にとって契約解除は事業規模縮小を意味するため、本音としてはできれば避けたいところです。また、オーナー側からすれば突然保証が打ち切られる形になるため、大きなトラブルに発展する可能性があります。過去には「30年一括借上げ」と謳われて契約したのに数年で保証賃料を減額され、拒否したら契約を打ち切られた、として集団訴訟に発展した事例もあります。平成29年(2017年)には愛知県の男性オーナーが大手サブリース業者を相手取り訴訟を起こし、全国で100名超のオーナーが追随して一斉提訴を検討していると報じられました。このケースでは「10年間家賃不変」と聞かされアパートを建てたのに6年後に一方的に減額されたことが争点となっています。結果がどうであれ、減額交渉や契約解除を巡る揉め事はサブリース会社の信用失墜に直結し、今後の営業にも悪影響を及ぼしかねません。
法的に見ると、サブリース契約の貸主はオーナー、借主はサブリース会社ですので、借地借家法の借主保護規定がサブリース会社にも及びます。そのため、オーナーから一方的に契約解除することもできず、正当事由が必要になります(詳しくは後述)。一方でサブリース会社からの解約は契約条項に基づきやりやすくなっているものの、安易にそれを乱発すれば業界全体への不信感を招き、行政からの睨みもきつくなるでしょう。現在ではサブリース新法(後述)の施行もあり、「契約時にメリットばかり強調しておいて後で減額・解除をする」という行為は厳しくチェックされています。サブリース会社にとって、賃料見直しや契約解除は自社の損失回避策であると同時に、信用リスクとも表裏一体の難しい問題なのです。
近年、サブリース業界には法規制の強化が相次ぎ、コンプライアンス対応の負担が増大しています。特に令和2年(2020年)6月成立・同年12月15日施行の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」、通称サブリース新法によって、サブリース契約の勧誘や契約時の説明義務に厳しいルールが定められました。
この新法によりサブリース会社(賃貸住宅管理業者)には主に次のような義務が課されています:
- 不実告知の禁止:契約を締結させるために事実と異なることを告げたり、重要な事実を告げないでオーナーの判断に影響を与える行為の禁止。誤解を招く誇大広告や「30年絶対安心」などの過度なセールストークは厳に慎む必要があります(※「家賃ずっと保証」「空室率〇%保証」等の謳い文句は、たとえ但書きを付しても行政指導の対象となり得ます)。
- オーナー保護に欠ける行為の禁止:上記以外にも、著しくオーナーの利益を害するような行為が包括的に禁止されました。例えば契約書にオーナーに一方的に不利な特約を盛り込む、義務ではない高額なサービス加入を強要する、といった行為が該当し得ます。要するに「オーナーの無知に付け込む商法」の根絶が図られています。
- 重要事項説明書の交付・説明義務:マスターリース契約を締結する前に、法律で定められた重要事項を記載した書面を交付し、対面またはIT重説(オンライン面談)でオーナーに説明することが義務づけられました。重要事項には、契約期間や保証賃料率、免責期間の有無・内容、賃料改定の条件、契約更新・中途解約の条件、サブリース会社がオーナーに代わり負担しない費用(大規模修繕等)の有無など、契約の根幹にかかわる事項が含まれます。宅地建物取引士等の資格者によって丁寧に説明し、オーナーの理解度を確認することが求められます。
これらに違反した場合、行政当局(国土交通省および都道府県)はサブリース業者に対し業務改善命令や登録取消処分等を下すことができます。実際、新法施行後は各社とも契約書式の見直しと営業担当者への教育を急ピッチで進めました。なかでも重要事項説明義務の履行は実務上大きな手間で、オーナー一人ひとりに対し数十ページに及ぶ書面を使って説明を行う必要があります。これは宅建業法における不動産売買・賃貸の重要事項説明と同様の手続きで、サブリース契約でも宅建士等による説明が必須となりました。サブリース会社にとっては人的コスト・時間コストが増える一方ですが、コンプライアンス遵守のため避けては通れません。
また、新法以前からも行政指導は行われており、2018年には国土交通省と消費者庁が連名でサブリース契約の適正化に関する注意喚起を発しています。その中で「30年一括借上げ」などの広告に注意すべき点や、契約後に賃料減額があり得ることをオーナーが理解していない事例が多発していることが指摘されました。こうした背景を受けての新法制定でもあり、国も本腰を入れてサブリース業界の是正に乗り出したといえます。
コンプライアンス強化は長期的には健全な市場形成につながるものの、短期的にはサブリース会社の営業手法に制約が増え、負担が重くなりました。例えば、これまで以上にオーナーに不利益となり得る事項も最初に伝えなければならず、「サブリース=絶対安心」という誤解を与えるような営業トークはできなくなりました。その結果、契約獲得まで時間がかかる、あまり条件の良くない物件はサブリースを断念せざるを得ないといった事態も生じています。小規模事業者にとっては、書面整備や重要事項説明の手間が重荷となり参入ハードルが上がった面もあるでしょう。しかし裏を返せば、適切な情報開示によりオーナーとのミスマッチが減り、トラブル抑止につながるというプラス面もあります。サブリース会社側としては法令を順守しつつ、誠実な営業で信頼を勝ち取る姿勢がこれまで以上に求められているのです。
サブリース会社は物件の借主として実質的な大家役を担うため、オーナーや入居者からの各種クレーム対応もすべて引き受けることになります。これ自体がサービスの一環ではありますが、その処理には相応のコストと労力がかかります。
まず入居者対応の面では、騒音・漏水・設備故障など日常的なトラブルへの迅速な対応が求められます。24時間365日対応のコールセンターを設置したり、緊急時に駆けつける要員を確保したりと、管理体制を整える必要があります。当然、人件費や外部業者委託費などのコスト負担が発生します。家賃滞納者に対する督促や、悪質な場合の法的手続き(明け渡し訴訟等)もサブリース会社の責任で行うため、法務コストもばかになりません。オーナーに代わって入居者と向き合うということは、入居者対応に伴うストレスやリスクをすべて背負うことを意味します。
一方、オーナーからの問い合わせ・苦情対応も重要です。サブリース契約後も、オーナーは自分の資産がどう運用されているか気にかけています。毎月の送金明細についての質問や、物件の清掃状況・リフォーム提案への意見、近隣から苦情があった際の報告義務など、コミュニケーションは続きます。特に保証賃料の見直し交渉や、大規模修繕の提案時にはオーナーとの利害が対立しやすく、丁寧な説明と合意形成が求められます。オーナーによっては感情的にクレームを言ってくるケースもあり、担当者の精神的負担になることもあります。
さらに、サブリース会社がオーナーにリフォームを提案した場合、「本当に必要なのか」「費用が高すぎないか」と疑念を持たれることもあります。前述の通り、サブリース会社は大規模修繕費用など原則オーナー負担とする契約が多く、自社は費用を出さない立場であることから、オーナー側は慎重になります。それでも入居率維持のためには適切な改修提案は避けられません。提案内容に納得してもらうには根拠資料を示したり他社事例を説明したりと、時間と手間を要します。オーナーとの信頼関係が乏しいと「会社の利益のために不必要なリフォームをさせられるのでは?」と疑心暗鬼を招き、トラブルの火種にもなります。
総じて、サブリース業はクレーム産業とも言われ、オーナー・入居者双方の不満や要望を受け止めて迅速に対応する体制が不可欠です。これには人材育成も含めコストがかかり、小規模業者には大きな負担となります。しかし対応を怠れば評判が落ち、契約更新してもらえない・入居者が定着しないといった損失に直結します。トラブル処理に奔走しすぎて肝心の収益管理が疎かになる恐れもあり、サブリース会社にとってクレーム対応コストの増大は収益圧迫要因となりえます。
以上のように、サブリース会社側にも多様なリスクとデメリットが存在します。特に税務・契約・法規制といった点は専門的知識も要求されるため、適切に対策を講じながら事業運営する必要があります。次章では、サブリース契約に関する法律上のポイントや契約実務上の注意点を、不動産オーナーの視点で詳述します。
サブリース契約を締結・運用するにあたり、オーナーが押さえておくべき契約内容や法務上の重要ポイントを解説します。特にサラリーマン大家や企業経営者オーナーの方は本業がお忙しい中で契約を判断するケースも多いため、事前にチェックすべき条項や法律関係を理解しておくことが肝心です。高齢オーナーの場合も、ご家族が実務を担当する際に注意すべき点を共有しておきましょう。税理士法人加美税理士事務所としても、契約前のご相談から契約後の税務フォローまで全国対応でサポート可能ですので、不安な点は専門家に遠慮なくご相談ください(オンライン面談可・初回相談無料です)。
前述の不動産管理法人スキームについて、契約・法務面の留意点をまとめます。
- 賃貸借契約書の締結:個人オーナーと管理法人との間で賃貸借契約(マスターリース契約)を結ぶ際、契約書を必ず作成しましょう。口頭や身内同士の暗黙の了解で進めるのは厳禁です。契約書には物件明細、賃料(月◯万円)、支払日、契約期間、更新の有無、解約条項などを明記します。親族間契約でも第三者同士の取引と同様に整備することで、税務上も実態のある賃貸借として認められやすくなります。
- 賃料・管理委託料の適正化:管理法人がオーナーから借り上げる賃料(=オーナーの受取家賃)や、管理委託形式の場合の管理料率は、市場相場や業務内容に照らして不自然でない水準に設定します。例えば近隣相場家賃月100万円の物件を、管理法人へ月10万円で又貸しするといった極端な設定は税務上問題視されます。一般には家賃の8〜9割程度をオーナー取り分とし、残りを法人の収入(管理費用+利益)とするケースが多いです。税理士と相談し、合理的と説明できる賃料水準を決めましょう。
- 業務実態の確保:管理法人が実質的に何もしていないペーパーカンパニーだと、税務署から「節税のための名義貸し」と疑われかねません。管理法人側で入居者募集・契約締結・クレーム対応・清掃手配・家賃集金送金など、それなりの業務を行うようにします。業務委託する場合も契約書を交わし、法人の役割分担を明確化してください。実態が伴うことで、法人が受け取る家賃差額に対しても正当性が説明しやすくなります。
- 税務上の届出・手続き:新たに管理法人を設立した場合、税務署等への各種届出(青色申告承認申請、給与支払事務所の開設届、消費税関連届出など)を漏れなく行いましょう。特に青色申告の承認は節税メリットが大きいため、設立から3ヶ月以内または設立初年度末までに申請が必要です。消費税については、住宅の貸付は非課税ですが、管理受託料等は課税取引になる場合があります。課税事業者選択届の要否なども税理士に確認してください。
- 将来の資産承継計画:法人スキームを始めるにあたって、長期的な事業承継計画も考慮しましょう。高齢オーナーの場合、管理法人の株式を将来お子様へ譲渡・承継するプランを立てておくことが重要です。株式の生前贈与や持株比率の調整による相続税対策も視野に入ります。不動産と現金を直接相続させるより、法人の株式で資産を承継する方が分割しやすく、税負担もコントロールしやすい利点があります。当税理士事務所では不動産オーナーの事業承継についても総合的にサポートしておりますので、ぜひご相談ください事業承継について詳しくは「事業承継の特集ページ」をご覧ください。
以上のポイントを踏まえ、不動産管理法人スキームを適切に活用すれば、税負担軽減と事業の安定化に大きな効果を発揮します。ただし制度を悪用した過度な節税はかえってリスクです。税理士など専門家の助言のもと、ガバナンスを効かせた法人運営を心がけましょう。
外部とサブリース契約を結ぶ際には、契約書上の重要な条項を十分にチェックすることが不可欠です。特に以下のポイントは、後々の収支やリスクに直結するため、オーナーとして理解・納得した上で契約に臨みましょう。
- 保証賃料率(家賃保証の水準):サブリース契約では、満室想定賃料に対してどの程度の家賃をオーナーに保証するかが決まっています。一般的には満室家賃の80〜90%前後に設定されるケースが多いです。例えば満室時家賃が月100万円の場合、保証賃料が月85万円なら保証率85%となります。この率が高いほどオーナー受取額は多い反面、後々サブリース会社が減額交渉してくる可能性も高まります。契約前に近隣相場や他社提案も比較し、適正な保証賃料水準かを判断しましょう。「他社より妙に高い保証額を提示してくる」場合は要注意です(契約後に減額されるリスクがあるため)。
