クリニックを”数字で守り、数字で伸ばす”ために。開業から多院展開まで、全国の美容医療クリニックを完全リモートで支援。確定申告から法人化、節税対策まで丸ごとご相談ください。
節税対策でクリニック経営を強化するために
ページコンテンツ
自由診療クリニックが節税に取り組むことには、さまざまなメリットがあります。
- 手元資金の確保:合法的に税負担を減らすことで、クリニックに現金を多く残すことができます。その資金は新しい美容医療機器の導入や内装リフォーム、スタッフの増員などに再投資でき、サービス向上や集患力アップに役立ちます。
- 経営の安定化:節税によって得られた余裕資金は、景気変動や患者数の増減による収益の変動に備える蓄えにもなります。自由診療は季節や流行によって売上が変動しやすいため、無駄な納税を防ぎ内部留保を厚くしておくことは安定経営のリスクヘッジにつながります。
- 適正な申告と信頼性向上:日頃から経費や収入を正確に計上し節税を図ることは、税務上の適正な申告にも直結します。帳簿を整備し領収書を管理する習慣が身につけば、万一税務調査が入っても慌てず対応でき、クリニックの信用を損なう心配も減るでしょう。
- 従業員や家族の利益:節税で生まれた余剰資金はスタッフの待遇改善や福利厚生の充実にも回せます。例えば決算賞与や研修費用に充てることで従業員満足度を高め、離職防止に寄与します。またクリニック経営が安定すれば、院長ご自身やご家族の将来の資産形成にもつながります。
- 経営に専念できる安心感:税金面での不安が軽減されると、院長先生は本業である医療サービスに一層集中できます。「知らずに損をしていた」という事態を避け、適切な節税対策を講じていれば、安心してクリニック運営に取り組めるでしょう。
このように、節税することのメリットは単なる税負担の軽減に留まりません。浮いた資金を経営強化に活用し、患者様へのサービス向上や将来の事業展開に備える好循環を生み出す点にこそ、大きな意義があります。
効果的な節税を実践するためには、いくつかの基本知識を押さえておく必要があります。まず大前提として、節税は脱税と異なり法律で認められた手段で行うものです。領収書を偽造したり収入を意図的に漏らしたりする行為は脱税となり厳禁です。そうではなく、現行の税制の中で受けられる控除や特例を活用したり、経費計上漏れを防いだりするのが正しい節税対策です。
税金の種類とクリニックへの影響も理解しておきましょう。個人で開業している場合、クリニックの利益には所得税(+住民税)が課されます。一方、法人化していれば法人税(+地方法人税)が課税されます。所得税は累進課税で所得が増えるほど税率が最高55%まで上がりますが、法人税は概ね一律で中小法人なら約15〜23%程度(所得金額により段階あり)です。法人住民税や事業税も合わせた実効税率は、約33%です。利益規模によってどちらが有利かは変わるため、事業規模に応じた法人化の検討が節税上重要になります。法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。
また、クリニックの収入に関わる消費税にも注意が必要です。公的保険が適用される診療収入(保険診療)は非課税ですが、自由診療による収入は消費税の課税対象です。開業初期は売上が小さいうちは消費税の納税義務が免除される免税事業者になれる場合があります(前々年または前々期の課税売上高1,000万円以下などが条件)が、売上拡大に伴い数年後には納税義務者となる可能性が高いです。自由診療クリニックでは2年目以降に消費税負担が一気に発生し資金繰りが悪化するケースもあるため、早めに消費税を見据えた資金計画・価格設定を行っておきましょう。消費税について詳しくは下記のページをご覧ください。
経費計上の重要性も基本中の基本です。節税のコツは必要経費をもれなく計上することにあります。クリニック経営では、医薬品や消耗品の仕入代、施術材料費、スタッフ給与や社会保険料、テナントの賃料、広告宣伝費、水道光熱費、医療機器の減価償却費、通信費や事務用品費など様々な経費が発生します。これらは事業のための支出であれば必要経費として利益から差し引くことができ、その分所得が圧縮されて税金が安くなります。プライベートな支出は経費にできませんが、事業と私用が混在しやすい費目(自家用車の業務利用分や自宅兼事務所の家賃・光熱費の一部など)は、合理的な按分によって業務使用分を経費計上できます。領収書やレシートは必ず保管し、いつ何に使ったかメモを付けておくと、後から税務調査を見据えた対策にもなります。税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。
