税務に追われる日々に、終止符を。不動産会社の青色申告を全国対応で支える、心強い税理士がいます。
不動産業の法人青色申告のコツ:メリット・手続き・注意点を税理士が解説
ページコンテンツ
- 税務に追われる日々に、終止符を。不動産会社の青色申告を全国対応で支える、心強い税理士がいます。
- 不動産業の法人青色申告のコツ:メリット・手続き・注意点を税理士が解説
- 法人でも青色申告できる?(不動産業の会社の場合)
- 法人の青色申告と個人事業主の青色申告の違いは?
- 不動産業の法人が青色申告を選ぶメリット
- 青色申告のデメリットは?(手間や注意点)
- 法人が青色申告を始めるための手続きと要件
- 法人の青色申告が取り消される条件とは?
- 不動産業の法人によくある青色申告の悩みと対策(ケース別)
- 青色申告に関連するその他のポイント
- 税理士法人加美税理士事務所の青色申告サポート:3つの強み
- 青色申告のご相談はお気軽にどうぞ(無料相談受付中)
- よくあるご質問
- お問い合わせ
- 関連ページ
結論から言えば、法人でも青色申告は可能ですし、不動産業の会社であれば積極的に青色申告を利用すべきです。確定申告には「青色申告」と「白色申告」がありますが、青色申告と聞くと個人事業主向けの制度だとイメージする方も多いでしょう。しかし法人税の申告においても青色申告制度があり、ほとんどの法人が青色申告を選択しているのが現状です。白色申告よりも青色申告の方が節税上のメリットが多いため、法人である以上は基本的に青色申告を選ぶのが一般的です。
ただし、法人が青色申告を行うには事前に税務署に申請して承認を受ける必要があります。具体的な手続きについては後述しますが、新しく会社を設立した場合には早めに申請書を提出しておきましょう。承認さえ受けてしまえば、あとは毎期の決算に基づき所定の様式で確定申告書を提出するだけです。帳簿を正しく付け、期限内に申告・納税さえ行っていれば、青色申告の特典を継続して受けられます。
なお、不動産業の法人は取引金額も大きく、経理処理も複雑になりがちです。そうした点でも、正規の簿記(複式簿記)で帳簿を整備する青色申告は、会社の経営実態を正確に把握するのに役立つでしょう。税務上のメリットだけでなく、財務管理や銀行融資時の信頼性向上といった効果も期待できます。
同じ「青色申告」という名称でも、法人(法人税)の青色申告と個人事業主(所得税)の青色申告では適用される特典や制度に違いがあります。それぞれの相違点を押さえておきましょう。
- 青色申告特別控除の有無: 個人事業主の場合、青色申告をすると最大65万円(または55万円)の特別控除を受けられます。これは帳簿を複式簿記で付けていることなどが条件の所得控除で、個人の所得税を大きく軽減できます。一方、法人にはこの青色申告特別控除がありません。法人税では課税所得からの控除という形では特典がない代わりに、後述するような別の節税制度が用意されています。つまり、個人の青色申告では所得控除による節税が目玉ですが、法人の青色申告では控除ではなく繰越控除などの制度がメリットとなります。
- 専従者給与の制度: 個人事業主の青色申告では、家族従業員に支払う給与を必要経費にできる「青色事業専従者給与」制度があります。例えば配偶者や子供に業務を手伝ってもらい適正な給与を払えば、その金額を経費計上して所得を圧縮できます(白色申告では家族への給与は基本的に経費になりません)。しかし法人の場合、従業員(家族であっても)への給与はもともと経費として落とせるため、専従者給与という特別な枠組みは不要です。法人では役員報酬や従業員給与は通常の経費計上となりますので、青色申告かどうかに関わらず支払った給与は損金算入できます。
- 損失の繰越期間: 個人事業主が青色申告をしている場合、純損失(赤字)を3年間繰り越して翌年以降の黒字と相殺することが可能です(白色申告だと繰越不可)。法人の青色申告では、欠損金(損失)の繰越控除期間が最大10年間とさらに長く認められています。法人の場合は規模要件がありますが、資本金1億円以下の中小法人であれば10年分の繰越が可能です。したがって、損失を出した場合の救済措置が個人より法人の方が手厚いと言えます。
- 損失の繰り戻し還付: 個人の所得税では、災害時など特殊な場合を除き繰り戻しによる所得税還付制度は一般に利用できません。一方で法人(資本金1億円以下の中小企業)の青色申告では、前期に黒字・納税があり当期に赤字が出た場合に「欠損金の繰り戻し還付」が認められます。これは赤字を前期の黒字と相殺し、前期に納めた法人税の一部を還付してもらう制度です。景気変動の激しい不動産業では、繰り戻し還付が資金繰りの助けになるケースもあります。
- 減価償却の特例: 個人の青色申告でも少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産を一括経費)が使える場合がありますが、法人の青色申告では年間300万円を上限に取得価額30万円未満の減価償却資産を即時償却(一括経費計上)できる特例があります。例えば事務所のパソコンや備品など小規模な設備投資をした際、通常は数年にわたり減価償却するところを、その年の経費に全額落とすことが可能です。白色申告の法人ではこのような特例は使えません。
以上のように、個人の青色申告は主に所得控除(65万円控除)や専従者給与による節税が特徴であり、法人の青色申告は損失繰越・繰戻しや減価償却の特例など法人税独自の節税メリットが中心になります。「青色申告」の名前は共通ですが中身は異なるため、不動産会社が法人化する際や事業形態を変える際はこれらの違いを理解しておきましょう。
不動産業の法人が青色申告を行うことで享受できる主なメリットを見ていきます。節税効果はもちろん、経営上のメリットもありますので、具体的に確認しましょう。