- 契約形態・期間:サブリース契約には、大きく「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。普通借家契約の場合、契約期間終了時に正当事由がなければ借主(サブリース会社)は契約更新を主張できます。一方、定期借家契約であれば期間満了で契約終了となり、更新はありません(再契約は当事者間の合意次第)。サブリース契約では10年や20年の長期契約が多いですが、その契約が普通借家か定期借家かでオーナー側の解除・非更新の自由度が変わります。一般にはサブリース会社との契約は定期借家とされることが多く、期間満了時には契約を見直すチャンスがあります。ただし定期借家の場合も、契約期間中の中途解約条項には注意が必要です(次項参照)。
- 中途解約条項(解約権):契約期間途中でどのような条件なら解約できるかも重要です。契約書を確認し、サブリース会社側の中途解約権とオーナー側の中途解約権がそれぞれ定められているかチェックしましょう。多くの場合、サブリース会社側は「◯ヶ月前通知で解約可能」「一定の入居率低下時に解約可能」等の条項があり、オーナー側には「自己使用する場合等は◯ヶ月前通知で解約可能」などの特約が付くケースがあります。特にサブリース会社側の解約権が広範だと、保証賃料の減額要求に応じないと解約されてしまうリスクがあります。オーナー側にとって不利すぎない内容か、専門家に見てもらうのも有効です。解約時のペナルティ(違約金)の有無・金額についても確認しましょう。
- 免責期間(フリーレント期間):サブリース契約にはしばしば「免責期間」が設けられます。免責期間とは、サブリース会社がオーナーへ家賃支払い義務を負わない期間のことで、新築引渡し直後や入居者入替時の空室期間に適用されます。一般的に契約開始直後に1〜3ヶ月程度設定されることが多く、その期間内に入居者が決まってもオーナーへは家賃が支払われません。また、入居者が退去するたびに再度◯ヶ月の免責期間を設定する契約(再免責特約)がある場合もあります。「常に満室保証」と思っていたら免責期間中は家賃ゼロだった、という声も少なくありません。「免責期間◯ヶ月」と具体的に契約書へ明記されていますので、見落とさないよう注意してください。免責期間が長いほどオーナー側の実質利回りは下がるため、その長さが妥当かどうかも判断材料にしましょう。
- 賃料改定条項:サブリース契約には、一定期間経過後に保証賃料の見直しを行う条項が含まれるのが一般的です。例えば「2年毎に協議の上、保証賃料を改定できる」「〇年経過後、市場家賃の◯%以上乖離があれば賃料改定を協議する」等です。契約期間が長期(例:20年)でも、実際には2年毎に保証賃料が減額されていく可能性があります。改定時期や改定幅の上限(◯%まで等)が定められているか確認しましょう。また、借地借家法32条による法定の賃料増減請求権が双方にある旨が書かれていることもあります。いずれにせよ、「長期固定で安心」と油断せず、契約期間内に賃料が変動し得ることを理解しておく必要があります。
- 費用負担区分(修繕・管理費用等):契約書には、建物管理に係る費用負担の取り決めも記載されています。一般的に、日常の軽微な修繕や入居者募集広告費等はサブリース会社が負担し、建物の大規模修繕や設備更新費用はオーナー負担とされるケースが多いです。例えば「入居者退去時の原状回復費用はオーナー負担(敷金充当除く)」「◯年毎の外壁塗装など大規模修繕はオーナーの責任と費用負担で行う」といった具合です。サブリース会社としては費用負担を極力限定したい思惑があるため、この部分が不明確だと後々トラブルになります。どこまでが会社負担でどこからがオーナー負担かを明確にし、不明な点は契約前に確認しましょう。特に設備故障時の対応(エアコン等の故障交換費用)、入居者募集の広告費負担(AD料等)、家賃滞納時の立替え有無などはチェックポイントです。
- その他の重要事項:上記以外にも、「転借人(実際の入居者)との賃貸借契約はサブリース会社が締結する」「火災保険の加入者・名義」「地震など不可抗力時の取扱い(免責条項)」「暴力団排除条項」など、契約書には多岐にわたる事項が定められています。専門用語が多く難解ですが、不明な点は遠慮なく質問し、理解した上でサインすることが大切です。契約書と一緒に交付される重要事項説明書にも目を通し、特にリスク面の記載(「保証賃料が減額される可能性」「中途解約される場合がある」等)を確認してください。
契約書チェックは煩雑ですが、ここを怠ると「聞いていなかった」「そんな条項とは知らずに契約した」という後悔に繋がります。こうした事態を避けるためにも、契約前の条項チェックと理解は入念に行いましょう。必要に応じて不動産に詳しい税理士や弁護士に契約書を見てもらうことも有効です。
サブリース契約は法律的には「オーナー(貸主)がサブリース会社(借主)に物件を賃貸し、サブリース会社が入居者に転貸する」という二段階の賃貸借関係です。この構造において適用されるのが借地借家法(借家部分)です。借地借家法は賃借人(借主)保護の色彩が強い法律であり、サブリース契約でも借主であるサブリース会社が法的保護を受ける立場になります。
具体的に押さえておきたいポイントは以下です。
- 契約更新と正当事由:借地借家法では、普通借家契約において契約期間満了時に貸主から更新拒絶や解約をするには「正当事由」が必要とされています(同法28条)。サブリース契約が普通借家契約の場合、オーナーから期間満了で契約終了させることはハードルが高いです。サブリース会社は借主の地位で強く保護され、たとえ契約期間が明示されていても、正当事由がなければ契約を更新できてしまいます。正当事由とは、貸主・借主双方の事情や物件利用状況に照らし総合的に判断されますが、サブリース契約では借主側(サブリース会社)の方が経営のプロであるとはいえ法的には弱者とみなされる側面があり、オーナー都合で一方的に契約を終了させるのは難しいのです。実際「サブリース契約が解約できない」という相談は多く、オーナーから見ると借地借家法の落とし穴と感じる部分でしょう。
- 転貸と入居者の地位:サブリース会社はオーナーから物件を借りた後、入居希望者に転貸(又貸し)します。この入居者(転借人)はサブリース会社との間で賃貸借契約を結ぶ形になります。入居者の権利義務関係はサブリース会社との契約に基づきますが、オーナーとの直接の契約関係はありません。では、サブリース契約が何らかの理由で終了した場合、入居者の立場はどうなるのでしょうか。借地借家法上、転借人保護規定(同法34条)があります。これは、もしオーナーとサブリース会社の契約が正当事由により終了した場合でも、入居者がすぐさま退去させられるのを防ぐ規定です。具体的には、オーナーがサブリース会社との契約を解除するには転借人への通知や猶予期間の配慮などが必要とされ、入居者が保護されるようになっています(無論、サブリース会社が倒産したりすれば入居者への影響は避けられませんが、少なくとも法的手続き上は転借人の権利にも配慮があります)。
- 借主(サブリース会社)の賃料減額請求権:前述の通り、借地借家法32条2項によりサブリース会社(借主)は家賃減額請求権を有します。これも借主保護の一環です。不況などで周辺家賃相場が下落した場合、サブリース会社は法に基づいてオーナーに賃料引下げを求めることができます。オーナーから見ると「契約で◯年は家賃固定と聞いていたのに…」という事態になり得ますが、法律上は契約と異なる特約は無効となる強行規定です。このように借地借家法は契約内容より借主救済を優先する面があり、サブリース契約でも例外ではないことに注意が必要です。
- オーナーの立場:サブリース契約ではオーナーは「貸主」となりますが、本来賃貸経営で想定されるよりも自由度が制限されます。例えば通常の賃貸ならオーナー判断で管理会社を変更したりできますが、サブリース契約中は物件をサブリース会社に預けている状態のため、勝手に第三者に貸したりできません。当然ながら契約期間中はオーナー自身が物件を利用(自己使用)することもできません(※自己使用のため解約できる特約を付す場合もありますが、その際も正当事由の一つとして扱われます)。一方、サブリース会社が入居者との間で違法行為をしたり、物件を粗雑に扱った場合、オーナーは貸主として契約違反を理由に契約解除を求めることは可能です。ただ、そのハードルは高く、単なる入居率悪化や経営不振では解除できません。以上を踏まえ、オーナーとしては借地借家法による制約を十分理解した上でサブリース契約を締結する必要があります。安易に結ぶと「自分の物件なのに自分の思うようにできない」というジレンマに陥る可能性があります。
要するに、サブリース契約下ではオーナーとサブリース会社の力関係は、法律上は後者(借主)に有利な構図となっています。このいびつさを是正するためにサブリース新法でオーナー保護が図られた経緯もありますが、契約関係そのものは借地借家法に従います。オーナー側としては、自分が不利な立場になりうることを認識し、契約交渉の段階でリスクを抑えるよう努めることが大切です。
2010年代後半からサブリースを巡るトラブルが社会問題化したことを受け、行政当局は業界への指導と法整備を進めてきました。その柱となるのが前述のサブリース新法です。ここでは、新法および行政指導による規制強化のポイントを整理します。
- 重要事項説明の義務化:2020年施行のサブリース新法により、サブリース契約を締結する際には、事前にオーナーへ重要事項説明書を交付し説明することが義務づけられました。重要事項説明では、「将来家賃が下落する可能性があること」「契約の更新・解約に関する権利義務」「免責期間などオーナー収入が途切れる条件」「サブリース会社がオーナーに対して負担しない費用項目」「借地借家法との関係(借主保護の法律であること)」等、契約におけるリスク面を含め丁寧に説明することが求められています。これは宅地建物取引業者(宅建業者)が行う重要事項説明と同様、専門知識を持つ宅地建物取引士等が説明を担当します。オーナーにとっては契約前にリスクを含め正確な情報提供を受けられるメリットがあり、サブリース会社にとっては自社に不利な点も隠さず明示しなければならないプレッシャーとなります。
- 誇大広告・不実告知の禁止:新法および国土交通省のガイドラインにより、サブリース契約の勧誘にあたって事実と異なる説明や誤解を招く広告表示が明確に禁止されました。例えば「30年間家賃保証(※ただし◯年毎に見直しあり)」といった表示は、※部分を見落としたオーナーが誤解する恐れがあるため不適切と判断される可能性があります。「必ず満室経営できます」「空室リスクゼロです」という断定的な表現もアウトです。実際、過去には広告チラシに「一生安心」などと謳って契約を集めた事例が問題視されました。新法施行後は行政もこうした誇大広告に目を光らせており、悪質な場合は指導や業務停止処分の対象となります。正確で分かりやすい情報提供が一層求められているのです。
- 業者登録制度:サブリース新法により、「賃貸住宅管理業者」の登録制度が拡充され、特にサブリース業務(家賃保証業務)を営む場合は業者登録が義務化されました。無登録でサブリース事業を行うことは禁止され、違反すれば罰則があります。登録業者は行政の監督下に置かれ、定期的な報告義務や財産的基礎(資本金要件等)も課されます。これにより、資本力の乏しい業者や杜撰な経営の業者が参入・存続しにくくなり、オーナーにとって安心感が高まると期待されています。逆に言えば、サブリース会社側には一定の参入障壁・コスト増となりますが、信頼できる業者だけが残る健全化策ともいえるでしょう。
- 行政による実態把握と苦情対応:新法施行後、国土交通省や都道府県はサブリース契約に関する苦情相談窓口を設置し、オーナーからの相談を受け付けています。契約トラブルが報告された場合、行政指導が入るケースも出てきました。また、消費者庁も高齢者オーナーへの不当勧誘などに注意喚起しています。2020年以降、サブリースに関する統計データやトラブル件数も公表されるようになり、業界全体が行政の監視下に置かれていると言っても過言ではありません。こうした状況下、サブリース会社は一層のコンプライアンス遵守が求められており、少しでも問題があれば行政から改善指示が飛んでくるプレッシャーがあります。