さらに、個人事業の場合は青色申告のメリットを知っておきましょう。青色申告とは一定の要件を満たした帳簿付けを行うことで、税制上の様々な特典を受けられる制度です。最大65万円の青色申告特別控除をはじめ、赤字の繰越控除(最大3年間)や、家族に支払う給与を経費にできる専従者給与の特例など、節税に直結する有利な制度が利用できます。これらを受けるためには開業から2ヶ月以内(またはその年の3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があるので、開業前後の早めの段階で手続きをしておくことが大切です。青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。
以上のような基本知識を踏まえたうえで、具体的な節税対策に取り組んでいきましょう。次からは、クリニックの状況別に効果的な節税ポイントを解説します。
クリニックの開業を目前に控えた段階から、すでに節税対策は始まっています。開業準備で忙しい時期ですが、事前の一工夫が開業後の税負担を軽減し、スムーズな経営スタートに貢献します。ここでは、これから美容クリニックを開業しようとしている方向けに、開業前および開業初年度に押さえておきたい節税のポイントをご紹介します。
クリニックを開院する前の準備段階でも、意識しておきたい節税の心得があります。
- 開業費を整理・計上する:物件探しや市場調査、内装工事、医療機器の購入、スタッフ採用活動、広告宣伝など、開業準備には様々な費用が発生します。これら開業前にかかった費用(固定資産として計上すべきものを除く)は「開業費」という勘定にまとめて計上できる繰延資産です。開業費は開業後に一括経費にすることも、数年にわたり償却することも可能です。領収書や契約書を漏れなく集計し、開業費として計上しておけば、開業後最初の決算で大きな節税効果を得られるでしょう。
- 開業形態の選択と届出:開院時に個人事業としてスタートするか、法人を設立するかによって税務戦略は変わります。一般的にはまず個人で開業し、軌道に乗った段階で法人化(医療法人化含む)を検討するケースが多いです。個人開業であれば前述の青色申告の届出を忘れずに行い、最大限の控除を受けられる準備をしましょう。法人設立する場合は設立時の拠出金をいくらにするかがポイントです。拠出金1,000万円未満で会社を設立すれば、設立1期目と2期目は消費税の納税義務が免除されます(一定の要件あり)。逆に1,000万円以上でスタートすると初年度から消費税納税が必要になるため、多くのクリニックでは拠出金を抑えて設立します。開業直後の資金繰りを楽にするためにも、消費税の免税メリットを考慮した事業形態・拠出金設定がおすすめです。
- 税務署への各種届出:青色申告承認申請書の提出以外にも、開業時には税務署等へ提出すべき書類があります。個人開業の場合は「個人事業の開業届出書」を開業から1ヶ月以内に提出します。また、従業員を雇う場合は「給与支払事務所等の開設届出書」も必要です。これらは直接の節税策ではありませんが、適正に手続きを踏んでおくことで税務上の信用を損ねず、スムーズな経営スタートにつながります。届出漏れによるペナルティを避けるためにも、専門家に開業支援を依頼して必要書類を整えるのも一つの方法です。
開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。
晴れて開院を迎えた初年度は、経営・税務ともに特に注意深く対応したい時期です。初めて尽くしの1年目に押さえておくべきポイントを見ていきましょう。
- 青色申告特別控除の適用:個人開業の場合、初年度から青色申告を行うことで65万円の特別控除を受けられます。開業後すぐは経理体制の構築で手一杯かもしれませんが、会計ソフトの導入や税理士のサポートを受けてでも、ぜひとも青色申告にチャレンジしてください。特に初年度は内装費や設備投資で赤字になりやすいですが、その赤字は3年間繰り越しでき、翌年度以降の黒字と相殺できます。青色申告でないと赤字の繰越控除は受けられないため、初年度からの青色申告が非常に重要です。
- 月次決算で早めに利益を把握:開業1年目は収支の予測が立てにくいものです。「思ったより利益が出ていた」というケースや「支出が嵩んで赤字になっていた」というケースも少なくありません。節税のチャンスを逃さないために、できれば毎月または四半期ごとに損益を集計し、決算前に利益見通しを把握しましょう。利益が多く出そうであれば年内に必要な消耗品を前倒しで購入する、予定していた広告宣伝を実施する、あるいもスタッフに決算賞与を支給するなど、合法的に経費を増やす施策を検討します。逆に赤字見込みなら無理な支出は控えつつ、記帳漏れの経費がないか確認して損失額を最大化しておくことも大切です。早期の業績把握により、節税対策の打ち手をタイムリーに講じることができます。