- 欠損金の繰越控除による節税: 前述の通り、青色申告の法人は生じた赤字(欠損金)を最長10年間も繰り越して、将来の黒字と相殺することができます。例えば初年度に大きな設備投資を行って赤字になっても、次年度以降の利益と相殺すればトータルで法人税を圧縮できます。特に不動産会社は景気やプロジェクト状況により単年度で赤字が発生し得ますが、青色申告ならその損失を無駄にせず将来の法人税負担を軽減できます。
- 欠損金の繰り戻し還付(中小企業のみ): 資本金1億円以下の中小不動産会社で青色申告をしている場合、ある期に赤字が出た際に前期の法人税を取り戻すことが可能です。例えば前期に利益を出して法人税を納めたものの、今期は不動産市況の変動で赤字になった場合、税務署に繰戻還付の請求を行えば前期に納めすぎた税金の還付を受けられます。これにより、赤字期に現金が戻ってくるため資金繰りが楽になります。不動産業は売上や利益が不安定なことも多いので、この制度は大きな助けとなるでしょう。
- 少額減価償却資産の特例で設備投資を即時費用化: 青色申告の中小法人は、一年間で取得した30万円未満の減価償却資産を合計300万円までその期の経費として計上できます。例えば業務用パソコン(20万円)や社用車のカーナビ(10万円)などを購入した場合、通常なら数年間かけて減価償却しますが、この特例を使えば購入年度に全額を損金算入できます。その分課税所得が圧縮され法人税の節税につながります。不動産仲介業などでも事務所備品やIT機器の更新費用が発生しますが、この制度を活用すれば投資と税負担軽減を両立できるでしょう。
- 正確な帳簿による経営管理の向上: 青色申告をする前提として複式簿記による正規の帳簿を作成することが求められます。これは一見手間にも思えますが、しっかり記帳することで事業の収支や財務状況を正確に把握できる利点があります。不動産会社では物件ごとの収支管理や資金繰りが重要ですが、青色申告のために日々帳簿を付けていれば、自然と経営数値の把握精度が上がります。結果として無駄な支出の発見や、プロジェクト別の採算管理など経営判断にも良い影響を与えるでしょう。
以上が青色申告を選ぶ主なメリットです。なお、白色申告ではこれらの特典が一切受けられません。不動産業のように収益変動が大きく経費も多い業種では、青色申告による節税メリットは特に大きいと言えます。
メリットの多い青色申告ですが、利用にあたっていくつかのデメリットや注意点も存在します。主に事務的な手間や遵守すべきルールに関する点ですが、事前に理解して備えておきましょう。
- 複式簿記による記帳の手間: 青色申告をする法人は「正規の簿記の原則」に従った帳簿作成が義務付けられます。つまり日々の取引を借方・貸方に分けて仕訳し、総勘定元帳や仕訳帳などを整備する必要があります。簿記の知識がない方にとっては白色申告の単式簿記より難しく感じられ、事務負担が増えるでしょう。例えば不動産賃貸の管理会社で多数の家賃入金や経費支出を扱う場合、すべて仕訳入力するのは大変です。ただし現在は会計ソフトも発達しており、日々の預金取引を自動連携できるツールもあります。最初だけ簿記に慣れれば、その後はソフトや税理士のサポートで効率的に記帳することも可能です。
- 事前申請と期限管理が必要: 青色申告を利用するには所轄税務署への届出(青色申告承認申請書)が必要で、所定の期限までに申請しなければなりません。新設法人の場合、設立日から3ヶ月以内かつ最初の事業年度終了日の前日までが申請期限です。この手続きを忘れると、その期は青色申告ができず特典を受けられなくなります。また、毎期の確定申告も期限内(通常、事業年度末から2ヶ月以内)に行わないといけません。期限後申告(遅れて申告)を2期連続ですると承認が取り消されるという決まりもあります。従って、青色申告を続けるには申告・納税期限の管理が非常に重要です。
- 帳簿書類の保存義務と税務調査リスク: 青色申告では収入や経費の根拠となる帳簿や証憑書類を一定期間保存する義務があります。具体的には仕訳帳・総勘定元帳のほか、領収書や請求書などを原則7年間保存し、税務署から求められたときに提示できるようにしておかなければなりません。これは法人税法や電子帳簿保存法で定められた要件です。適切に保存・管理していないと、税務調査の際に青色申告の承認を取り消されるリスクもあります。特に近年は電子取引データの保存ルールも厳しくなっているため、メールで受け取った請求書PDFなども含めてルール通り保管する必要があります。
- 専門知識やプロのサポートが必要になる場合も: 青色申告自体の手続きは無料でできますが、正確に帳簿を付け決算書を作成するにはやはり会計・税務の知識が求められます。そのため、税理士や会計ソフトの利用コストが発生する場合があります。もちろん、それらコストを上回る節税効果が青色申告には期待できるのですが、特典をフルに活かすには専門家の力を借りた方が結果的に得策です。不動産会社であれば税務顧問の税理士を付けて、経理担当者と二人三脚で青色申告の業務をこなしているケースも多いです。
以上のような注意点はありますが、適切に対処すれば大きな障害にはなりません。むしろ青色申告をすることで会社の経理体制が整い、結果として経営管理や税務対応のレベルが上がるというプラス面もあります。デメリットを理解したうえで、次に説明する所定の手続きを踏んで青色申告の承認を受けましょう。
不動産業の法人が青色申告を利用するには、事前の届出と一定の要件充足が必要です。以下に、青色申告を開始するまでの基本的な手続きと満たすべき要件をまとめます。
- 「青色申告承認申請書」の提出: まず、所轄税務署に対して「青色申告を承認してほしい」という申請書を提出します。この様式は国税庁のWebサイトからダウンロードでき、会社名・所在地・事業の種類・帳簿組織など必要事項を記入します。提出先は法人の納税地を管轄する税務署です。提出方法は持参・郵送・e-Taxのいずれでも構いません。