以上のように、行政の介入と新法によりサブリース契約は透明性の高いものに変わりつつあります。オーナーにとっては朗報ですが、サブリース会社にとっては営業方法の見直しや社内手続きの増大といった負担が生じています。しかし長期的には、これら規制強化によって「サブリース=危険」という従来のイメージが払拭され、オーナーとサブリース会社双方にウィンウィンの契約が増えることが期待されています。実際、新法施行により過度なメリットばかりを強調した勧誘はできなくなったため、オーナーが正確な情報に基づき判断できるようになり、数年後に「こんなはずでは」と揉めるケースは減っていく可能性があります。
オーナーの皆様としては、重要事項説明でしっかりリスクを理解し、不明点は質問することで、納得の上で契約を締結できる環境が整ってきたといえるでしょう。行政規制を逆手に取り、「法律で説明義務がある項目=特に注意すべき項目」と捉えて、そこを重点的にチェックすれば契約内容の盲点も見えやすくなります。適切な情報開示と理解に基づいて契約することこそ、後々のトラブル回避につながるのです。
最後に、実際に起きたトラブル事例や裁判例から学ぶべき教訓をまとめます。サブリース契約で陥りがちな誤解や落とし穴を再確認し、契約上どのような点に注意すればよいか押さえておきましょう。
- 「長期家賃保証」の思い込みに注意:サブリース契約の広告文句で「◯年間家賃固定」「30年一括借上げ」などを強調された場合でも、そのままずっと契約時の家賃が維持されるわけではありません。前述のように賃料改定条項や法定の減額請求権があります。実際の裁判でも、10年固定と思っていた家賃が6年で減額され訴訟になったケースがありました。裁判では契約書の条項や重要事項説明で減額の可能性が説明されていたかなどが争点になります。教訓として、「保証=将来にわたって不変」ではないことを肝に銘じ、契約書の減額に関する記載や説明内容を必ず確認することが重要です。長期シミュレーションを自身でも行い、「◯年後に家賃が◯%下がってもローン返済に耐えられるか」などストレステストをしておくと安心です。
- 途中解約の困難さ:一度契約すると、オーナー側から自由にサブリース契約を解消することは困難です。例えば「思ったより手残りが少ないから解約したい」「自分で貸した方が儲かりそうだからやめたい」と感じても、借主であるサブリース会社には借地借家法による保護があり、正当事由なく契約解除はできません。違約解除すれば高額な違約金が発生することもあります。裁判例でも、オーナー側からの一方的な契約解除が認められたケースは非常に限定的(サブリース業者の重大な債務不履行など)です。したがって、契約前に本当に任せて大丈夫か熟慮することが大切です。営業トークに押されその場で判を押すのでなく、持ち帰って専門家に相談したり、セカンドオピニオンを求めるくらい慎重で丁度よいでしょう。
- 免責期間・実質利回りの見落とし:トラブル相談で多いのが「聞いていた収入と違う」という不満です。その原因の一つが免責期間などの契約条件の見落としです。例えば「毎月満額家賃が入る」と信じていたオーナーが契約後初回送金額を見て驚くケースがあります。よく見ると契約開始から2ヶ月は免責期間で家賃支払い無しと契約書に書かれていた…という具合です。「家賃◯万円保証」のインパクトに目を奪われず、免責期間込みで計算した実質利回りを契約前に算出することが肝要です。免責期間が長いほど年間収入は減ります。例えば年1ヶ月免責があるだけで実質的な保証率は約8%減(12ヶ月→11ヶ月分の支払い)となります。「想定より収入が少ない」と後で嘆かないよう、最初に念入りにシミュレーションしましょう。
- 修繕費・経費の積立を怠らない:サブリース契約だと毎月安定収入が入るため、つい安心しがちですが、建物の老朽化は確実に進行します。10年・20年スパンで見ると、外壁塗装や屋上防水、設備機器の交換など大規模修繕コストが必ず発生します。サブリース会社から突然「このままだと入居付けが厳しいので大規模修繕を」と提案され、数百万円単位の出費を求められるケースもあります。その時になって資金不足だと困りますので、毎月の収入から将来の修繕積立を確保しておくべきです。サブリース収入=全部使って良いお小遣い、ではありません。税理士と相談しつつ、減価償却費相当額や家賃の数%程度を別口座に積み立て、将来の支出に備えておきましょう(当税理士事務所ではこうした資金計画についてもアドバイスしております。)節税対策について詳しくは「節税対策の特集ページ」をご覧ください。
- サブリース会社の経営状況チェック:契約相手の信用力も重要です。サブリース会社自体が経営破綻してしまえば、保証どころではなくなります。実際、過去にはサブリース業者の倒産によりオーナーが家賃を受け取れなくなり、自力で入居者と新たに契約し直す羽目になった例もあります。上場企業や大手ハウスメーカー系列などは比較的信用度が高いですが、中小業者の場合は財務内容や実績を調べておくと安心です。管理戸数が極端に少ない新興業者や、親会社のない独立系で財務情報が不透明な会社とは慎重に契約検討すべきでしょう。決算公告の確認や、可能であれば直近の評判(オーナーの口コミ)を税理士等の専門家経由で集めることも有用です。
- 交渉履歴は書面で残す:契約前の口頭説明や交渉内容は、可能な限り書面やメールで記録を残しましょう。後で「言った/言わない」の水掛け論にならないよう、疑問点はメールで質問し、回答もメールでもらうようにすると証跡が残ります。重要事項説明書にもサインしますが、それだけで不安なら「◯◯の場合は貴社は賃料減額しないと約束しました」等、合意事項を覚書にして契約書に添付してもらう手もあります。サブリース会社が文書化を渋るようなら、その約束は実現しない可能性が高いと判断できます。大事な点は全て書面化——トラブル予防の鉄則です。
- 専門家に相談を:少しでも内容に不安があれば、遠慮なく第三者の専門家(税理士・弁護士・不動産コンサルタント等)に相談しましょう。サブリース契約は不動産投資と賃貸経営、法律の要素が絡む複雑なスキームです。一人で判断するのが難しくて当然です。不動産投資に強い税理士であれば、契約内容が収支に与える影響や税務上の懸念点も踏まえてアドバイスできます。また、弁護士に依頼すれば契約書のリーガルチェックや交渉の代理人にもなってもらえます。多少費用はかかっても、契約後に数百万~数千万の損失を被るリスクを下げられるなら安いものです。当税理士事務所(税理士法人加美税理士事務所)は不動産オーナーの皆様向けに初回無料相談を実施しておりますので、サブリース契約前後の疑問や不安があればお気軽にご相談ください。全国対応でオンライン面談も可能ですし、必要に応じて弁護士等とも連携し包括的なサポートをご提供いたします。私たちは賃貸経営と税務のプロとして、オーナー様が安心して不動産投資を続けられるよう全力でお手伝いいたします。
長文となりましたが、サブリーススキームのメリット・リスクから契約実務上のポイントまで網羅的に解説しました。不動産投資は大きな資金が動く事業です。だからこそ正しい知識と専門家のサポートが不可欠です。当税理士事務所では、節税提案はもちろん、税務調査対応や法人化・事業承継に至るまで不動産オーナーのあらゆる悩みに寄り添い、的確なソリューションを提供してまいります。サブリース契約をご検討中の方、現在契約中で見直しをお考えの方も、ぜひ一度ご相談ください。オーナー様の不安を解消し、より良い賃貸経営と資産形成のお役に立てれば幸いです。
サブリースを活用した節税スキームの概要: 不動産オーナーが自身や家族の会社(不動産管理法人など)を設立し、その法人に物件を一括賃貸(マスターリース)することで、所得を法人側へ移転する節税手法です。個人オーナーは法人から 保証賃料(一括借上げ料)を受け取り、法人は実際の入居者からの家賃を収受します。その差額が法人の利益となり、法人はその利益から経費や役員給与(オーナーの親族等に支払う給与)を支出できます。この構図により、個人の家賃収入を意図的に圧縮し、所得を法人に付け替えることで節税を図ります。
税率の違いによる節税効果: 個人の不動産所得に課される所得税・住民税は累進課税で最大約55%(所得税45%+住民税10%)にも達します。一方、法人税率は実効税率が最高でも約33%程度と低く抑えられます。そのため、家賃収入の一部を法人に移すだけでも、適用税率の差で大幅な税負担軽減が可能です。例えば、個人で年800万円の家賃所得がある場合、法人を活用してその20~30%を法人利益に付け替えるだけで、個人の課税所得を減らし高率の所得税を回避できます。一般にサブリース方式で15~30%程度の所得移転効果が見込まれるとされ、築浅物件ほど効果が高い傾向があります。
法人と個人の役割分担と会計処理: スキーム導入後、個人オーナーは「法人から受け取るマスターリース料」を不動産所得として計上します。一方、法人側では入居者からの家賃収入を売上高に計上し、オーナーへ支払うマスターリース料を賃借料等の経費として処理します。法人の利益は物件管理業務の対価に相当し、役員報酬や管理経費を差し引いて法人税が課されます。会計処理上は、法人で物件ごとの賃貸借契約に基づき毎月の家賃収入・支出を記帳し、個人は法人からの入金額をもとに収入計上します。なお、個人が物件を法人へ売却せず持ち続ける場合、減価償却費や固定資産税等は引き続き個人の経費となり、法人には発生しません(法人は純粋にサブリース料収支のみ計上)。
税務上の注意点(適正家賃設定と按分率): 最大の留意点は、オーナー個人と法人間の家賃設定を不当に低くしすぎないことです。同族関係の法人への賃料を低額に設定しすぎると、税務上「著しく低廉な賃貸」とみなされ、所得移転の意図ありと判断されるリスクがあります。明確な基準はありませんが、実務上は入居者家賃の10~20%差引き程度を法人の取り分とするケースが多く、これが常識的な範囲とされています。これを大幅に超えると「やりすぎ」の節税とみなされ、法人側で経費否認(利益圧縮の否認)や高額管理料の一部を個人への寄附金扱いとされる可能性があります。当税理士事務所でも節税スキームのご提案時には、周辺相場や管理実態を踏まえた適正な賃料設定を重視しております。
法人運営コストと手間: 法人を設立・維持するにはコストと実務負担も伴います。設立時には定款認証や登録免許税などで10~25万円程度、設立後も毎年最低7万円前後の法人住民税均等割が発生します。さらに法人税申告のため税理士報酬が数十万円かかるケースもあり、物件規模によっては節税メリットが維持コストに相殺される可能性があります。経営実態にも注意が必要で、法人に十分な業務実態(物件管理の実務や給与支払の実績)がないと、管理料方式同様に税務調査で否認リスクがあります。例えば法人が名目上サブリース契約を結んでいても、実際の入居者募集等をオーナー自身が行っているような場合には「実体を伴わない取引」と判断される恐れがあります。節税スキーム導入にあたっては、契約書整備や業務分掌、帳簿管理もしっかり行い、税務調査への備えも万全にしておきましょう(節税スキームと税務調査対応については下記のページで詳しく解説しています)。
収益計上の基本ルール: サブリースによる家賃収入の計上時期は、賃貸借契約で定められた賃料の発生日の属する期間に基づきます。税務上は、契約や慣習で家賃の支払日とその対象月が定められている場合、その定められた対象月を収入計上日とするのが原則です。例えば「当月分を翌月末日払い」の契約なら当月末にその月の家賃収入を計上します。また、請求により支払われる契約なら請求日が計上時期となります。
サブリース契約での具体例: 多くのサブリース契約では、サブリース会社からオーナーへの送金日(例:毎月○日に翌月分支払い 等)が定められています。その場合、オーナーはその毎月分を基準に家賃収入を計上します。仮に12月分の保証賃料が「翌年1月10日支払い」の契約であれば、その収入は12月末として計上する形です(発生主義で経理)。青色申告の不動産所得者や法人では基本的に発生主義会計となるため、この契約ベースでの認識が必要です。
免責期間・フリーレント期間の扱い: サブリース契約には、物件引渡し直後や入居者退去後に「免責期間」(フリーレント期間)が設けられることがあります。例えば「新築引渡し後最初の50日間は保証賃料支払無し」等の特約が典型です。この免責期間中は契約上オーナーへの支払い義務がないため、その期間の家賃収入は計上されません。オーナー側から見ると、免責期間分の収入が発生しない点に留意が必要です。例えば3ヶ月免責なら、引渡し後3ヶ月間は収入ゼロとなり4ヶ月目から保証賃料発生となります。「家賃収入が契約から○ヶ月後になる」といったケースは珍しくなく、資金計画上も考慮しておきましょう。