- 消費税の課税事業者判定に注意:個人事業の初年度(1月〜12月)は開業年で前々年の売上がないため、基本的に消費税は免除されます。ただし例外として、拠出金1,000万円以上の法人を設立して個人事業を引き継いだ場合などは初年度から課税事業者となるケースがあります。通常は2年目も初年度売上が1,000万円以下なら引き続き免税になります。しかし開業初年度が想定以上に好調で課税売上高が1,000万円を超えた場合、3年目から(場合によっては2年目から)消費税の納税義務が発生する点に注意してください。特に美容クリニックは自費診療売上が丸ごと消費税課税対象となるため、消費税課税が始まると納税額も大きくなります。初年度からしっかり売上が立った場合は、翌々年に向けて消費税分の資金を確保しておくなど、早めに準備を進めましょう。
- 経理体制の整備:開業当初はレセプト業務や予約管理など本業で手一杯になりがちですが、同時に経理の仕組み作りも進めておきましょう。売上日報や領収証のファイリング、請求書・領収書の管理、経費精算ルールの整備など、基本的な経理ルールを1年目のうちに確立しておくことが大切です。特に現金売上が多い美容クリニックでは、現金売上と預金入金額が一致するよう管理を徹底しましょう。日々の売上集計と定期的な銀行入金を行うことで、不正のない健全な経営をアピールできます。また、公私の区別をつけるために事業専用の銀行口座・クレジットカードを用意し、院長個人の生活費と事業経費を明確に分けることも重要です。初年度のうちにこうした体制を整えておけば、2年目以降の節税対策も格段にスムーズになるでしょう。
- 専門家への相談を検討:初めての確定申告や決算に不安を感じたら、早めに税理士に相談しましょう。税務顧問契約までは結ばなくても、決算前の節税アドバイスや確定申告書のチェックだけを依頼することも可能です。開業初年度は医療に専念するので精一杯、という先生も多いと思います。無理にすべてを独力で抱え込まず、専門家の力を借りて適切に節税しながら本業に集中する方が、結果的に時間とコストの節約になるケースもあります。加美税理士事務所でも開業支援の一環として初年度の節税アドバイスを行っていますので、お気軽にご相談ください。
開業支援について詳しくは下記のページをご覧ください。
地方の中小都市でクリニックを個人経営されている場合、都心部とはまた異なる経営環境があります。患者数や客単価は都心部より小さめかもしれませんが、その分地元に根ざしたきめ細かいサービス提供が強みとなるでしょう。税務面では、個人事業主として利用できる節税策をフル活用しつつ、将来的な法人化も視野に入れておくことがポイントです。ここでは、地方都市で個人開業している美容皮膚科クリニックの院長先生の例を題材として、実践すべき節税方法と、法人化を検討する際のメリットを解説します。
個人事業としてクリニックを経営する場合に有効な節税策を、いくつかピックアップしてご紹介します。
- 必要経費をもれなく経理する:まずは基本ですが、経費計上漏れを防ぐことが最大の節税につながります。クリニック運営に関連する支出は、小さなものでもすべて経費として記帳しましょう。医薬品や衛生材料、クリニックの水道光熱費、テナント料、医師会費や学会参加費、交通費・出張費、広告宣伝費、消耗品費、通信費など、漏れなく計上できているでしょうか。特に美容系は広告やWebマーケティングに費用がかさみやすいですが、これももちろん全額経費です。またプライベートとの兼用物も工夫次第で経費算入できます。例えば院長先生の自家用車を往診や仕入に使うなら、そのガソリン代・高速代の一部を経費にできますし、自宅の一室をカルテ管理や事務作業に使っているなら家賃や光熱費の按分分を必要経費にできます。少額でも積み重なれば大きな節税効果がありますので、日頃から意識して経費化しましょう。
- 青色申告特別控除のフル活用:青色申告による最大65万円の特別控除は個人クリニックにとって非常に大きな節税メリットです。帳簿をきちんと付けて確定申告を行うだけで、年間65万円の所得が非課税になるのと同等の効果があります。税率20%の所得層なら約13万円、税率33%なら約21万円もの節税額に相当します。ぜひ複式簿記による青色申告に取り組みましょう。また青色申告者には、先述の青色事業専従者給与の制度も使えます。例えば配偶者が受付業務を手伝っている場合、所定の届出を行えばその配偶者への給与を全額経費にできます。事業所得を夫婦など家族に分散できるため、世帯全体の税負担を軽減する効果が期待できます(所得が夫婦二人にわかれる分、それぞれの税率が下がります)。ただし専従者給与が認められるには「配偶者が半年超クリニック業務に従事」「15歳以上」など要件がありますので、実態に即した範囲で活用しましょう。