- 申請書提出の期限: 青色申告の承認申請書には提出期限が定められています。新設法人の場合、設立日から3ヶ月経過日の前日か、その事業年度終了日の前日までの早い方が期限です。例えば4月1日に会社設立したなら、原則として6月30日までに申請が必要です。事業年度が設立から3ヶ月未満で終了する特殊な場合は、その期末日の前日までとなります。既存の法人が途中から青色申告に切り替える場合は、「青色申告を適用したい事業年度開始日の前日まで」に申請書を出せば、次期から青色申告が可能です。この期限を一日でも過ぎると、その期は青色が適用できず白色申告になってしまうので注意しましょう。
- 税務署からの承認: 申請書を提出すると、特に問題がなければ税務署から青色申告の承認通知が届きます(通常は申請から1~2ヶ月程度)。承認されれば、以後その会社は青色申告法人として扱われます。承認後は取り消されない限り有効ですが、前述のように期限後申告を連続でするなど不適切な状況になると取り消しもあり得ます。
- 帳簿の整備: 青色申告の承認要件として、「正規の簿記の原則」に従った記帳を行い、その帳簿や証憑書類をきちんと保存することが求められます。したがって承認を受けた後は、日々の取引を漏れなく複式簿記で記録し、決算期には貸借対照表や損益計算書などの決算書類を作成しましょう(多くの場合、会計ソフトで自動作成できます)。不動産業では現金収入・支出以外に振込や融資取引も多いため、預金通帳や借入金の管理も含めて帳簿に反映させます。必要な帳簿としては、現金出納帳・預金出納帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳・総勘定元帳・仕訳帳などが典型例です。最初に税務署へ申請書を出す際に、どの帳簿を備え付けるかも記載します。
- 決算と申告書類の作成・提出: 青色申告の承認後、各事業年度終了ごとに決算を行い、法人税の確定申告書類を作成して提出します。青色申告だからといって特別な様式があるわけではなく、通常の法人税申告書(別表類一式)に貸借対照表・損益計算書など必要書類を添付して提出します。なお、青色申告法人の場合は勘定科目内訳明細書など詳細な附表の提出も要求されますが、これも会計ソフト等で作成可能です。提出期限は事業年度終了後2ヶ月以内(決算日が3月末の会社なら5月末)で、延長申請をしていない限り厳守しましょう。
以上が青色申告を始めるための基本手順と要件です。まとめると、「所定の期限内に申請して承認を得る」「複式簿記で帳簿を付ける」「期限内に毎期確定申告する」という3点が重要です。これらを守れば、不動産業の法人として青色申告のメリットをフルに享受できることになります。
一度青色申告の承認を受けた法人でも、一定の不適切な事由があると承認が取り消されてしまうことがあります。せっかく得た青色申告のメリットを失わないためにも、取り消しとなる条件を押さえておきましょう。主なケースは以下のとおりです。
- 連続した期限後申告・無申告: 法人税の確定申告を2事業年度連続で期限内に提出しなかった場合、税務署長は青色申告の承認を取り消すことができます。例えば2期続けて申告が遅延(期限後申告)したり、一度でも無申告(申告漏れ)が発生したりすると、青色の資格喪失につながります。期限後申告になるとその年度は青色申告特典を受けられないだけでなく、2回続くと翌期以降も白色に戻されてしまうので要注意です。
- 帳簿書類を提示・提出しない場合: 税務調査などで税務署から帳簿書類の提示を求められたにも関わらず、それに応じない場合も取り消しのリスクがあります。青色申告法人は帳簿や証憑を適切に保存する義務がありますから、調査官に「見せてください」と言われたときに見せられない(紛失・未整理など)と、青色申告の要件を満たしていないと判断されかねません。
- 税務署長の指示に従わない場合: 税務署長は必要に応じて帳簿の記載方法などについて指示を出すことがあります。例えば「この取引はこう処理しなさい」といった指導があった際、正当な理由なくそれを無視していると承認取消しの対象となり得ます。税務当局からの指導や訂正要請には速やかに対応するようにしましょう。
- 所得隠しや仮装行為(不正行為): 意図的に収入を除外したり経費を過大計上したりといった不正な申告(いわゆる所得隠し)が発覚した場合、重加算税などのペナルティとともに青色申告の承認取消しが行われます。特に隠ぺい・仮装の額が所得金額の50%以上に及ぶような悪質なケースでは、即座に取り消される可能性が高まります。不動産取引は金額が大きいだけに、意図的な不正は重大視されます。税務調査で指摘を受けないよう、日頃から適正申告を心がけましょう。
- 電子帳簿保存の要件違反: 電子帳簿保存法に基づき、電子取引データ等の適切な保存が義務化されています。2024年現在、猶予措置はあるものの、メールで受領した請求書やクレジットカード明細などデータでやり取りした書類は規定の方法で保存しなくてはいけません。これに故意に違反していると見なされた場合、青色申告の承認取り消し対象となり得ます。特に電子データ保存の不備は見過ごしがちなので要注意です。
以上が主な取り消し条件です。万一承認を取り消されると、青色申告特典(例えば欠損金の繰越控除や30万円未満償却の特例など)が使えなくなるほか、信用面でもマイナスです。取り消された後に再び青色申告を承認してもらうには改めて申請が必要となり、しばらく時間もかかります。そうならないよう、期限管理や帳簿整備、適正申告には十分配慮してください。
青色申告を進める中で、不動産業の法人からよく聞かれる悩みや疑問点があります。ここでは典型的なケースを挙げ、それぞれに対する対策やアドバイスを示します。同じ不動産業でも会社の規模や業態によってつまずきやすいポイントが異なりますので、自社の状況に近いケースを参考にしてください。
ケース: 不動産賃貸の仲介会社を起業したばかりで、社長自身も経理は初心者。社員数もごくわずかで、日々の仲介業務に追われている。初年度から青色申告をしたいが、何から手を付ければ良いか分からない。