敷金・礼金・更新料の経理: サブリース契約では、入居者からの敷金・礼金・更新料等の扱いも通常の賃貸と異なります。一般に敷金は預り金であり収入計上しませんが、退去時に償却(返還不要)と確定した部分はその時点で収入計上します。礼金・更新料は入居者から一時金として受け取るもので、物件引渡し日に課税所得に算入するのが原則です(居住用物件の礼金は消費税非課税収入でもあります)。もっともサブリースの場合、礼金等はサブリース会社が入居者との契約で受け取り、自社の収益とするケースが多いです。この場合オーナーは礼金収入を得ません。一方、サブリース会社が受け取った礼金相当額は、オーナーへの保証賃料に含まれず法人側の収益となります。オーナー個人としては契約上受け取らない収入なので計上不要ですが、法人で適切に収益認識・税務処理されているか確認することが重要です。
実務上の留意点: サブリース利用時も、オーナー自身(個人・法人)は毎月の家賃収入をきちんと帳簿に計上し、通帳照合を行いましょう。特に年末年始をまたぐ入金タイミングに注意し、計上もれを防ぐことが大切です。サブリース会社に管理を任せている場合、賃料の入金状況を逐一把握しにくくなりますが、例えば12月分が翌年1月入金の場合には正しく未収計上するなど、青色申告者であれば発生主義に基づく調整が必要です(白色申告など現金主義の場合は受領日に計上)。実務ではサブリース会社から毎月送られる「賃料明細書」を保管し、そこに記載の対象月・金額に従って収入計上すると良いでしょう。また、万一サブリース会社からの入金が遅延・未払いとなった場合、その家賃は原則支払期日ベースで収入計上しつつ、回収不能リスクがあれば貸倒損失等の検討が必要です。こうした特殊ケースについては税理士に相談されることをおすすめします。
住宅用途の家賃収入は非課税: サブリース契約における消費税の課否は、物件の用途によって決まります。居住用物件の賃貸料は消費税非課税であり、サブリースの場合もオーナーが受け取るマスターリース料が住宅の貸付に該当すれば消費税は課されません。例えばアパート・マンションの住居部分についての家賃保証収入は非課税売上となります。一方、事業用物件の賃料は課税対象となるため、店舗・事務所等をサブリースしている場合は保証賃料にも消費税がかかります。サブリース契約で住宅と事業用が混在するケースでは、その内訳に応じて課税・非課税を判定します(社宅名目でも実態が事務所利用なら課税等)。
サブリース特有の消費税実務: サブリースでは、管理委託方式と異なり管理業務の対価も家賃に包含されている点が特徴です。サブリース会社は物件を丸ごと借り上げて転貸するため、本来なら発生している管理サービス分も含めて「家賃収入」として受領します。住宅物件ならその全額が非課税売上扱いとなり、サブリース会社は実質的に管理報酬部分についても消費税を課されずに済む構造です。対してオーナーと直接「管理委託契約」を結ぶ場合、管理会社への委託料(管理料)は課税売上となり消費税がかかります。この違いから、一括借上げ方式は管理料部分も非課税になるメリットがあります。ただしオーナー側から見れば、消費税を払わずに済む反面、支出した経費の消費税も控除できないことに注意しましょう。たとえば住宅物件の大規模修繕で100万円+税10万円を業者に支払っても、自身の賃貸収入が非課税であればその10万円は原則控除不能(全額コスト負担)です。もし物件が店舗等で賃料課税なら、オーナーは消費税課税事業者となり経費の税額控除が可能になるケースもあります。
課税事業者判定とインボイス対応: 消費税法上、2期前の課税売上高が1,000万円超なら強制的に課税事業者となります。しかし居住用賃貸は非課税売上のため、他に課税売上が無ければ原則として消費税の申告・納税義務はありません(※簡易課税選択やインボイス発行事業者登録も不要です)。ただし、サブリース法人などで事業用賃貸や管理業務収入を並行して得ている場合は合算で判定する必要があります。また、2023年開始のインボイス制度では、賃貸料収入が非課税の事業者はインボイス発行事業者になれません。サブリースオーナーが他に課税事業を持たない限り、この点の影響は限定的ですが、例えば一部テナント部分がある物件などでは留意が必要です。
消費税還付スキームへの言及: 過去には、居住用賃貸で本来控除できない仕入税額の還付を狙うスキーム(短期的に課税売上を発生させる等)も一部で問題視されました。現在は税制改正でこうした極端なケースは封じられていますが、消費税は制度が複雑で頻繁に改正が行われる分野です。サブリースを含む不動産賃貸における消費税の詳細な論点については、当税理士事務所の下記のページをご覧ください。適用可否の判断に迷う場合やインボイス対応について不明点があれば、ぜひ税理士にご相談ください。
原状回復費用と修繕費の違い: 賃貸経営では、入居者退去時の原状回復費や日常の修繕費が定期的に発生します。サブリース運用時もこれら費用の負担者と会計処理を把握しておく必要があります。まず原状回復費用とは、退去後に部屋を入居前の状態に戻すための費用です。具体的には室内清掃、壁紙・床材の張替え、設備の補修などが該当し、通常は入居者の故意過失部分を除きオーナー側が負担します。一方、修繕費とは経年劣化や故障に対応するための維持補修費で、入居期間中も含め発生します。例えば給湯器やエアコンの故障交換、屋根や外壁の塗り直しなど広範囲です。
税務上の取扱い: 修繕費として認められれば、支出額を全額その期の必要経費にできます。一方、支出の内容が資産価値を高める改良や増築など資本的支出と判断されると、その支出は資産計上され減価償却で数年にわたり経費化することになります。原状回復費用は基本的に「元の状態へ戻すための復旧費」であり、通常は修繕費として処理できます。例えば退去後の壁クロス張替えやハウスクリーニング費用はその年の経費計上が可能です。ただし、物件の価値を向上させるような改装・改良は資本的支出とみなされます。例えば和室をフローリング洋室に変更するリフォームや、古いキッチンをグレードアップして交換する場合などは、単なる原状回復を超える改良として資本的支出扱いとなり得ます。税務調査でもこの点はチェックされやすいため、「修繕費か資本的支出か迷う場合は専門家へ確認」が鉄則です(国税庁も判定基準を公表しています)。
修繕費と資本的支出の判定ポイント: 一般に次の観点で判断します。
- 目的: 元の状態維持・現状復旧が目的なら修繕費、性能向上・価値増加が目的なら資本的支出。
- 金額: 1つの修理に要した費用が高額(概ね取得価額の10%以上など一つの目安)で建物の価値に与える影響が大きい場合は資本的支出の可能性あり。
- 効果期間: 修繕で耐用年数が大幅に延びる場合は資本的支出とされることがあります。
例えば、雨漏り修理で屋根の一部補修→修繕費となり得ますが、建物全体の屋根材を最新のものに一新→資本的支出となる可能性があります。
サブリース契約下での負担区分: サブリースでは契約により、日常的な小修繕はサブリース会社側が行い、大規模修繕や構造部分の補修はオーナー負担と定められるのが一般的です。例えば「1件○万円以下の修理はサブリース会社負担」等の特約がある場合、オーナーはその範囲の修理費を負担せずに済みます。しかし大規模修繕工事や退去後の原状回復費用は原則オーナー負担とされる契約が多い点に注意が必要です。実際、「全て管理会社任せと思っていたら、築年数が経ち建物外壁塗装費を求められ驚いた」という声もあります。にあるように、大規模修繕費は賃貸経営上避けられないオーナー側の支出であり、契約時に費用分担の範囲を明確に取り決めておくことが重要です。
実務処理: オーナーが負担する修繕費用については、その都度内容を確認し、適切に経費計上しましょう。特にサブリースではサブリース会社からオーナーへ修繕費負担の請求が来る形になるため、どの部分の修繕か(原状回復か設備更新か等)を把握して仕訳を行う必要があります。サブリース会社に一任せず、見積書や写真の提供を受け、必要なら費用圧縮交渉も検討します。また、入居者負担分が敷金等から充当される場合、オーナー側では敷金の取崩し(預り金の減少)処理と修繕費の実支出との差額調整を行います。例えば敷金精算で5万円充当、残り3万円オーナー負担なら、3万円を修繕費計上します。
減価償却との関係: 大規模修繕で資本的支出と判定された場合、その支出額は建物附属設備等の資産として計上し耐用年数に応じ償却します。サブリース契約で建物を個人所有しているケースでは、こうした資本的支出部分も減価償却費として毎年経費算入でき、所得圧縮に寄与します。修繕費として一括経費になるか資本的支出になるかで単年の利益が大きく変動するため、判断に迷う場合は税理士など専門家に確認すると安心です。
青色申告の検討: サブリース収入が発生する場合、個人オーナーであれば青色申告の選択を強くおすすめします。青色申告には複式簿記による記帳等の要件がありますが、最大65万円の青色申告特別控除が適用できるほか、事業的規模なら専従者給与の経費算入や損失の繰越控除(3年~最長10年)など税制上のメリットが多いです。サブリースは手間が少ない反面、家賃収入が安定して継続するため、きちんと申告すれば控除恩恵をフルに享受できます。例えば年間収入500万円・経費300万円の場合、青色申告ならさらに65万円控除でき課税所得を減らせます。青色申告をするには事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要がありますので、サブリース開始のタイミングに合わせて忘れず手続きを行いましょう。青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。
減価償却費の確実な計上: サラリーマン大家の方など本業収入がある場合でも、サブリース物件の減価償却費は漏れなく計上してください。減価償却費は現金支出を伴わない経費であり、課税所得を圧縮する有力な手段です。建物部分は法定耐用年数に応じ毎年償却できます(木造22年、RC47年など)。特に中古物件を取得した場合、短い耐用年数で早期に償却可能なケースもあり、大きな節税効果があります。サブリース契約下でもオーナーが建物を所有していれば、その減価償却費は通常の賃貸と同様に経費算入できます。例えば築20年木造アパート(耐用年数残り4年)の場合、毎年建物簿価の1/4を償却でき、家賃収入を大きく減額できます。なお、サブリース会社が物件オーナーから建物のみ購入し、土地は借地とするスキームなどでは契約に応じた償却・権利金処理が必要になります(専門的なケースなので割愛します)。
経費計上漏れ防止: サブリースでは入金が一定額で手間がかからない反面、オーナー側で経費の把握漏れが起きがちです。「サブリースだから自分で経費を払うことはない」と誤解してしまうと危険です。実際には固定資産税・都市計画税、火災保険料、借入金利息、管理受託ではないが多少の管理関連費(郵送費や通信費)などオーナー負担の経費が存在します。これらはサブリース利用でも通常通り必要経費にできますので、確定申告時に漏れなく計上しましょう。特に借入金利息(ローン利息)は高額になりやすいため、金融機関の年末残高証明等から年間利息額を把握して申告書に反映します。また、サブリース契約関連で支払う顧問税理士費用や不動産鑑定料なども経費計上可能です。
青色事業専従者給与の活用: サブリース物件が事業的規模(アパートなら10室以上、戸建なら5棟以上等)の場合、青色申告を選択すれば家族に支払う給与を必要経費化できます。例えば配偶者や親族に物件管理の手伝いをしてもらい、年60万円の専従者給与を支給すると、その分所得圧縮が図れます(給与を受け取った家族は所得税が発生しますが、扶養内なら非課税の場合もあり)。サブリース運用では管理実務は主にサブリース会社が担うものの、オーナーとして家族に収支管理や帳簿付けを手伝ってもらう形であれば給与支給の名目は成り立ちます。ただし、実態なく給与を払うと否認されるため、家族に実際に関与してもらうことと、所定の届出(青色専従者給与に関する届出)を事前提出することが必要です。
法人化済みの場合の留意点: 既に物件所有を法人化しているオーナーは、確定申告ではなく法人税申告となります。この場合、青色申告特別控除はありませんが、代わりに役員給与や経費の範囲が広がるメリットがあります。例えば役員であるオーナーへの給与は定期同額で支給すれば法人の損金(経費)となり、所得分散が可能です。また、赤字が出た場合の欠損金は法人では最大10年の繰越控除が可能であり(個人青色の3年より長い)、長期的な節税余地も生まれます。さらに法人であれば経費の範囲に交際費の一部や旅費等も認められ、柔軟な資金運用が可能です。
確定申告の簡便さ: サブリースを利用すると入居者対応や集金業務が省かれるため、本業で忙しいサラリーマン大家の方でも確定申告が非常に楽になります。毎月の入金明細と経費領収書さえ揃えれば、あとは年一回の申告で済みます。とはいえ手作業には不安が残る場合、当税理士事務所のように不動産投資に強い税理士へご依頼いただければ、全国対応・オンライン相談可・初回無料にて丁寧にサポートいたします。当税理士事務所ではサブリース物件特有の申告ノウハウ(減額賃料への対応や法人スキームの税務調整)も蓄積しておりますので、お気軽にご相談ください。