- 小規模企業共済への加入:個人事業主ならではの強力な節税策として小規模企業共済があります。国が運営する経営者向け退職金制度で、毎月の掛金(最大7万円、年84万円まで)を全額所得控除できます。仮に年間84万円掛金を拠出すれば、その分所得が減り所得税・住民税で数十万円の節税になるケースもあります。積み立てた掛金は将来の廃業時や退職時に共済金として受け取れるので、老後資金準備にもなります。ただし法人化(医療法人化含む)すると契約を続けられなくなる点に注意が必要です。近い将来法人化を予定している場合は、解約時期によっては元本割れの可能性もありますから、加入タイミングや掛金額を税理士と相談すると良いでしょう。
- 少額減価償却資産の特例活用:青色申告をしている個人事業主は、30万円未満の減価償却資産を年間合計300万円まで一括経費計上できる特例があります。クリニックでは20〜30万円未満の医療機器やパソコン、プリンター、備品類の購入も多いでしょう。それらは通常数年に分けて償却しますが、この特例を使えば購入した年に全額を経費にできます(年間合計300万円まで)。例えば25万円の脱毛機を4台購入しても、その年に100万円を一気に経費化でき、課税所得を大幅に減らせます。複数年にまたがる設備投資も、購入時期や金額を工夫してこの特例を活用すれば大きな節税が可能です。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用:国の年金に上乗せして自分で積み立て運用するiDeCoも節税効果があります。個人事業主の場合、iDeCoは月々最大68,000円(年間81.6万円)まで掛金を拠出でき、その全額が小規模共済などとは別枠で所得控除となります。例えば年間80万円積み立てれば、その分課税所得が減るため所得税・住民税の合計で20万円以上の節税になることもあります。老後資金を準備しつつ節税もできる一石二鳥の制度なので、将来に備えたい方は検討する価値があります(掛金は原則60歳まで引き出せない点には注意)。
以上、個人クリニック院長がすぐ実践できる節税策を挙げました。重要なのは、「節税のため」と称して不要な出費をすることではありません。節税はあくまで本来必要な支出を漏れなく経費にして税負担を減らすことや、将来に向けた備え(共済や年金)をしながら税金を軽減することに焦点を当てましょう。無駄遣いをして税金を減らしても本末転倒です。必要経費をしっかり計上し、使える制度は最大限に活用し、所得そのものを圧縮する——地道ですが、それが確実な節税への近道です。
個人開業から数年経ちクリニックの利益が大きくなってきたら、法人化(会社設立)を検討するタイミングかもしれません。所得が高額になると個人の税率は上限まで上がりますが、法人にすれば税率が抑えられる場合があります。ここでは、クリニックを法人化することによる主な節税メリットを見てみましょう。
- 税率の引下げ効果:個人事業の所得税・住民税の合計税率は、課税所得が900万円を超えると約33%、1,800万円超で約43%、4,000万円超で最大55%にも達します。一方、法人税等の実効税率は中小法人の場合おおむね30%前後、さらに年800万円以下の部分は約20%と低く抑えられます。例えば事業所得1,000万円の場合、個人では税率33%前後で330万円超の税負担となりますが、法人にして年800万円を超える部分だけが高率課税になるよう調整すれば、法人税負担は約200〜250万円程度で済む可能性があります。所得規模が大きいほど法人化による税率メリットは大きくなるといえます。
- 給与所得控除の活用:法人化すると院長先生は会社から役員報酬(給与)を受け取る形になります。給与には給与所得控除というサラリーマンと同様の控除が適用され、収入額に応じて一定額が非課税扱いになります。個人事業主にはなかった給与所得控除を受けられることで、院長個人にかかる税負担を軽減する効果があります。特に高収入になると給与所得控除額も最大年195万円まで増えますから、役員報酬を適切に設定することで個人事業では得られなかった控除を享受できるようになります。
- 所得分散と家族給与:法人化後も、家族を役員や従業員として迎え入れることで所得の分散効果が得られます。例えば配偶者を役員にして年200万円の役員報酬を支給すれば、その200万円は法人の経費となり法人税を減らせますし、配偶者側でも給与所得控除が使えるため手取りの大半を残せます。家族全体では高税率の所得を低税率の家族に振り分けた分、トータルの納税額が軽減される計算です。所得の家族内分散は法人化後も有効な節税手法です。