悩みのポイント: 設立直後は営業優先になりがちで、つい経理処理が後回しになります。経理担当者もおらず、社長自ら領収書の山を前に頭を抱える…といった状況になりやすいようです。青色申告の申請期限(設立後3ヶ月以内)を知らずに過ぎてしまうミスも起こりがちです。また、売上は仲介手数料収入が中心ですが、少額の経費精算や接待交際費など領収書が多く、「どの経費をどの勘定科目にすれば?」という基本的な疑問も生じます。
対策アドバイス: まず青色申告承認申請書の提出を最優先してください。設立1期目から青色にするには期限内の申請が必須なので、会社設立と同時に税務署関連の届出(法人設立届、青色申請、給与支払事務所開設届など)を一括で済ませておきましょう。提出自体は書類一枚ですので、税理士に依頼しなくても比較的簡単にできます。次に、会計ソフト導入と基本的な仕訳の習得です。最近のクラウド会計ソフトなら銀行明細やクレジットカード明細を自動取込して仕訳候補を提案してくれるため、簿記初心者でも始めやすいでしょう。最初に科目の設定さえ適切に行えば、日常取引(仲介手数料収入や広告宣伝費、交通費など)はパターン化できます。
また、領収書類の整理はこまめに行いましょう。箱にためて年度末に慌てるのではなく、ファイルボックスなどで月別・取引先別に保管しておくと後で帳簿付けする際に楽です。もし余裕があれば創業時に税理士と顧問契約を結び、経理フローを構築する段階からアドバイスを受けると安心です。不動産業に明るい税理士であれば、勘定科目の設定(例:広告費・接待交際費・通信費などの区分)から親身にサポートしてくれるでしょう。
注意点: 初年度は赤字になる会社も多いですが、青色申告にしておけばその赤字を繰り越せるので決して無駄になりません。ただし、期限内申告を忘れると繰越控除が適用されないのでご注意ください。また、法人成り(個人事業から会社化)した場合は、個人と法人で別々に確定申告が必要になる点にも留意が必要です。個人事業から引き継いだ資産や負債の扱いなども整理しておきましょう。最初が肝心ですので、スタート時に正しい青色申告のやり方を身につけておくことが大切です。
ケース: 社員が10名ほどに増え、月次の取引件数も多い不動産売買仲介会社。経理担当者が1人いるものの兼務業務も多く、青色申告の決算業務や日々の記帳が徐々に負担になってきた。効率よく経理を回し、ミスなく申告したいが、何か良い方法はないか模索している。
悩みのポイント: 会社の成長に伴い、取引量が増加すると経理担当者一人では手が回らなくなることがあります。不動産売買仲介は1件あたりの金額が大きく、手数料収入や広告宣伝費・接待費など勘定科目も多岐にわたります。毎月の試算表作成や支払い処理に追われ、決算時期には残業続き…といった事態も。人的リソースが限られる中でいかに経理業務を効率化するかが課題です。また、会社規模が拡大すると税務調査の可能性も高まるため、帳簿の正確性維持にもプレッシャーがかかります。
対策アドバイス: クラウド会計ソフトや業務システムの活用が有効です。例えば不動産仲介業向けの営業管理システムと会計ソフトを連携させれば、契約情報から自動で売上仕訳を起こすことも可能です。銀行口座やクレジットカードの明細も自動連携すれば、手入力の手間とミスを大幅に削減できます。さらに、経費精算システムを導入して社員の立替経費をデータで回収すれば、紙の領収書処理が楽になります。これらITツールへの初期投資はありますが、長期的には経理工数を減らしミス防止にもつながります。
人的リソースの工夫も重要です。経理担当1名で抱え込まず、社内で簡単な経理作業を分担しましょう。例えば各営業担当に簡単な入金チェックや経費申請入力をさせ、経理は承認するだけにするといった具合です。また、税理士顧問を積極的に活用して月次などの節目のタイミングでの決算を効率化するのも手です。試算表を税理士にチェックしてもらい、決算整理仕訳(減価償却や法人税の仮計上など)は税理士に任せれば、社内経理の負担が軽減します。税理士法人加美税理士事務所のように主要会計ソフトに対応しクラウドでデータ共有してくれる税理士なら、日常のやりとりもメールやチャットでスムーズです。
注意点: 効率化とはいえ、基本的な内部チェック体制は維持しましょう。経理担当者一人に任せきりにせず、社長や他の管理者が月次損益のレビューを行い不正やミスがないか確認することが望ましいです。特に金銭出納は二重チェックの仕組みを作り、不明な出入りがないか経理と経営層で共有してください。効率化とガバナンス(統制)のバランスを保つことが、青色申告を長く続けるコツです。
ケース: 賃貸物件の一括借上(サブリース)業を営む会社。オーナーから物件を借り上げて転貸するビジネスモデルのため、毎月多数の入出金(家賃収入とオーナーへの支払)が発生する。収支構造が複雑で、帳簿管理や青色申告時の集計に苦労している。
悩みのポイント: サブリース業は他業種に比べ収入と支出の流れが特殊です。借り上げ家賃と転貸家賃の差額が利益となりますが、物件ごとに収支を管理しないと、どの物件が利益を出しているのか把握しづらいです。毎月の家賃集計やオーナー清算も煩雑で、経理担当者は膨大な仕訳を処理する必要があります。さらに住宅の賃料収入は消費税非課税、一方で管理手数料収入等は課税対象、といった消費税の混在も悩みどころです。「青色申告で帳簿を付けているものの、果たして正しく収支を捉えられているのか…」と不安になる経営者もいるでしょう。
対策アドバイス: 物件別の収支管理を徹底することが第一です。会計上は一つの損益計算書でも、内部管理用に物件ごとの収支表を作成しましょう。会計ソフトによっては部門別・プロジェクト別損益機能がありますから、物件ごとに部門コードを割り当てて経費と収入を分類する手もあります。そうすれば青色申告用の全社合計決算書だけでなく、物件単位でのミニ決算も把握でき、収益性の低い案件の洗い出しやオーナーへの賃料見直し提案など経営判断に活かせます。