融資審査での基本的な見方: 金融機関は融資審査の際、その物件から得られる賃料収入の安定性と担保価値を重視します。サブリース契約付き物件の場合、家賃保証により満室想定収入が確保されていると判断されるため、基本的に「満室稼働ベースの収益評価」がなされる傾向があります。つまり空室リスクを織り込まずに賃料収入を評価できるため、物件の収益力評価が高まります。実際、金融機関によっては「融資実行の条件としてサブリース契約を締結していること」を求めるケースもあります。新築や空室多数の物件購入時に、オーナーの返済リスク軽減策として家賃保証を付けることが融資条件になることがあるわけです。
評価プロセスの具体例: 銀行の不動産融資審査では、物件の収益価格を収益還元法(将来生み出す純収益を現在価値に割引して評価)で計算したり、賃料利回りを算出して基準を満たすか確認します。サブリース物件では保証賃料=実質的な満室賃料を前提に計算できるため、想定利回りが高めに出ます。例えば年間保証賃料が600万円、銀行所定の期待利回り5%なら収益価格は 600万円/0.05=1.2億円 と算定されます。
金融機関の着目点: もっとも、銀行も手放しで楽観視するわけではありません。審査担当者は以下のポイントを詳細に確認します。
- ❶サブリース契約の内容: 契約期間・中途解約条項・賃料見直し条項などをチェックします。特に「2年ごとの賃料見直しで減額可能」と明記されていれば、将来の収入低下リスクを織り込む必要があります。また契約が短期(例えば1年更新)であれば、銀行は保証継続性に懸念を持ちます。
- ❷サブリース会社の信用力: 借上げ人であるサブリース会社自体の財務健全性や信用格付けも重視されます。大手上場企業系や歴史の長い会社であれば安心材料ですが、設立間もない無名企業だと「保証が絵に描いた餅」と判断されかねません。金融機関は必要に応じてサブリース会社に対し契約内容の確認や初回支払日の確認連絡を行い、実態を把握します。
- ❸物件自体の競争力: サブリース有無に関わらず、物件の立地・築年・構造・間取り等の根源的な価値も評価されます。サブリースで一時的に家賃が維持されていても、市場家賃とかけ離れていれば長期的なリスク要因とみなされます。銀行担当者は「保証賃料でギリギリ返済可能」という計画には慎重で、保証が外れた場合でも収支が成り立つかストレステストを行うこともあります。
融資条件への影響: 信頼できるサブリース契約がある場合、銀行融資の条件が有利になる可能性があります。例えば融資割合(LTV)の引き上げ、金利優遇、長めの融資期間設定などです。満室想定の安定収入が見込めることにより、銀行にとっても貸し倒れリスクが下がると評価されるためです。一方で近年の融資姿勢として、かぼちゃの馬車事件(シェアハウス投資のサブリース詐欺)以降はサブリース付き案件でも慎重な審査が増えています。不正な収支計画で融資を引き出す事例が問題となったため、金融庁もサブリース物件融資時のチェック強化を呼びかけています。したがって、今後融資を受ける際は実現可能性の高い収支計画を提示し、保証賃料の根拠(近隣相場や契約条項)をしっかり説明できるように準備しましょう。当税理士事務所では物件購入時の収支計画作成や金融機関提出資料作りもサポートしておりますので、必要に応じてご相談ください。
収益還元法での評価: 不動産の価格を決める主要な手法の一つが収益還元法です。将来得られる純収益を現在価値に割り引いて物件価格を求める方法で、投資用不動産の適正価格算定に広く用いられます。サブリース契約が付いた物件では、当面の家賃収入が保証賃料によって安定しているため、この収益還元価値に影響を与えます。
保証賃料で評価額: 簡便な直接還元法では、価格=純収益÷期待利回り で評価します。保証賃料がある場合、純収益としてその保証額(▲経費)を用いることになります。例えば保証賃料年600万円・経費100万円・利回り5%なら、純収益500万円÷0.05=1億円が収益価格となります。
しかし注意すべきは、この評価が恒久的ではない点です。保証賃料は契約期間中は固定でも、更新ごとに減額リスクがあります。査定時に鑑定士や買い手がそこをどう判断するかで評価額は変動します。短期間だけ高い保証賃料が維持されても、将来的に大幅減額が予見されるなら、DCF法(割引キャッシュフロー法)で複数期間にわたる収支を評価し、初期数年は保証賃料、その後は市場賃料に戻る前提で価格算定するでしょう。その場合、現在の高収入だけで評価額を吊り上げることはできず、保証期間満了後のリスクを織り込んだ価格になるはずです。
保証賃料と実勢賃料の乖離: サブリース会社が提示する保証賃料は、当初は市場家賃の80~90%程度が一般的ですが、中には競合獲得のため相場以上の高い保証額を提示する事例もあります。このように実勢賃料とかけ離れた保証賃料が設定されていると、一見収益性が高く見えても長期安定性に疑問符がつきます。買い手や金融機関はその乖離を考慮し、「本当にこの保証が続くのか?」と慎重になります。極端なケースでは「家賃保証付きなのに評価額が下がる」ことも起こりえます。実際、サブリース契約残存中の売却では収益還元法で算定した価格が本来より数百万円低くなり、相場並み価格で売れないケースがあります。保証賃料が過大だと、次の保証更新時に減額が避けられず、それを買主がリスク視するためです。
物件価値・売買への影響: サブリース契約付き物件の市場流動性にも影響が及びます。「家賃保証=メリット」と考える投資家も多い一方、実際には買い手が見つかりにくくなる場合もあります。理由は、契約上の制約(家賃見直しや中途解約不可など)が買主にとって不利に働く可能性があるためです。例えば「家賃が下がり続けるリスクのある契約」や「売却後も契約引継ぎ必須」だと、柔軟な運用を望む投資家には敬遠されます。結果として売却時には価格交渉で値引きを余儀なくされたり、契約条件の調整(保証賃料の見直し交渉をした上で売却など)が必要になることもあります。
当税理士事務所からのアドバイス: サブリースによる表面上の高収益に過度に依存せず、市場賃料ベースでの収益力も把握しておくことが大切です。将来、契約解除して自主管理に切り替える可能性や、売却・相続時に保証契約が継続する前提で評価減となり得る点も踏まえて、総合的に資産価値を捉えましょう。特に収益物件を複数お持ちのオーナー様には、各物件の現在価値試算やポートフォリオ見直しのサービスも提供しております。サブリース契約のメリット・デメリットを金額で見える化することも可能ですので、ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。
上記と関連しますが、契約家賃(保証賃料)ベースでの評価には一長一短があります。メリットとしては「現在結ばれている契約内容に忠実な評価」であり、実際のオーナー収入に即した価格算定ができる点です。サブリース契約中の物件は契約どおりの賃料収入が得られる前提なので、契約家賃で評価するのは合理的とも言えます。特に契約残存期間が長い場合、その間は実勢賃料の変動に関係なく固定収入が続くため、契約ベース評価額に説得力があります。また、この方法は売主(現オーナー)に有利に働きやすいです。保証賃料が市場相場より高ければ、契約ベース評価額は市場賃料ベースより高く算定されます。売主としては「現在の賃料収入利回り○%」とアピールでき、投資初心者の買主には魅力的に映る可能性もあります。
しかしデメリット・リスクも無視できません。第一に、契約家賃は一時点の固定値であり、将来変動しうるものだということです。評価時点では高い保証でも、更新時に減額されればその前提は崩れます。もし買主がそれを織り込まずに購入すると、後で想定外の収益悪化に直面しトラブルになりかねません。第二に、市場の実勢とかけ離れた賃料で評価するとミスプライシングを招く点です。たとえば保証賃料が相場比120%で設定されている物件を、そのままの収益で評価すれば価格も割高に算定されます。投資家間で実勢利回りに対する共通認識がある場合、その物件は「高値掴み」と敬遠され売れ残る可能性もあります。
そのため、プロの投資家や鑑定士は通常、実勢賃料と契約賃料の双方を勘案します。具体的には「契約残存○年は保証賃料、その後は実勢賃料△円に漸次調整」というシナリオでDCF評価を行い、収益価格を出すケースが多いです。また買取業者などは「保証賃料で回っているうちは自社で保有し、更新時に減額リスク出る前に売却する」といった戦略を取ることもあります。これは契約賃料ベース評価のメリットを享受しつつ、デメリットが顕在化する前にリスクを手放すやり方です。個人オーナーとしては難しい芸当ですが、市場ではそのような動きがある点も知っておくと良いでしょう。
結論として、契約賃料ベースの評価メリットは「安定収入の高さを価格に反映できる」こと、デメリットは「その前提が契約期限に縛られ将来保証がない」ことです。売買や融資の場面では、このメリット・デメリットを理解した上で交渉に臨むことが大切です。当税理士事務所でも物件評価や売却戦略についてのご相談を承っており、税務だけでなく不動産実務に精通した担当者がアドバイスいたします。
売買時の留意点: サブリース契約が付いたまま物件を売却する場合、契約の引継ぎ条件と評価に注意が必要です。通常、物件の買主はサブリース契約の地位をそのまま引き継ぎます(オーナー地位の承継)。この際、売買契約書にサブリース契約の存在と主要条件を明記し、買主が承諾する形を取ります。評価減については先述の通り、サブリース契約によって実勢より賃料が低い場合などは収益価格が下がり得ます。一方で賃料が市場並みでも、サブリース契約の制約自体がマイナス要因となるケースがあります。例えば「オーナーからの中途解約不可」「賃料改定権限はサブリース会社が握る」等の契約は、買主にとって柔軟な賃貸経営を阻害するため物件の魅力減となります。結果、買主は価格交渉で値引きを要求したり、最悪購入を見送ることもあります。したがって売却時には、サブリース契約の条件を一度サブリース会社と見直し交渉することも検討しましょう。場合によっては「契約を一旦解除して更地(空室)で売る」方が高値が付くこともあります。ただし解除にはサブリース会社の同意や違約金が伴うので、慎重な判断が必要です(サブリース契約の解除条件については後述のトラブル対応で触れます)。
相続時の評価減: 一方、オーナーが亡くなり物件を相続する場合、サブリース契約があることで相続税評価額の減額効果が得られる場合があります。サブリース契約を結んでいる賃貸物件は「貸家建付地」として扱われ、土地評価額から借地借家権に基づく一定割合の控除が適用されます。具体的には、土地は自用地評価額から借地権割合×借家権割合(※借家権割合は全国一律30%)×賃貸割合を控除できます。サブリース契約下では全室が賃貸中とみなされ賃貸割合100%で計算されるため、フルに控除を適用できます。例えば借地権割合70%地域なら、土地評価額から0.7×0.3=21%相当が控除されます。建物についても、借家権が付いた貸家評価として固定資産税評価額の30%減が適用されます。これらにより、自宅として持つより大幅に評価額を下げることが可能で、相続税圧縮効果は大きいです。サブリース契約は空室があっても保証賃料で満室扱いとなるため、常に賃貸割合100%を維持できる点も相続対策上有利です。実際「サブリースでマンション経営すると賃貸割合を100%にでき、相続税評価額を大幅ダウン可能」と紹介されることがあります。
もっとも留意点もあります。同族会社とのサブリースの場合、実態が伴わないと税務上その借家権を認めない可能性があります。例えばオーナー自身の家族法人にサブリースさせているだけで、入居者募集もオーナー側が行っていたりするケースです。このような場合、形式上契約があっても「借家権がオーナー側に残存している(形だけの節税)」と見做され、相続税評価減を否認されるリスクがあります。実務上は、親族法人であってもしっかりとサブリース会社が機能していれば問題ありませんが、税務調査では賃料設定の妥当性や契約実態がチェックされます。また借家権の完全な移転が条件とも言われ、例えば入居審査にオーナーが関与しているとNGとされるケースもあります。したがって、相続対策目的でサブリースを利用する場合は、「借家人(サブリース会社)に使用収益権を渡しきっていること」を明確にしておく必要があります。専門家に相談しながら、税務リスクのない適正スキーム構築が重要です(当税理士事務所は相続税に強みを持ち、資産管理会社の相続対策も豊富な実績があります。節税と適法性のバランスを考慮したご提案が可能です。事業承継について詳しくは下記のページをご覧ください。