- 経費算入できる範囲の拡大:法人化すると経費として認められる範囲が広がる場合があります。個人事業では認められにくかった支出も、法人なら「会社の経費」として処理しやすくなるケースがあるのです。例えば院長個人所有の自宅を法人名義の社宅とし、会社が家賃の一部を負担すれば、住居費の一部を法人経費にできます。また法人では交際費の損金算入枠が拡大され、中小法人なら年間800万円までの交際費は所定の範囲で損金算入が可能です。美容クリニックでは機器ディーラーや紹介元との会食費なども発生しますが、法人にした方が柔軟に処理できるでしょう。さらに、法人で自動車を保有すればガソリン代や維持費を会社経費にできますし、役員の出張手当制度を設けて旅費日当を非課税で支給するといった工夫もできます。法人化によって経費として計上できる選択肢が広がる点も見逃せません。
- 役員退職金の活用:法人には役員退職金制度があります。院長先生が一定期間経営に携わった後引退する際、会社から退職金を支給できます。退職金は法人にとって損金(経費)となり、受け取る側では退職所得控除や1/2課税といった大きな優遇があります。同じ金額を給与でもらうより格段に税負担が軽くなるため、将来クリニックを譲渡・閉院する際に自身への退職金支給を行えば、事業承継と老後資金準備、そして節税を同時に実現できます。個人事業にはない大きなメリットです。
このように、法人化には節税上の利点が多々あります。ただし法人化には設立・維持コスト(登記費用や法人住民税の均等割、社会保険料負担、税理士顧問料増加など)も伴います。クリニックの事業規模や利益水準に応じて、適切なタイミングで法人化を検討することが重要です。一般には年間の利益が800〜1,000万円を超えると法人化メリットが出やすいとされますが、個々の状況によりますので、判断に迷う場合は税理士にシミュレーションを依頼してメリット・デメリットを比較検討すると良いでしょう。
銀座や新宿など都心部で美容クリニックを展開されているケースでは、高額な施術メニューによる高単価な収益が見込める一方、競合も多く常に経営努力が求められます。すでに法人化済みで大規模に運営されているクリニックでは、節税対策も一段高度な戦略が必要です。ここでは、都心の法人クリニックが押さえておきたい変動収益に対応した節税術や、顧問税理士との連携による節税強化策について解説します。
都心の美容整形クリニックでは、一件あたり数十万円〜数百万円の手術や施術も多く、月ごとの売上変動が大きくなりがちです。繁忙期には利益が跳ね上がり、閑散期には利益が落ち込むなど変動の幅が大きい場合、何もしないと利益が出た年に多額の税金を払い、翌年業績が落ちても前年度分の税金を納める…という事態になりかねません。これに対応するには、年単位で利益を平準化する視点が大切です。
- 利益が多い期に投資や経費を前倒し:大きな利益が見込まれる年度には、将来必要になる投資を前倒しで行うのが基本戦略です。例えば最新式のレーザー機器への買い替え、院内のリニューアル、広告宣伝の集中実施、計画的な設備メンテナンスなどが挙げられます。必要な支出を利益が出ている年に行えば、その分経費が増えて課税所得を圧縮できます。特に美容医療は技術革新が早いため、新たな治療メニュー導入のための設備投資はサービス向上にも直結し、一石二鳥の効果があります。また、利益が多い年には思い切って決算賞与という形でスタッフに還元するのも有効です(従業員賞与は全額経費になります)。一方で、院長への役員賞与は原則経費にならない(事前に定めたものを除き損金不算入)ので注意が必要です。役員である院長の報酬調整は賞与ではなく、役員退職金の積立や翌期の報酬増額など別の方法で検討しましょう。
- 繰越欠損金の活用:もし過去に赤字の年度があれば、その欠損金(繰越赤字)は利益が出た年度の所得から控除できます。法人では欠損金を最大10年間繰り越せるため、例えば大規模な設備投資で一時的に赤字になっても、翌年以降の黒字と相殺して税負担を軽減できます。都心のクリニックで設備を刷新した年に赤字が出た場合でも、その後の高収益と相殺すれば税金ゼロも可能です。欠損金を確実に活用するには赤字年度もきちんと申告しておく必要があります。税理士と相談の上、過年度の欠損金がある場合は有効期限内に漏れなく控除しましょう。
- 消費税計算方法の見直し:自由診療メインのクリニックでは消費税の納税額も多額になります。売上規模が大きいほど消費税負担も無視できませんので、消費税申告の方式を工夫して納税額を最適化しましょう。具体的には、実際の課税仕入額に応じて計算する「原則課税(一般課税)」か、業種ごとのみなし仕入率で計算する「簡易課税」かを選択できます。クリニックの経費構造によって有利不利は異なります。課税仕入(機器や材料の購入)が多い場合は原則課税で実額控除した方が有利ですし、課税仕入が少ない場合は簡易課税を選択した方が納税額が減る可能性があります。例えば自由診療比率の高いクリニックでは、簡易課税を採用することで消費税負担が大幅に軽減できる例もあります。毎期、売上構成や仕入状況を見て税理士と相談し、必要に応じて「簡易課税制度選択届出書」や「選択不適用届出書」を提出しましょう(選択したら2年間は継続適用などの制約に留意)。