毎月の家賃の入金消込やオーナーへの送金計算は、できるだけシステム化すると良いでしょう。サブリース業向けの管理ソフトを利用すれば、家賃入金情報から自動でオーナー配分を計算し、経理仕訳も同時に起こせるものがあります。ITツールへの投資が難しい場合でも、せめてExcelでテンプレートを作成して半自動化するなどして、担当者の作業負荷を下げる工夫が必要です。
消費税に関しては、課税売上高が基準を超えれば課税事業者となり申告義務が生じます。不動産賃貸のうち住宅の家賃収入は非課税ですが、事務所・店舗など事業用物件の家賃収入は課税売上です。またオーナーから受け取る物件管理料や更新手数料等も課税対象となり得ます。課税売上高が年間1,000万円を超えるかどうかを注意深くモニタリングし、該当すれば適時に消費税申告の準備をしましょう(消費税の詳細は後述)。帳簿上も課税・非課税を分けて記録することで、後から消費税計算がしやすくなります。
注意点: 膨大な取引を処理する際はヒューマンエラーに注意です。一件入力ミスがあるだけで収支が合わなくなるため、複数人体制でチェックするか、可能な限り自動化しましょう。また、物件オーナーへの支払明細など対外的な帳尻も合っているか確認が必要です。青色申告の帳簿がそのままオーナーへの信用にも影響します。正確な帳簿を維持することで、税務だけでなく取引先との信頼関係も守られることを意識しましょう。
ケース: 土地を仕入れて建物を建築し販売する「建売」不動産業者。複数の物件を並行して開発・販売しているが、原価の振り分けや売上計上のタイミングが複雑で、正確な利益が把握しづらい。青色申告で帳簿は付けているものの、在庫や原価管理に課題を抱えている。
悩みのポイント: 建売業では、プロジェクトの収支期間が長期にわたる点が難しさの原因です。土地代や建築費など多額の原価を投入しても、物件が完成・販売されるまで売上は立ちません。その間は仕掛品(在庫)として計上しますが、簿記処理に不慣れだと経費計上のタイミングを誤りがちです。例えば、支出時に全てを経費に落としてしまうと、その期は大赤字になり翌期に大きな黒字が出るなど、損益のブレが大きくなります。本来は適切に在庫計上すべきところをキャッシュの出入りだけで見てしまうと、経営判断を誤る恐れがあります。「青色申告をしているのに、結局いくら儲かったのか分かりづらい…」という悩みにつながります。
対策アドバイス: 工事進行基準や販売基準に則った正しい収益・原価計上を行いましょう。建売の場合、物件が完成し販売した時点で売上計上し、それまでにかかった取得原価を売上原価として計上します。それまでは土地代・建築代等は「棚卸資産(未成工事支出金や商品在庫)」として貸借対照表に資産計上します。青色申告で複式簿記を活用すれば、この在庫計上がきちんとできます。具体的には仕訳で支出時に「商品」勘定(資産)を増やし、売上時に「商品」を減らして売上原価に振り替える処理です。会計ソフト上で在庫管理が難しければ、プロジェクトごとに原価集計表を作り、完成時に一括で仕訳を計上する方法もあります。重要なのは、発生主義に基づき適切な期間損益計算をすることです。青色申告の帳簿でこれが実現できれば、各期の本当の利益が見えるようになります。
また、原価管理の体制整備も鍵です。プロジェクトごとの予算を立て、支出のたびに予算と実績を対比しましょう。土地仕入から造成、建築、販売広告費まで、費目ごとに予算管理することで、どこでコスト超過しているかを早期に発見できます。経理担当だけでなく、現場担当者も巻き込んで原価意識を共有することが大切です。青色申告の帳簿は単に税務申告のためだけでなく、経営の羅針盤として活用しましょう。
注意点: 建売業者の場合、売上高も大きくなるため消費税の課税事業者となるケースがほとんどです。建物部分の販売には消費税がかかり、土地部分は非課税という扱いになるなど、消費税計算も複雑です。この点については次の「消費税の申告」セクションで詳しく触れますが、原価管理と合わせて消費税の仕入控除計算(建物に係る仕入税額控除など)も念頭に置く必要があります。いずれにせよ、正確な原価計算ができていれば消費税申告も適正に行えるため、まずは帳簿上で在庫と原価を正しく把握することに注力しましょう。
最後に、青色申告にまつわる補足的なテーマをいくつか確認しておきます。不動産業の法人が青色申告を行う上で関連して検討すべきポイントや、よくある疑問事項について解説します。
青色申告は法人税(または所得税)の制度ですが、事業を営む以上消費税の申告義務にも注意が必要です。青色申告そのものが直接消費税に影響を与えるわけではありませんが、不動産業では売上規模や取引内容によって消費税の負担が大きく左右されます。
まず、法人が消費税を申告・納税しなければならない課税事業者になるかどうかは、「基準期間(原則として2期前)の課税売上高」が1,000万円超か否かで決まります。不動産会社の場合、物件の売買代金や仲介手数料収入など消費税がかかる売上がある程度大きくなると、2期後には課税事業者となって消費税申告が必要になります※。例えば賃貸仲介業であれば、家賃そのものは住宅なら非課税ですが仲介手数料は課税売上です。年間仲介手数料が1,000万円を超えれば、翌々期には消費税を申告し、受け取った消費税を納税しなければなりません。※特定期間における課税売上高等による判定などにより、さらに早いタイミングで課税事業者になる場合もあることに留意してください。
一方、青色申告か白色申告かに関わらず、消費税の計算ルール自体は同じです。青色申告だから消費税が安くなる、という直接的な特典はありません。ただし、青色申告で複式簿記の帳簿を付けていれば、売上や経費を税込経理・税抜経理のいずれかで正確に記帳できるため、消費税の計算をスムーズに行えます。白色申告で経理が大雑把だと、消費税申告書の作成時に取引を洗い出すのが大変ですが、青色申告で日々税区分を意識して入力しておけば集計は容易です。