契約引継ぎ実務: 相続発生時にはサブリース契約も包括承継されますが、念のため速やかにサブリース会社へ連絡し、オーナー名義変更や振込口座変更等の事務手続きを行いましょう。売買時も同様で、物件引渡し日にサブリース契約のオーナー地位を買主へ移転する旨の合意書を交わし、サブリース会社にも承諾してもらいます。要注意なのは、サブリース契約上の敷金・保証金の精算です。サブリース会社がオーナーに預けている保証金等がある場合、売買代金と別に買主へ承継させる処理を忘れないようにします。一般には売主から買主へ保証金相当額を引き渡し、買主がそれをもってサブリース会社に承継承認してもらう形になります。このような細かな実務も疎かにしないことが大切です。
サブリース節税スキームを実践するにあたり、税務面以外の実務上のポイントも押さえておきましょう。
1. 法人設立・運営の手続き管理: 節税目的で設立した不動産管理法人であっても、通常の会社と同様の手続きをきちんと行う必要があります。具体的には、法務局での会社設立登記(定款作成、公証人認証、登録免許税納付)、税務署への各種届出(青色申告承認申請、法人設立届、給与支払事務所開設届、消費税関連届出など)を期限内に提出します。設立後も毎期の法人決算・申告や、自治体への法人住民税均等割の納付は必須です。また、役員や使用人を登記・社会保険手続きで適切に扱うことも忘れずに行います。家族を役員に据える場合は就任承諾書や印鑑証明提出なども必要です。当税理士事務所では法人設立から税務顧問までワンストップでお手伝い可能です(全国対応)。オンラインでの打ち合わせや電子申告にも対応しておりますので、忙しい方もご安心ください。
2. 資金繰りとキャッシュフロー管理: サブリース方式では個人→法人へ所得移転するため、個人オーナーの毎月キャッシュインは保証賃料(以前より低額)になります。一方、法人には家賃差額分がプールされ資金が貯まります。この構造上、個人側の手取りキャッシュフローが一時的に悪化する点に注意です。例えば個人が従来月50万円受け取っていたところ、節税で月40万円に圧縮し法人に10万円残すと、個人の可処分は減ります。ローン返済等は個人で続く場合、この減少分をどう補填するか計画しましょう。多くの場合、法人からオーナーへ役員報酬を支給して個人収入を確保します。役員報酬は法人の経費にもなるため一石二鳥ですが、金額設定を誤ると節税効果が薄れます。理想は「個人で必要な生活費・返済額をまかなえる程度」に抑え、法人内部留保もある程度作るバランスです。法人内部に資金を残しておけば、将来の物件購入頭金や修繕費拠出にも充てられ、事業拡大・安定化に寄与します。
3. 法人と個人の取引関係整備: サブリース方式では、個人(オーナー)と法人(管理会社)が賃貸借契約を締結する関係になります。この契約書の整備は必須です。口頭の取り決めでは税務上も商慣習上も認められませんので、「一括賃貸借契約書(マスターリース契約書)」を作成し、賃料額、支払日、契約期間、更新条件、原状回復や保険の負担区分など細部まで定めます。特に賃料減額交渉や解約に関する事項は、一般のサブリース契約と同様の条項を入れておくとよいでしょう(例:「○年毎に保証賃料の見直し可」「中途解約には書面合意が必要」等)。期間については特別な理由がなければ3年程度の契約にするのが一般的です。あまりに長期(10年など)の契約は不自然であり、税務上も「実態に合わない」と疑われかねません。3年ごとに更新し、その際に賃料水準も見直して双方合意の上継続する形が現実的です。実際の減額交渉では、家賃保証料率(賃料の○割)が築年数や地域需給によって変化しますので、都度近隣相場と法人利益率を見て決めます。
4. 管理実態の構築: サブリース法人を活用する節税は前述の通り「グレーにならない範囲で」がポイントです。税務署に「単なるペーパーカンパニーでは?」と思われないよう、業務実態を作りましょう。例えば、法人名義で管理業務用の電話番号やメールアドレスを取得し、入居者や管理会社とのやり取りは法人担当として行います。また、入居者募集も法人名で不動産仲介業者に依頼し、法人が主体的に行っている形にします。もちろん実質的にはオーナーご本人が動くとしても、「法人の○○さん(オーナー自身)が対応」と見えるようにすれば問題ありません。法人の口座を開設し、家賃の収受・送金も全て法人名義口座経由で行います。このようにお金と事務の流れを法人中心に回すことで、形式・実質ともに法人管理を確立できます。結果、税務調査でも「管理実態なし」とは言わせない体制となり、安心です。
5. 社会保険や人件費の考慮: 個人オーナーが法人から役員報酬をもらう場合、金額によっては社会保険加入も検討事項です。社長一人の会社でも報酬月額が一定以上であれば健康保険・厚生年金への加入義務が生じます。社会保険料は会社と個人で折半負担になるため、トータルコストが増加します。この点、節税効果と社会保険料負担のバランスを考え、役員報酬額を設定する必要があります。例えば報酬を敢えて低く抑え、家族従業員への給与とすることで扶養の範囲に収めるなどの工夫も考えられます。こうした人件費配分を含めた総合シミュレーションは当税理士事務所でも提供可能です。
以上、法人スキームの運用ポイントを総括すると、「帳簿・契約・実態」の三位一体が重要です。当税理士事務所(不動産投資に強い税理士事務所)では、節税のみならず融資戦略や将来の売却・相続まで見据えたトータルサポートを行っております。節税スキームに興味ある方はぜひ一度無料相談をご利用ください。
保証賃料と市場家賃のギャップ: サブリース契約開始当初は満室想定家賃の80~90%程度で保証賃料が設定されるケースが多いですが、時間経過や景気変動により市場家賃との乖離が生じることがあります。典型的なのは「保証賃料が当初高めに設定されたが、その後周辺の賃料相場が下落し、保証賃料が相場より割高になってしまった」という状況です。逆に相場が上昇して保証賃料の方が安くなる場合もありますが、こちらはオーナーに不利なだけでサブリース会社から見直しを言ってくることは稀でしょう。したがって実務上問題となるのは「保証賃料 > 市場家賃」のケースです。
賃料見直し交渉のタイミング: 多くのサブリース契約では2年ごとなど定期的に保証賃料の見直し条項が設けられています。この更新時にサブリース会社から「近隣賃料相場が下がっているので保証賃料を○円減額したい」という申し出が行われます。オーナーとしては減額は避けたいところですが、借地借家法第32条により、経済事情の変動で不相応となった賃料は借主から減額請求ができると定められており、基本的には交渉に応じざるを得ない状況です。借地借家法は賃貸借契約に強行適用されるルールのため、「減額しない」という特約を付けていても無効になります。実際2003年の最高裁判決でも「サブリース契約にも借地借家法が適用される」と明示され、バブル期高賃料を維持しようとしたオーナーの減額拒否が退けられました。
交渉の実際: 減額請求が来た場合でも、ただ言いなりに応じる必要はありません。オーナーができることは主に2つです。(1) 減額幅の交渉: サブリース会社の提示額が本当に適正かどうか、賃料相場を自ら調査して挑みます。近隣の賃貸募集情報や不動産会社の意見を集め、「そこまで下落していないのでは?」と根拠を示しながら減額幅を圧縮する交渉が可能です。例えば「5万円減額提案」に対し、「直近成約賃料は平均▲3%程度なので、せいぜい2万円減で充分ではないか」といった具合です。交渉次第では間を取った金額に妥結するケースもあります。 (2) 代替条件の提案: 減額は受け入れる代わりに「契約内容の他の点をオーナー有利に変更する」交渉も考えられます。例えば「減額するなら契約期間を短縮して次回更新時には自由に解約可能にしてほしい」「管理手数料相当の業務負担(例えば設備交換費用)をサブリース会社側で持つよう変更してほしい」等です。減額自体は避けられなくとも、他の条件改善で将来の挽回を図る戦術です。
減額拒否や契約解除は可能か: 原則、正当事由なくオーナーから契約解除するのは困難です。減額請求を拒否し続けると、最悪サブリース会社から契約を更新拒絶(解除)されるリスクもあります。実際「減額を拒んでいたら契約を打ち切られた」という事例も報告されています。借地借家法上、借主(サブリース会社)は保護されているので、オーナー側からの一方的解除はほぼ不可能と考えた方が良いでしょう。どうしても解除したい場合は、借主側に契約違反がある(賃料不払いなど)か、建物老朽化で建替えが必要等の正当事由が要ります。現実的には、減額幅を小さく抑えつつ契約継続し、オーナーも支出削減等で経営努力するのが賢明です。
プロのサポート: 減額交渉が難航する場合、弁護士や不動産コンサルタントに相談する手もあります。不当に大幅な減額を迫られていると感じたら、専門家によるセカンドオピニオンを得てください。当税理士事務所でも必要に応じて信頼できる不動産専門弁護士等をご紹介可能です。いずれにせよ、慌ててハンコを押さず、じっくり交渉に臨みましょう。「焦って応じる必要はない、十分協議の時間を使って少しでも高い賃料となるよう交渉しましょう」というのが経験則です。
契約で定められる分担: サブリース契約では、物件の維持管理・修繕についてオーナーとサブリース会社の責任分担が取り決められています。一般的な契約では、日常の管理・軽微な修繕はサブリース会社側の責任、建物の根本的な維持修繕はオーナー負担とされています。例えば共有部の定期清掃、入居者からの軽微な設備不具合対応(電球交換等)はサブリース会社が対応し、費用も負担することが多いです。また入居者退去時の再募集に伴う広告費や通常範囲の原状回復費も、一定額まではサブリース会社負担とするプランもあります(会社によって異なるので契約内容を要確認)。
一方で、大規模修繕工事(外壁塗装、屋上防水工事など建物全体に関わるもの)や老朽設備の交換費用(経年劣化した給排水管や受水槽交換等)はオーナー負担と明記されるのが一般的です。また、入居者退去後の原状回復費用も普通借家契約同様、本来オーナー負担となるものです。サブリース会社によっては「○年経過毎の室内リフォーム費用はオーナー負担」など具体的に項目を定めている契約もあります。契約時に「物件保持のための費用の分担範囲」をしっかり協議しておくことが大切です。曖昧なままだと、後々「ここまで面倒見てくれるはずでは?」とトラブルになります。
具体例: オーナーとサブリース会社の主な役割(一例):
- サブリース会社側: 定期清掃、ゴミ出し管理/入居者からのクレーム対応(騒音・近隣トラブル調整)/軽微な修理(給湯器の点火不良程度ならまず点検)/入居者募集・審査・契約/家賃集金・督促/退去時の立会い・敷金精算/24時間トラブル受付サービス等。
- オーナー側: 建物本体の維持(経年劣化対策)/法定点検の費用負担(エレベーター検査、消防設備点検など※実務は会社手配でも費用はオーナー)/資産価値向上のためのリフォーム費用/設備の更新費用(耐用超過して交換必要な設備の購入費)など。
原状回復費用の扱い: 原状回復については、通常の賃貸と同様、入居者負担分(故意過失や経年超過損耗)は敷金等で賄い、残りをオーナー負担とします。ただしサブリース各社は自社で入居者と契約を結んでいるため、実際の原状回復作業も自社で行います。その際、費用の一部をサブリース会社がサービスで持ってくれるケースもあります(例えば「空室期間が短ければ原状回復費無料」等のプロモーション)。しかし原則はオーナー=貸主の費用負担義務があることを覚えておきましょう。トラブル例として「サブリース会社から退去後のリフォーム費○百万円を請求され驚いた」という声があります。オーナーは契約時に「どこまで負担してもらえるのか」明確に聞き出し、文書化しておくべきです。
緊急対応時の責任: 水漏れ・火災など緊急トラブル時、サブリース会社はまず初動対応(入居者避難誘導や応急処置)をしますが、その後の恒久修繕はオーナー負担になることがほとんどです。また、自然災害による損壊も基本オーナー責任です。ただし火災保険・地震保険に加入していれば保険金で賄える場合があります。サブリース会社によってはオーナーに代わり保険請求手続きをサポートしてくれるところもあります。平時からの備えとして、オーナー自身も加入保険内容を把握し、緊急連絡網(サブリース会社の24時間対応窓口など)を確認しておきましょう。