- 中小企業向け優遇税制の活用:法人には業績変動に対応する各種の税制上の優遇策もあります。例えば賃上げ促進税制(旧所得拡大促進税制)では、従業員給与を一定割合増やすと法人税額の一部が控除されます。また中小企業がDX・IT投資を行った場合の特別償却や税額控除制度なども適用できるケースがあります。美容クリニックでも電子カルテの導入やオンライン診療システム構築などでこれらの税優遇を受けられる可能性があります。さらに地域によっては、先端設備導入計画の認定で固定資産税が減免される制度などもあります。最新の税制改正情報をキャッチし、自院に使える優遇策がないか税理士に確認してもらうことも大切です。
都心の大規模クリニックともなると、専門家である顧問税理士との連携が節税対策に欠かせません。記帳や申告を任せるだけでなく、税理士をパートナーとして積極的に情報交換や戦略立案を行いましょう。
- 定期的な節税プランニング:法人では通常、決算前に税理士と「決算対策」の打ち合わせをしますが、業績の変動幅が大きいクリニックではより高頻度のチェックがおすすめです。四半期ごと、あるいは半期経過時点で試算表を作成してもらい、中間時点での利益予測と納税見込みを共有しましょう。その上で「今期は利益が多いので◯◯の購入を検討しましょう」「利益が少ないので広告費の計上タイミングを調整しましょう」といった具体的な節税アクションを議論します。税理士は税法のプロとして最新の税制改正や各種特例に通じていますから、院長先生が気づかない節税のヒントを提示してくれることもあります。こうした提案を引き出すには、経営計画や設備投資予定を税理士に共有しておくことも大切です。まさに二人三脚で、節税のチャンスを最大限活かしましょう。
- 税務調査への備え:クリニックの規模が大きく利益水準も高いと、定期的に税務調査が入る可能性も高まります。税務調査では売上計上漏れや経費の私的流用がないか厳しくチェックされます。特に美容クリニックの場合、「現金売上が多い」「売上が毎年1,000万円手前で推移している(消費税免税を疑われる)」「経費に高額な車の維持費や不自然な交際費がある」などのケースで目を付けられやすいとされています。顧問税理士がいれば日頃から帳簿や領収書類をチェックしてアドバイスを受けられますし、実地調査の際も税理士が立ち会って適切に対応してくれます。税理士は調査官が重視するポイントを熟知しているため、「ここは指摘されやすいので証拠書類を用意しておきましょう」といった事前対策も可能です。税務調査で焦ったり余計な追徴税を払ったりしないためにも、平時から税理士とコミュニケーションを密にし、不明点はすぐ相談するようにしましょう。
- クリニック業界に強い税理士の活用:税理士にも得意分野があります。美容クリニック特有の税務論点(自由診療売上と保険診療の組み合わせによる消費税計算、医療法人化の判断基準、高額な医療機器の減価償却、医療広告ガイドラインとの関連など)に明るい税理士であれば、より実践的で踏み込んだ提案が期待できます。もし現在の顧問税理士がそうした提案をあまりしてくれない場合、クリニック専門の税理士への変更を検討するのも一つです。税理士法人加美税理士事務所でも、美容皮膚科・美容外科クリニックの顧問を務めるための業界特有のノウハウを蓄積しています。業界に詳しい税理士は経営全般の視点も交えて総合的な節税策を提案できますので、上手に活用して一層の節税効果を得てください。
クリニックを1院だけでなく、2院3院と分院展開してグループ経営をされているケースでは、単一院の運営とは別次元の戦略が求められます。節税もまたグループ全体で最適化を図る視点が必要です。ここでは、複数院を展開する美容クリニックグループに向けて、グループ経営ならではの節税・財務戦略と、将来的なM&Aや事業承継を見据えた税務上のポイントを解説します。
2院以上のクリニックを経営する場合、組織体制としては主に2通りあります。1つは法人を1つだけ設立して複数院をその法人の分院として運営する形、もう1つはクリニックごとに別法人(あるいは医療法人)を設立し、複数の法人からなるグループとして運営する形です。それぞれ節税上のメリット・デメリットがあります。
- 単一法人で分院展開:複数院を1法人で運営する場合、法人税計算は全院の損益を合算して行われます。メリットは、ある院の赤字と他院の黒字を相殺してグループ全体の税負担を平準化できることです。また経理・税務を一本化でき管理コストも抑えやすくなります。ただし全体の利益が大きくなると法人税率の高い帯にかかる部分が増えて税負担が重くなる点、売上がまとまるため消費税の課税事業者となり免税メリットを享受しにくい点はデメリットです。