不動産業固有の消費税のポイントとしては、以下のようなものがあります:
- 課税売上と非課税売上の区分: 不動産の賃貸収入でも、住宅の賃料は非課税、事業用物件の賃料は課税と分かれます。売買でも土地部分の譲渡代金は非課税、建物部分は課税です。したがって帳簿上でそれらを区分しておかないと、仕入税額控除(課税売上に対応する経費の消費税控除)が正しく計算できません。
- 簡易課税制度の検討: 基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば、消費税計算を簡略化できる簡易課税制度を選択可能です。不動産業(不動産仲介や賃貸等)のみを営む場合、みなし仕入率は40%となります。事前に届出が必要ですが、経理の負担軽減になる場合もあります。ただし大きな設備投資をして仕入税額控除を受けたいケースでは不利になるので注意が必要です。
- 新設法人の特例: 新しく設立した会社は、資本金が1,000万円未満であれば原則として設立1期目と2期目(※)は消費税免税事業者になります。ただし、設立時に資本金1,000万円以上にすると初年度から課税事業者となりますし、多額の課税仕入を伴う不動産販売を初年度に行う場合はあえて課税事業者選択届を出して消費税還付を受ける、といった戦略も考えられます。ここは事業計画と合わせて要検討事項です。※特定期間における課税売上高等による判定などにより、課税事業者になる場合もあることに留意してください。
このように、青色申告の法人は売上規模や取引内容を踏まえて消費税の制度選択や申告にも対応していく必要があります。消費税は税率も高くインパクトが大きいので、税理士と相談しながら有利不利を検討してください。
消費税について詳しくは下記のページをご覧ください。
青色申告を適切に行っている法人でも、数年に一度は税務調査(主に任意調査)が入る可能性があります。不動産業は取引金額が大きかったり、現金収入・支出も発生し得るため調査対象になりやすい業種とも言えます。では、税務調査にしっかり対応するにはどのような準備が必要でしょうか。
最大のポイントは帳簿類を整備しておくことです。青色申告法人は複式簿記で日々の取引を記録しているはずですが、その帳簿がきちんと現実の取引を反映しているかが重要です。具体的には次のような対策を講じましょう。
- 証憑書類の完備: 売上や経費の根拠資料(契約書、領収書、請求書、通帳の控え等)を整理・保管しておきます。税務調査では必ずと言っていいほど帳簿と証憑の突合せが行われます。「この経費の領収書を見せてください」「この売上の契約書はありますか?」といった具合です。青色申告の要件でもある帳簿書類の保存義務を果たす意味でも、書類は日付順・科目別にファイリングし、電子データで受領したものはフォルダ分けしておきましょう。
- 現金・預金残高の一致確認: 調査官は現金出納帳や預金出納帳が正しく管理されているかをチェックします。日々の入出金が漏れなく帳簿に記録され、残高も実際の手持ち現金・通帳残高と一致していることが理想です。特に不動産賃貸の家賃収入などで現金を扱う場合、未記帳の入金や使途不明金がないように注意します。現金商売ではない不動産仲介でも、預り金(手付金や保証金)の管理に不備があると指摘を受けかねません。
- 申告書と帳簿の突合せ: 提出した確定申告書の各数字(売上高、経費合計、損益計算書や貸借対照表の数字)が、帳簿残高と一致しているか再確認しましょう。科目内訳明細書に記載した各項目(金額、相手先名など)についても整合性をチェックします。調査では申告書と総勘定元帳の数字を付き合わせて相違がないか確認されます。ケアレスミスによる申告漏れ(例えば科目区分違いで一部費用計上漏れがある等)は早めに把握して、必要なら修正申告の用意も検討します。
- 不動産業特有の論点を整理: 不動産業では、例えば交際費の範囲や、土地建物の譲渡の経理処理、消費税の課税非課税区分など論点が多岐にわたります。過去の申告で判断が難しかった点(グレーゾーン)は事前に税理士と協議し、税務調査で聞かれたらどう説明するか準備しておくと安心です。契約書に基づいて計上した損金算入額(例えば違約金や貸倒損失など)があれば、その根拠資料もすぐ提示できるようにします。
- 電子帳簿・データの体制: 近年は調査でも電子データの提示を求められることがあります。会計ソフトの元帳データや、電子取引データの保存状況も確認対象です。電子帳簿保存法に沿っているか、要件を満たしていない場合は紙出力して保管してあるか、といった点も見られます。メールやシステムで授受した請求書等も検索できる形で保存しておきましょう。
以上のように、平素から青色申告のルール通りに帳簿を付け、証拠書類をしっかり管理しておけば税務調査は怖くありません。むしろ調査官から「帳簿がしっかりしていますね」と評価されれば、短期間で調査が終わり追加指摘ゼロというケースも十分あり得ます。逆に帳簿不備だと深掘りされてしまうため、「きちんとやっている」姿勢を示すことが大切です。税務調査に万全を期すためにも、日頃からの帳簿整備を心がけましょう。
税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。
青色申告を活用している法人が検討できる節税対策には様々なものがあります。すでにメリットの項で挙げた制度的な特典(繰越控除や少額減価償却など)以外にも、青色申告だからこそ取り組める節税策をいくつか紹介します。
- 欠損金の計画的活用: 繰り越した欠損金は将来10年間使えますが、戦略的に使うことで節税効果を最大化できます。例えば今期大きな利益が見込まれるなら、過去の繰越欠損金を全額充当して法人税をゼロに近づけることが可能です。また、将来の収益見通し次第では繰り戻し還付と繰越控除のどちらを選ぶか判断も必要です。中小企業の場合、赤字発生時に前期と今期どちらで相殺するのが有利か、資金繰りと税率を考慮して選択しましょう。