入居者対応の権限: サブリース契約下では、基本的にサブリース会社が入居者対応の前面に立ちます。オーナーは入居者と直接やり取りする機会はほぼありません。従って、入居者から何かクレームが出てもサブリース会社任せになります。この点、「対応が遅い」「丁寧さに欠ける」といった場合、オーナーからサブリース会社へ改善要求を出すことになります。契約上、サブリース会社には善管注意義務(管理上の注意義務)があります。著しく管理対応が悪い場合は契約違反の可能性もありますので、エスカレーションとして契約解除も視野に入れ厳しく臨むことも必要でしょう。ただし実際には穏便に改善を求めて解決するのが一般的です。
当税理士事務所からの助言: オーナーとしては「任せきりにしない」ことが肝要です。定期的にサブリース会社から管理レポート(月次報告書)をもらい、設備不具合やクレーム発生状況をチェックしましょう。必要なら自分でも現地確認し、建物状態を把握してください。「契約しているから安心」ではなく、「契約通り果たされているか」を監督する視点です。これにより大きな不具合が放置されるリスクを減らせます。契約書に書かれていないことでも、「ここは負担してもらえないか」と相談すると、案外柔軟に対応してくれる場合もあります。良好なコミュニケーションを保ち、Win-Winの関係を築くことが安定運用への近道です。
サブリース物件の運用フローは、基本的にサブリース会社がオーナーに代わって大家業務を行う形になります。ここでは入居者募集から退去・再募集までの一連の流れを追ってみましょう。
- 募集計画の立案: 空室が出た場合、または新築引渡し時、サブリース会社は市場調査を行い賃料設定や募集条件を決めます。近隣の競合物件の家賃や設備状況を考慮し、適切な募集賃料を設定します(※この募集賃料はサブリース会社が転貸する額であり、オーナー保証賃料とは異なります)。オーナーは通常ここに関与しませんが、希望があれば意見を伝えることもできます。しかし契約上はサブリース会社に賃料設定権限がある場合が多いです。自主管理と違い、オーナーが「もう少し高く貸したい」と思っても基本できません。
- 広告・集客: サブリース会社は自社もしくは提携する不動産仲介会社を通じて広告を出します。賃貸不動産ポータルサイトや、自社ホームページ、店頭張り出しなど多様なチャネルで入居者募集を実施します。広告費用は契約によりますが、多くはサブリース会社負担か、保証賃料に織り込み済みです(オーナーに別途広告料請求しないケースが多い)。募集図面上の貸主名はサブリース会社になります。問い合わせ対応・内見案内も全てサブリース会社(または委託された仲介業者)が行います。
- 入居希望者の審査・契約: 候補者が現れたら、サブリース会社が入居審査を行います。収入や職業、連帯保証人の有無、信用情報などをチェックし、物件に適切か判断します。オーナー確認は通常ありません。審査に通れば、サブリース会社(貸主)と入居者(借主)の間で賃貸借契約を締結します。敷金・礼金・前家賃等の授受、重要事項説明もすべてサブリース会社側で完結します。オーナーは契約内容を逐一知らされないことも多いですが、求めれば契約書写し等の提供を受けられる場合があります。貸主ではないため法律上の交付義務はありませんが、信頼関係構築のため情報共有してくれる会社もあります。
- 入居中の管理: 入居後、家賃は毎月入居者→サブリース会社に支払われ、サブリース会社→オーナーへ保証賃料が支払われます。入居者からの問い合わせや苦情(設備トラブル・騒音・近隣問題等)はサブリース会社が24時間受付し、適宜対応します。オーナーは基本ノータッチですが、上記のように定期報告を受けることをおすすめします。サブリース会社は定期的に建物巡回を行い、共用灯の球切れや清掃状況などを点検します。清掃業務も委託業者等を使い実施します(費用は通常サブリース会社負担)。滞納が発生した場合、サブリース会社が督促し、必要なら入居者に代わって立替払いする形でオーナーには遅滞なく保証賃料が支払われます。長期滞納者には法的手続き(明渡訴訟等)もサブリース会社が原告となって行います。こうした煩雑な賃貸管理業務をすべて任せられる点がサブリースの大きなメリットです。
- 契約更新: 普通借家契約の場合、2年などの契約期間満了時に入居者との契約更新手続きを行います。これもサブリース会社が窓口となり更新書類の取り交わしや更新料の授受(設定している場合)を行います。更新料はサブリース会社の収入となることが多く、オーナーには関係しません(保証賃料は契約に関わらず定額支払いなので)。
- 退去通知と原状回復: 入居者から退去の申し出があったら、サブリース会社が退去日調整と明渡し手続きをします。退去立会いもサブリース会社が行い、室内の損耗状況をチェックします。敷金精算については、事前に取り決めたガイドライン(国交省の原状回復ガイドライン等を参考)に従い、入居者負担分を算定します。入居者から預かった敷金はサブリース会社が保管しており、精算に充てます。不足があれば入居者に追加請求し、余れば返還します。原状回復工事については、サブリース会社が業者を手配し実施します。標準的なクリーニングやクロス張替えは速やかに行われ、費用は契約の負担区分に応じオーナーに請求されます。場合によっては空室期間短縮のため入居募集と並行して原状回復を急ぐこともあります。
- 再募集開始: 原状回復が完了または見込みが立った段階で、すぐ次の入居者募集が開始されます。このサイクルが繰り返されることで物件の稼働が維持されます。サブリース会社にとっても早期に空室を埋めることが利益確保につながるため、積極的にリーシング活動を行います。オーナーは空室期間中も保証賃料を受け取れますが、契約内容によっては長期空室が続くと次回賃料見直しで減額提案される恐れがあるため、間接的に空室はオーナーにも不利益です。その意味でも、サブリース会社と協力し高い入居率を維持していくことが大切です。
オーナーの関与ポイント: 以上の流れでオーナーはほぼ登場しませんが、敢えて挙げれば「物件のアピールポイント提供」や「リフォーム提案」が考えられます。例えば「実は床暖房が入っている」「近くに新駅ができる予定」などサブリース会社が知らない強みがあれば伝えましょう。また、なかなか決まらない場合に思い切ったリフォーム(間取り変更や設備追加)をオーナー判断で行うことも可能です。その際はサブリース会社と相談の上、タイミングや費用負担を決めます。費用は基本オーナーですが、賃料アップに繋がるなら交渉で一部負担してくれる例もあります。
日常フローまとめ: 「オーナーは毎月決まった家賃を受け取るだけ」というのがサブリース物件運用の平時の姿です。入居者募集から退去精算まですべてプロに任せられるため、サラリーマン大家や遠方オーナー、高齢オーナーでも安心して賃貸経営が継続できます。当税理士事務所のお客様にもサブリース会社利用者は多く、「本業に専念できる」「空室や家賃滞納に悩まされない」と概ね好評です。その一方で、市場相場より収入は抑えられるデメリットもあるため、そこを補う節税や融資戦略でトータルの利回り向上を図る支援をさせていただいております。
サブリース運用中でもトラブルは起こり得ます。以下、主なトラブル別に対応策を見ていきます。
1. 入居者クレームへの対応: 入居者から騒音・悪臭・設備故障などのクレームが出た場合、一次対応はすべてサブリース会社が行います。オーナーが直接クレームを受けることは基本ありません。ただし、サブリース会社の対応状況はオーナーも把握した方が良いです。例えば隣室騒音問題で対応が遅れると、物件全体の評判低下につながります。対応策: サブリース会社から定期報告を受ける際に「最近クレームはありましたか?」と確認しましょう。重大な問題なら詳細を共有してもらい、オーナーとしてできる協力(例: 隣室へのお詫びの品手配等)を申し出るのも円滑解決に寄与します。サブリース会社側で解決困難なケース(反社会的入居者がいる等)は、最終的に法的措置や警察介入が必要になります。この場合もサブリース会社が主体ですが、オーナーとして事態を認識し、場合によっては契約解除も視野に入れましょう。契約上、借主(サブリース会社)が善管注意義務を怠り物件価値が損なわれるような場合、オーナーからの契約解除理由になり得ます。もっともこれは最終手段であり、通常はサブリース会社も本気で対処してくれるはずです。
2. 家賃滞納・サブリース会社からの未払い: 入居者の家賃滞納は、原則サブリース会社が立替払いしてオーナー収入には影響を及ぼしません。しかし滞納常習者がいればサブリース会社の損失になりますし、長引けば保証賃料減額要因にもなりかねません。対応策: サブリース会社に対し、滞納が2ヶ月以上続く入居者については状況報告を求めましょう。必要なら法的手続き(明渡訴訟)を検討するよう促します。プロであるサブリース会社も、できれば示談解決したいものですが、毅然とした対応が望ましいケースもあります。オーナーとしては「多少空室になっても問題入居者は早期退去させてほしい」など意向を伝えると良いです。逆にサブリース会社自身の家賃支払い滞り(オーナーへの保証賃料未払い)が発生した場合、これは重大です。1回遅れただけでも注意信号、複数回続けば倒産リスクを警戒してください。近年も一部サブリース業者の経営破綻例があり、家賃数ヶ月未払いのまま倒産するケースがあります。対応策: まず契約書の「賃料不払い時の解除権」条項を確認します。多くは「○ヶ月支払が無い場合、催告の上契約解除可」となっています。この規定に基づき、内容証明郵便で催告→期間内に履行なければ解除の通知を行います。解除が成立すれば、オーナーはサブリース会社を挟まず直接入居者から賃料を徴収できるようになります。もっとも実務上は、倒産目前の会社に催告しても支払い不能でしょうから、解除後に入居者へ直接賃料支払いを依頼する対応に移ります。入居者に事情を説明し、来月以降は指定口座(オーナー管理口座)へ振り込んでもらう手続きをします。サブリース会社が倒産したら、その会社への未払い賃料の回収はほぼ不可能です。できるだけ損失を最小に留めるため、迅速に動く必要があります。
3. サブリース契約の解除・終了トラブル: オーナーから解約したい場合、先述の通り正当事由が無い限り難しいですが、不可能ではありません。例えば「老朽化で建替えするので全室明け渡したい」など明確な目的があれば、交渉の余地があります。対応策: サブリース会社と早めに話し合いましょう。違約金を払ってでも解約したい場合、その額を提示して承諾を得る手もあります(ただし違約金が高額になりやすいので要検討)。一方、サブリース会社から契約終了を告げられるケースもあります。例えば「築古化で採算が合わないので更新しない」と言われることがあります。契約期間満了をもって更新拒絶されると、法的には貸主側(オーナー)は拒めません。対応策: そうなる前に、リフォーム提案や条件緩和(保証賃料の引下げ許容)などで契約継続を模索します。万一サブリース終了となった場合、自主管理への移行や新たな管理会社探しが待っています。その際に慌てないよう、物件資料や入居者情報を常に最新に整理しておきましょう。契約終了時にはサブリース会社から現入居者との賃貸借契約にオーナーが引き継ぐ形になります。引継ぎの注意: 入居者へは貸主変更の通知を行い、敷金もサブリース会社からオーナーへ承継されます。スムーズに移行できるよう、サブリース会社と協力して手続きを進めます。
4. その他のトラブル: 物件の瑕疵(雨漏りやシロアリ被害など)が判明した場合も考えられます。この場合、基本的にオーナー負担で修繕しなければなりませんが、入居者に影響が及ぶ場合はサブリース会社と協力して速やかに対処します。また、重要事項説明義務違反などサブリース勧誘時のトラブルも近年クローズアップされています。2020年施行の「賃貸住宅管理業法改正(サブリース新法)」により、サブリース契約前に業者はオーナーへ重要事項を説明しなければならなくなりました。将来の賃料減額リスクや解約条件などを事前に説明する義務があり、違反すれば行政処分や罰則もあります。この新法のおかげで悪質な勧誘は減ると期待されていますが、万一説明と異なる事態になった場合、オーナー側も「重要事項説明でこう聞いていた」と主張できます。トラブル時にはこうした記録(重要事項説明書)も証拠になりますので、契約関連書類は大切に保管しましょう。
トラブルに強い税理士事務所として: 当税理士事務所は税務のみならず不動産実務にも精通しています。例えば家賃減額交渉時のセカンドオピニオン提供、サブリース会社倒産時の手続き支援、弁護士・司法書士との連携による契約解除業務などです。トラブル発生時こそ冷静に、そしてプロの力を借りることが大切です。「困ったらまず相談」してください。初回無料相談もご用意しておりますので、オーナーの皆様が安心してサブリース運用を続けられるよう全力でサポートいたします。