- 複数法人でグループ運営:クリニックごとに別会社を設立する場合、それぞれの法人で税務申告を行います。各法人の課税所得が中小法人の軽減税率枠内に収まるよう利益をコントロールできれば、グループ全体として低い税率を享受できます。また各法人が売上1,000万円以下なら消費税免税の恩恵も受けられます。ただし一方の会社で黒字・他方で赤字が出ても損益通算はできないため、グループ全体としては非効率となる場合もあります。また同じオーナーが意図的に会社を分割して節税を図るスキームは、経済的実態に乏しいと判断されると税務上否認されるリスクもあります。複数法人で運営する場合は、各法人に役割の違いを持たせるなど明確な経営上の意図を伴わせることが肝要です(例:A社は開業医師個人のクリニック、B社は複数医師が勤務する美容クリニック、など)。
- グループ内取引での利益移転:グループ経営では、関連会社間の取引価格設定によって利益配分を調整できる場面もあります。例えば院長個人が所有する不動産を不動産管理会社に移し、各クリニック法人にそこから高めの家賃で貸し出せば、クリニック側の利益を抑え不動産会社側に利益を移すことができます(もちろん不当に高額だと認められません)。またグループで共同購入した医薬品を一括管理会社から各院に販売する形にすれば、管理会社側に利益を集められます。ただし価格設定が不相当に見えると税務署に指摘される可能性がありますので、関連当事者間取引は常に適正価格の範囲内で行う必要があります。
- 組織再編や統合の判断:分院展開が進んだ場合、将来的には組織再編も視野に入ります。一例として、複数のクリニック法人を一つの会社に合併すれば損益通算が可能になりますし、逆に一つの法人に複数院がある場合でも事業ごとに会社分割しておけば売却や事業承継がしやすくなることもあります。組織再編には専門的な手続きや税法上の要件が伴いますが、グループ全体で最適な経営形態を選ぶことが長期的な節税・リスク管理につながります。定期的に税理士や経営コンサルタントとともにグループ組織のあり方を見直し、必要に応じて組織再編も検討しましょう。
クリニックグループともなると、将来的にM&Aによる売却や後継者への事業承継という選択肢も現実味を帯びてきます。これらに備えて今から取れる節税策もあります。
- 医療法人売却(M&A)時の税負担軽減:グループのクリニックを第三者に売却する際、一般的には医療法人の譲渡という形になります。法人の出資持分を譲渡して得た利益(譲渡益)には約20%の譲渡所得税が課されますが、それ以外の所得とは分離して比較的低率に抑えられています。とはいえ売却額が大きくなれば納税額も巨額になります。また持分なしの医療法人を譲渡した場合は、分離課税ではなく総合課税の対象となりえるため納税額がさらに巨額になる可能性があります。できるだけ手取りを残すには、売却前に個人資産と法人資産を整理しておくことが重要です。例えば院長が個人で所有しているクリニック不動産があるなら、事前に法人に売却して現金化しておくか、売却対象から外しておくことで譲渡益課税を抑えられます。また複数のクリニック法人をまとめて売る場合、ホールディングカンパニー(持株会社)に相当する法人を設立してそこに集約し、一括で譲渡する形にすると手続きがスムーズです。M&Aでは税負担だけでなく売却スキーム全体の最適化が大切ですので、税理士だけでなくM&A仲介会社とも連携して準備を進めましょう。
- 事業承継税制の活用:後継者(ご家族等)にクリニック事業を承継させたい場合、税制上の優遇措置を利用できる可能性があります。場合によっては相続税・贈与税の大幅圧縮が可能です。適用には事前準備が必要なため、該当しそうな場合は早めに税理士に相談しましょう。制度を使わない場合でも、相続税対策として生前贈与や養子縁組などで遺産分割を工夫し、相続税の非課税枠を最大限利用することも検討すべきです。
- 退職金の活用と資金準備:オーナー院長が引退する際には、前述の役員退職金を活用するのが有効です。数千万円単位の退職金を支給すれば、法人の利益圧縮と個人の退職所得控除による節税を同時に達成できます。その資金準備策として、事前に法人契約の生命保険に加入し積立金を用意しておく方法もあります。解約返戻金を退職金の原資に充てればスムーズに支給できます。保険料の一部は経費になりますので、在職中の節税と退職金準備を両立することも可能です。いざという時に十分な退職金を支給できるよう、事前に資金計画を立てておきましょう。
このように、クリニックグループの将来展望まで視野に入れると、節税対策も中長期の計画が必要になります。M&Aにせよ事業承継にせよ、早めの準備が成功の鍵です。税理士法人加美税理士事務所でも、提携している司法書士・弁護士・M&Aアドバイザー等と連携し、クリニックの事業承継や相続対策について総合的にサポートします。将来に少しでも不安がある方は、遠慮なくご相談ください。