- 減価償却の調整: 青色申告では減価償却費も経費計上できます。任意償却資産(償却をあえて計上しないことも認められる)については、利益が少ない年は償却せず繰り越し、利益が多い年にまとめて償却するといった調整も可能です。また特別償却や即時償却の制度を使える設備投資(例えば中小企業経営強化税制の対象資産等)があれば、青色申告法人として届け出を出すことで通常以上の減価償却による節税も図れます。不動産会社の場合、営業車や重機、IT機器の入れ替えなどでこうした制度が利用できることがあります。
- 各種引当金や準備金の活用: 青色申告法人は税法で認められた引当金・準備金を計上できます。例えば一定規模以下の法人なら「貸倒引当金」を法定繰入率に基づいて設定し、将来の貸倒れに備えて費用計上することが可能です(不動産売買の売掛代金やテナントからの未収家賃に対応)。また事業承継時の備えとして役員退職金の積立(担保積立制度)を行えば、適時に損金算入することで節税できます。保険商品を活用した準備金等もありますが、税制適用要件が細かいので税理士に相談のうえ行いましょう。
- タイミングのコントロール: 青色申告で正確な帳簿を付けていると、収支のタイミングを意識した節税が可能です。例えば決算前に必要な経費支出(修繕費や広告費など)を前倒しして当期に計上すれば利益圧縮できますし、逆に大口の売上計上を翌期にずらせるなら当期の納税額を抑えることができます。もちろん意図的な期ズレは適法な範囲で行う必要がありますが、収益・費用の計上基準を守りつつ柔軟にタイミングを調整するのは中小企業の節税テクニックの一つです。これもリアルタイムで帳簿を付けて利益予測が立っているからこそできる芸当です。
- 法人ならではの経費計上: 法人形態で青色申告をしている利点として、経費計上できる範囲が個人より広がる場合があります。役員給与は定期同額なら全額損金ですが、個人事業主の自分への報酬は経費になりません。また、不動産会社で社宅を社員に貸与している場合、社宅費用の一部を福利厚生費として経費化できます。会社の経費として計上できるものを最大限計上することが節税につながります。青色申告の帳簿でしっかり管理し、不適切な流用がないようにしながらも、合法的な経費計上漏れがないか検討しましょう。
これら節税対策はいずれも適切な帳簿記帳と計画立案が前提となります。青色申告でこまめに数字を追いかけ、税理士と相談しながら年度末までに打てる手を打つことがポイントです。ただし、焦って無理な節税をすると将来にツケを残す可能性もあります。中長期の事業計画を踏まえてバランス良く対策を講じましょう。
節税対策について詳しくは下記のページをご覧ください。
もともと不動産賃貸業などを個人事業で行っていた方が法人化するケースも多いでしょう。法人化(法人成り)すると青色申告の扱いがどう変わるのか、主なポイントを整理します。
まず、個人事業主として青色申告をしていた場合でも、法人を新たに設立したら改めて法人として青色申告承認申請が必要です。青色申告制度は個人と法人で別物なので、個人で青色だったからといって法人が自動的に青色扱いにはなりません。したがって、法人化を決めたら速やかに法人の青色申告承認申請書を提出し、初年度から青色を適用できるようにしましょう(設立1期目から青色にするには設立後3ヶ月以内の申請が必要)。
法人化すると税制や申告義務も色々変化します。例えば、個人では享受できていた65万円の青色申告特別控除は法人にはありません。代わりに法人税の繰越控除や減価償却の特例など、新たなメリットが生じます。個人で青色専従者給与を配偶者に払って経費にしていた場合も、法人では配偶者は従業員または役員となり給与を支払えば同様に損金算入できます(専従者という概念は不要)。基本的に法人になった方が節税策の幅は広がることが多いですが、一方で法人住民税均等割など利益がなくても発生する税負担も出てきます。
また、法人成りした年は申告が二回必要になります。事業を引き継いだタイミングによって、個人事業としての期首から法人成り前日までを個人の所得税確定申告、法人設立日から期末までを法人の法人税等の確定申告、とそれぞれ対応しなければなりません。この際、個人事業の青色申告で繰り越していた損失があっても、それを法人に引き継ぐことはできません。個人と法人は別納税者なので、個人の欠損は法人では使えず消滅してしまいます。そこで、例えば繰越損失を使い切ってから法人化するといったタイミングの工夫も考えられます。事業が順調で利益が出てきたから法人化するという流れが多いですが、過去の赤字を消化しているかなども検討材料です。
さらに、不動産賃貸業の場合事業的規模か否かで個人青色申告の控除額が10万円と65万円に分かれます。法人化すれば規模に関係なく繰越控除などフルに特典が使える反面、個人ならではの不動産所得税制が使えなくなる場合もあります。総合課税から法人税課税への移行で税率構造も変わりますので(個人の最高税率は住民税含め55%超、法人税等実効税率は約30%)、トータルの税負担がどう変わるか試算してみることが重要です。
総じて、法人化後も青色申告制度は存続しますが、中身は法人税モードに切り替わります。青色申告自体は引き続きメリットがあるので、法人になったから白色でいいや、とはならない点に注意しましょう。むしろ法人化によって経理や税務の重要性が増すため、これまで以上に適切な帳簿管理と専門家のサポートが欠かせなくなります。不動産業の法人成りは節税効果も大きいですが、細かな制度の違いを理解したうえで準備を進めてください。
法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。
不動産業を営む会社にとって、事業承継(次世代への引き継ぎ)は将来的に避けて通れないテーマです。青色申告で適切に経理・税務管理していることは、この事業承継の場面でも大きな助けとなります。