サブリース運用は手間がかからない反面、オーナー自ら収支状況を把握する機会が少なくなりがちです。そこで最後に、定期報告とモニタリングの重要性について述べます。
定期報告の活用: 多くのサブリース会社は、オーナー向けに「運用レポート」を定期的(月次や四半期など)に発行しています。内容は、当月の入居状況、各部屋の入居者氏名や入居期間、クレーム対応履歴、修繕実施状況、収支明細(保証賃料支払額、控除項目があればその内訳)などです。これをしっかり確認する習慣を付けましょう。数字の羅列だからと捨て置かず、例えば空室が何室出ているのか、入居率は何%か、直近で修繕費がかさんでいないか、といった点をチェックします。特に空室に関しては、保証賃料には直ちに影響しなくても、前述のように長期化すれば次回保証賃料減額要因になるため注意が必要です。
収支モニタリング: オーナー自身でも年間の収支表を作成し、計画との差異を確認しましょう。サブリース導入前に試算した収支計画(ローン返済、税金、保証賃料収入等)と、実績ベースでどのくらい違うかを分析します。もし当初予想より手取り現金フローが悪化している場合、原因を探ります。考えられる原因:
- ローン金利上昇や支払額増加(変動金利なら注意)。
- 固定資産税等の税金が想定以上に高かった。
- 想定外の修繕費負担が発生した(給湯器交換など)。
- 保証賃料が減額された。
いずれにせよ、早期に気づけば対策が打てます。例えば固定資産税評価が上がり税額増なら節税対策(減価償却や別の経費計上)で補う、ローン返済が苦しければ金利交渉や借換え検討、修繕費多発なら予防保全計画を見直す、保証賃料減額なら節約や別収入でカバー、等です。
物件の健全度チェック: サブリース会社任せでは、物件の劣化に気づきにくいこともあります。例えば外観の傷み、共有設備の陳腐化など、現地を見ないと分からない点があります。年に1回程度は自分で物件を訪問し、目視点検することをお勧めします。管理が行き届いているか、入居者層に変化はないか、確認できます。遠方で難しい場合は、サブリース会社に写真付きの報告を依頼したり、知人に見に行ってもらう手もあります。
サブリース会社の経営モニタリング: 前述したようにサブリース会社自体の健全性もオーナーにとって重大です。上場企業であればIR情報などで業績をチェックできます。非上場でも帝国データバンクなどの企業信用情報を取得することも可能です(費用はかかりますが、不安な場合は検討)。またニュースや業界情報にもアンテナを張り、「○○社が経営悪化」といった噂を聞いたら要注意です。必要ならセーフティネットとして家賃債務保証保険への加入も検討します(サブリース会社が潰れても保険で家賃を一定期間受け取れる商品など)。
税務申告モニタリング: サブリース運用は安定しがちなため、税務署から見ると経費率の上昇=利益率低下により目を付けられることがあります。例えば青色申告で毎年同じような収支を申告していると、ある年に経費が極端に多く利益が少なすぎると税務調査対象になるかもしれません。減価償却費の範囲内で適度に経費をコントロールし、利益が過少にならないように調整するのも一つの戦略です。
チェック体制のまとめ: 要するに、「任せつつも目を光らせる」ことが肝心です。サブリースは委託ではなく一括借上げなので、オーナーが口出ししづらい側面があります。しかし資産の所有者はオーナーです。資産価値を維持・向上させる責任と利益はオーナーにあります。サブリース会社はパートナーですが、自社の利益も追求します。利害が100%一致するわけではない点を踏まえ、主体的なモニタリングを続けてください。当税理士事務所ではお客様の収支表作成をお手伝いしたり、セカンドオピニオンとして管理状況の相談にも応じております。「自分ではなかなか分析できない」という方もお気軽にご相談ください。
以上、サブリーススキームにおける税務・会計処理、金融評価、実務運用のポイントを総合的に解説しました。サブリースは上手に活用すれば安定経営と節税を両立できる魅力的な手法です。しかし契約内容の理解不足やモニタリングの怠りによる失敗談も散見されます。本記事を参考に、メリットとデメリットを正しく把握し、賢明な意思決定と運用管理を行っていただければ幸いです。税理士法人加美税理士事務所では、法人化支援から税務調査対応までワンストップでオーナー様をサポートいたします。全国対応・オンライン相談も可能ですので、「サブリースで節税したい」「相続を見据えて法人スキームを検討したい」というサラリーマン大家さんや経営者オーナー様はぜひ一度ご相談ください。あなたの不動産経営の心強いパートナーとして、専門家チーム一同お力になれれば幸いです。
この記事を執筆時点で、サブリース契約戸数では大東建託グループが突出しており、約118万戸以上を擁しています。大和ハウスグループの「大和リビング」やレオパレス21もそれぞれ約57万戸規模の契約数を持ち、賃貸経営受託システムや家具・家電レンタル、オンラインサービス拡充など、付加価値強化に注力しています。近年ではIoTやDX技術を活用した管理サービス提供など、新たな成長戦略を打ち出す大手も増えています。一方、中小の不動産管理会社も地域特性に合わせた提案やローコスト運用で差別化を図り、両者が棲み分けする動きが見られます。
2021年6月施行の賃貸住宅管理業法改正では、サブリース契約の適正化が法律の柱となりました。サブリース事業者には契約前の重要事項説明が義務化され、家賃設定や契約期間、減額リスクなどオーナーに影響を及ぼす事項を事前に書面で説明しなければなりません。また、不当な勧誘行為や誇大広告も禁止され、「30年家賃は減らない」といった根拠なき保証表示は規制対象です。これにより、オーナーは契約内容の透明性が向上した一方で、過度な利益確保を狙った営業を抑制する効果が生まれています。加えて、管理戸数200戸以上の業者は国土交通大臣登録が義務付けられ、登録取消し歴のある者は一定期間登録不可となりました。違反業者には罰則規定も設けられ、事業者の信頼性を担保する仕組みが整備されました。これらの改正によって、サブリース市場は業者のコンプライアンス強化と信頼性向上が図られ、健全な発展が促されています。
従来、高齢オーナーを中心に「面倒な管理業務を任せられる」「汗をかかずに賃貸経営できる」といった安定志向が強く、サブリースの「任せて安心」というメリットが支持されてきました。とりわけ年金受給額の減少や金融資産の低リターン傾向を背景に、定額家賃収入は老後の重要な収入源と捉えられています。しかし近年では、収入の安定性だけでなく節税対策や相続・事業承継も視野に入れる傾向が強まっています。例えば高所得者層では、上記で紹介したように自己の法人を設立し、その法人とマスターリース契約を結び所得を分散することで、個人の所得税率を抑える節税スキームが注目されています。このようにオーナーの目的は「安定した収入」だけでなく、「資産保全・税負担軽減」へと多様化しており、ニーズに応じた提案が求められています。
日本の人口は減少基調ですが、賃貸需要を支えるのは世帯数の推移です。現代では核家族化・単独世帯化が進み、1世帯に1戸の住宅需要が見込まれます。そのため世帯数は人口ほど急減せず、2020年代までは緩やかに増加してきました。今後は世帯数も減少に転じますが、その減少ペースは人口減少より緩やかとされ、賃貸住宅市場の基盤は相対的に安定しているといえます。一方、経済面では最近の金利上昇がマイホーム購入コストを押し上げ、賃貸への移行を促す動きが見られます。これにより短期的には賃貸需要増が期待されますが、長期的には建築コスト高騰や融資審査の厳格化で新規供給が抑制される見込みです。結果として、都市部を中心に良質な賃貸物件の価値が維持される環境が続くと考えられます。総じて人口動態・経済環境の変化はサブリース需要に影響を与えますが、賃貸経営全体では安定性重視のオーナーと節税重視のオーナーの両方を対象とした多様な提案が今後も重要になります。
会社勤めの給与所得者が賃貸物件を所有するケースでは、不動産所得は副業収入となり確定申告が必要です。サラリーマン大家が得た不動産所得が20万円を超える場合、原則として確定申告義務が発生します。逆に所得を経費で圧縮し20万円以下に抑えれば申告不要ですが、実際には青色申告を選択して65万円控除や赤字の繰越控除を活用するほうが節税効果が高いことが多いです。給与所得と不動産所得の両立には帳簿付けや税金計算の理解が必要ですが、例えば青色申告の活用で節税幅が広がります。オーナー自身で申告を行う場合は家賃収入・経費の記帳と証拠資料の保管を徹底し、必要に応じて税理士に相談することでミスや申告漏れを防ぐことが大切です。課税所得金額が900万円を超えるタイミングで法人を設立し、サブリーススキームによる節税を検討してみることをお勧めします。
青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。
不動産投資を法人化した資産管理会社を設立し、その法人が物件を一括借り上げるサブリース契約を結ぶと、税務上のメリットを活かせます。具体的には、法人がオーナーに支払う家賃を設定することで、個人の受取額を意図的に減らし、残りを法人の収益とします。この法人収益は法人税等(最大約33%)で課税されるため、個人の高い所得税等(最大55%)と比べて全体の税負担が軽減されます。実務上、多くのケースではオーナーへの家賃を満室想定家賃の80~90%程度に設定し、法人側に10~20%の利ザヤ(差益)を認める契約が一般的です。適切に運用すれば不動産法人による節税効果を享受できます。ただし、過度な乖離設定は否認リスクがあるため、専門家と連携して価格根拠を明確にする必要があります。節税以外にも、法人化すると各種手続きが個人とは異なるため、当税理士事務所では法人化に伴う税務・会計上の最適化も併せてサポートします。
法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。
サブリースは「任せて安心」のイメージから高齢オーナーに支持されており、管理業務を丸ごと業者に任せられる点が大きな魅力です。自ら物件管理に割く労力・時間を節約しつつ、毎月一定額の家賃収入を確保できるため、年金収入の補完や退職後の生活設計に安心感をもたらします。相続対策の観点でも、賃貸物件は土地評価が「貸家建付地」として算定されるため、土地評価額の減少による税負担軽減効果が期待できます。また、借家権相当分の控除も適用される可能性があり、相続税対策として検討されるケースも少なくありません。将来世代への財産移転を視野に入れる場合は、事業承継・相続に詳しい税理士とともに、生前の節税シミュレーションも含めた計画的な対策を検討することをおすすめします。
事業承継について詳しくは下記のページをご覧ください。
- ワンストップ対応: サブリースを活用した不動産投資に加え、消費税、青色申告、節税対策、税務調査、法人化支援、法人個人売買スキームや事業承継まで、不動産オーナーに必要な税務サービスを一括提供します。
- 専門性: 不動産投資に特化した税理士が、最新の税制改正や金融・不動産市場動向を踏まえた実践的なアドバイスを行います。節税スキームについて幅広い実績があり、信頼できる情報提供をお約束します。
- 顧客フォーカス: サラリーマン大家から法人オーナー、高齢オーナーまで、それぞれの属性やニーズに応じた最適提案が可能です。個別相談では、丁寧なヒアリングを通じて不動産投資全体の目標・リスクを把握し、オーナー様にとって最適なサブリース活用法などを税務・財務両面からご提案します。
- 安心のサポート: 税務署対応や税務調査への対策も万全にサポートします。定期的なレポートで税金の見通しを共有し、予想外の税負担を回避します。契約前からアフターフォローまで、一貫して安心・安全なサポート体制を整えています。
サブリーススキームは、適切に活用すれば安定した賃貸経営と節税効果が期待できる有力な手段です。ただし、契約内容や法令改正、人口動態・金利動向など多くの要素を踏まえて戦略的に取り組む必要があります。本業があるサラリーマン大家さんは確定申告のルールを守りつつ将来の会社設立を視野に入れておきましょう。法人化済み大家さんや会社経営者は資産管理会社を活用して税率差を活かしましょう。このようにオーナー属性に応じた対応が重要です。税理士法人加美税理士事務所では、不動産投資専門の税理士が、サブリース契約を含む賃貸経営全体のプランニングを支援いたします。節税・相続・資産保全を見据えた最適なスキーム設計で、オーナー様が安心・安定した賃貸経営を実現できるよう全力でサポートいたします。

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