ここまで美容系クリニックの規模やステージごとの様々な節税対策をご紹介しました。最後に、私たち税理士法人加美税理士事務所が提供する節税支援サービスについて、その特徴をお伝えします。税金の専門家として、全国のクリニック経営者の皆様が安心して本業に専念できるよう万全のサポート体制を整えています。
加美税理士事務所は東京・銀座に拠点を置きつつ、全国どこでも対応可能なオンライン税務サポートを実現しています。美容クリニックは地方にも多数ありますが、「近くに業界事情に詳しい税理士がいない」「忙しくて対面相談の時間が取れない」といったお悩みも多いでしょう。当事務所では、ZoomなどのWeb会議やメール、電話を駆使して、北海道から沖縄までどの地域のクリニック様にもスピーディーに対応いたします。
顧問契約をいただいた場合、日々の記帳や経理相談はチャットやメールですぐに回答し、必要に応じて画面共有で会計ソフトの操作をサポートします。決算前の節税シミュレーション打ち合わせもオンライン会議で資料を共有しながら行いますので、ご多忙な院長先生でも移動時間ゼロで専門家と議論が可能です。「オンラインだと距離を感じるのでは?」という心配は無用です。クラウド会計やストレージを活用し、領収書や試算表などもデータでやり取りするため、対面と遜色ない密なコミュニケーションが図れます。むしろリアルタイム共有がしやすいため、状況変化に即応したサポートを提供できると自負しています。
全国対応ですので、「地方都市で開業予定だが専門的な節税アドバイスが欲しい」「分院展開して他県にもクリニックがあるが、一括して任せられる税理士を探している」という場合にも、理想的なパートナーとなれるでしょう。距離に関係なく、加美税理士事務所は皆様の頼れる税務顧問として寄り添います。
当事務所が多くの美容クリニックから選ばれる理由の一つに、クリニック特化型の節税支援ノウハウがあります。私たちは医療・美容業界に精通した税理士が中心となり、美容皮膚科クリニック、美容外科クリニック、歯科医院まで、幅広い自由診療業態の顧問を務めるための研鑽を積み重ねてきました。クリニック特有の会計処理や税務調査のポイント、自由診療ビジネスの収益・費用構造、医療法人化や分院展開の検討プロセスなど、一般の税理士事務所にはない専門知識を有しています。
例えば、本記事で解説した青色申告の活用や経費計上の徹底、事業規模に応じた法人化のタイミング判断はもちろん、消費税対策についてもクリニックごとに最適な方法をご提案できます。「自費診療の割合が高いAクリニックでは簡易課税制度を選択して消費税負担を軽減」「保険診療も多いBクリニックでは原則課税・個別対応方式で仕入税額控除を最大化」といった具合に、細かなシミュレーションに基づくアドバイスが可能です。また税務調査対策についても豊富な経験があります。過去の調査で税務署が着目したポイントを踏まえ、日頃から帳簿類の整備や経費証憑の管理方法について指導しますので、いざ調査となっても落ち度なく対応できます。実際、当事務所がサポートしたお客様では税務調査で指摘ゼロ・追徴税ゼロを達成したケースもあります。
加美税理士事務所は単なる記帳代行・申告代行業者ではありません。税理士としての専門性はもちろん、経営者の良き相談相手として親しみやすさも大切にしています。クリニック経営にまつわるお金の悩みや将来の夢、不安に感じていることなど、なんでも気軽にお話しいただき、その想いまで汲み取った節税・経営支援を行うのが私たちのスタンスです。「こうでなければならない」といった固定観念にとらわれず、院長先生それぞれの事情に合わせた柔軟な提案をいたします。税務の専門用語もできるだけ噛み砕いて説明し、初めての方でも納得・安心していただけるよう心がけています。
美容医療業界は今後も成長が期待される一方、税制や法律も変化していきます。2023年のインボイス制度開始後の消費税対応や、電子帳簿保存義務の強化など、クリニック経営者を取り巻く環境は刻々と変わっています。加美税理士事務所は常に最新情報をキャッチし、お客様にとってベストな節税策を考え抜いてご提案します。税金はクリニック経営の敵ではなく、コントロールすべきコストです。ぜひプロの力を活用し、無駄のない納税で大切な利益を守りましょう。当事務所が全力でサポートいたします。
消費税について詳しくは下記のページをご覧ください。
青色申告について詳しくは下記のページをご覧ください。
税務調査について詳しくは下記のページをご覧ください。
法人化について詳しくは下記のページをご覧ください。

よくあるご質問
FAQ

関連ページ
Related Pages