一番の理由は、会社の財務内容が透明で信頼できる状態になることです。帳簿がしっかり整備され利益計画も明確な会社であれば、後継者も事業の実態を正しく把握できます。例えば親族内承継であっても、貸借対照表や損益の状況がキチンと示されていれば、引き継ぐ側は安心です。逆に帳簿がぐちゃぐちゃでは、何を引き継ぐのかすら分からず不安要素だらけになってしまいます。青色申告を続けることで決算書類の信用度が高まり、承継時の社内外の信頼確保につながります。
また、不動産会社の場合は株式評価や相続税対策も絡んできます。例えばオーナー社長が高齢で後継者に株を譲渡・相続する際、会社の純資産や収益力が株価評価額に影響します。青色申告で過去の欠損金を活用していたり、適切に資産評価を行って減価償却していれば、余分な含み益を抱えない財務体質となります。逆に粉飾まがいのことをして利益を過大計上していると、株価も高騰して相続税負担が増える恐れがあります。日頃から正確な申告をしていれば、そういったリスクを抑えられます。
さらに、事業承継時には金融機関や取引先への説明も必要です。銀行から融資を受けている場合、後継者に事業が渡る際に改めて財務内容の審査がありますが、青色申告で信頼性の高い決算書を出していればスムーズに承継後の融資も継続できるでしょう。取引先に対しても、「この会社は経理がきちんとしていて健全経営だ」と認識されていれば、経営者が代わっても安心して取引を続けてもらえます。
最後に、人材面でも青色申告を通じた社内体制整備が役立ちます。つまり、承継までに経理財務の仕組みが整っている会社であれば、後継者は経営に集中できます。承継後すぐに数字が分からず右往左往…ではなく、毎月の試算表や過去の実績データが揃っているため、新社長も経営判断を下しやすくなります。これは青色申告に限った話ではないですが、日頃から経営と一体化した会計管理を行っている会社ほど、世代交代も円滑です。
以上のように、青色申告で培った財務の見える化と適正申告の姿勢が、将来の事業承継を成功させる一助となります。不動産業は代替わりで銀行保証や許認可(宅建業免許など)の引継ぎもありますが、結局のところ会社の数字が信用の要です。今のうちから青色申告を活用して健全な財務体質を築いておくことが、次の世代への最高の贈り物になるでしょう。
事業承継について詳しくは下記のページをご覧ください。
不動産業の法人が青色申告を適切に活用しようとする際、専門家のサポートは非常に心強いものです。私たち税理士法人加美税理士事務所は、東京・銀座を拠点に不動産業に特化した税務支援を行っており、青色申告に関しても万全のサポート体制を整えています。ここでは、当税理士事務所の青色申告サポートの3つの強みをご紹介します。
税理士法人加美税理士事務所では、フルリモート対応により日本全国のクライアントをサポートしています。遠方の不動産会社様でも、オンライン会議やクラウド会計ソフトを活用してリアルタイムに経理・申告業務の支援が可能です。書類の受け渡しもスキャンや写真データでOK、必要があれば画面共有で帳簿の付け方をレクチャーすることもできます。これにより移動時間や対面調整の手間を省き、忙しい不動産業の方でもスピーディーかつ柔軟に税務相談していただけます。全国対応ですが対応の質は均一で、各地の不動産事情にも精通した税理士が揃っています。「地方で不動産業を営んでいるが、専門の税理士に見てもらいたい」といった場合でもぜひご相談ください。
当税理士事務所は主要な会計ソフト(弥生会計、TKC、freee、マネーフォワードクラウド、勘定奉行など)に精通しており、クライアントが使い慣れたソフトをそのまま利用したサポートが可能です。特に最近ニーズが高いクラウド会計については、リアルタイムでデータ共有しながら記帳内容をチェック・修正したり、決算書を即座に作成したりといったクラウドならではの機動力を発揮しています。ソフトの選定についてアドバイスすることもでき、お客様の規模やニーズに応じて「この会計ソフト+この管理ソフトの組み合わせが良い」といった提案も行います。もちろん、エクセル管理から初めてみたいという方にはテンプレート提供や使い方指導もいたします。お客様のIT環境に合わせて柔軟に対応するのが当税理士事務所のモットーです。
何と言っても不動産業界に特化した専門知識が当税理士事務所の最大の強みです。不動産賃貸業、売買仲介業、デベロッパー、サブリース業者、建設・リフォーム業など様々なクライアント実績があり、それぞれのビジネスモデルに応じた経理・税務のノウハウを蓄積しています。不動産業特有の論点(例えば管理物件の修繕費と資本的支出の判定、建物の仕入消費税還付スキーム、固定資産の減価償却など)についても熟知しておりますので、業界に即した的確なアドバイスが可能です。青色申告の手続き代行や帳簿チェックはもちろん、「この経費はどの科目に入れるべき?」「この取引の税務上の扱いは?」といった細かな疑問にも丁寧にお答えします。税理士法人加美税理士事務所では税理士がお客様をサポートしますので、複雑な不動産取引があっても綿密に調査・検討し最適な処理方法を導き出します。不動産業の心強い税務顧問として、ぜひ弊社の力をご活用ください。
本記事では、不動産業を営む法人の青色申告について包括的に解説してきました。青色申告は確かに手間も伴いますが、その分得られるメリットは大きく、会社の成長と財務健全性に寄与する制度です。「うちの会社の場合はどうだろう?」「具体的な進め方を教えてほしい」など疑問がございましたら、ぜひ専門家に相談してみてください。
税理士法人加美税理士事務所では、青色申告に関する無料相談を随時受け付けております。不動産会社の皆様の規模や業態に合わせて、最適な帳簿の付け方から節税対策まで親身にアドバイスいたします。初めて税理士へ相談するという方も大歓迎です。分かりにくい専門用語は使わず、平易な言葉でご説明しますのでご安心ください。
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